達麻は夜着の中で縮こまっていた。少し寒いのか、しっかりと被っていた。繭は微笑みながら達麻に向かう形で滑り込む。そして抱き寄せるのだった。すると達麻は繭の胸に顔を寄せるのだった。

 「まあっ! やっぱり男の子ね。私の肉壺にされる程に可愛らしく、同じ歳頃の男の子よりもずっと小さなオチンチンなのに、オッパイが好きなの?」

 達麻は夢の中で、幼い頃の自分が母に抱かれていた。しかしなぜか腹に堅い物が突き当たる事でフッと目を覚ました。

 「アレッ? お姉さん?」

 辺りを見回し、自分が繭と一緒に寝ている事に驚き、顔を赤くした。

 「どうした? 私としとねを一緒にする事がイヤなのか?」
 「アッ、そうじゃなくて・・・。だって・・・。」

 ますます達麻は顔を赤らめて照れていた。

 「だって女の人と一緒に寝るなんて・・・、まるで結婚したみたいで・・・? 結婚? キャッ。」
 「そうじゃのう・・・。男女の違いはあるけれど、単に私の『男』を治める為だけの肉壺ではない。鶏姦といえども素晴らしい交合いです。私は達麻を好いている。達麻も私の事を好いていると思う。好き合った者同士が交合いをするのだから、形こそ違え夫婦であるには違いない。達麻がいつ迄この世界に居られるかは分からない。そして私の呪が何時解けるかも分からない。明日かも知れないし、ずっと先かも分からない。達麻、私とずっと一緒に居てくれますか?」
 「夫婦・・・。そうだよね。ボクはお姉さんとアナルセックスしないと生きていられない。お姉さんこそ、ボクを捨てないでね。ボクは身体だけでなく、心もお姉さんから離れられないよ。」

 繭は被っていた夜着を除け、正座した。その真剣な様子に達麻も一緒に正座するのだった。ただ、足は正座の形に出来るのだが、腕は掌が首の部分に近いので、少しふらついた。

 「達麻、順番も違うし、随分と遅くなりました。ですがこの呪の身体ではなく、心としてお願いします。私と本当の・・・、本当かどうかは少し疑わしいが、それでも私は真剣です。夫婦になって下され。」
 「夫婦・・・。いいの、お姉さん? ボクだってお姉さんは好きだよ。だけど、お姉さんよりずっと子供で、もしお姉さんの呪が解けたとしたら・・・。」
 「ダメなのか?」

 悲しそうな顔の繭に達麻は大きく首を振った。

 「違うよ。ボクこそ宜しくお願いします。」

 両手をついてお辞儀をしようとした時、短い腕の為に、前につんのめってしまった。そしてそこには繭の突き上げた巨根があった。

 「だからボクに・・・。」

 そう言って達麻はペニスをパクッと喰わえるのだった。



 畳の上で二人はゆっくりとしてピストンでアナルセックスを続けていた。

 「ハーッ、美味しい・・・。」
 「夜は長い。それに達麻はまだ疲れているでしょう。この様にゆったりとした気分での交合いは本当に初めてです。暫くは退魔のお仕事はないのですから、ゆっくりと・・・。」
 「ねえ、お姉さん。ボクはお姉さんと夫婦だよね?」
 「そうですよ。私はそう思っています。」
 「だったら、この手と足、解いてよ。ボクだってお姉さんに触りたいし、オッパイだって触りたいよ。」

 しかし繭は少し顔を暗くしていた。

 「それは分かっています。だけど・・・。以前にも言いましたね? 私の心では分かっているのですが、この呪の男根が・・・。ずっと前ですが、女を拐かしていた時、単に押さえ付けて犯したのですが、逃げられそうになった時、私の心としては充分に満足出来るだけの交合いをしたのに、男根がいきなり太く成って突き込んだのです。自分でも驚く程に・・・。女陰が裂けてしまって・・・。可哀想な事をしてしまいました。」
 「死んだの?」
 「いえ、しかし女性としては・・・。ですから、それ以来ずっと・・・。私は達麻が好き。達麻のお尻が裂けてしまう事だけは絶対にしたくないの。それに初めて会った時の私、あの様に『妖』の化け物の姿をもう二度と見られたくない。わがままかも知れませんが、私は人間として達麻の妻になりたい。」
 「分かったよ。あの時のお姉さんは恐ろしかった。ボクはやっぱり今の優しいお姉さんがいい。だけど呪が解けたら・・・。」
 「その時は・・・。早くそうなりたい。」

 手足の不便さはあっても、巫女の様な清楚な、そして肉感的な繭の方が良かった。ただ、顔でしか繭の胸に触れられないのが少し惜しい気もしていた。




 「繭姫様、食事の用意が出来ましたぞ。」

 権爺の声に二人はアナルセックスを中断した。繭は着衣を直し、寝室から出ていく。その後を肘と膝の四つん這いですっ裸の達麻がチョコチョコと着いていく。確かにその姿は繭のペットだった。

 「達麻、先にお食事を。」
 「いいですよ、お姉さん。ボクはうんとお姉さんの精を頂いていますから。それよりもあんなに沢山出してくれたお姉さんの方がおなかがすいている筈でしょ?」
 「姫様、その方が宜しいでしょう。」
 「お姉さん、水かお茶も飲んでね。ボクも食事の後にお水を飲みたいから。」
 権は苦笑いをしていた。
 「全く、先代のお館様達と同じでございますのう。とは言え、姫様がお館様と同じとしても、坊主がお母上様と同じというのが・・・。」

 達麻はちょっと顔をしかめた。

 「お姉さんのママ・・・、お母さんは手足が無かったんでしょ? ボクは縮めているだけ。ボクは四つん這いでも歩けるけれど、お母さんは無理でしょ?」
 「最初はのう・・・。しかし繭姫様が産まれる前には既にかなりの早さでお歩きなされておったのじゃぞ。」
 「エッ? だって・・・。」
 「今の坊主よりはずっと早かった。」
 「だけど、手も足も・・・。」
 「確かに不思議に思うのも無理はない。しかし本当なのじゃ。」
 「お姉さん、本当に?」
 「ええ。私が産まれた時は既にそうでした。尻が足の代わりでしたし、乳房が手の代わりでした。普通に歩く時は・・・、普通とは言えませぬが、尻を滑らす様にして歩いておられました。急ぐ時は乳房を使って。ですから、日常生活にはそれ程の不便はなかった様ですよ。」
 「ヘーッ・・・。」

 達麻には想像の出来ない事だったが、自分の現状を見れば、想像を超えた世界に居る事を実感するだけだった。



 社では繭と権だけしか居ない時は裸でも平気になっていた。二人は達麻が裸で居るのが当然と思っていて、達麻にしても不自由ではあってもいつもアナルセックスをしている事が嬉しかったので、むしろ自分からペットとしての生活を楽しんでいた。

 「ごめん下さりませ。」

 誰かが尋ねてきた時、達麻達は交合っている最中だった。達麻は当然裸だが、繭は巫女の姿だった。その姿は繭が社に居る時の普通の衣装なのだ。

 「おお、庄屋様。」

 権が相手をしている声が聞こえていても、達麻は夢中になって尻を蠢かせていた。そして大腸に繭の激しい迸りを受け、その精が滲み込む満足感にうっとりとしていた時、悦楽の涙の向こうに権ともう一人の老人の姿が見えた。

 「ワッ!」

 さすがにアナルセックスしているところを他人に見られるのは恥ずかしく、慌てて抜こうとしたのだが、繭は再びの体勢に入っていて、亀頭が大きく膨張していた。

 「ダメッ、お姉さん!」
 「達麻、良いではないですか。庄屋様、少々お待ちを。」
 「ヒーッ・・・!」

 庄屋も照れ臭そうにしているが、先代の時と同じであり、むしろ微笑ましそうに見ていて、視線を無理にそらそうとはしなかった。



 「権殿、先代の時とは趣が随分と異なりますのう。」
 「儂としては繭姫様の方が不思議と心が和みます。あの様な呪を施されなされ、一時の姫様はそれは荒(すさ)んでおられた。それが今は・・・。しかしそれにしても、儂が見てもちと過ぎるとは思いますがのう。」
 「不思議な童子じゃのう。確かに小さいながらも男の証があるが、顔付きはこの付近のどんな娘子も及ばぬ。彼岸の者と言うが、儂もそう思いますぞ。しかし・・・。」

