悪魔の尻尾                     


 遙か数十万年前、そして遙か宇宙の彼方で最終戦争(ハルマゲドン)が起こった。誰もが戦争になれば一瞬にしてその戦争は終了するという事は分かっていた。そしてその戦争に勝者は居ないという事も。

 デーモン星と呼ばれた惑星を母星とし、その太陽系に属する各惑星に対し、数光年離れた位置に存在した別の太陽系に移住していたゴッド星連合との戦いだった。その二つの太陽は連星であり、互いに回りあっていた。一方の太陽が消滅してしまえば、もう一方の太陽は重力バランスを失い、やはり消滅してしまう。
 数千年にも及ぶ戦いは互いにその戦力を強化しあい、互いに最終武器を開発していた。

 そして同時に互いの太陽を・・・・。



 デーモン族の一人の科学者は、その予想をしていた。悲惨な結末を説き、和平をアピールし続けたが、熱に浮かされたような人々はむしろその科学者を敗戦主義者と罵り、彼の生命が危ぶまれる程の非難を浴びせた。

 彼はある決意をする。既にいくつかの生存可能な惑星を持つ恒星が発見されており、悲劇からの逃避としてまだまだ未開発ではあるが、その星への旅立ちを選んだ。しかし今の彼の資産では充分な装備の宇宙船など手に入れられない。せいぜい惑星間移動の小型機までである。そのような船で恒星間移動となると、いくら長寿命のデーモン族と言えど、何百年も掛かってしまい、命ある内に到着はできない。
 タキオンエンジン搭載機であれば数百光年の距離であっても僅か数年で到着できるし、実時間との差も数年で済む。しかしフォトンエンジンだと内部時間であっても数十年以上、そして実時間は数百年掛かってしまう。
 それでも彼はコールドスリープを使ってでも星を離れる決意をした。長時間の旅に備え、極力無駄を省いてエネルギーを大量に積み込む。船のエネルギーは勿論、彼自身の生命保持のエネルギーである。その為に彼は彼の使用していた『肉体』をも放棄し、彼の『本来』の姿で旅立った。

 亜光速に達する迄にはかなりの時間を要する。デーモン星系を脱するだけでも数年掛かる。その間は不自由な身体であっても、自ら船を操作しなければならない。最初の進行方向の修正の僅かな誤差でも、目的とする星系を遙かに離れた地点へ向かってしまうからだ。

 『彼』は高等生物であり、進化の極限に近い『人間』である。過去の遺伝子操作により、無駄の無い遺伝子構成を得、科学もその限界に近いと思われるレベルに達していた。

 「肉体的には限界と思われる程に進化した筈なのに、精神的には未だに未開の生物に近い。我々は進化の方向を誤っていたのだろうか・・・。いや、生物学的に見て、本当に我々は進化した形態を得たのだろうか。我々の単独の身体では操作レバーを動かすだけでもかなりのエネルギーを必要とする。『肉体』を操作しない場合の我々はむしろ退化したと言っても良いのではないだろうか。」

 『彼』はゼリー状の胴体を震わせ、ノロノロと進む。そしてその体内に少し膨らんだ黒い核の部分、つまり脳組織があり、そこから黒い触手が一本突き出していた。彼らは自らの身体を使用する事はほとんど無い。下等生物に取り付き、その『肉体』を操作する事で移動や作業をする生物なのだ。ゼリー状の胴体はその下等生物の『肉体』に浸透し、己の意志の支配下に置く。取り付く生物によってはその運動能力にかなりの差はあるものの、その遺伝子を調べ、もっとも効率が高くなるような様々な処置を施す事によって自在に操る事ができるようになるのだ。しかし長寿命のデーモン族と異なり、遙かに短命な生物であるので、何度も『乗り換え』ねばならない。
 高い身体能力を持つ生物を使用する場合、浸透した後、その移動手段や操作性の高い肉体の一部を己自身の身体の一部として使用する事もある。そしてその部分を取り去られた生物は破棄される事もある。全身を使用する場合もあるのだが、大型の生物の場合では特にその栄養補給機能が大型化しており、多量のエネルギーを必要とするからである。更に『彼』自身の浸透させられる容量の限界もあり、ほとんどは移動機能を失った生物はそのまま廃棄される事となる。


 デーモン星系引力圏を脱し、少しずつ光速に近づいていく。その間は時々意識を目覚めさせ、進行方向の微修正をする。何百年も掛かる旅のまだ端緒についたばかりなのだが、極力エネルギー消費を押さえなくてはならないのだ。

 「95%光速に達したか。船内時間は10年程だが、外部時間では30年程度であろうか。これからますます時間の伸びは顕著になっていくだろう。どれ・・・。」

 彼は触手を伸ばし、進行方向のレーダーを操作する。周囲は全くの無の空間であり、中心は目的とする星系の位置が表示されるだけだ。その確認をすれば彼は再び思考を停止し、触手の一部だけを異常検知の為だけにオンさせておく筈である。

 その時、何も映っていない筈のレーダーに一本の光の線が走り、スーッと消えていく。意識停止をしようとしていた彼は慌ててレーダーに近づいた。すると再び別の光の線が現れ、再び消える。

 「これはタキオンエンジン船の航跡か。向かう方向は私と同じという事は、やはり一部の人達は私と同じように考え・・・。」

 そして更に数本の輝線が現れる。彼は不吉な予感を感じた。輝線が消える前に更に何本もの航跡が映し出され、ますます増えていくのだった。それは数多くの船が彼の船を追い越していくという事なのだ。

 「まさか・・・。私が出発してから実時間でまだ30年程度しか経っていない筈だ。」

 彼はレーダーの視野方向を反転させる。その間にも数多くの輝線が飛び交っていた。

 「ああっ・・・。」

 既に母星は点としても見えない程の彼方ではあるが、淡い霧のような状態に見えていた。そしてタキオンエンジン航跡の線が無数に飛び交っている。

 「このぼんやりとした雲のように見えるのは弱エネルギーのタキオンか? だとすると・・・。」

 彼の悪い予感は当たっていた。すぐに霧のような状態から明るく輝き始めた。

 タキオンはエネルギーレベルが低い程、超光速で走る粒子である。エネルギーが高くなるに従い、そのスピードが落ち、極限に高いエネルギー状態で光と同じ速度になる。
 反陽子爆発による恒星の消滅である。すべての物質がエネルギーとして放出される。高エネルギータキオン、そして無限ともいえるニュートリノ、そしてフォトンが光速で一気に襲い掛かってくる。彼の船はまだ数光月しか離れていない。実時間では数ヶ月で、そのエネルギーが襲い掛かってくる筈なのだが、準光速で飛行している船の中の時間ではほんの僅かな時間で到達するのだ。

 「まずい・・・。」

 彼は全力で操縦レバーを操作する。もともと運動能力の高くない彼本来の肉体を限度以上に駆使し、繰船するのだった。


 「ああ・・・・・。」

 彼は光に包まれていた。彼自身も光であった。




 どのくらいの時間が経ったのだろうか。僅かに機器のライトが点滅しているだけの暗い船内で意識が戻った。肉体的なダメージはほとんど無いようなのだが、精神的には絶望に押し潰されそうな状態だった。それでも状況を確認しようとする本能に近い状態で各部を点検していた。

 「タキオンレーダー破損・・・。ニュートリノセンサー・・・破損・・・。フォトンレーダー・・・これだけはかろうじて助かっているのか。おそらくあのエネルギー奔流で航路が変わってしまっているだろうが、これだけでは母星の爆発光は見えても、目的地の星は観測できない。つまり私は宇宙の放浪者になったと言う事だ・・・。」

 それでも科学者である彼は可能性を探り続けた。

 「フォトンレーダーだけで探査可能な事は・・・。生命体の存在する可能性のある惑星には必ず水が存在する。固体でも気体でもない液体状態の水。しかし恒星からの光の反射光のスペクトラム分析には、ある程度近距離でなければ判断できない。地表部の大気成分、大気温度はもう少し離れていても観測可能。いや、有意性のある電磁波であればかなり離れていても観測できるはずだ。デーモン星でも古代では電磁波を用いた通信をしていたのだから、原始的な文明の存在を意味する。」

 それでも、それはほとんど可能性のない確率でしかない事は分かっていた。

 「私は科学者なのだ。論理的に可能なのであれば、僅かであっても可能性を信じる。何百年掛かるかも分からない。あるいは私が消滅してしまう方が早いかもしれない。それでも可能性を信じる。」

