悪魔の尻尾2


 「以上のように素粒子の質量、つまりエネルギーは量子という概念で説明されています。つまり不連続であるという事です。それではその他の量、現在連続であると考えられている量についてはいかがでしょうか。それは空間と時間です。」

 会場がどよめいた。

 「空間と時間にも最低単位があるのではないでしょうか。ここで私は時空間の量子化という事を考えてみたいと思います。概念的に考え、空間の最低単位の大きさは最もエネルギーの高い光子を想定します。エネルギーが高いという事は不確定性理論により、その存在確率が最も狭くなります。そして時間の最低単位として、その光子が隣の空間に移動するに必要な時間という事とします。さて、今は超高エネルギーの光子を考えましたが、低エネルギーの光子、または光子以外の素粒子を想定しましょう。光子の場合ですとエネルギーが低ければその存在確率が下がる、つまり広い範囲の空間に存在する事となります。それが最低単位の時間後には隣の空間升に移動するわけですが、ある升に存在した光子が必ずその隣に移動するでしょうか。それは不確定原理に反します。どの升からでも次に光子の存在する升への移動ができるはずです。だとすると、場合によっては光速以上の速度で移動する事になります。さらに低エネルギー粒子だとすると、更に広いエリアになりますから、更に光速の何倍もの速度で移動する事になります。低エネルギー程その速度が速くなり、極めて高いエネルギーで光速になる。これがタキオンと呼ばれる粒子ではないかと思われます。」

 スクリーンに複雑な式が表示された。(あまりにも複雑なのでとても表記できません^^;)

 「その粒子のエネルギー、質量ともごく概算的な理論的数値ですが、いわゆるダークマターの不明部分の数%を埋める事ができます。」

 メモを取る人が多い中、最前列の男性が挙手をし、質問をする。



 「オーイ、テル。遅れるぞ。」
 「ちょっと待って・・・。」

 テルは巨乳を揺らしながらツトムの車に乗り込んだ。すぐに出発する。

 「しかし時期を間違えたかな・・・。」
 「そんな事無いわよ。私だってもっと早く欲しかったのだけれど、出産は卒業後にしたかったから。」

 少し大きくなった腹部を撫でている。

 「今日の博士論文の発表でいよいよ大学院も卒業か。しかし考えようではずるいよな。」

 ツトムはニヤッと笑う。

 「あら、デーモンさんの知識であっても、私が理解できていないとダメなのよ。まあ、ずるいと言えばずるいわよね。大学も大学院も飛び級扱いで済んだけど、結構長かったわ。」
 「それに卒業しても今度は心性学園大学の準教授だしな。」
 「まだその方がいいわ。私の格好って、ここですらまだ奇異だもの。よその大学に行ったら・・・。」
 「そうだな。コスプレ爆乳の天才性転換者って言われてるものな。」
 「実際、今日の発表会にもかなりの大学の教授連が来ているらしいわよ。大学の方にも招請の話が来ているらしいし。だけど赤ちゃんを産んだら、性転換って言う悪口はなくなると思うわ。」
 「だけどいいのか? 妊娠したって事で戸籍は変更できたし、婚姻届も出せたけど、式は挙げないでいいのか? まあ、まだ俺も大学生の身分だし・・・。就職先にはまだ結婚してるって届けは出してないけど。」
 「いいのよ。私達はずっと前に結婚しているのよ。今更だし・・・。」

 しかしツトムにはそれがテルのやせ我慢である事は分かっていた。



 「フーッ、終わったわ。ツトム、お待たせ。」
 「で、どうだった?」
 「手応えは良かったわよ・・・って、ツトム聞いてなかったの?」

 ツトムは頭を掻いていた。

 「最初は後ろの方に座ってたんだけど、難しくてサッパリ・・・。」
 「でも、全部デーモンさんのお陰よね。」

 《・・・。》
 「デーモンさん・・・?」
 《ん? ああ・・・。》
 「どうしたの? 今日の発表の時にもずっと静かだったから、私が答えに詰まるような質問が来たら頼ろうとしていたのだけれど。」
 《いや・・・。》
 「どうしたの? ここしばらく元気がないようだし、時々私の意志が伝わらないから、身体がスムーズに動かない時があるのよ。」