 庄屋が笑い出したので、権もつられて笑って庄屋を見た。

 「こんな事を言って良いかどうか・・・。儂にはあの童子がまるで仔犬の様な愛玩動物にも見えてしまいますのじゃ。」

 繭は自分の快感よりもむしろ達麻をひたすら高めようとしていた。良がっている時の達麻には理性はなく、その可愛らしい良がりの喘ぎは繭には他人に見せびらかしたい自慢でもあった。繭の迸りを受けた達麻は可愛い悲鳴を残してアクメを迎えた。繭は余韻の為にボーっとしている達麻を膝の上に乗せて正座をした。達麻はペニスで貫かれたまま、繭に抱かれていた。

 「お待たせ致しました。」
 「ハッ、お姉さん、ダメッ!」

 達麻は繭の膝の上で恥ずかしそうにもがいていたが、ペニスを太くされ、抱かれていては抜け出せない。繭の強引さの分かっている達麻は両足を閉じて股間を隠すしかなかった。

 「まことに愛らしいお相手ですのう。」

 繭はニコッと微笑む。

 「姫様のお陰をもちまして、この辺りの魔は殆ど駆逐されました。近隣の諸国も、ここ程ではございませぬが、以前に比べ、遥かに被害も減りました。そこでこの社の分社をと望まれております。そのお許しを頂きたく、お願いに上がりました。」
 「分社・・・ですか? それはいっこうに構いませぬが、私は神ではありません。この様な形(なり)をしてはおりますが、巫女でもありませぬ。私は『妖』の者。第一この社も神社ではございませぬぞ。」
 「分かっております。ですが、既に各地に稲荷神社が建立されております。」
 「稲荷神社ですか? 確かに私の父は妖狐。狐には違いありませんね。」
 「それにその神社では破魔矢、破魔弓を下しております。それについてもお許し頂きたいと。」
 「それが私と何か?」
 「はい。姫様が破魔の太刀をお使いになる事は誰もが存じています。破魔刀では畏れ多い故、破魔の繭様、ハマユ・・・、つまり破魔弓と・・・。語呂合わせではございますが、それも全て魔に立ち向かう心に繋がりますので。」
 「構いませんよ。魔に立ち向かう事に役立つのであれば、どんな事でも結構です。」
 「有り難うございます。」

 庄屋は顔を上げてニコニコしていたが、それでも何か言い淀んでいた。

 「まだ何かあるのですか?」
 「まあ・・・、その・・・。実はその神社なのでございますが、御利益としては破魔ですので家内安全、身体健全なのではありますが、先代様の事も広く知れ渡っておりまして、男女和合、安産祈願の方が優先されておりますので・・・。」
 「まあっ・・・!」

 繭は少し顔を赤らめていたが、達麻の体内のペニスが力強く蠢くのだった。



 繭の退魔の旅は、回数はそれ程減ってはいないのだが、所用日数はかなり減っていた。それだけ社に戻っている期間が長くなり、達麻達は日柄アナルセックスに勤しんでいた。達麻はすっかり繭のペットと化し、繭の足下を肘と膝の四つん這いでいつもまとわりついていた。繭のペニスは射精を我慢する必要もなく、常に励んでいたせいもあり、常に突き勃ったままだった。来客の時は腹に押し付けて隠しているが、そうでない時には袴の前の部分から常に突き出していた。そして達麻は自分自身でもペットという立場を理解していて、他人の前でも比較的全裸を恥とは思っていなかった。と言うより、村人が達麻を繭の性処理のペットと認識しており、先代の夫婦と全く同じだと感じていたからだった。むしろ恥ずかしいと思う方が村人に違和感を持たせ、羞恥心が起きてしまうのだった。

 「お姉さん、お水、いい?」
 「いいわよ。はい。」

 魔由は胡座で座ると、チョコチョコとその前に進んだ達麻は両肘でペニスを抱えて亀頭を吸い上げ始める。繭はちょっと息んで排尿をすると、それを美味しそうに飲むのだった。

 「フーッ、美味しかった。ねえ、今度はお尻に・・・。」

 そう言いながら、達麻は勝手に尻を向け、自分から肛門にペニスを填め込むのだった。達麻にとり、肛門にペニスが貫いていないと、不思議な空虚感を感じるのだった。アナルセックスは勿論喜ばしいのだが、ただ填めているだけでも幸せだった。

 「うーん、困ったわねえ・・・。」
 「何が?」
 「私は早く魔童子を討ち、両親の仇を討ちたい。そしてこの呪を解きたい。だけどそうなると・・・、達麻と・・・。」
 「ボクは早くお姉さんに女に成って貰いたいよ。アッ、そうすると・・・。」
 「そうでしょう? 私にオチンチンが無くなるのよ。」
 「だけど、そう成ったら・・・。」

 達麻は照れ臭そうに繭を見上げた。

 「ボクがお姉さんとセックス・・・交合いを・・・してもいい?」
 「エッ?」
 「ボクはお姉さんが好き。だけどボクは男だよ。本当ならボクのオチンチンをお姉さんに・・・。」
 「ウフフ・・・。私もよ。私は女としての交合いをした事はないけれど、母様を見ていると、女の方がいいのかなあって・・・。父上に言わせると男の方が良いと言っていたけれど。私の困っているのもそこなのよ。達麻との交合いがこんなに嬉しいのに、私が女に戻れてもそこ迄良いかどうか・・・。この呪の男根は並みの男の男根よりもずっと良くされているらしい。ずっとこのままでいたいと思う事もある。」
 「ダメだよ! ボクの子供をお姉さんに産ませたいんだから!」
 「アラッ!」

 繭は驚いてマジマジと達麻を見つめていた。

 「分かったわ。だけど達麻の子なら私も欲しい。きっと達麻に似て、男でも女でもきっと可愛いわね。」

 繭はギュッと達麻を抱き締めるのだった。




 月日が経ち、二人はごく自然にいつでもアナルセックスをしていた。もう村人の前であっても、それがごく日常だった。


 満月の夜は繭の『妖』も『男』も高まる。それ迄も満月の夜は徹夜でアナルセックスを続けるのだった。繭は何度も精を迸らせ、達麻の腹は繭の精液でかなり膨らんでいた。

 「アハーン、お姉さん、凄い・・・。」
 「フフッ、今夜も寝かせないわよ。」

 側では権が小さい明かりを灯して、針仕事をしていた。しかしふと手が止まった。そして繭の激しいピストンも急に止まった、

 「エッ、何? お姉さん?」
 「シッ!」

 権は明かりを吹き消し、繭も固まったまま神経を研ぎ澄ませていた。その異様な雰囲気は達麻にも魔の気配を感じたのだと分かったのだが、それでも二人の緊張感は異常だった。

 「権!」
 「はい、繭姫様!」

 権はパッと槍と刀を持ち、繭はペニスを引き抜いて破魔の太刀を携えるのだった。

 繭の流れる様な髪の毛が逆立っていた。

 「魔童子・・・!」
 「それだけではありませぬな。他にも沢山の魔の気配が。」
 「どういう事だ? もしや魔童子が魔界の連中と一緒に?」

 権と繭はパッと庭に飛び下りた。しかし何か怪訝そうに警戒していた。

 「権、気を付けよ! あやつは様々な謀り事を為す。確かに魔の数は多いが、なぜか氣が弱い。」

 達麻は廊下の隅でジッと見つめていた。

 「ん? 魔童子だけが?」

 暫くして月明かりの中にフラフラと魔童子がその姿を現した。しかしなぜか片足が無く、杖を突きながらフラフラと寄ってくる。

 「どうした! 魔童子! 観念して私に討たれようとてか?」
 「裏切り者! 今度はどの様な企(たくら)みを? この社の周りを取り囲んだとて、その程度の魔の者では姫様の手を煩わせる事もない。」
 「権、油断するでないぞ。今宵は満月、そしてそれ程でもない魔、そして手負いの魔童子。あまりにも・・・。」

 繭は辺りの気配を探ったが、やはり訝しいままだった。

 「姫様、とうとう年貢の納め時でございますわ。周りを取り囲んだ魔の者達は姫様を狙っているのではなく、儂を見張っているのじゃ。」
 「お前を?」
 「儂は時間を掛けて色々と謀ってきた。しかしその目論見も悉(ことごと)く破れ、魔からも妖からも裏切り者として・・・。儂の命運もここ迄じゃ。」
 「それで姫様に討たれようとてか? 良い心掛けじゃ。」