 彼は自動探査システムを動作させ、脱出ポッドを兼ねたコールドスリープの容器に身を委ねるのだった。



 そして更に数百年が経過した。


 何年かに一度だけ彼は意識を取り戻す。セラミック容器の中からでは彼の尻尾のようなセンサーは感度がかなり下がるのだが、それでもレーダーからの情報は得られる。

 「電脳は目的の星を決めたのか。まだ若い恒星とその惑星だが、液体としての水の存在は確認したのだな。この距離だと私の寿命ギリギリという事か。まあいいだろう。無の宇宙空間で存在を失うよりは、惑星の上で命を終える方が幾分はましだ。それに私の肉体もほとんど消耗してしまった。脳とこのデーモン族の証であるセンサーが私のデーモン族であるというより所なのだから。それでさえも限界近くに消耗してしまっている。」



 「かなり近づいたな。いよいよ私の墓所となる惑星か。それにしても思ったよりも小さい惑星だ。幸い重力が小さいという事で、突入速度が遅くなるのは良い。さらに大気圏が狭いという事も、このポッドが燃え尽きてしまわないという事だな。酸素、炭酸ガス濃度は理想的といえる。しかし大気層が薄いという事は紫外線が強く、私には少し不適だ。脳本体をそれから守らねばならないし、ウーン、温度分布に問題がある。私の肉体が無い以上、温度変化は私の組織にダメージとなる。赤道近辺であれば少しは適温だが、それでも昼夜の温度差が大きい。」

 彼は観測データを取り込みながら考え込んでいたが、一番肝心な点を忘れていた事に気付いた。

 「そうであった。いかなる条件も私がこのポッドから出てからの事だ。肉体の無い私ではポッドを開閉できないのだ。センサー部は可動できるものの、大した力は期待できない。外部の生物の助力が必要なのだ。しかし電磁波での原始的な通信しか検知できない以上、存在する生物は極めて原始的だ。そのような生物がこのポッドを開けられるだろうか。」

 それ迄、全くの無音であった船が軋み音を発した。フォトンエンジンが逆方向を向き、一気に速度を落とし始めた。

 「いよいよ突入か。この船は制御するにはエネルギーが不足。この脱出ポッドを地上に落下させる為にのみ進入角度を決め、燃えてしまうだろう。それでも燃え残りは海に落下するように計算されているようだ。あの大陸の海岸線に近い部分を目標にしたようだ。」



 激しい轟音と震動が襲う。彼のセンサーには金属の燃焼する時に発する光しか感じられなかった。そしてその光が薄れた瞬間、爆発音と強烈なショックで一瞬意識を失う。



 気付いた時、センサーでも外部の光は全く感じられなかった。高温だったポッドの外部が少しずつ冷えてきて、赤外線の感知レベルを上げ、辺りを調べる。

 「ほう・・・。予想よりも遙かに原始的な惑星らしい。微小生物が多いという事は、やはり若い惑星なのだな。しかし、この周りの見上げるばかりの塔のような物も移動しない生物のようだが、不思議な構造をしている。この惑星に適応しているのだろうが、科学者、特に生物学を専門としている私としては興味深い。間もなく寿命を迎えるであろう私にとり、最後の喜びである。しかしながら、できる事なら、この興味深い惑星の生態系を詳しく調べてみたかった。いや、最後の最後迄自分自身の役割を果たすのがデーモン族としての務めであり誇りなのだ。」



 「それにしても不合理な程、進化の遅れている惑星である事よ。栄養物がこれ程豊富にも関わらず、エネルギー摂取効率がこれ程低い生物が存在するとは驚きだ。大別して二種類の生物という事か。移動しない生物の方が我々のエネルギー変換方法に似てはいるが、脳組織を持たない極めて原始的な生物だ。そのエネルギー効率の悪さから、地下の組織部は極めて広い領域に広がり、栄養物を吸収する。恒星光を受け入れる部分を上空に広げ、そちらでもエネルギー代謝をしている。それに比べて移動生物の方は遙かに小型ではあるが、体組織の基本はタンパク質である。駆動する事を考慮すれば当然の事なのだが、下等生物とはいえ少しは進化の傾向を示している生物の基本は四足歩行というのが原則のようだ。この惑星に適応する生物なのか。低重力下での生物および低温下の生物は大型化するという原則はここでも成り立っているようだ。」


 「電磁波通信をする程度の知能のある生物はまだ近寄ってこないな。精神波は全くと言って感知しない。ポッド越しといえど、ある程度は感知できる筈なのだが。近距離であれば音波での意思疎通はできるだろうが、高位の意志を含んだものもない。おっ、大型の移動生物が近付いてきた。私のセンサーで少しは内部構造などを把握できるかもしれない。」


 「更に進化した生物のようだ。前二肢を操作系として使用しているのか。体表を何かで覆っているようだが・・・。繊維質の物のようだ。これは明らかに制作物だ。今迄の生物よりは脳の容積の大きさからしても少しは知能が発達しているようだ。四肢生物との違いとしては体温を保持する体毛が少ない。それで繊維質の物で覆っているのだな。それと尻の部分のバランスをとる為のひも状の器官が存在しない。しかし精神波はほとんど感じられない。脳容積の大きさと進化の具合にアンバランスを感じる。身体的にはまだまだ進化の過程であると思われるのに、それ以上に脳組織は大きい。そしてあの程度の容量であれば、当然精神波の送受はできる筈なのだが・・・。」

 その生物は何か音声を発した。極めて微弱な精神波も感じたが、その精神波が感知できなくても、その生物がこちらに近付いてきた事により、ポッドを発見した事は分かる。そしてポッド表面を撫で回しながら更に音声を発する。私はできる限りの精神波を送ったのだが、その生物には届いていないらしい。

 かなり重量のあるポッドなのだが、その生物は軽々と持ち上げた。そして抱えて移動を始める。

 「さすがに巨大生物だけあって力強い。とはいえ、このポッドを開くには倍力システムなどによらねば無理だろう。そこ迄この生物が用意できるかどうか・・・・。もっとも、開いたところで私の寿命は尽きるだろう。外気温の低さ、私の脳組織を損傷させる紫外線。エネルギー補充もままならないから、この惑星上で存在を終える事ができたと言うだけで満足すべきだ。惜しむらくは、この興味深い星の生物について研究ができないという事だな。」



 「ウム、どうやらこの生物の巣らしい建造物だな。この巣の構造からすると、ある程度の知能の生物が存在するらしい。いや、この生物がそうなのか? それらしい精神波が全く感知できないのは不合理だ。」

 その生物はジッとポッドを見詰めている。上部脱出口と本体との僅かな隙間を見つけたらしく、前二肢で上下の部分に力を加え始めた。

 「それは無理だ。落下による大気摩擦の熱を遮断する為に極めて固く閉じているのだ。だから・・・何?!」

 彼の予想外の事態が起きた。ガキッと音がして、蓋が少し動いた。

 「何という強力な力なのだ。開く・・・。いよいよ私の最期の時が来たのか。宜しい。この未開の惑星の生物に偉大なるデーモン族の末裔としての姿を見せて上げよう。選ばれた者よ。私の姿をしっかりと記憶に留めるがいい。む、開く・・・・。外気は極めて低い温度だ。恒星光の直射は無いものの、間接光にもかなりの紫外線が含まれている。少しでも私の姿を長く見られるようにシールドガスを出そう。ほんの短時間ではあるが、私の苦しみの姿は見せたくない。堂々たるデーモン族の姿を現さねば・・・。」

 「おう、開いた。やはり大気温度は低い。シールドに包まれていても紫外線も強い。さあ、私の姿を見せてやろう。」

 『彼』はセンサー部をポッドから出した。生命の終焉を自覚し、厳かな感情に包まれていた。

 「私の姿をしっかりと認識せよ。そうだ、畏れるがいい。音声を発する部位からも恐れの精神波を感じる。さあ、畏怖し、進化の極致ともいえるデーモン族を・・・?」

 音声の意味は理解できないし、精神波も完全に認識できる訳ではない。しかしそれでも単なる恐れだけではなく、強い嫌悪を感じた。『彼』のセンサー部を見ている原住民の意識が映像としての精神波として突き刺さってきた。それは爬虫類の姿であった。