 ツトムも心配そうにテルの様子を伺っていた。

 「どうしたの? デーモンさんの具合が悪いと、直接私に響くのよ。何か悩みでも・・・?」
 《これが悩みという感情なのか・・・。デーモン族には有り得なかったはずの意識状態の不安定なのだ。》
 「話してよ。デーモンさんの悩みは私の悩みでもあるのよ。」
 《悩みという感情の原因は分かっている。それもデーモン族には有り得なかった妬み、羨みという感情なのだ・・・。》
 「妬み・・・? 一体誰に?」
 《私はテルと一体化している。だからこそ私にはテルの喜びの意識を感じる事ができる。テルの得た喜びが私には羨ましいという事なのだ。》
 「羨ましい? 私が?」
 《そうだ。分からないか? テルには子孫が残せるという事なのだ。それだけではない。強い愛情の発露が私には得られないという悔しさなのだ。》
 「アッ・・・、ああ・・・。」

 「テル、デーモンは何と?」
 「えっと・・・、私達に赤ちゃんができるのにデーモンさんには子供が残せないって事を・・・。」
 《それは少し違う。デーモン族は単性生殖ではあるが、私の細胞から新たな分身を生み出す事はできる。しかし私の知識や記憶が継続するわけではない。ある程度は転送できるだろうがそれでも私よりはずっと能力が劣る事になる。そして地球人がそうであるように、社会生活の中で知識を得ていくのだ。しかしここには私だけなのだ。》
 「それならデーモンさんも子供が欲しいって事なの?」
 《そうなのだ。私の感情はかなり地球人、それもテルの影響を大きく受けている。テルの喜びを私も得たいと願ってしまうのだ。》
 「それならいいじゃない。デーモン族の場合がどうなのかは分からないけれど、子供って絶対可愛いわよ。」
 《テル・・・、何か忘れていないか? 私達デーモン族はちょうどお前と私の関係のように他の生物の肉体の一部を我が物にしないとならないのだぞ。》
 「アッ・・・!!」
 《しかも私の場合、私の子孫はお前達の子供の体内で成長させるしかないのだ。》

 テルは絶句した。自分の子供をテルと同じような身体にしてしまわねばならない恐れがあるのだった。

 「そしたら・・・、私の子供が私みたいな身体に?」
 《それは分からない。しかし可能性はある。男の子であるからお前と同じように成る可能性があるという事だ。》

 「おい、デーモンは何て言ってるんだ?」

 デーモンはテルの口を操作し始めた。

 「私が子孫を残す場合、テルと同じような身体に成る可能性があるという事だ。」
 「アッ、デーモンか・・・。」
 「あくまでも可能性だが。」
 「俺達の子供がテルと同じような身体に?」
 「どの程度の確率かは不明なのだ。何分にもデータが全く無い。ただ私の場合、デーモン族は他の生物の肉体を使用するという事を実際に行っていたし、今のように経験もしている。しかし私の子孫は実体験していない。そして私の場合は生存の為にテルの肉体を譲り受けた。あの時点では他の選択肢はなかった。しかし我が子孫の場合、生存だけは確保できる。しかし能力的にはかなり劣るだろう。私程に肉体を必要としないはずなのだ。しかし単にこの赤ん坊に寄生して生きていくという事にはデーモン人の私としては耐え難い屈辱と感じるだろう。それがまた大きな精神的苦痛となっているのだ。」

 そこでテルが強引に自分の身体の制御を取り戻して叫んだ。

 「アアッ!! デーモンさん・・・。まさか・・・。」
 「ああ、テルか。どうした?」
 「こらっ!! デーモン!! 正直に言いなさい!」
 《ウッ・・・、分かるのか?》
 「あなたと違い、私に意志を伝えようとしない限り伝わらないけれど、感情は分かるのよ! あなた・・・、既に子供を作ってあるのね?」
 《・・・・・。》
 「それをもう私の赤ちゃんに?」
 《すまぬ・・・。実はその通りだ。》
 「何だって? デーモンの子供が俺達の赤ん坊に?」
 「だけど変よ。デーモンさんは寿命が長い分、成長には地球人よりもずっと時間が掛かるって・・・。」
 《うむ・・・、その通りだ。思考実験では不明だったので、私の細胞から分離製造させたのはテルが女性に成ってからすぐの頃だった。あくまでも実験の為だったし、単に私の分身ができるかどうかの検討の為だった。しかし、テルが身籠もった時、赤ん坊に対する強い愛情が私には無い感情だったのだが、それを甘受していた。その影響を受けたのかもしれないのだが、私から分離したその子孫が妙に愛おしく感じてしまった。デーモン人としては理解不能の感情だった。そしてある程度育っていた分離体を・・・。》
 「もう・・・入ってるの?」
 《・・・そうだ・・・。》
 「ワーッ、どうしよう! ツトム、私達の赤ちゃんの体内に既にデーモンの子供が・・・!!」
 「何だと?! まさか・・・。テルみたいな事になるのか?」