 それでも繭は油断をしていなかった。

 「魔童子、なぜに魔の者を連れてここに? 私とて早くお前を討ち滅ぼしたい。しかし魔の者も同じだろう。なぜジッと周りを囲んでいるだけで、お前を討ち殺さぬ?」
 「そうじゃった。儂はあの魔の者達に囲まれて刺し殺される寸前じゃった。しかし儂は姫様に一言恨み言を言ってから死にたかった。どうせ魔に殺されずとも、姫様の前に突き出されれば死は必定。それで僅かの時の命請いをしたのじゃ。」
 「騙されぬぞ。何を考えておる。」
 「まあ、騙した事には違いがない。儂はずっと姫様に狙われておったから、儂の命を懸ければ姫様を倒せずとも、手負い位は。それならあの程度の魔の者でも、姫様に一矢報いられるぞとな。」
 「笑止! お主如きが姫様に毛一つの傷も付けられぬわ。」
 「分かっておる。儂が全くの無傷であっても、そんな事は不可能じゃ。儂は本当に話をしたかったのじゃ。」

 繭は構えた太刀を下ろしたが、それでもジッと魔童子を見据えている。

 「よし、最後の願いとして聞き届けよう。何なりと話せ。」

 魔童子はホッとしたかの様にしゃがみ込んだ。

 「姫様は『妖』と『人』とのあいの子じゃが、儂は『妖』と『魔』のあいの子じゃ。お館方様も姫様もその太刀を用いる事により、どちらにも溶け込めておった。それに引き替え儂にはその様な力が無く、どちらからも疎まれておった。特に『魔』には蔑まれ、それが『妖』への裏切りへと向かわせた。そして『妖』と『魔』の共倒れを願ったのじゃが、常に目論見は外れ続けじゃった。そして今はこの様(ざま)じゃ。儂はここで姫に滅ぼされる。万が一無事に逃げおおせたとしても、すぐに魔に討たれる。どちらにしても儂の前には死しかない。それなら少しでも・・・。」
 「少しでも何じゃ?」
 「謀り事は儂の特技じゃ。少しでも姫様に意趣を返せればとのう。儂を討てると思い、儂の氣の違いに気付かぬか?」
 「氣の・・・違い?」
 「ん? 姫様!」

 権にはすぐに分かった。そして繭にも。

 「分かったか?」
 「魔童子、お前は半魔半妖の筈・・・。」
 「そうじゃよ。今の儂からは『魔』の氣しか感じられぬじゃろう。儂は『妖』を全てこれに込めたのじゃ。」

 懐から取り出した物は、姫達磨の人形だったが、こっそりと見つめている達麻でさえ感じられる程の暗い妖気が漂っていた。そして権が叫んだ。

 「それは・・・姫達磨?! 姫達磨の呪か?」
 「その通り。儂は魔にやられる迄もなく、そして姫に討たれる迄もなく『妖』の氣を切り離してしまった以上、死は必定。今宵は満月。姫様の『男』の氣は満ち満ちている。この姫達磨の呪は儂の命を込めた呪。その男根に填まり込み、姫を母親同様の姿にしてやろうぞ。」
 「何?!」
 「今度こそ儂の目論見は叶う。この呪を受ければ、姫は破魔の太刀を持てまい。ただの姫達磨であればあの程度の弱き魔ですら姫を討ち果たす。権にやられ、姫が生き延びても構わぬ。儂の呪を解くには儂の『妖』の氣を断たねばならぬ。しかしそれは姫の身体の中じゃ。それを断つという事は姫の死を意味する。どうじゃ。今度こそ完璧じゃろう。惜しむらくは姫の死、或いは姫達磨と成り、哀れな姿を留めるか、それを儂には分からぬという事よ。」
 「姫様! お逃げなされ!」

 繭は慌てて股間のペニスをしまい込もうとするのだが、満月の光の中では意に従わなかった。

 「だからこそ、わざわざ魔の力が弱いのに今宵を選んだのじゃ。」
 「おのれーっ!!」

 権が槍を構えて突っ込もうとすると、

 「動くな! 儂は手を離すだけで良い。さすればこの姫達磨は勝手に姫の男根へ進む。」
 「クッ・・・。」
 「気分が良いのう。これ程完璧な謀り事。儂の命と引き替えにする価値がある。」

 魔童子の差し出す姫達磨の底の部分にボーっと女陰の形が浮かび上がった。それが魔童子の妖気であり、呪なのだ。

 「おのれ・・・。」

 繭はたじろいでいた。ペニスに意識を集めて戻そうとしていたのだが、その女陰の形にペニスが引っ張られている。魔童子の言う様に、魔童子が手を離すだけでその呪の姫達磨は繭のペニスに填まり込んでくるのが分かる。その焦りの姿は権にも達麻にも分かった。

 「おうよ。この呪は『女』その物。たぎる『男』に向かって一直線じゃ。」

 その時周りの魔の者達のキーッと言う声が響いた。

 「もう終わりか・・・。魔の者達の余裕も。早くしろと催促しておる。もうすぐ夜明けじゃからのう・・・。姫よ、儂は先に地獄で待っておる。さらばじゃ。」

 魔童子の目がカッと開いた。


 達麻の動きは早かった。まるで本当の仔犬の様にバッと繭の前に来て。いきなり繭のペニスを肛門に填め込んだ。

 「達麻・・・?! こんな時に。離れておれ!」
 「どうだ、魔童子! これならお姉さんのオチンチンに呪は受けないぞ。」
 「アウッ・・・。」

 明らかに魔童子は動揺していた。

 「まさか・・・、儂の一世一代の謀り事が・・・。」

 その様子を権は見逃さなかった。素早い槍が魔童子の腹を貫いた。

 「グッ・・・、最後の最後迄・・・。これ程に目論見が外れるとは・・・。」

 魔童子はガクッと崩れ落ち、手にした姫達磨が不気味に輝く妖気とともに達麻の方に飛んできた。

 「ワッ・・・!」

 小さいペニスが激しい勃起を起こした。そこに姫達磨がペニスを吸い込む様にズボッと填まり込んだ。姫達磨はあくまでも繭のペニスに向かっていた。実体の姫達磨は達麻の股間に押さえ付けられているが、呪の妖気は実体を離れ、達麻の体内を通り抜けて繭のペニスに向かっていた。それが繭のペニスに届く寸前、繭はズポッと引き抜いた。

 「そりゃーーーっ!!!」

 凄さまじい声とともに繭は高く飛び上がり、振り下ろした太刀で魔童子を真っ二つにした。

 「ギエーーーーッ・・・!」

 魔童子は断末魔の叫びを上げ、『魔』の氣が辺りを包んだ。魔童子を真っ二つに切り裂いた場所がおどろおどろしい空間の裂け目となり、そして最後の輝きとともに、その空間の裂け目の闇に吸い込まれる様に消えていくのだった。

 「繭姫様、お見事!」

 魔童子の消滅と童子に、周りを囲んでいた魔の者達には動揺が走っていた。魔童子の呪により繭を討ち取る筈だった手順が狂ってしまったのだ。正確に八方向を押さえて結界を作っていたのだが、それが乱れた。何匹かの魔が一気に繭に襲い掛かるのだった。

 「やった!」

 魔童子が消えた時、達麻は涙が溢れ出る嬉しさを感じていた。そしてペニスを押さえ付けていた姫達磨が落ち、体内に感じていた呪の妖気も一瞬止まり、そして身体に広がっていくのだった。それは達麻は妖気が放散されて消えていくのだと感じていた。

 「やった・・・、お姉さん。だけどお姉さんは女に戻る・・・。」

 嬉しさの反面、寂しさが去来していた。

 魔が繭を襲ってきても、繭は難なく切り払っていた。

 「強い・・・。お姉さん、凄い。」

 それでも魔の残党が達麻を襲う恐れもあり、自分が人質になってしまうと、繭の立場も危うくなる。慌てて社の中に駆け込もうとした。しかしその時、自分の身体に新たな違和感を感じた。気持ち的には四つん這いの両手足を激しく動かしたつもりなのだが、思った程に進まない。ハッとして後ろを振り返ると、そこには今迄ずっと手足を包んでいた革袋が落ちていたのだ。