 「な・・・、何だと? 私の姿を、その様な下等な生物と見ているのか? 私の最期の命をもってしてデーモン族としての姿を現したのに、よりによって下等な爬虫類だと? 許せん!! この数百年に及ぶ長い航海の果てが・・・。やめろーーー!!!」

 科学者であり、死を前にしても冷静であった彼だったが、最期の瞬間を下等動物と認識されたままでの自尊心の崩壊が、まるで本能を呼び起こされるかのように怒りに身を任せた。ほんの僅かに残っていたエネルギーの全てを使い、そのおぞましい音声を発し、精神波の溢れてくる場所に向かい、弾けたバネのように全身を飛翔させた。






 「なあ、夕べどっかで爆発音がしたよな。」
 「ああ、ニュースだとでっかい流れ星らしいから、どっか近くに隕石が落ちたかも分からんぞ。」
 「へえーっ。惜しかったな。見たかったよな。」
 「そりゃ無理だ。いきなり特訓だもの、飯食ったら直ぐにバタンキュー。」

 野球部のメンバー達が用具の整理をしながら話していた。夏休み合宿のまだ始まったばかりである。

 「ああ、ボクは見たよ。と言っても、山の向こう側でピカッと光って、大きな音がしたから、雷だと思ったけど。」

 少し離れた場所でボールを拭っている少年が答えた。華奢な体付きの少年なので、どう見ても運動部員には見えない。

 「隕石だったりしたら、凄いニュースなんだけどな。今日も特訓がなければ、探しに行くのに。」
 「出門。お前、探しに行けよ。夏休みの手伝いでスコアラーやって貰うにしても、まだ一週間は練習試合は無いしな。本来、こんな手伝いなんかしなくていいのに。」
 「いいよ。どうせ暇だし。」
 「そうじゃないよ。もし・・・、もしも隕石だったらたいしたお宝だよ。学校の宝になるかもしれない。お前と野球部メンバーの名前を付けて校長室前の展示棚に飾る。」
 「おっ、それいいね。どうせ俺たちではカップなんか飾れる訳ないからな。」

 全員が一斉に笑った。

 「そっか。お昼過ぎに買い物行く予定だったから、少し遠回りして見てくるよ。本当に隕石だったら、山の上から見れば、痕跡が分かると思う。」
 「オッ、本気にしたか。でも、頑張れよ。」

 再び全員から笑い声が出た。



 ボクは出門輝(でもん てる)。心性学園高等部の2年生。

 夏休みはほんの少しの宿題なので、クラスメートは自宅へ帰るか、旅行に出かける。しかしせっかく軽井沢に合宿所があるのを利用しない手はない。とはいえ、合宿所に無目的では来られないので、野球部にくっついてきたのだ。スコアーラーとして。実際に練習試合の時以外は用はないので、ほとんどただで合宿所でのんびりできるという訳なのだ。



 「ウーン、それらしい形跡はないな。もし落ちたとしたら、今頃は報道のヘリコプターが飛び回ってるはず。」

 帰りの山道の途中で、木の枝がまとまって折れているところを見つけた。淡い期待で周りを探したが、隕石落下の形跡はない。

 しかし・・・。

 「ん?」

 サッカーボール程度の、ほぼ球に近い陶器を見つけた。表面は焼け焦げた跡があるが、少し擦ると真っ黒い艶がある。用途の分からない物体だが、それ程の重さはないので持ち帰る事にした。




 「何だろう。焦げているけど隕石じゃないし、陶器製の人工衛星なんて筈もない。何かの容器だとしても、底が平らじゃないしなあ。それなのに転がらないのは重心が下にあるからかな。オッ、ここに隙間が・・・。蓋になってるのか。」

 輝はその球体を抱えるようにして捻ってみた。

 ガコン・・・。

 上部が少し回った。しかしそれ以上には動かない。ネジになっているのではなく、そのまま蓋を持ち上げる事ができた。

 「オッ、開いた。」

 蓋を持ち上げると、中から黒い煙が湧き上がってきた。そしてその煙の中から・・・、

 「ギャッ!! ヘビーーーーッ!!」

 それ程大きな蛇ではないが、鎌首を持ち上げ、輝の方に向いていた。

 「シッ、シッ・・・。」

 近くにあったモップを取り、叩き出そうと思った。その強い思いは『彼』への殺気として放たれていた。


 《やめろーっ!!》

 『彼』は敵意と殺意を発している場所に、最後の力を振り絞って跳び込んでいった。


 「グエッ!!!!」

 その『蛇』が、まだ身構えていなかった輝の口の中に突き刺さってきた。

 「ガ・・・ガハッ・・・。」

 慌ててその蛇を掴もうとした時には鎌首が喉を通り過ぎ、食道に入り込んでいた。『彼』も必死にエラを突き立てて体内に潜り込もうとしていた。彼の脳の部分もできるだけ細い形状にし、引き出される事に抵抗した。しかし、その短い間に彼はこの原住民たる生物に大きな違和感を感じていた。

 《な・・・何だ? 内部でのこの精神波の強さは。今、意識を無くしているはずなのに、なぜ体内にこれ程の強さが?》

 その強い精神波がその生物の意志を強く示していた。

 《呼吸困難、苦痛、死への恐怖・・・。あ、私がこの生物の呼吸器官を塞いでいるのか。ほとんど寿命の残っていない私が、下等生物といえどもまだ若い個体を死なせてしまう訳にはいかない。少なくとも私をずっと高等な人類である事を認識させねばならぬ。》

 呼吸困難で彼を掴んでいた手が離れた時、彼は食道に滑り込んだ。そして胃の中に入り込んだ。

 《む、この部位は強酸性で具合が悪い。この先に進めば酸も弱まるはずだ。》

 既にある程度は体内の内部構造を把握しており、彼は小腸内へ潜り込んだ。

 《狭い・・・。私の本体部をもっと細くしないと移動に時間が掛かる。もうエネルギーがほとんど無い。エネルギーさえあれば体形の変化はずっと楽に・・・。おっ、この部位の少し先に行けば吸収できる栄養素が存在する。そうか、この生物もエネルギーを得る為には食料を変化させねばならない。エネルギーの補給があれば、私はもう少し生存できる。そうであれば・・・・。》

 彼は身体を捻りながら小腸内を進む。意識を失ってはいても、体内を異物が蠢いている事で、輝の腸はそれを除去しようとする。蠕動運動が一気に激しくなり、それは下痢症状として表れる。強い腹痛と便意で輝は意識を取り戻したが、『蛇』を飲み込んでしまったという事など忘れ、トイレに駆け込むのだった。

 「アタ・・・ッ・・・。」

 ブリブリブリ・・・・・!!

 激しい下痢で、体内の汚物が一気に吐き出されていく。

 《おおっ、意識が戻った途端、精神波の強さが一段と・・・。しかし無駄に全ての意識の精神波が渦巻く。なぜ体外に発せず、このように体内だけに・・・。無意味としか思えないが・・・。うむ、腸の活動が活発なので、移動がスムーズになった。急に広くなったな。ここが最終部位の大腸なのか。意識だけではなく、この生物の知識も受信できる。それにしても、あまりにも強い精神波の影響で、私のセンサーが上手く機能しない。ハレーションのような現象なのだな。間もなく出口か。このままでは私自身も排泄されてしまう。そうか。この消化器官の最終部位、直腸に本体を留置し、センサー部を外部に出せばよい。私の身体を本来の形状にすれば、肛門という器官でせき止められるはずだ。》