 ツトムは急ブレーキを掛け、道路脇に停車した。

 「おい、デーモン!! 俺達の子供をテルみたいな不幸な目に遭わせるつもりなのか?」

 一緒に怒っていたはずのテルだったが、ツトムの言葉にはカチンと来た。

 「ツトム!! 私が不幸?」
 「あ・・・いや・・・。だってずっと尻からデーモンをぶら下げ、その後手足を奪われ・・・。」
 「今の私は幸せよ。ツトムと結婚できたし、何よりも素晴らしいセックスができる身体に成ったのよ。」
 「ま・・・、それはそうだが・・・。しかし・・・。それじゃ、お前はいいのか? どうやら赤ん坊は男の子らしいが、やがてはテルみたいに・・・。」
 「そうか・・・、そうなのよね。デーモンさん、もう無理なの?」
 《・・・そうだ・・・。デーモン人は地球人から見れば植物に近い。栄養素の中で成長する。今はまだ細く小さいが、それでも大腸に存在し、センサーの鍵の部分でその位置を固定している。私の細胞の内、脳組織の細胞を早く成長させるようにしてあるのだ。》
 「それで・・・、私の赤ちゃんが・・・私みたいに成ってしまうのはいつ頃?」
 《デーモン星で成育していれば地球時間で約50年で己の肉体を必要とする程度に成長するが・・・。》
 「50年・・・。」
 《それはデーモン星での話だ。地球では優れた栄養素が存在する。状況次第だが、大幅に短縮される。およそ15年・・・というところだ。私の子孫も私の成長過程を知る事になるだろう。それを、より効率的に進める事になるだろう。》
 「15才と言ったら、ほとんど私と同じよ。私の子供も私と同じように苦しむの?」
 「ほら、みろ。自分だって苦しかったんだろう。」
 「それは・・・今の幸せを知らなかったからよ。だけど生まれてくる子は私を見て育つのよ。私達が凄く幸せだって分かれば・・・。」
 「あるいは菊野さんに相談すれば・・・。」
 「そうね。あの方ならセックスに関する予知力は本物だから、きっと・・・。」




 《ねえ、お姉ちゃん・・・。》
 「こらっ! ボクは男なんだ。お姉ちゃんはやめろ!」
 《だって・・・、ママみたいに女に成るんだし・・・。》
 「ボクは成らない! 女にしようとしたら、絶対に引っこ抜いてやるからな。」
 《私だってママみたいに自分で動きたいし、ミキと一緒に幸せになりたいのよ。》
 「ママの場合はいざ知らず、ボクはボクだ。ただ、テールに寄生されているだけだ。」
 《寄生だなんて・・・。私達、親は違うけれど姉妹なのよ。》
 「ボクは男だし、テールには男女がないだろう。それがなぜ姉妹なんだよ!」

 「何騒いでるの? 明日は学校でしょう。早く寝なさい。」

 テルが部屋に入ってきた。

 「だってさ・・・、テールがいつもみたいにボクを女にするって言うから・・・。」
 「私はデーモンさんと一緒に幸せになったわよ。まあ、ミキとテールがどうするかは二人で良く考えなさいね。で、寝る前のミルクはどうするの?」
 「飲む!!」
 「はいはい。」