 「エッ? 袋が外れた? 何だ、それなら手足を伸ばせば・・・。」

 しかし起き上がれないのだ。手がまるで丸く固まってしまっている様に見えた。

 「ウッ・・・、手が? 手・・・? ボクの手は前に在る・・・。前? 両側でなくて前? 丸まった手? どうして伸びない? おかしいなあ・・・。まるでオッパイみたいに成ってる。こんな大きなオッパイなんて在る筈がないし、ボクは男だから・・・。どうして足が地についていないの? ウーッ、何でこんな時にお尻が寂しいんだよ。お姉さんはまだ魔と闘っている。ボクってこんなにスケベだったのかな? お尻・・・? 違う、オチンチンの方・・・? オチンチンがパクパク開いて・・・? どうしてオチンチンが開く?」

 達麻は驚き、慌てて下腹部を見ようとした。

 「どうして見えないの? オッパイが邪魔になってるんだ。オッパイ? 誰の? 伏せているからオチンチンは地に触れている筈なのに感じない? ウーッ、つらい・・・。早くお姉さん、オマンコを何とかして・・・、エッ? オマンコ? 誰の?」

 まだ達麻は信じられなかった。そして信じたくなかった。しかしゴロッと転んで両足を上に上げる意識をした時、腰の部分がまん丸に見え、そしてその真ん中に肉丘と割れ目だけしかないのを見た時、まだそれは悪夢だった。悪夢から目覚めたい為に大きな悲鳴を上げたのだった。

 「達麻?!」

 全ての魔を打ち払った繭が達麻の悲鳴に気付いた。そして権の方が先に達麻の変化に気付いた。

 「坊主! まさか・・・。」
 「爺、何? 達麻がどうしたの?」

 まだ戦いが終わったばかりの繭は『妖』の氣を激しく放ち、凄さまじい形相のまま、衣服も乱れて乳房も巨根も剥き出しのまま社に駆け戻ってきた。

 「ウオーッ!!」

 繭は激しい声で吠えた。そこには以前の母と同じ姿形の達麻が・・・、達麻だと分かるのはほんの少しの顔の表情だけで、顔も完全に女だった。髪は母と同じ様に長く美しい。そして気を失った様に生気のない顔だったが、可愛い童女と言うよりは明らかに麗しい女の子だった。そして小柄な身体に母にも負けない大きな乳房。そして手も足も全く存在しない胴体の下部には液体を噴き出している割れ目があった。

 「姫様、気を確かに!」

 今にも姫達磨の達麻にのし掛かろうとする繭を権は必死に押し止めた。

 「今の坊主はまだ『仮呪』。魔童子の『魔氣』の絶えた今なら『除呪』出来まする。しかし交合ってしまうと・・・、必ずや『成呪(成就)』してしまいます。姫! 女としての幸せをお考え下され!」

 繭はグッと堪えた。確かに劣情に負け、一生を呪のペニスとともにあるのかと自問するだけの理性はあった。『妖』と『男』の氣が少し治まった。そして権は達麻にも大声で呼び掛けた。

 「坊主! お主も気を確かに! お前の好きな姫様を一生この様な姿にしても良いのか!」

 達麻もハッとして意識を取り戻した。

 「今が最初で最後の機会なのじゃ! 体内の呪の『妖』を追い出せ! それが魔童子の『妖』なのじゃ。この世から魔童子の気を全て滅すれば、魔童子の呪も滅する。追い出すのじゃーーっ!」

 理性を取り戻した繭も巫女の様な表情に戻った。

 「達麻! 肉体に負けるでない! 一生を私の精の肉壺で過ごすつもりか? 自分の世界に戻りたいのじゃろう?」
 「ボクは・・・、こんな身体では・・・。クーッ、お姉さん、つらいよ・・・。アアッ・・・、オチンチンをこっちに向けないで・・・。」
 「ウッ、ダメなの・・・。達麻のオマンコに引っ張られている。私だってつらい・・・。父上の様に、母様と同じ身体の達麻と・・・。」
 「姫様! 耐えて下され!」

 達麻も必死に耐えていた。

 「『妖』を追い出す? どうやって?」
 「坊主! その様な呪われた姿ではなく、本来の己の姿を思い浮かべるのじゃ! そしてどうありたいかを想い、念じるのじゃ!」

 達麻は必死に混乱している精神を取り戻そうとした。

 「そうだ・・・、こんな恥ずかしい姿で・・・、ボクは元のボクに戻る!」
 「そうじゃ、その調子・・・。元の世界に戻る事を念じるのじゃ。」
 「ボクの元の世界・・・。学校、友達・・・、エッ? お姉さんは?」
 「わ・・・私はこの世の者・・・。」
 「お姉さん、居ない・・・。お尻ででもセックス出来ない? アッ、ボクにはオマンコがある・・・。お姉さんとセックスしたい・・・。」
 「坊主! ダメじゃ! 交合ってしまえばきっとお前達は我を忘れてしまう。そうなっては心の底からの『除呪』は出来ぬ!」

 必死に耐えていた繭も精神のたがが緩んできていた。

 「そうじゃ・・・。達麻が居なくなったら・・・。私は達麻を離したくない・・・。私は女に戻れなくなる・・・。私が女に戻る必要はあるの? 私にはこの様に男根が在る。そして達麻には女陰が出来た。姫達磨の呪の女陰・・・、きっと母様の言う様に素晴らしい女陰・・・。達麻に悦びを与える女陰・・・。そして父上の様に素晴らしい快感を得られるのに・・・。」
 「ひっ・・・姫様!」

 権は繭を必死に押さえていた。

 「坊主! 女陰を向けるな! いいのか? お主は一生手足の無い身体に成ってしまうのじゃぞ。」
 「アッ、手足の無い・・・。まるで芋虫・・・。」

 肉体的に大きな変化をした達麻の方が恐れが強かった。

 「お姉さんは大好き・・・。だけど・・・、こんな身体はイヤッ! 手足が無ければお姉さんのオッパイに触れない。抱き締められない。上から足で押さえて・・・。」
 「達麻! 私の悦びを奪うのか?! ウオーッ、募る。」
 繭は魔と闘っていた時の様な『妖』を全身に漲(みなぎ)らせた。目は血走って吊り上がり、口も大きく裂けて牙が光る。全身に狼の様な体毛が沸き立ち、その形相は権ですら初めての恐ろしいものだった。

 「ウワーッ、お姉さん?!」

 達麻は繭から逃れようとするのだが、手足の無い身体では無理だった。

 「姫ーーっ!」

 権の手を振り払った繭は既に凶暴な妖狐だった。そして達麻の胸を掴んだ。

 「アヒーッ・・・?!」

 繭の凶暴さに驚いていた達麻だが、掴まれた乳房に激しい刺激を感じた。それは決して苦痛ではなかった。達麻には分からなかったが、乳首が突き出し、愛液が激しく噴き出していたのだ。繭はそのまま達麻の両胸を押さえ付け、達麻ですら初めて見る程の大きさに成っている肉の凶器を宛てがうのだった。

 「ワーッ、ダメーッ。そんな大きいの・・・!」

 しかし達麻の悲鳴はすぐに別の意味の悲鳴に変わってしまった。巨根が達麻の股間に填まり込んでいったのだ。達麻にとり、入る部分の無い所に異物を押し込まれた。

 「ヒギーッ?! 挿れちゃヤダーーッ! オマンコに・・・? オマンコ? ボクは男で・・・、アクーーッ・・・。」

 権は呆然としてしゃがみ込んでいた。目の前には凶暴な妖狐が、腰を激しく動かし、姫達磨と化した達麻を陵辱していた。

 「ヒッ・・・、何? 変だよ・・・。ボクが・・・ボクでない・・・。身体中がオチンチン? お尻? アヒーーーッ・・・!!!」

 いきなり姫達磨として初めての絶頂を迎えてしまった。達麻にはそれがアクメだとは分からない。激し過ぎる快感は快感と認識出来なかったのだ。それと同時に繭は大量の精を迸らせた。いきなりの大量の精液も、姫達磨の呪で出来ている子宮は大きく膨らんで受け入れるのだった。それと同時に繭の『妖』の氣は少し治まった。本来の優しい繭の姿に戻るのだが、それでもまだピストンは続いていた。しかし達麻の状態は大変だった。初めての『女』としてのセックスなのだが、常人よりもずっと感度の高められた肉体で受けている。姫達磨の呪はセックス経験のある女性ですら肉奴隷と化してしまう程の激しい快感を受けてしまう。それがいきなりの激しい膣の快感、子宮に突き込まれる精液の塊、そして信じられない程の乳房の快感、そしてそれを自分で押さえる事が出来ない身体。手足の無い身体はただセックスされるだけの身体なのだ。アクメの連続で、失神すら許されない程に受容度の高い肉体での感覚は、ある意味拷問だった。いきっ放しのままの達麻はただの活きている性器だった。