 「ウオーーッ!!?」

 激しい下痢便が便器に飛び散った。そして体内の汚物の全てが出きってしまうと感じた瞬間、突然排泄が止まった。まだ残る強い便意と、肛門に感じる奇妙な残便感。

 「ウッ、何っ?」

 最期の瞬間に肛門を塞がれてしまい、息んでも全く効き目がない。輝は慌てて立ち上がり、屈んで股間を覗き込んでみた。

 「ウワーッ・・・!!!」

 尻から『蛇』が垂れ下がっていた。まだ便が付いているのだが、輝はその『蛇』を引っ張り出そうとして、両手で掴んだ。


 「誰が蛇だ! 無礼者!」

 大きな怒鳴り声が響いた。しかし周りには誰も居ないし、声は輝の頭の中に直接響いてきていた。

 「エッ? 誰?」

 《まずい。この生物の力は極めて強かった。このまま引っ張られてはセンサーが本体から千切れてしまうかもしれない。どこかに絡み付かねば・・・。》

 声に驚いて手を離した隙に、彼は前方の小さく垂れ下がっている器官にグルグルっと巻き付いた。

 「ワーッ!」

 《おっ、恐怖と嫌悪の意志が強くなった。この部位はこの生物の弱点なのかもしれぬ。》

 彼はそのままギューッと締め付ける。途端に悲鳴が響いた。

 「イテーーーーッ・・・!!!」

 《良し。かなりの苦痛があるようだ。この部位は生殖器なのだな。子孫を残す器官であり、生命体においては重要な器官であるが、防御しにくい為に外部からの攻撃を受けにくい場所に存在するのか。しかし体内からの攻撃は想定されていないようだ。この部位を制圧しておけば、この生物を制御できる。私のエネルギーを補給できる位置にあって、制御できれば少しは寿命が延びる。私を遙かに高等な人類である事を認めさせねばならぬ。その為には私に従属させねばならぬ。》

 「痛い! 離して・・・。」
 「私に触れるな。触れればもっと締め付ける。」
 「『私』・・・? 誰? どこに居るの?」
 「お前が『蛇』という生物と間違えた私の事だ。」
 「エッ・・・?!」

 輝は便器に座ったまま、足を開いて股間を見詰めた。まるで黒いエナメルのような艶の紐状の物がペニスに巻き付いている。その紐の先端は、まるで悪魔の尻尾のような、スペードのような形だった。確かに蛇ではない。鋭い先端が尿道口を今にも突き刺すかのように構えていた。

 「な・・・何なの・・・? 悪魔・・・?」

 彼は輝の精神波から悪魔のイメージを得た。

 《これは・・・。実在は疑わしいらしいが、時代的にはこの星での数百年前の事らしい。この生物の知識としてだが、確かに全身を我が肉体とした場合、似た形状になる。そうか! 私よりも以前にこの惑星に到着したデーモン族の事かもしれない。それでこの生物を家畜として・・・。論理的には正しいかもしれん。この生物が若い惑星上の生物の中で、突出して進化しているのは品種改良の成果かもしれない。寿命が短いという事は改良を重ねるのに短時間で済むという点に効果的だ。他の種にある尾がほとんど存在しないという事は、私がこの位置に居るのに極めて都合が良い。だとすると、我々デーモン族がこの生物を家畜として利用しやすい改良がなされている筈だ。まずはこの個体を徹底的に調べねばならないな。》 

 「悪魔という呼称はある程度正しいのかもしれぬ。生物学的にも私は遙かに高等な生命体なのだ。む、動くな。私にはお前の思考が良く分かっている。逆らおうとすれば、このペニスという器官を一気に握り潰してしまう事など造作もない事なのだ。」

 輝は便座に座ったまま股間を見詰めて固まっていた。

 《生命維持のエネルギーは確保できたようだ。しかし肉体維持の栄養素も必要であるが・・・。先人達はどのような方法でそれを得たのであろうか。吸収しやすい液体タンパク質となると・・・。お、この生物の体内に存在するのは・・・。》

 ペニスに絡み付いたままでセンサーでスキャンしていた彼は脳とセンサーの間に存在する器官に意識を集めた。それと同時に輝の取り留めのない意識の精神波の中から、ペニスに関する情報を選択的に分析していた。

 《交尾に関しては他の生物での検証はしたが、この生物・・・自分自身を『人間』と称している事にはいささか傲慢さを感じるが、それでも他の種類の生物に比し、あまりにも交尾欲の強さが異常な程だ。この個体だけの特性ではないらしい。これも先人の品種改良の結果なのであろうか。ふむ、この個体自身はまだ交尾をした事はないのか。生物学的にはまだ若いとはいえ交尾可能なのだが、一応社会を形成している中で、社会的倫理とかで制限があるらしい。これも追々調べねばならぬか。生物学専門の私には社会学は・・・、まして思考形態のこれ程違う生物となると、かなり難しい問題だ。それに今の私自身の肉体、特に脳組織は限界に近い程圧縮している。新しい思考の記憶領域は得られない。ある程度肉体が回復したとしても、今まで蓄積してきた生物学の知識、さらには分析能力やセンサー部の機能を犠牲にはしたくない。ウーン、整理分類するだけの余裕はないが、まずはこの器官を調査検証から始めよう。擬似的な交尾はかなり行っているようだが、今の状態では強制的にでも行わせる事は難しい。私の動きでこの個体の感覚を感知しながら検査する事がベストのようだ。》

 彼は絡み付いたセンサー部を少し動かしてみた。途端に拒絶と強い嫌悪の意識が流れ込んできたのだが、僅かに快感らしい感覚をも感じ取った。輝の意識の中から自慰のイメージを読み取り、それに合わせるように動いてみた。

 「触れるな! 握り潰す事も簡単であるし、私の先端を突き刺す事はもっと簡単なのだぞ。」
 「ごめんなさい・・・。だけど動かさないで・・・。」

 《感情が昂ぶってきたな。なる程、このペニスという器官は興奮状態で血液が集中し、膨張、硬化するのか。》

 「あっ・・・、あっ・・・、いやだ・・・、ダメーっ・・・!」

 輝はデーモン人の警告にも関わらず、センサーの巻き付いたペニスを掴んだ。しかしそれは彼を引き離す為ではなく、自ら前後に揺すって到達させる為だった。

 そして白濁した粘液がセンサーの先にへばり付いた。

 《オッ、なんと激しい精神波だ。む・・・、この精液という分泌物は、予想以上に高エネルギーであり、高タンパクだ。そして精神波の落ち込みも予想以上だな。ウーン、急いで分析をしなくてはならない。とはいえ、私の本能とも言うべき作用で、肉体がこの栄養物を吸収してしまう。やむを得ん。ある程度肉体が回復する迄は吸収を優先し、合間にこの遺伝子を検索する事にしよう。》

 「どうして悪魔がボクに・・・。ワッ、もうやめて・・・。お願い・・・。」
 「お前は自分の立場を分かっていないようだな。」
 「ボクの立場?」
 「そうだ。お前は私への栄養を供給する家畜にすぎないのだ。であるから、その栄養である精液をどんどん放出するべき存在なのだ。」
 「ヒッ・・・、無理だよ・・・。今、出たばかりだし・・・、何でボクが家畜なのさ・・・。」
 「私は、地球人であるなどと称しているお前達よりは遙かに文明の進んだ、究極の進化を遂げている人類なのだ。お前と、お前が家畜だと思っている牛や馬とか言う動物との関係よりも遙かに隔たっている。今は物理的にお前を制御しているが、それは私が何万光年もの旅の直後でエネルギー不足であるからだ。しかし間もなく・・・、いや、既にある程度回復し、物理力は極めて大きくなった。お前の生命機能を停止させる事は訳もないのだ。」
 「ヒーッ・・・!!」
 「そんなに恐れる事はない。私は文明人なのだ。むやみに殺生をする事は好まない。とはいえ、それはあくまでもせっかく手に入れた家畜を虐待したりしないという程度なのだがな。しかし飼い主に逆らい続ける家畜であれば処分はやむを得ない。新しい家畜を探さねばならなくなる訳だが。」

 そして輝は二度目のつらい射精を迎えるのだった。

 《ウム、確かに量は減少する。かなりのエネルギー消耗も認められる。しかしそれは不合理であるな。デーモン族の先人達が家畜として品種改良を成し、それが野生化した動物であるのであれば、一体を制御しているのであるから、それで充分な栄養を得られるように改良しているはずだ。確かに運動エネルギーを得るだけの栄養素は排泄物とか言う栄養素変換機能で充分に得られる。しかし肉体の保持、増殖に必要な液体タンパクについてはあまりにも少ない。論理的なデーモン人としては不完全すぎる。いや、それこそ論理的におかしい。まだ私が認識把握していない機能、あるいは方法があるに違いない。》