 テルはパジャマの胸をはだけた。

 「中学生になってもママのオッパイを飲んでいる子なんてね。はい、こっちはテールね。」

 ミキの吸い付いている乳房の反対側にミキの肛門から細い尻尾が出てきて、乳首を覆う。

 「しょうがないよ。ママは特別だから。まあ、クラスの連中には絶対にばらせない秘密だけど。」

 二人(?)がテルのお乳を飲んでいる間、デーモンはテールに話し掛けていた。

 《どうだ? やはり素直にテルみたいな身体に成るとは言わないだろう?》
 《そりゃそうよ。ミキの意識で感じてみると、とんでもない不具ですから。》
 《そろそろお前本体も一気に成長させないと、肉体を成長させられないからな。ペニスは少しは強化しているようだが、それではとても足りない。》
 《ママの時みたいに、たくさん精液を入れて貰わないとダメなのでしょう?》
 《いいか? まだ乳房を大きくするわけにはいかない。それだと拒絶の心が強くなるからな。やはりフェロモンが最も効果的だと思う。私のデータで確認しなさい。毎日少しずつ量を増やすようにする事が肝要だ。どうしても体臭が女性っぽくなってしまうが、それはテルのお乳を飲んでいるからだとごまかせばいい。》
 《分かったわ。パパ。》
 《私と違い、お前はデーモン人の中で育ったわけではないのが幸運だった。デーモン人は今考えてみるとかなり傲慢で、地球人程度の進化では歯牙にも掛けない。それに比べてお前は素直で優しい。ミキと対等であろうと考えている。》 
 《パパに聞いた通り、お尻から精液を入れて貰えるようにする準備はしてるわ。寝ている間に肛門を拡げているの。ミキは気付いていないけれど、普通の男の子のペニスなら楽に入る程度よ。》
 《そうか、当分の間はセンサーはできるだけ細くしておくのだ。まだまだ成長していないという風に見せておく必要がある。それと拡張しながら、センサーを変形させ、アナルセックスのように抜き差しをしなさい。無意識の内に快感をもたらすようにな。》
 《分かったわ、パパ。》
 《子宮と膣の生成状態はどうだ?》
 《うん、これもパパに言われたように浸潤細胞を入れているけれど、栄養が足りないからまだまだです。それに多分ミキは嫌がるはずだからどうしても・・・。》
 《それはテルの場合もそうだったが、今のテルを見てどうだ? お前もテルと私のようなつながりになりたいと思っているだろう。そして多分私達の恩人である菊野の助力があるだろう。お前の事はミキが生まれる時に、既に知っていた程の人物だ。特にセックスに関する予知はとても私の及ぶところではない。だから菊野の言う事は100%信じて良い。きっとミキをテルと同じようにしてくれるはずだ。》
 《うん、パパ、ありがとう。私もパパみたく成りたいから、頑張る。》

 デーモンには親子の情愛がとても心地良く感じるのだった。



 《デーモンさん、何かご用ですか?》
 《菊野には分かっているだろうに。》

 デーモンには愛のニヤッとした笑みを感じられた。

 《やはりな。しかしさすがだ。》
 《テールちゃんの事ですね。まあ、準備という程でもないですが、ミキちゃんのお相手は探してあります。》
 《ほう・・・。菊野の見立てであるから間違いないと思うが、どんな子なのだ?》
 《ウフフ・・・、将来の事を考えると当然私の親戚です。》
 《そうか。確かに菊野の血縁である事は色々と有利だな。》
 《ただ、私どもの家系はどうしても男児が少ないのですよ。セックス年齢としては一般的には若いのですが、ツトムの甥っ子です。今、12才ですが。》
 《12? それでは小学生ではないのか? む、今送ってきた映像はその子供なのか?》
 《ええ、そうです。子供の頃のテルさんに似てますよね。》
 《おい、いくら何でも・・・。こんな子供では・・・。どんなに成長を待っても、テールに必要な・・・。それに女に成ったミキを満足させられるとは・・・。むしろ菊野が女に改造したいと思うような子供だぞ。》
 《私の家系は当然ながら変態ですよ。可愛らしく見えていても、性的能力はとても高いのですから。》
 《それは認める。ん? 今送ってきた性器のイメージはその子供の物か?》
 《そうですよ。見掛けによらないでしょう?》
 《変態であっても理性的なのも私の家系ですが、ミキちゃんが女に成る頃にはもっと成長していますよ。》
 《やはり菊野は素晴らしい。ことセックスに関する事は全て任せておいて良いという事は分かっていたはずなのだがな。》
 《オホホ・・・。ですからミキちゃんとの出会いも予定していましたからね。》
 《ほう・・・。さすがだな。》



 「ねえ、リョウちゃん。伯母さんの山口輝さんを知ってるわよね。」
 「うん、知ってるよ。伯父さんからも色々聞いてるし。」
 「普通の人じゃないのは知ってるわよね?」