 「姫様・・・。」

 権は恐る恐る繭に呼び掛けた。繭はただひたすらペニスを抜き挿ししているだけで、まるで放心状態だった。

 「エッ・・・、私?」

 やっと繭は正気を取り戻した。精の出し過ぎですっかり憔悴していた繭は、やっと自分を取り戻したのだ。

 「私・・・、ああ・・・。」

 顔を覆って泣き出してしまった繭だが、それでも達麻からペニスを抜こうとはしなかった。

 「お嘆きなさいますな。それも全て魔童子めの呪によるものでござりまするで。あの様な奴でも、命を掛けた呪でございましたでなあ・・・。あやつめ、謀り事を特技としていた割りには常に裏目に出ておりましたのう・・・。今回の事にしても、もう少し深読みをされていたら危うかった。あの時の繭姫様は完全に隙だらけで、先代が魔の者達に討たれた時の二の舞じゃった。」
 「違うの・・・。私は・・・こんな・・・。こんな嫌な女だったの? こんなに自分勝手で、自分さえ良ければという・・・。達麻が自分の世界に戻れる機会を奪ってしまった。それもただ私が素晴らしい蜜壺を得られるという事に目が眩んで・・・。」

 権は失神している達麻を眺めていた。

 「こんな事を言うても宜しいかどうか・・・。ご覧なされ、この坊主の顔を。もう坊主ではございませぬが・・・。幸せそのものの表情ですぞ。お母上様の場合よりも繭姫様の方が有利ですぞ。」
 「有利? なぜ?」
 「お考え下され。姫様がお生まれになった時には既に仲睦まじいご夫婦でしたが、最初のお母上様の心は荒(すさ)んでござらっしゃった。それは当然の事でございましょう。生け贄としてお父上様に捧げられ、そして姫達磨の呪で・・・。しかし肉体的には素晴らしいものでござりましたぞ。やがてお心を開かれ、お父上様の本当のお心が分かって、あの様に素晴らしい夫婦と成られた。」
 「本当の心?」
 「分かりませぬか? 今の繭姫様と同じですじゃ。つまりお父上様はお母上様を最初から愛しておられた。しかしお母上様はそうではなかった。しかし呪による男根はお母上様の『女』を目覚めさせる事を知っているお父上は、惨いと思われる程の交合いを為されたのじゃ。しかし実はお父上様は命をすり減らす程に頑張っておられたのじゃ。それは繭様にもお分かりの筈。達麻を我が物としたいとの一身でござりましたろう。」
 「そうでした・・・。私は達麻が好き・・・。私から離れる可能性があると思った時、私は気が狂いそうだった。だから・・・、達麻が姫達磨に成ったのだから、父上がお母様に為した様に、交合いで狂わせてでも私の物に・・・。」
 「ですが姫様、既に達麻は姫様を好きでございます。今は予想もつかぬ姿に成ってしまい、嘆き悲しんでおります。しかしあの身体は奥方様もおっしゃっていた通り、交合いの為の身体。交合いに最も良い身体です。達麻は奥方様と違って心は開いております。交合いに慣れれば、その良さが分かれば、それを失いたくなくなる筈、つまり・・・。」
 「爺、真(まとこ)か?」

 権は少し考えていた。

 「儂は呪の変化(へんげ)についてそれ程詳しい訳ではござりませぬが、達麻の変化は仮の変化でござりましょう。それを実の変化と為さねば、元に戻れるという事ですじゃ。」

 そしてニヤッと笑った。

 「今のままではやがて呪も解ける事でござりましょう。しかし実の変化となれば、それが『成呪』にござりまするで、ずっと今のまま。」

 繭の顔がパッと輝いた。

 「それは・・・?」
 「儂も魔童子がお館様に話していたのを少し聞きかじった程度ですので、細かいところ迄は分かりませぬ。しかし確実なのは、呪を施された本人、つまり達麻ですが、本人がその呪を許容する、それ以上に呪を悦ぶのであれば、その呪はすぐに『成呪』となります。お父上が激しくお母上を犯し続けたのも、交合いの良さを分からせ、交合いを望む様にしてしまおうとした為なのでございます。それはそれ、元々が交合いを更に良く感じさせられる呪故、数多く交合えば宜しかった。その結果は繭様もご存知。」
 「ああ・・・、それなら・・・。」

 繭の顔が大きく輝いた。そして達麻の身体が少し動いた。それは繭のペニスに再び新たな力が漲り、少し仰け反らせたからだった。

 「私の呪を解く事と、達麻との交合いを失う事の葛藤があった。しかし少し考えれば結論は出ていたのよ。私は確かに女に戻りたかった。その為に呪を解きたいと・・・。だけど女に戻るというのは最終的な目的ではなかった筈。女に戻り、幸せになるという事の筈。今、私が女に戻れば達麻と本当の夫婦に成れるけれど、何時達麻が自分の世界に戻ってしまうか分からない。それに達麻の男根を見ていれば、何時になれば私との交合いが出来る様になるか・・・。歳を経ても人間の男根では・・・。この呪の様な悦びは得られないでしょう。しかし達麻を姫達磨のままにしておけば、永遠に私は達麻と離れないで済む。達麻はあの身体では元の世界には戻れない。私自身の身勝手で言えば、今迄に拐かして犯した女とは全然違う。あの蜜壺であれば、私は達麻でなくても手放さなかったでしょう。それが達麻であるのだから・・・。達麻には可哀想な事となりますが、それでも父上がお母様にお与えになった以上の悦びを与えられる自信はあります。権の言う通りです。私の方がお母様より恵まれている。私は愛されているし、愛している達麻に『女』の悦びを・・・。」
 「しかし繭姫様、先の事を考えると、少し不安がありまする。杞憂かと存じますが・・・。」
 「それは?」
 「姫様達が先代と同じ様に仲睦まじい夫婦と成られますと、やがてお子様も産まれましょう。そのお子様が・・・。」
 「赤ちゃん? キャッ。 それは私でなく達麻が産むのね?」
 「はい・・・。ですが達麻への呪は魔童子が命を懸けた程の呪。お母上様への呪よりも遥かに強い。呪そのものには『念』はござりませぬで、悪因縁はありませぬが、男ですらこの様に女以上の女、姫達磨に成られた程の呪。さすれば産まれ出るお子様にもその影響は出ましょう。繭様の場合はそれぞれに呪を受けたご両親からお生まれなさった。変化迄は受けられなんだが、呪を受け易い体質として・・・。あの時の魔童子は必死でござりましたな。その呪は強く、魔童子が滅すれば少しは呪が弱まると思いましたが、それ程でもなかった。それは姫様の達麻への念が自らを呪に押し進めているからにございましょう。そして達麻は呪も知らず、呪に関しては受け難い体質の筈なのにこの変化・・・。さすればお子様となると・・・。」

 繭はちょっと不安そうな顔をしていたが、それでもすぐに明るくなった。

 「それでも構いませぬ。今は私達の幸せが大事。よしんば子に呪の影響にて私達みたいな姿と成って生まれいでたとしても、女の子に私の様な男根が在っても、私はこの男根で素晴らしい『男』の悦びを得ている。多分これは並みの女の悦びよりもずっと素晴らしい筈。最悪、達麻の様な姫達磨の子が産まれたとしても、産まれながらお母様の姿形であれば、絶望や悔悟もなく、姫達磨の悦びを得る身体となります。まあ、それぞれの夫婦のお相手を得るは難しいでしょうが、それでもあの交合いの良さは別格。お母様がそうであった様に、交合いにて性の悦びを得、やがて心も得られましょう。」

 権は肩をすくめていた。

 「魔童子め・・・、どこ迄も中途半端な策士でござりましたな。謀り事は全て成ったのに、結果は全て裏目じゃった。」
 「権、食事の用意をお願いします。私は全霊を込めて達麻に精を注ぎます。その為にも・・・。『妖』の目で呪を見ると、まだまだ不完全です。乳房や尻にしても、目に見える大きさと念の大きさが違う。手足の念も残っています。私の精が達麻の肉体に成る様ですね。目に見える姿全部に精を施せば、権の言う通りの『成呪』になるでしょう。嘆き悲しむ間も与えずに悦びを与え続けましょう。」
 「分かり申した。精のつく山芋や鰻を手に入れて参りましょう。これもお館様の時と同じですでのう。」
 「お願いしますね。」