 彼はグッタリしたままの輝のペニスに刺激を与え続けながら、そのセンサーの本来の機能をいっぱいに働かせた。

 「お願い・・・、もうやめて・・・。」
 「私には液体状のタンパク質が必要なのだ。」
 「タンパク質・・・。液体・・・。だったら牛乳があるから、それで・・・。」

 彼は輝の意識の中の牛乳という言葉のイメージを受信していた。それは確かに輝自身が間違いなくタンパク質であると認識している事を知る。

 「よろしい。つなぎにはなるだろう。」

 輝はフラフラとしながら、冷蔵庫からパックを取り出し、グラスに注いだ。それを床に置き、自分はその横にしゃがみ込んだ。触手は輝のペニスから離れ、そのグラスに鎌首を突っ込む。やっとペニスへの戒めが解かれた安堵感と再び強制射精をさせられる恐怖でペニスをグッと握り込むのだった。

 「フム・・・、確かにタンパク源ではあるが、かなり薄い。僅かな差ではあるが、成分の影響であるのか我が肉体の回復度合いが低い。牛という動物の分泌物なのか。何が微妙に違うのかはやはりDNA走査しなければなるまい。」

 グラスに注がれた牛乳は濁りが無くなり、直ぐに透明な液体へと変化をした。

 「何で・・・?」
 「水分で薄められているようだな。本来の牛乳とやらにもかなりの水分を含んでいる。栄養素だけを吸収すれば、残りの水分には用はない。やはり精液を搾らねばならぬ。さあ、その手をどけよ。」
 「イヤッ!! もうイヤだ!」
 「飼い主に逆らうなと言っておいたはずだが。」

 彼はプルンプルンと回転し、ペニスに絡み付いた時のようなコイル状の形態になる。そしてそのまま肛門に填り込んでいった。

 「ヒッ!」

 入り込む時の断面の直径は細かったのだが、肛門部で解けるようにしながらその径を増していく。

 「ギヒッ・・・!! 痛い! やめてーーーっ!!」

 肛門が拡げられていく。彼は観察を続けながら、その限度を探りつつ、径を拡げていく。

 「ご・・・ごめんなさい・・・。言う通りにする。お尻が・・・、裂けちゃう。」

 彼は輝の言葉が一時しのぎの言葉だとは分かっていた。それでも従う意志は本当なのでコイル状の形態をとき、再びペニスに巻き付くのだった。

 「私はお前を家畜だと言った。家畜は家畜らしく主人の言う通りにしていれば、主人の私としてはむしろお前を優しく扱う事ができるのだ。私にはお前の意識、感情が分かる。だから精液を出させるのに気持ち良く出させる事ができる。」

 輝は歯をくいしばって彼のオスペに甘んじるしかなかった。それでもいつものように色々な妄想を浮かべながら高まりを待つのだった。

 《ほう・・・。セックスと称する交尾を空想する事で興奮が高まるのか・・・。しかし、どうもその思考にはかなりの誤謬が存するようだ。この家畜自身も認識しているのだな。交尾が未経験と言うだけでなく、女という雌の外観に刺激を受けているようだが、家畜自身では未だ目視していないのか。ふむ、この衣服という外皮を外す事は、ある特別な状況以外では禁忌とされているのか。》

 「ハクッ・・・・・。」

 押し殺した嗚咽とともに輝は射精させられた。肉体的にはかなりの快感を感じるのだが、精神的には屈辱と嫌悪に満たされていて、その快感に気付くような状態ではなかった。

 「お願い・・・、出て行ってよ・・・。こんなのイヤだ・・・。」
 「私としても少々後悔している。どうせならもう少し精液量の多い者を家畜としたかった。しかし今は凝縮した我が肉体を回復させる事が最優先だ。」
 「それじゃ・・・、もう少しで出て行ってくれる?」
 「お前の思考を観察するに、確かに近くに私の望むような家畜が存するようだ。残り少ない寿命の為にも、効果的な回復を望んでいる。」

 輝は少しホッとした。まだデーモン族の事をほとんど知らないので当然なのだが、単に精液供給だけで済むのだと思っていたからだ。

 「じゃ、できるだけたくさん出せるように頑張るから・・・。アッと、悪魔さん・・・、名前ってあるの?」 「名前? ああ、個体識別認識の事か。我々にはその様なものは不必要だ。我々はデーモン星に存在していたので、デーモン族と称していたが。」
 「じゃ、やっぱりデーモンさんて呼んでいいかな? もっとも、デーモンっていうのはやっぱり悪魔の事だけど。」
 「まあ、いいだろう。種族名ではあるが、ここでは私がデーモン族を代表しているのだから。」

 《私がこの家畜から離れる可能性を示した事で、かなり精神的に落ち着いたようだ。逆らう意志も減ったようだな。しかしそのせいで幾分私を侮る感情が湧いてきているのは少々不満だが、確かにこの星の生物に比し、私はかなり小型である。実際に私の星の科学力を示せない以上信じるのは難しいかもしれぬ。しかしそれはそれなりに私にメリットもある。強引に私の生命を終わらせてしまおうという反抗心は出てこないだろう。》

 デーモンは輝のペニスに軽い刺激を与えながら精液の溜まるのを待つ。その間にも色々と思考し、輝の意識を読み取り、分類するのだった。

 《私の先達がこの家畜を改良したとして、確かに精液量が少なすぎる。しかし他の生物に比し、いわゆる発情期を無くしたのは常時精液採取できるようにとの改良を認められる。精嚢という器官を調べても、成熟したとしてもそれ程量が増える訳ではないし、個体差を考慮しても絶対量が少ない。贅沢を言える立場ではないが、ほんの僅かで良いから、この家畜を制御できるだけの肉体回復が必要だ。この10倍の量が欲しいが、この個体だけでは・・・。ん? 別の個体からの補給でも良いのでは? ああ、そうだったのか。この個体は雄であり、先人は雌に取り付いて制御していたのか。雌であれば、常時発情している雄からいくらでも精液の供給を受けられる。まだ遺伝子解析が済んではいないから結論は出ないが、雌の個体発生器官により能動的に私の肉体たる細胞増殖が可能かもしれない。それによってこの個体の記憶にある『悪魔』という形態に迄の肉体回復が可能なのか。》

 デーモンは地球人であれば溜息をつくような感情を持った。

 《生死の境にあった私としては消滅寸前にこの個体からのエネルギー補給ができたという事で充分満足しなければならない状態だったのだ。これ以上の望みはすまい。私がこの個体に入り込んだ目的は、私を遙かに高等な生物であると認識させる事だったのだ。今の状態では雌の個体に乗り換える事は不可能であり、それではこの個体に認識させる事はできないからな。》

 《この若い個体の知能はそれ程高くはないが、潜在能力はかなりのものだ。それにしても頭頂部の脳の容量に比し、活動していない部位が極めて大きいのはなぜだろう。これも先人の改良の結果とは思えるのだが。当然何かの目的があっての結果であろう。そして精神波の強さは進化の結果であり、レベルの高さの筈なのだが、それが体内だけというのは・・・。確かに今の私には都合がいい。思考が垂れ流しで私に分かるのだが、私の思考は指向性を持たせないと伝わらない。なるほど、これも家畜として使用するには便利である。地球人の生活習慣など確認しておかないと、私の存在が他の地球人に知られる事はまずい。今の私には物理的力に対抗するすべはない。まずはこの輝という個体からの知識を収集整理する事から始めるか。》


 「アッ・・・、フッ・・・。」

 ゆっくりと高められ続けていた輝は3度目の射精をしてしまった。量はかなり少なく、それでも直ぐに一滴残さずデーモンの尻尾のような触手に吸収されていた。

 「デーモンさん・・・、疲れたよ・・・。お願い、休ませて・・・。」
 「良かろう。このまま揉み続けるが、それはこのペニスを丈夫にするに必要だ。」

 輝はふらついた足取りでベッドに歩んだ。そして身体を投げ出すように身体を横たえるのだった。肉体疲労よりも強い精神的疲労により、そのまま直ぐに眠りに落ちた。


 《なるほど、これが睡眠状態なのか。しかし幾分弱まったとはいえ精神波の強さには驚かされる。抵抗意志が無い内に観察を続けよう。そして精子の遺伝子検索も始めねば。》


 《意識の走査によると、地球人類というのは異常に進化が早いと同時に文明の進歩も早い。これも先人の改良の結果なのか。しかし子孫を残す程の人数が居なかったのだな。そして遺伝子解析の途中だが、これ程不合理で冗長な遺伝子構造の意味は何なのだ。我々のように洗練され、無駄のない遺伝子構造に比し、バカげた程に無意味に複雑だ。基本構成のタンパク質形成や生命維持の為の遺伝子は当然ながら我々と似た構造なのだが、抑制作用の遺伝子が異常に多い。一番不思議なのは、この輝という名の個体は雄であるのに、雌の遺伝子も持っている。雌の場合は雌だけの遺伝子であるのに。その影響なのか、雌の象徴であるらしい乳房という雄には不用な器官が生育せずに存在している。生育させるに必要なホルモンという物質を別種のホルモンが阻害している。それも非常に微妙なバランスなのだが、そのバランスを司るホルモンも存在する。もし我々デーモン族であったら、必要量のホルモン物質だけを作り出す遺伝子を用意しているだろう。うむ・・・、乳房か・・・。先程の牛乳という物に比し、新鮮で濃度の高いタンパク質を得られる。私の能力であればホルモンを製造し、生育を進める事ができる。いや、部分的遺伝子操作でその器官を発達させる事もできるはずだ。そうすればペニスを強化させるだけで得られる精液だけでなくミルクも吸収できる事になるはずだ。おそらく先人もそれを見越してその様な遺伝子操作の余地を残しておいたのだろう。》