 山口遼一、心性学園小学部の6年生。

 「だってさあ・・・。元は男の人だって事だし、デーモンとかいう宇宙人に取り付かれて、凄い身体に成ってるって・・・。あ、秘密って事も知ってるよ。」
 「あなたも私の親戚だから、秘密の重大性は良く分かっているわね。それでテルさんの事はどう思う?」
 「エヘヘ・・・、伯父さんを羨ましいと思うよ。だってさあ、あんな凄いオッパイでさあ・・・。」
 「そう、羨ましいの・・・。」

 愛の笑顔に、やはり菊野家の血を引いているリョウにピンと来るものがあった。

 「菊野さん・・・まさか・・・?」
 「さすがね。テルさんがどういう経過でああいう身体に成ったか迄は知らないと思うけれど、リョウちゃんにもああいうお友達・・・、ううん、それ以上の女の人と・・・。」
 「ほんと?!! アッ、だとすると・・・。」
 「誰だか分かるの?」
 「ミキさんでしょ?」
 「良く分かったわね。」
 「だって、伯父さんちに行くたびにミキさんの匂いが変わってきてたから。」
 「匂い?」
 「別に匂いとも違うんだけど、感じるんだよね。伯母さんと同じ匂い・・・、感じがするんだよ。だから最近、ミキさんを見ると・・・変に・・・。」
 「やはりね。リョウちゃんの感覚はまさしく菊野一族の血ね。」
 「だけど・・・、ミキさんは中等部サッカー部のキャプテンでしょ? もし・・・もしもだけど、テル伯母さんと同じになったとしても、ボクとは・・・。背も高いし、力だって・・・。」

 愛はニコニコしたままだった。

 「普段では全然ミキちゃんにはかなわないでしょうね。だけどリョウちゃんには凄い武器があるでしょ。特にミキちゃんには絶大な効果を発揮するはずよ。」
 「ウワーッ、菊野さんにそう言われると・・・。」



 心性学園は原則エスカレーター式に上の学校へ入学できる。だから中学3年でも高校入試はないので、のんびりとした雰囲気がある。3年生の場合、夏休みにはほとんど宿題もなく、高校進学は既定の事実であるので遊び呆けてしまう生徒も多いのだ。2学期以降は出席日数さえ整っていればいいので、出てこない生徒も多くなり、授業そのものも更にのんびりしてくる。

 夏休み迄、あと一週間という頃、6時限目の前の休憩時間中にミキに異変が起こった。少し目眩がするのかなと思った途端、視界が激しく回転し始めたのだ。

 「ウッ・・・ワーーーッ!!」

 その場で床に倒れ込んでしまう。クラスメートたちは驚いてミキの周りに集まってきた。

 「どうした、山口!!」
 「保健室へ!」

 数人の生徒に抱えられるようにして保健室へ連れて行かれるのだが、その間も目を開いてはいられなかった。景色がずっと不規則に回転している。そして目を閉じていてもずっと周囲の回転が見えているのだった。

 (テール・・・! どうした?!)

 吐き気を催す程の悪寒の元がテールだと気付いた。

 (テール!! お前だろ? ウグッ・・・。気持ち悪い・・・。返事しろ!!)

 《・・・お姉・・・ちゃん・・・。・・・苦しい・・・。》


 「先生! 山口がいきなりぶっ倒れて。」
 「そのベッドに寝せて!」

 目を覗き込み、血圧を測っている間に気分の悪さは少し治まってきた。

 「あなた達、ご苦労様。山口君は少し休ませて、落ち着いたら精密検査します。」

 クラスメイト達は心配そうにしながらも教室に戻る。

 「血圧は正常だし、脳障害もなさそうね。医院に行って血液検査用の器具を取ってきますから、その間は休んでいなさい。」

 校医は部屋を出て行った。


 (フーッ、テール、どうした? 苦しいって・・・。)

 テールの返事はない。不安なミキだったが、急に眠気を催すのだった。



 「佐渡先生。」
 「あ、遼一君。菊野さんから話は聞いているわ。とは言っても、私にはどういう事かは分からないですけれどね。」

 校医の佐渡は苦笑いしていた。遼一を保健室に送り込み、ドアの鍵を掛けて医院へ向かうのだった。


 リョウは静かにミキの寝ているベッドに近づいた。軽い寝息を確認すると、被っていた毛布を静かにめくる。そしてミキのベルトを外す。ズボンを引き下げるとテールがその触覚を出してきた。それを軽く握るとテールの意志が伝わってくるのだった。