 権は笑いながら社を出ていくのだった。空は間もなくの日の出の前で、少し白んでいた。



 「ごめん下さりませ。」
 「おお、権殿。昨晩は一体・・・?」
 「ご迷惑をお掛け致しましたか? 実は魔の物が襲って参りましてのう。」
 「やはり。しかし、それで?」
 「ご安心を。全て繭姫様が滅せられました。」
 「左様で・・・。しかしこの社の在る地を襲うなどとは・・・。暫く無かった事ですが・・・。」
 「まあ、当分はない事でござりましょう。何分にもあの魔童子を討ち果たしましたで。」
 「まさか・・・。あの・・・? それでは姫様の大願成就と? しかし・・・。」

 庄屋の顔に不安があった。それは繭の『こけしの呪』が繭の強さの元と感じていたので、魔童子を倒した事で呪が解け、その強さも失われてしまったのではないかという事だった。

 「心配ご無用でございます。実はその大願も完全成就ではなかったので・・・。それより、お願いがござりましてのう。」
 「何なりと・・・。」
 「お屋敷の裏山で、山芋を掘る事と、鰻を捕る事をお許し頂きたく・・・。」
 「そんな事で・・・。結構ですぞ。いや、既に昨日取った物がございますで、それをお持ちなされ。しかし・・・、完全成就でないとは?」
 「姫様に精をつけて頂かぬと・・・。かなり精を減らしましたで・・・。」
 「おう、それは分かりますぞ。昨晩の辺りの魔の氣はひどかった。それ程の大物が・・・。数も多かった様で、恐ろしゅうて、まんじりとも出来ませなんだ。しかし姫様がそれ程ご苦労なさったとなると、本に暫くは魔も襲って参りますまい。」

 権は少し照れ臭そうに頭を掻いた。

 「いや、ちょっと違うのじゃ。実は魔童子が最後っ屁の呪を使いましてのう・・・。姫様を守る為にあの坊主、達麻がその呪を受けてしまいまして・・・。」
 「あの童が?」
 「はい。奥方様の受けた呪、つまり姫達磨の呪を受けてしまわれました。庄屋様なら覚えておられようが、先代様が奥方を得られ、しかもその後の呪を受けた時、先代様がどうだったか。」
 「何と! あの童が・・・? 可愛らしい子ではあったが確かに男じゃった。呪を受けたとなると・・・。」
 「奥方様を凌(しの)ぐ程のお姿じゃ。しかも到底男であったとは思えぬ程のお方で・・・。本来であれば、魔童子を討ち果たしたのじゃから、達麻の呪は別としても姫様の呪は完全には無くならずとも、ある程度は弱まる筈じゃった。それが達麻が姫達磨に成ったと知るや・・・。あの頃のお館様と同じで、それこそ精の限りを尽くしましてのう・・・。」
 「それは・・・めでたい・・・事であるのかのう。真の夫婦と成られる訳じゃが・・・。」
 「それは間違いないじゃろうのう。しかし奥方様の時とは違って、お二人とも仲は良かった。しかし何と言っても男の子じゃったものが、いきなりの姫達磨じゃぞ。暫くはのう・・・。祝言やお披露目はかなり先かと・・・。」
 「そうでございましたか。いや、やはりめでたい事でござろう。権殿、お食事の事はご心配、ご足労なさいますな。儂ら村人で毎日お届け致しまするぞ。その他にも、何なりと言い付けなされ。姫様は儂らには本当の神じゃ。その女神様が新たな奥方様を・・・? ちょっと変じゃが、先代様と同じじゃ。先代様がお果てなさった時は、儂らの恐怖はお分かり頂けまするか? それが今・・・。こんな嬉しい事はない。すぐにも村人を集めて報告せねば。ああ、分かっておりまする。祝いの辞を暫くの間ご遠慮いたします。本当の夫婦としての祝言の時には。是非盛大に催させて下さりませ。」
 「有り難うござります。しかし姫様はその様な騒ぎは・・・。じゃが、宜しくお願いしますぞ。」

 庄屋は大声で家人を呼び集め、山芋と鰻を運ばせるのだった。

 「それともう一つ願いがあるのじゃが・・・。」

 権は珍しく照れ臭そうに上目遣いで庄屋を見詰めた。

 「はい。何なりと。」

 少し言い淀んでいたのだが、意を決した様に、

 「庄屋殿には覚えてござろうが、奥方様が呪を受けられた時、先代のお館様の命で下女の梅が色々手伝ったが・・・。」
 「ああ・・・、あの節はお梅もかなりつらい思いをしたとの事じゃったのう。あとで聞けば、奥方様と先代様が仲睦まじくなる為の手段であったと・・・。おう、そうじゃったか。今のあの童はあの時の奥方様と同じじゃのう。しかも男じゃったのが姫達磨の呪となると・・・。」
 「そういう訳で、儂としては幾分心苦しいのじゃが、やはり梅に頼もうかと・・・。姫様には話しはしておらんが、従者の儂としては、やはり達麻に一日も早く奥方様の様な嫁御になって欲しいのでのう。」
 「確かお梅は実家の近くの寺で下働きをしていた筈じゃ。早速委細を知らせて、呼び寄せる事にしよう。いやいや、お梅とて姫様の為に働けるとなれば、手放しで喜ぶじゃろうて。」
 「是非とも・・・。」

 権は深々と頭を下げるのだった。





 激しい快感の渦の中で達麻は数日は色情狂状態だった。現実感の無い快感はまるで覚めない夢の様で、精神逃避していた。むしろそれが当然であり、まともに意識を持ったとしたら、精神分裂を起こしてしまっていただろう。それでも繭の激しいセックスの連続は、段々と快感の限界を高めていった。激しい快感であっても、精神が少しずつ耐えられる様になっていくのだ。子宮は常に精液ではちきれそうな程に膨らまされ、その合間に尻からの注精で、体力的には全く問題はなかった。ただ、繭としては肉体的快感は強いものの、精神的には不毛だった。やはり精神的な達麻の悦びが欲しく、そうなる時の為にひたすら精を施すのだった。

 「姫様、そろそろお食事を。」
 「分かりました。」

 繭は達麻をペニスで貫いたままで食事を摂る。赤ん坊の負ぶい紐の様な物で布でくるんだ達麻を身体にくくりつけているので、食事は面倒だった。それでもただ精をつける為に、卵や鰻を毎食食べているのだった。

 「精がつくとはいえ、毎食これでは飽きてしまいます。」
 「申し訳ございませぬのう。梅が来れば、少しはましな物を作るでしょうが・・・」
 「お梅ですか・・・。何年会っていないでしょう・・・。私にとっては、もう一人の母の様な存在でした。ただ、母上のお世話に関しては、あの頃は心が痛みましたが、今は良く分かります。全く親の心、子知らずでしたね。父上と同じ立場になって初めて、父の心が分かりました。」
 「とは言え、山の中とて、魚類は干物ばかりで・・・。早く退魔の旅へ出とうございます。幾つかの依頼が参っておりまするが、もう少し待って頂かねば・・・。さすれば旨い刺身も食せるのですがのう・・・。」

 その時、達麻の口から呟きが漏れた。

 「お刺身・・・、ボクも食べたい・・・。」
 「ん? 達麻、気が付いたのか?」
 「エッ、何? ボクは・・・? ああ、そうだった・・・。ボクはこの世界に・・・。」

 達麻は少し身体を揺すっていた。

 「いいよねえ、お姉さんは・・・。ボクはお姉さんの精だけで・・・。ウワッ、食事しながら? お姉さん、ダメだよ。下りるよ。やっぱり慣れていても、お爺さんの目の前での交合いなんて・・・。ウッ? 下りられない? 紐で縛っているの? ダメだよ。早く解いてよ。アレッ? ボクはお姉さんと向かい合ってる? これだと足が邪魔で・・・。」