 《しかし輝の意志としては乳房の存在には極めて強い抵抗があるようだ。ペニスの強化に対しては好感を持っているようだが・・・。私としては強引に押し進めたいところだが、今は輝の抵抗意志は好ましくない。ある程度の準備段階でとどめ、抵抗意志があっても私の意志に従えられる段階にて一気に進める方が効果的だな。まずは数種類の女性ホルモンの生成を始めよう。》



 《複雑な構造の生命体にしては、その制御を司るホルモンは意外に単純であるな。そして微量で効果が高いという事も改良しやすい。そうか、改良を楽に行う為に複雑な遺伝子構成をさせてあるのだな。しかし輝の知識では必要量が不明だ。おそらく効果が出るには時間が掛かるであろう。生育を促す成長ホルモンも生成しよう。そのホルモンの効果で乳房の細胞が増殖始めたら、その細胞を増殖できるような遺伝子操作した細胞を注入しよう。いや、遺伝子操作細胞作成よりも簡単な方法がある。性染色体の内Y染色体を消滅させ、残っているX染色体を2倍体にすれば良い。自分自身の染色体であるから拒否反応は極めて起こりにくい。その様なバクター作成の方が短時間で済むし、効果は長続きするはずである。ウーン、ペニスの生育に男性ホルモンは乳房用の女性ホルモンの硬化に悪影響がある。とはいえ女性ホルモンの影響で男性器の縮小化も困る。男性器萎縮は輝の嫌悪するところであり、心的抵抗が強くなる。成長ホルモンで形状だけ肥大化させればよいか。それと勃起していれば縮小化が目立たないから、勃起を抑制する酵素の破壊因子を入れておこう。後に脊髄細胞の遺伝子操作で勃起抑制酵素の出ない遺伝子細胞と入れ替えればよい。》

 デーモン族は、その体内に遺伝子分析機能や化学物質の生成機能を持っている。その能力によってデーモン星で他の生物の肉体を操り、あるいは肉体を自らの肉体とし、用途に応じた改良、改造ができたのだ。特に彼の場合は生物学者として機能特化されており、その能力はデーモン星でもかなり上位であった。触覚の先端を極めて微細な針状にし、輝の血管に刺し、血液を抜き取っての解析をするのだった。敏感なその針は輝の神経組織をたやすく避けながら挿入するので、全く無痛無感覚だった。

 《うむ。遺伝子解析の結果によるホルモン分子構造は正しい。それではまだ睡眠中という無意識状態の内に・・・。》

 デーモンの触覚は細くなり、長さを伸ばす。そして服の上から輝の小さな乳首にその微細針を差し込むのだった。量的にはほんの少しなので、外見的には全く分からない。更にペニスの付け根部からその微細針を刺し、家畜化する為のホルモンやバクターを送り込むのだった。

 輝は眠っていて全く気付かない内に自分の一生が全く変えられてしまっていたのだ。男でなくなるだけでなく、人間ですらなくなってしまうスタートポイントだったのだ。

 そして輝の不幸はデーモンが輝の意識、知識のみで地球人女性を認識していた事にあった。いかに進んだ心性学園に在籍していても、ガールフレンドも居らず、奥手であった輝はセックスに関する知識がほとんど無く、本物の女体を見た事もない。そんな輝の『おかず』は大人向けのマンガ本やインターネットのアダルトサイトであった。その中に出てくる女性は全て巨乳であり、男性は巨根である。特に二次元画像やマンガでの巨乳は垂れ下がる事もなく、乳汁もふんだんに出るものが多い。男性の場合も同じなのだ。
 デーモンはそれが地球人の標準であると思い込んでしまっていた。そして輝の自慰の時の妄想する女性が輝の最も好ましい女性であると認識してしまっていた。その姿が輝にとり一番抵抗のない姿と認識していた。




 「イテテ・・・?」

 輝は下腹部の痛みで目を覚ました。

 「やっと目覚めたか。」

 相変わらずデーモンはペニスに巻き付いて蠢いていた。そしてペニスは今迄にない程に激しく勃起していた。仮性包茎だったのだが、包皮がひきつれる程に延びきっている。ずっと揉みしだかれていたせいもあり、発射寸前にさせられている。

 「眠っている間に出させる事も可能なのだが、それでは自分が精液を出す為の家畜という事をなかなか理解できないだろうからな。」

 そしてデーモンの動きが一気に早くなり、あえぐ暇もなく熱い塊が輝のペニスを突き抜けるのだった。



 「フーッ、本当にデーモンさんって宇宙人なの?」
 「何を今更・・・。お前の記憶からでも地球人で異星人と出会っているという正式な記録はないようだ。見た事もない異星人を想像したとして、それが異星人の形状であると認識する事は不合理だ。むしろ多種の異星人の形態を知っている私としても地球の生物の形態は初めてであり、極めて特異な形状に驚かされる程だった。」
 「だって、こんなにオチンチンを搾り続ける宇宙人なんて・・・。」
 「液体の良質タンパク質なのだ。地球人としては異様なのかもしれないが、生命維持、肉体保全の為なのだ。」
 「ねえ、もうすぐ夕食の時間だよ。こんなに何度も精子を出した事なんて無いから、疲れたし、おなかもすいた。」
 「それは分かっている。だから何だというのだ。」
 「ズボンを穿かないとならないから、オチンチン搾りをやめて下さい。それに揉まれ続けているので、勃ったままだと穿きにくいし・・・。外から目立っちゃうし・・・。」
 「それが何だというのだ。自分がペニスを搾られるだけの家畜だという事を忘れているのか。」
 「あ、それは分かってます。だけど・・・。」
 「それに私が揉んでいない場合でもペニスが縮んで垂れ下がるという事など無いのだぞ。」
 「エッ?」
 「私は遺伝子生物学者なのだ。いつでも精液搾りを続けられるような改良など簡単なのだ。お前を制御している間はいつでも搾り出せるようにペニスの強化を図った。元々が生育不良であり、私の強化でやっと標準的な大きさ程度までだがな。その間は萎縮する事はない。」
 「・・・それって・・・、ボクのオチンチン勃ったままって事? だから今射精したばかりなのに堅いままなの?」
 「お前は何か勘違いをしているようだ。『ボクのオチンチン』とか言ったな。そのペニスは私の所有であり、お前自身はそのペニスに付属している精液製造機能の家畜にすぎないのだ。」
 「そんな・・・。イヤだ! ギッ!! 痛いーーっ!!」

 勃起したままの亀頭に巻き付いていたデーモンがいきなり強く締め上げたのだ。慌てて振り外そうとデーモンに掴み掛かろうとするのだが、更にきつく締め上げられ、もんどり打って床を転げ回り、悲鳴を上げるしかなかった。

 その戒めは直ぐに解かれたが、輝の涙とあえぎ声はいつまでも続いていた。



 夏休みも始まったばかりなので、合宿所には野球部の生徒と管理人、それと炊事係が数人しかいない。人数が少ない内は食事は人数分だけ冷蔵庫に用意されていて、各個人が取り出してレンジで温めて食すという形式になっている。
 輝が食堂に向かったのは夜になってからだった。既に全員が食事を終えていて、冷蔵庫には輝の分だけが残されていた。寂しい食事ではあるが、ズボンの上からも分かる突き上げとデーモンのペニスを揉み続けている動きが他人に知られずに済むという安心感はあった。