 《リョウちゃん。いいのね?》
 (ヘーッ、これが伯母さんの言っていた精神波ってやつか。)
 《うん。菊野さんとなら触らなくても通じるのだけれど、他の人とは接触しないと・・・。それでも相手の意志は分かるけれど、ほとんどの人には私の意志は通じないのよ。ミキは私が眠らせているけれど、手順は菊野さんに聞いているわね?》
 (分かってる。ミキさんを伯母さんみたいにしてボクのものにできるならなんだってやるよ。)
 《私もママみたいに成りたい。そしてリョウちゃんと幸せに・・・。》

 テールがミキの体内にスーッと戻っていき、リョウは静かにミキのパンツも脱がす。横向きに寝ているミキを少し動かしてうつ伏せにしても目を覚まさない。

 「いいんだよな。ミキさん、いくよ・・・。」

 リョウもズボンを脱いだ。心臓の鼓動が直接聞こえるかのように激しく響いている。そしてとても小学生とは思えない程の逸物が勢いよく屹立していた。
 テールもデーモンの指示に従い、肛門をコイル状にしたセンサーで開いた状態にしていた。

 「うむ・・・。」

 リョウはそこに突き込んだ。

 「アウ・・・。」

 ミキは軽い喘ぎ声を上げた。そしてリョウがピストンを始めると、テールがミキに対し覚醒させる為の強い精神波を送り込んだ。

 「ウッ・・・?」

 「アフッ・・・。こら・・・テール。悪戯は・・・やめなよ・・・。」

 いつもテールは少し太くなって肛門を出入りし、ミキの勃起を促していた。

 「フーッ、いつもよりずっといいけどさ・・・。エッ・・・?!」

 リョウは発射寸前で、ピストンの動きが激しくなった。腰を押さえ付けられ、体重が掛かっている事に気付いたミキは、今、何が行われているのかにやっと気が付いた。

 「ウワーーーッ!!! やめろーーっ!! アアッ・・・!」

 直腸の奥に暖かいほとばしりを感じ、ミキは硬直してしまった。肛門で自分と違う脈動を感じ、直腸から大腸へと送り込まれてくる熱い粘液を感じた。

 「動くな!! 大人しくしていろ!!」

 いつもは大人しく、まるで女の子のようなリョウなのだが、ミキへのアナルセックスをしているリョウは、そのペニスと同じようにいきり立っていて、激しいものだった。呆然としているミキは為す術もなく、二発目へのピストンをただ受け入れているしかなかった。

 「リョウ・・・やめて・・・。」
 「アフッ、アフッ、うるさい!! お前は・・・、大人しく・・・、アフッ・・・。」

 テールが放出していた催淫剤成分やエフェドリンの影響で快感と興奮を増大されていた。精神的には汚辱と嫌悪でいっぱいだったのだが、肉体的には抵抗をしようとはできなかった。

 「ウオッ・・・!!」

 再び大腸へ熱い塊としてのほとばしりを受け、ミキの頭の中に激しいスパークが起きた。



 「ウーン・・・。」

 ミキが意識を取り戻した時、気分爽快だったのだが、すぐにアナルセックスをされてしまったという事に気付き、一気に怒りがこみ上げてきた。すぐ脇でニヤニヤしているリョウがズボンを履き直していた。

 「この野郎!! リョウ!! きさま・・・!!」

 掴み掛かろうとしたのだが、まだ下半身が裸のままで、自分のズボンやパンツが見当たらない。

 「ミキさん。気持ち良かったろう?」
 「お前・・・。」
 「普段ならボクの力じゃミキさんにはかなわない。だけどボクに暴力は振るわない方がいいよ。ミキさんはずっと年下の小学生のボクにオカマ掘られたなんて知られたくないよね?」
 「ウッ・・・。」
 「サッカー部のキャプテンが小学生にアナルセックスをされたって事ではなく、そういう趣味だからボクを押さえ付けて自分から填め込んだって事になるかな。」