 達麻はキョトキョトと身体を見回していた。達麻自身はまだハッキリしない目覚めの様で、自分自身の状態が理解出来ないでいた。

 そして激しい悲鳴が響くのだった。



 達麻はいつ迄も泣いていたが、繭はそんな達麻を引き抜き、部屋の隅の無造作に転がした。

 「権、すみませぬが、浅い箱に藁を敷き詰めて貰えますか?」
 「宜しゅうございますが、なぜに?」

 繭はニコッと笑った。

 「長年、達麻と付き合っていると、その習性が分かります。ただ慰めたり、或いは威嚇しても効果は少ない。彼岸の者の心は不思議ですが、初めて達麻を私の肉壺にした時、意外と早く懐(なつ)いたでしょう。それが不思議で、なぜであるかをそれとなく探っておりました。私としては早く達麻を私の本当の妻としたい。その為です。」
 「左様でござりまするか。それなら・・・。」

 権は表に出て、浅くて広い箱に敷き藁を積めて持ってきた。それを泣いている達麻の側に置き、その中に達麻を転がすのだった。

 「これで宜しゅうござりますか? 何か、まるで犬猫の巣の様な・・・。」
 「そうです。これは巣です。権、暫くの間、達麻はその様に扱って下さい。裸にしたままで。」
 「ハアッ?」

 権は訝しそうに繭を見つめた。

 「当分の間、達麻は産まれたばかりの仔犬です。躾けも為されていない、ただ吠えるだけの仔犬。私もつらいのですが、それが一番早いらしい方法なので・・・。それとこれも・・・、爺、あなたは達麻の世話を嫌々なさって下され。騒がしい仔犬を、私が飼っているからやむを得ず世話をすると・・・。」
 「それは・・・。如何に何でも。」
 「後で分かります。恨まれ、嫌われる役回りとなりましょうが、何とぞ・・・。」

 繭は両手を合わせて頼むのだった。

 「姫様、滅相もない。しかし面白そうでござりまするな。どの様な謀り事かは分かりませぬが、お付き合いしましょうぞ。」

 権は胸を大きく叩いた。



 達麻はいつ迄も嘆いていた。

 「ボク・・・、どうしたの? この身体は何? お姉さんが言っていた、お母さんと同じ? 嘘だ・・・。これはきっと夢だ。なぜ手も足も無いの? ボクは女なの? オチンチンが無い・・・。お姉さんにオマンコされた・・・。これがオッパイ? 嘘だ・・・。こんな大きなオッパイなんか在る筈がない。これがボクの身体? 違う。あの魔童子とかの呪で、ボクの心だけがこの変な身体に移らされたんだ。ボクの身体はどこかで眠っているんだ。ヒーッ、身体が痒くても掻けない。ウウッ・・・、お姉さん・・・。」

 そこに権が戻ってきた。

 「ウオッ、凄さまじい匂いじゃな。」
 「お爺さん、助けて・・・。ボクの身体はどこ? 呪とかで心と身体を切り離されたんでしょ?」

 しかし権はいつもの優しい顔でなく、うんざりとした表情だった。

 「繭姫様の蜜壺の家畜だからやむを得ぬが、それにしてもこの匂いには閉口するわい。」
 「家畜? お爺さん?」
 「女陰から流れ出る液がそれ、そんなに。敷き藁ですら吸い切れぬのかのう。」
 「イヤダーッ、ここから出して!」
 「うるさいのう。お前は家畜なのじゃぞ。社の中に置いて貰えるだけ有り難いと思わぬのか。」
 「どうして・・・?」

 達麻にはなぜ権がこんなに冷淡なのか不思議だった。そこに繭も入ってきた。

 「爺、すぐ隣村に魔が現れたそうです。ちょっと出掛けてきますね。」

 繭は退魔の時の姿に着替えていた。そして大きな破魔の太刀を背負った。

 「お姉さん? ボクは?」

 しかし繭の態度も冷淡だった。

 「大人しく待っていなさい。魔を退治すれば少しは私の『男』もたぎりましょう。そうすればお前の大好きな男根を填めて上げる。」
 「お姉さん? どうしたの?」
 「何が? お前は私のたぎりを治めるだけの蜜壺。そうではないのか?」

 達麻はオロオロしていた。

 「どうしたの? お姉さん達・・・変だよ。ボクが・・・こんな姿だから?」

 しかし繭はフイッと出掛けてしまった。

 「お爺さん、どうして? ボクが何か?」

 権はその話には返事もせず、ボソボソと呟いていた。

 「全く姫様にも呆れるわい。確かに蜜壺としては良い物らしいが、こんなにも姫様を嫌っている童をこのまま置いておくのはのう・・・。気が知れんわい。」
 「エッ、ボクがお姉さんを? そんな事ないよ。」
 「ん? 何じゃ?」
 「ボクはお姉さんを嫌ってなんかいないよ。大好きなのは同じだよ。お爺さん達こそ、ボクがこんな身体に成ったから嫌っているの?」
 「何を言うとる。お前の身体付きは奥方様と同じじゃ、儂としては懐かしいし、姫様にしても同じじゃ。以前のお前よりもずっと良いわい。じゃからこそ、姫様はお主に忌み嫌われてしまってつらい思いをしているのじゃ。」
 「エッ?」

 達麻には理由が分からなかった。

 「分からんのか? 姫様の呪は解けなかった。そしてお主はお母上様と同じ呪を受けた。あの時の姫様は恐ろしい程たぎらせておったわ。あれ程の狂い様は儂も初めてじゃった。しかし姫様はお主と交合って、後悔で暫く泣き濡れておったわ。自分の『男』のたぎりに理性を奪われ、嫌がるお主を犯した事をな。しかしその後のお主の態度、姫は口には出しておられぬが、幻滅したのじゃ。」
 「幻滅? 教えて。ボクが何をしたの?」
 「何をしたじゃと? 姿形は姫達磨、つまりは女に成ったのじゃが、心は男じゃったのではないのか? いや、人間だったのではないのか? 姫はあの呪を受け、達麻という伴侶を得た事を喜んでおられた。それでも鶏姦しか出来なかったが、それでも充分と思っておられた。そこに姫達磨という素晴らしい蜜壺に達麻が成ったのじゃ。姫様の悦び様が分かるか? 確かに男としてはつらいじゃろうが、姫様の一番悦ぶ姿形に成ったのじゃぞ。呪による男根は当然の事として激しくたぎり続けた。しかしその時のお主はただ悲しみ、呪っておったのう。姫様としては、身体はお主と交合わねばならぬのに、心の交合いは無かった。以前のお主との時とは逆なのじゃ。」
 「そんな・・・。」
 「しかし姫様のたぎりを治めるにはお前しか居ない。やむを得ず、家畜として飼う事にしたのじゃ。」
 「イヤーッ、そんな・・・。ボクはお姉さん達しか頼れないんだよ。」
 「だから蜜壺の家畜として飼っておくのじゃ。」

 権は箒を抱えて出ていってしまった。

 「ボクが家畜? ボクがこんな身体に成った事を悲しみ過ぎたから? いくらお姉さんが悦ぶからって、こんな身体はイヤッ! ああ、つらい・・・。オマンコにオチンチンが入っていないから? そんなにボクはスケベなの? 違う、この身体だからだ。そしてオッパイが・・・、つらいよ。ああ、お姉さん、早く戻ってきて。」

 達麻は巣の中で蠢き続けていた。自分でも分かる程の愛液の匂いに、つらい程欲情しているのが分かるのだった。



 「ごめん下さりませ!」

 大きな呼び声に権が飛び出していった。

 「おう、梅。久しぶりじゃのう。」
 「お久しゅうござりますだ。それにしても権様は相変わらず壮健で。」
 「儂としても少し気まずいのじゃが、少しでも儂の罪滅ぼしとして手伝って欲しいのじゃが。」

 梅は声をひそめて権に耳打ちをする。

 「姫様からも委細承りましたで、私も嫌われ役を引き受けました。まあ、奥方様の時と同じだで、要領はわかっとります。今回は姫様の為じゃで、目一杯の鍛錬ができますわい。」
 「宜しく頼む。梅には見えぬじゃろうが、まだ呪は不完全なのじゃ。手足の念が乳と尻に移り、無くなった時が成呪じゃ。そしてあの坊主が繭様によってのみ生きられるという事を身体に滲み込ませねばのう。嘆き悲しんだり、元の彼岸の国に戻りたいと考える余裕も与えずに鍛錬して欲しいのじゃ。奥方様の時もそうじゃったが、憎まれ役を引き受けて貰わねば・・・。」
 「ようございます。奥方様の時には訳も分からずに、ただお館様や権様に急き立てられて、つらい仕事と思いましたが。ところで、今度の嫁御様は元々男だったそうですの。かなり難しいでしょうのう。」
 「儂はそうは思うとらんがのう。既に達麻は姫様に懐いておった。まあ、いきなり姫達磨になってしもうたで、心が乱れておるのは当然じゃがのう。奥方様の時よりもずっと睦まじかったからのう。」
 「その辺がどうも分からんのですが。まあ、姫様の為にも、私も一所懸命お勤めしますで。」
 「宜しゅう頼む。あっ、呉々も姫に頼まれたので、嫌々している風を装ってな。仕方無く姫の為に良い蜜壺にするのだという風に。」
 「わかっとります。姫様にも言い付かってますで。だども、その方が楽で楽しいですわ。遠慮無く鍛錬しますで。」