 「ウーッ、オチンチンをいじられながらの食事って難しい・・・。食べる時ぐらいは・・・。」
 「私も栄養補給は必要なのだ。しかもお前の精液量が少ないから、常に搾り出さねばならないのだ。それにこれは単に慣れていないというだけなのだ。これからもずっと搾り続けるから、それが常態となる。」


 「アクッ・・・・。」

 食欲は性欲よりも下位にあたるらしい。途中で射精させられ、食事が進まなくなった。

 「もういいです。」
 「そうか。本当はたくさん食べておいた方が精液量も増えるのだが。」
 「今は野球部の人ばかりなので、ボクには多すぎる量だから。」

 食器を洗い場に戻し、帰ろうとした時、

 「ちょっと待て。ここには炊事場があるのだから、酒、あるいは料理酒があるだろう。持って行くのだ。」
 「あるだろうけど、泥棒は・・・・、痛い!! 分かりました。でも見つかったら・・・。」
 「それは大丈夫だ。他の地球人が来れば私には感知できる。」

 輝はこっそりと調理場に入り、調味料などが収められている冷蔵庫を開いた。

 「えーと・・・、あ、調理酒か・・・。でも、半分しか入ってないよ。」
 「それでいい。急いで帰るのだ。」

 服の下に隠し、急ぎ足で戻るのだった。



 《さて、抵抗意志がどの程度減少したか確認しよう。まあ、意識的には隙あらば逃れようとしているようだから、それを打ち砕かねばならぬ。》


部屋に戻って再びズボンを脱ぎ、下半身を露出する。ペニスに巻き付き蠢いているデーモンを恨めしげに見詰めた。

「さっきの料理酒を出せ。そこに蓋を開けて立てるのだ。」

 言われるままに蓋を開けて床に置いた。

 「デーモンさんも酒を飲むの?」
 「別に飲む訳ではない。」

 デーモンはペニスへの戒めをとき、瓶の中へと触手を伸ばした。

 「デーモンさん、このままだとボクは外に出られないよ。オチンチンが勃ちっ放しってのはとっても恥ずかしい事だし、デーモンさんが動いていると、それこそ変態だと思われてしまうし・・・。」
 「私は一向に構わない。ペニスにばかり気を取られているようだが、胸の方は気になっていないのか。」
 「胸・・・? エッ・・・?!」

 デーモンに言われ、胸に手を宛がってみると僅かな膨らみ、そして触れる事による痛みを感じた。

 「エッ・・・? 何した?」
 「お前は家畜であると言ってあるだろう。せっかく未成熟とはいえ乳房があるのだから、それを育たせ乳を出すようにするだけの事だ。」
 「乳房? オッパイ?」

 慌てて服をたくし上げ、胸に触れる。

 「アアッ・・・! 膨れてる・・・!」
 「まだ女性ホルモンの量は少ないから乳が出るようになるのはもう少し先だろうが、遺伝子改造による乳腺細胞の増殖が始まれば直ぐに大きくなる。」


 「い・・・イヤだーーーーーっ!!」

 その時再び輝にデーモンへの殺意が湧き上がった。狭い台所にある包丁を思い浮かべた。

 「やはりな・・・。家畜としての意識付けはまだまだという事か。」

 デーモンは触手を縮めた。すると瓶が輝の肛門に突き当たり、さらに先の部分が填り込んできた。

 「イテーッ!! 何を・・・?」

 更にデーモンは本体の各部分を変形させ、直腸から大腸へと移動する。
 料理酒の瓶が更に輝の肛門深くに填り込んできた。

 「な・・・何を・・・?」
 「家畜としての認識をしっかり持たせる為には、家畜としての肉体に変化してしまえばいいのだ。さすがに暴れられたままでは処置が行いにくい。だから酒で酔って意識を無くしてしまえば楽にできる。」
 「イヤだ。抜いてーーっ!!」

 輝は瓶を引き抜こうと両手で引っ張るのだが、デーモンごと引き抜く事は自分の大腸や直腸を破損させる事となる。痛みに耐えて引き抜こうとしても更に引きずり込まれ、肛門も限界に達していた。輝にもメリメリという音が聞こえる。

 「ダメッ! お尻が・・・お尻が裂ける・・・。」
 「裂けても一向に構わないぞ。私にはペニスと乳房が存在していればいいのだから。瓶を抜くのは中の酒が無くなったらだ。勿論当分尻に酒瓶をぶら下げたまま生活するというならそれでもいい。その場合でも肛門が裂けてしまえば一生そのままになるだけだし、痛みを感じたまま我慢できるかどうかだが。」

 輝はしっかりと食い込んでしまった瓶を抜く方法はないという事は分かっていた。肛門断裂よりは僅かだと思っている乳房形成の方がましだと思えていた。デーモンの言う通りにする意志を決めた途端、少し瓶が外に出て、痛みは減少した。それでもいつきつい責めを受けるかという不安で素直にベッドに俯せになった。

 「それでは全部入らない。枕で尻を持ち上げるのだ。」

 言われるがままの体勢を取ると瓶がほぼ垂直に立った。

 「アウ・・・・。」

 腸内のデーモンが更に体形を変化させると酒がコポコポと音を立てて輝の体内に流れ込んでくる。体内ガスが酒と入れ替わる。そして大腸壁の粘膜から吸収されていく。

 「つらいよ・・・。気持ち悪い・・・。おなかが・・・。」

 本来なら下痢症状を呈して排出されてしまうのだろうが、デーモンと瓶が栓となって出てしまう事はない。

 《なるほど、血液内のアルコール濃度が高くなってきた。脳の活動も低下してきたな。これが酔いという状態か。もう少しで睡眠状態になりそうだ。私の体内での女性ホルモンもかなり生成できている。早めに乳の出る乳房にしないとならないが、しつけが進まないと手間が掛かるのが難点だ。》



 まだ充分に酔いが回っていないのでデーモンは瓶を引き込んだままでジッとしていた。輝の体内に完全に入ってしまっていた為、外界の様子が良く分からず、誰かがドアをノックする迄他者の存在に気が付かなかった。



 「おーい、出門。今回のスコアブックの件だけど・・・。」

 野球部のキャプテンの山口が輝の部屋に入ってきた。しかし隅のベッドに突っ伏して眠っている輝の様を見て息を飲んだ。不思議な物を見るように、おそるおそる近付く。

 「おい、出門・・・。」

 尻に突き刺さっている瓶が料理酒の瓶であり、いびきをかいて寝ている輝の呼気に酒臭さを感じたキャプテンはドギマギしながらも苦笑いをしていた。

 「出門にこんな趣味があったとは・・・。」

 しばらく輝の顔を覗き込み、尻に突き立っている瓶を眺め、ニヤッとしながら瓶に手を掛けた。デーモンは瓶の押さえつけを離し、山口に瓶を抜かせる。そして山口はズボンのベルトを緩め、半分程脱いでベッドに上がる。瓶を抜いたばかりで、まだ広がっている輝の肛門に輝よりもまだずっと大きな肉棒を宛がい、静かに押し込み始めた。

 「ハウッ・・・。」

 輝は軽いうめき声を上げたが、まだ眠ったままだった。その顔を覗き込み、山口はゆっくりと腰を動かす。最初の内はソロソロだったが、輝が目覚めないと分かると一気に激しい動きで下腹部同士が激しい音を立てるのだった。

 「アウウッ・・・。」

 さすがにその刺激には輝も目覚めたが、まだ意識は朦朧としていて、何が行われているのかは分からなかった。デーモンが激しく動いているのだと思っていた。それでも背中に体重を掛けられている事が分かった時、それがどのような事なのか、奥手の輝にも理解できた。

 「アアーーッ・・・ダメッ・・・。」

 デーモンの触覚のようなスベスベした感覚ではない物体の抜き差しが何であるか分かっても、酔いの為と体力の差で押さえ込まれたまま直腸内の異物から熱い粘液がほとばしった事を感じると、輝の意識も弾けてしまった。