 シーツで下半身を隠しながら、握り拳には力が籠もったままだった。

 その時保健室のドアが開いた。校医の佐渡と一緒に菊野愛が入ってきた。菊野はニコニコしながら、

 「遼一君、ご苦労様。」

 その様子にミキは菊野がリョウをそそのかしたという事が分かり、リョウに対してと同じように怒りの矛先を菊野にも向ける。

 「あら、ミキちゃん。リョウちゃんに頼んであなた達を助けて上げたのよ。」
 「エッ・・・? 助けたって?」
 「テールちゃんに聞いてご覧なさい。」
 「テールに? おい、テール。そうなのか?」
 《う・・・うん・・・。本当の事は言いにくかったのだけれど、苦しかったの・・・。》
 「どういう事だ?」
 《精液が・・・、足りなくて・・・死にそうだったの・・・。》
 「それがあの目眩だったのか・・・。あれはテールの・・・。だけど待てよ。今迄ずっと俺のを吸っていたはずだ。」
 《うん・・・、だけど足りなくて・・・。リョウちゃんの程の栄養も量も・・・。》

 菊野は椅子に座って話を始めた。

 「デーモンさんからテールちゃんの様子がおかしいって聞いていたのよ。デーモンさんには経験のない事で、理由が分からなかったらしいけれど、私がテールの精神波からすぐに理解できたわ。テールはデーモン人にも関わらず、精神構造は地球人に極めて近い・・・。ううん、地球で生まれたのですからデーモン人の精神構造とは違うのよ。」
 「それって・・・?」
 「本来のデーモン人だったら、テルさんと同じようにミキちゃんを女性化、家畜化、道具化に躊躇しないのよ。だけどテールにはミキちゃんとの姉妹という意識が強い。生まれは少しテールのが早いけれど、成長の具合から自分が妹という意識なのよ。そして妹だから自分の為にお姉さんを苦しめたくはないって・・・。」
 「俺は男だよ! 兄と言うならとにかく・・・。」
 「テールの意識としては自分が取り憑いている人はやがて女性化するというデーモンさんの意識を受け継いでいますからね。そしてテールちゃんにも良く分からなかったでしょうが、今はテールちゃんの成長期なのよ。これはデーモン人としての生理ですから私にもはっきりとは分からないのですが、本来ならゼリー状の肉体が育ち始める時期。ところが栄養不足の為、本体が消耗してしまってきたのよ。それがテールの生命に危険がある程になって、脳本体の異常になって、ミキちゃんにすら感じられる程の異常状態だったのよ。だから私が遼一ちゃんに頼んで精液補充をして貰ったの。遼一の性的能力に関しては見かけと違って凄いのよ。」
 「おい、テール。そうなのか?」
 《うん。お姉ちゃんのよりもずっと凄い。そして凄くおいしかった。私、生まれて初めてこんなにおいしい精液を吸わせて貰ったわ。》

 テールの喜びの感情がミキにも伝わってきた。

 「あなたのママも知っていますけれど、体内でデーモン人が死ぬという事はミキちゃんの命にも直接関わるのよ。」
 「ウッ・・・。それは・・・、何とか言う毒素が出て・・・。」
 「その通りよ。私もテールちゃんがこれ程ひどい状態だって事を知らなかったから、今迄準備もしていなかったけれど、こうなってしまったらミキちゃんの為にもある処置をしないとならないわ。」
 「処置・・・って・・・、まさか・・・。」
 「確かにママのように成るという方法が一番ね。」

 ミキは飛び退くように焦った。

 「やだよ!! 俺がママみたいな身体に・・・。」
 「確かに一番いい方法はそれなのですけれど、そこ迄いかなくてもある程度は・・・。」
 「ある程度・・・?」
 「栄養不足にならない程度にはテールちゃんに精液補給が必要なのは分かるわね。それでもミキちゃんの精液では絶対量が不足。」
 《お姉ちゃん、お願い。リョウちゃんの精液がいい。》
 「やめろ!! それって、俺の・・・。ああ、出して貰ったやつを吸えばいいのか。」
 《イヤッ!! あんなおいしい精液は直接吸いたい!!》
 「バカッ! ずっとオカマを掘らせろって事か?!!」
 「ミキちゃん、それは絶対に必要な事なのよ。そして・・・。」

 ミキも菊野一族の血を引いている。これから愛が何を言おうとしているのかはある程度分かっていた。

 「い・・・イヤだ・・・・。女に・・・成りたくない・・・。」

 「時間的にはそれ程余裕はないのよ。二人とも命を失うか、二人とも幸せになるか・・・。」

 ミキは震え、泣き出しながらしゃがみ込んでしまった。

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