 山口が輝の身体から離れても、夢うつつのまま涙が流れ出ている事も分からないでいた。

 デーモンは更に外に二人の気配を察知した。料理酒の瓶が再び押し込まれ、それを支えながら今放出された精液の吸収を始める。

 《ほう。輝よりもずっと濃く、量も多いな。このようなペニスの持ち主に取り付いていれば復活も楽だったろうに。牡であってもこのような精液補充ができるのか。確かに輝の知識の中にほんの少しのデータがあった。この居住区には現在二十数人の牡が存在する。その精液が補充できればかなりの量となるが、ここに居留する期間は限られているらしい。短期間であっても大量に補給できれば輝の改良がかなり進められる。》




 「キャプテン?」
 「おい、山口。何かあったのか?」

 ニヤニヤしながら輝の部屋から出てきた山口は照れ臭そうな表情だった。

 「あ・・・、あのな・・・。ま、いいか。」
 「何だよ、いったい。」

 山口は輝の部屋を指差し、二人の耳元でささやいた。


 「エッ・・・? やったって・・・、それ・・・。」
 「まあ・・・。初めてだけど、意外と良かったぞ。」
 「とんでもねえ野郎だな。」
 「いや、ちょっと覗いてみろよ。ノーマルの筈の俺がその気になっちゃうぐらいなんだから。」

 今度は後から来た二人も少し興味深そうに静かにドアを開けた。

 「ワオッ!!」
 「マジかよ・・・。」
 「で、酔ってるのか?」
 「ああ、泥酔状態だな。途中目が覚めかけたけど、一発やった後に瓶を戻したけど、そのままだ。」
 「どれ、ちょっと抜いてみるか。」

 尻に填り込んだ瓶を抜き、まだ開き気味の肛門を見詰める。

 「本当だ。山口がやったってのも分かるよ。俺も一発・・・。」
 「谷田さん、マジで?」
 「合宿終わる迄禁欲ってのはつらいからな。」

 谷田もズボンを脱ぎ、ベッドに上がる。二人に見詰められたままのアナルセックスは照れ臭くもあるが、既にギンギンになったペニスの誘惑には勝てず、そのままズボッと填め込んだ。

 「アハッ。意外といいな。」
 「だろう?」
 「じゃ・・・。」

 腰を前後し始めると、さすがに二度目という事もあり、輝は薄目を開けた。

 「エッ・・・? アッ、ダメ・・・。」
 「あと少しだ。ちょっと押さえていてくれ。」

 二人が輝の身体を押さえ込むのだが、その必要がない程輝は身体を動かせる程には醒めていなかった。

 「アウ、アウ、アウ・・・。」

 谷田のピストンに合わせて輝の喘ぎ声が漏れる。しかしそれは谷田の興奮を更に増すものだった。

 「アフッ・・・・!」

 最後に強く突き込まれた途端、輝は直腸に再び熱いほとばしりを受けた。

 「じゃ、俺も・・・。」

 既に先走り液で濡れているペニスが填り込んでくる。

 「ホッ、ホッ、ホッ・・・。」

 輝は脱力状態で熱い肉棒を受け入れていた。

 「なあ、山口。他の連中も呼んできたらどうだ? こういう機会は滅多にないし、チームワークを重視しないとな。」
 「アハハ・・・。そのまま言っても信じて貰えないかもな。まあ、キャプテン命令って事でここに集合させれば、多分その気になるだろうな。」
 「だよな。俺だって部屋に入る迄は信じられなかったから。」
 「OK。集めてくる。」

 山口は部屋の外に走り出していった。

 《おお、予想外の展開だ。それにしても確かに輝のペニスよりは大きいのだが、未成熟を考慮しても輝の知識にあるペニスの大きさよりもずっと小さいな。まあ、大きくなり過ぎたところで輝のペニスではなくなるのだから良しとするか。オッ、部屋の外にかなりの人数の牡が集まってきたな。あれだけの人数であればかなりの精液を吸収できる。そうすれば私の肉体もある程度の回復が見られる。そうすればホルモン生成の効率も上がるし、浸潤細胞が作れるようになるから、ますます改良が進む。》


 「本当に?」
 「ワッ、馬淵、やってるのか?」
 「フーッ、自分でもこんな事ができるとは思わなかったけどな。」
 「それでは俺がキャプテンとして見本を見せよう。」
 「山口、ずるいぞ。二度目だろう?」
 「回復してるし、お前らのを見てたらな。」

 チームメンバー達は驚きながらも輝のベッドを取り囲み、キャプテンのアナルセックスを見る事になった。

 「勿論、強制はしない。当然だけどな。だけどやりたかったらちゃんと順番待ちだぞ。そして見たくもないって奴はさっさと戻っていいぞ。」

 誰も部屋から出ようとする者は居なかった。むしろ後ろの方のメンバーは爪先立ちで覗いていた。

 「キャプテン、こんな事しても平気なのか?」
 「これは校則違反の懲罰でもある。臨時のスコアラーという事は臨時であっても野球部の一員だ。見て分かるように飲酒してかなり泥酔している。まあ、飲酒という言葉が適当かどうかは疑問だけどな。何しろ尻から飲んでるのだから。」

 ドッと笑い声が広まった。

 「さて、いくぜよ」

 山口の、再び張り切ったペニスが輝の肛門に宛がわれる。既に何度もアナルセックスをされた為に弛んでいるせいもあるのだが、放出された精液は全てデーモンが吸収しており、潤滑性の高い液体を直腸粘膜に塗布していた。滑り良く直腸内に填り込んでいくのだった。

 「ウオッ・・・。」

 どよめきの走る中、山口は一心に下腹部を前後させた。下腹部同士のぶつかり合う音が響く。山口自身としては二度目でもあるので、精神的には落ち着いていて、じっくりと高まるのを待つ余裕があった。


 「あのさ、これって虐めにはならないのかな。」
 「いやがってなければ虐めにはならんだろう?」
 「酔ってはいるけど、泣いてるし・・・。」
 「そりゃ、おかまを掘られるのは屈辱だろうが、気持ち良くなっているんだからいいんじゃないのか?」
 「気持ち良く?」
 「ほれ、出門のチンチン見てみろよ。気持ち良くてギンギンに突き勃ってるぜ。相当感じているんだよ。何せ、尻に酒瓶突っ込むのが趣味なんだからな。」
 「なる程・・・。じゃあ、俺達は出門の趣味に付き合ってやるって事か。」
 「これだけの人数だから、手際良くしないと全員終わらない。明日の練習に差し支えるから、午後10時の消灯迄だ。まずはレギュラーから。そして2年、1年の順だ。時間に余裕があったら希望者は2ラウンドな。」

 1年部員がオズオズと手を上げた。

 「あのう、先輩。こんなの見せられたら・・・。やばそうなので、先に口の方でいいっすか?」
 「そうだな。1年迄はかなり先だものな。間に合いそうもない奴は先に口でもいいぞ。」
 「オッス!」
 
 何人かの1、2年部員が輝の前の方に並んだ。ベルトを緩めて下半身を露出し、まず一人がベッドに上がり、輝の顔の前に進む。突っ伏して喘いでいる輝の顔を持ち上げ、いきなり口に押し込む。

 「ブハッ・・・?!」

 輝にはそれが何かは直ぐには理解できなかった。顔を前後に動かされ、口蓋に擦り付けられている物を悟った時、悲鳴を上げるのだが、その時には苦くて生臭い嫌悪すべき粘液が喉に突き刺さっていた。

 「ガワーーッ!!」

 吐き出そうとしても口内にへばり付いていて、しかもすぐに次のペニスが押し込まれていた。頭を揺すられる事で更に酔いが回り、唾液と混じり合った精液はいつ間のにか喉を通り過ぎていた。

 《ウーン、せっかくの精液が輝に消化されてしまうのは惜しい。しかし、それでも初期の想定を上回る量の精液を補充できているから少々のロスは良しとしよう。》

 「山口キャプテン。」
 「ん?」
 「今回は最初だから仕方ないけど、明日からは学年ごとに順番制にしたらどうだろう。」
 「そうか・・・。風呂の順番みたいにすればいいんだな?」
 「うん。そうすれば我慢しながら待つ必要はないし。2発目がタップリ溜まる迄体力回復すればいいからな。」
 「良し、明日からはそうするか。」



 次から次へと肛門に新たにペニスが入り込み、そして汚辱の粘液を放出され続ける。輝が意識を無くしたのはアルコールの為だけではない。精神活動が停止し、と言うよりも意識を閉ざしてしまわないと発狂してしまいそうな程の陵辱だったからだった。






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