 梅は権に従って社に上がっていった。

 鳴き声の聞こえる部屋の前で、二人は笑顔を消そうと必死だった。なかなか笑い顔を消すというのは難しかったが、それでもやっと落ち着かせて部屋に入った。

 「ほれ、こいつじゃよ。」
 「ほう。これが姫様の蜜壺ですか。まあ、呪を受けたせいか、可愛らしくはありますがのう。成り立ての蜜壺ではまだまだ使い心地は悪いでしょうな。どれどれ、具合を見て、鍛え上げましょうか。」

 「ヒッ・・・。」

 達麻は初対面の人物の登場に、身を隠そうとするのだが、箱の中で蠢く事しかできなかった。

 「権様。小物は預かって参りましたが、大きな道具は庄屋様の蔵に入ってますで、運んできて下され。」
 「ん? 道具とな?」
 「奥方様の時に使いました物ですだ。あの折りに奥方様の物は全て焼け落ちてしまいましたが、使わなくなった道具やお着物の一部は庄屋様の蔵においときましたで、今回、役立つ訳ですのう。」
 「ほう。そうじゃったか。それでは運んで来るで、梅の方も宜しく。」

 権はサッと飛び出したが、実のところは笑いを堪える限界だった為だった。

 「どれどれ、どんな具合だかね。」
 「イヤーッ、触らないで!!」
 「うるさいのう。姫様が使い易くなけりゃならん。」
 「ヒヤーーーッ!!」

 梅がいきなり達麻の乳房を強く掴み上げた。達麻としては在る筈のない腕で振り払おうともがくのだった。

 「フム・・・。やはり、まだまだじゃの。肝心の蜜壺はどうなんじゃ。」
 「ヒギーーッ!! ダメーーーッ!!」

 陰唇をめくり上げ、元はペニスだったであろうクリトリスを摘み上げた。更に指を挿れられ、内部を覗き込まれている視線が、本当に痛い程突き刺さってくるのだった。達麻は必死で足を閉じる意識なのだが、感覚的には自分の手足が梅を通り抜けてしまうとしか感じられなかった。

 泣き喚く達麻をよそに、梅は身体中を撫で上げ、揉みしだくのだった。

 「ふむ。汁は良く出る様じゃの。奥方様のやつじゃが、使えるかのう。」

 梅は包みの中から大きな張り型を取り出した。象牙でできているのだが、かなり使い込まれているせいか、汚れた様に黒みがかっていた。

 「ほれ、よく見ておきなされ。これからは、姫様が不在の時はこれで慰めてやるから。と言うよりも、姫様が戻られた時に、いつでも蜜壺が使える様に、常に発情(さか)らせておく為じゃからのう。」
 「イヤーーーッ!! ボクは男だよーーっ!! そんなのをオマンコに挿れないでーーっ!!」
 「ワハハハ・・・。男には挿れられんわな。だから、これが挿れられるのは女という事じゃが、お前様は単なる蜜壺じゃ。それそれ。」

 その張り型が達麻の膣に押し込められた。

 「ヒーーーーッ・・・!!」

 堅くて冷たい張り型には繭のペニスの様な優しさがなかった。単なる異物が押し込まれていた。しかし肉体的には更に高められているという事なのだが、達麻には陵辱としか感じられなかった。

 「おう! 梅、運んできたぞい。」
 「ご苦労様ですの。ほう・・・、懐かしい物ですの。」
 「随分以前に使った物だが、庄屋様がきちんと手入れなさってくれておったわ。」
 「という事は、この日のある事を予想なされてか?」
 「まさか。奥方様のお使いなさっておった物じゃ。粗末には扱えないからじゃよ。」

 達麻は涙を振り払って、権の運んできた物を見たが、意味が分からなかった。

 「それでは、やはり歩ける様になって頂かねばなりませぬな。」
 「こちらか。」

 権は輪投げの的の様な道具を床に置いた。丸い板に円柱の棒が立っているのだが、一本ではなく、二本立っていて、片方が少し内向きに斜めになっている。

 「慣れぬ内はかなりつらいぞい。」

 梅は達麻の胴を掴み、軽々と持ち上げた。

 「ヒーッ!!!」

 その輪投げの的の上に掲げられた時、達麻には意味がやっと分かった。

 「イヤーーーッ、そこに突き刺す?」
 「騒がしいのう・・・。黙って良い蜜壺になればよいのじゃ。」
 「ギャーーーーっ!!!・・・」

 棒が肛門に突き刺さり、更にもう片方の棒が膣を貫いた。

 「ダメーーーッ、抜いてーーーっ!!」

 もがいて暴れようとすると、肛門と膣口が裂けてしまいそうな痛みが走る。

 「ほれ。暴れると、ケツの穴もマンコの穴もちぎれてしまうよ。身体を安定にさせないと、痛いだけだから。」
 「痛い! 抜いて、ダメーーッ!」

 達麻は言われる迄もなく身体を真っ直ぐに立てようとしていた。そうする事が直腸と膣に填まり込んでいる丸棒の痛みから逃れられるのは分かった。しかしバランスが取れず、前後左右に身体が触れる事により、体内への痛みに、更にバランスを崩してしまうのだった。達麻の意識としては、手足を弥次郎兵衛の様に伸ばしているつもりだった。

 「おうおう、下手くそじゃのう。主に手足は無いのじゃぞ。尻で支え、乳を動かして安定を保つしかないのに。」

 確かにその通りなのだが、どうしても手足を動かしてバランスを取ろうとしてしまう。いつ迄も達麻の悲鳴が途絶える事はなかった。

 「ウーム、ここ迄下手くそとはのう。やむを得ぬ。おいおい鍛練するとしようが、権様、こやつの泣き声には閉口しますわ。何とかなりませぬかのう。」
 「そうじゃのう・・・。おう、あれがあったか。」

 達麻は首を支えられ、バランスが取れた事で、少しホッとした途端、権が目の前にかざした物を見て、再び悲鳴を上げた。しかし、その悲鳴もすぐにくぐもった声になった。

 「ムァガーーーッ!!」
 (ワーーッ!! 革袋?! これ、イヤーーーッ!!)

 あのつらかった闇と無音の世界に放り込まれた。目が見えない事で、更にバランスが取り難くなり、膣と直腸に激しい苦痛が走る。しかし乳首を強く摘まれた事でバランスが取れたのだが、その痛みも強烈だった。身体を揺すって逃れる事はできない。ただひたすら耐える事しかできなかった。

 (痛いよ・・・。オッパイが・・・。ウッ、もっと身体を反らさないと痛い・・・。)

 手足でのバランスが取れない事は頭では分かっていても身体が応じない。それでも乳房に意識を集める事で、少しでもバランスを取る様にするのだった。それは外から見ている権にも分かった。

 「おおっ・・・。この坊主・・・。」
 「権様、何か?」
 「梅には分からんか。手足の念が少し減っておる。奥方様の場合には何日か掛かった筈じゃったが、この坊主にの革袋は効果があるのう。」
 「姫様の話ではこの袋が懐かせるのに役に立つとの事でしたが。ほんにのう。」

 達麻にとり、乳房と尻でバランスをとろうとする意識が手足の念を体内に集める事になる。乳房には手の、尻には足の念が集まる。そして身体が前後に揺れる事を防ぐ意識として、膣で張り型の棒を強く握る事も、無意識の内にしていたのだ。

 「ふーむ・・・。女であった奥方様よりも、男だった達麻の方が上達が早いというのも不思議じゃのう。」
 「私も最初は嫌々ながら、しかも奥方様がお気の毒で、うまくできませんでしたからの。しかし、本当にこの子が男だったとは思えませぬのう。しかもまだ成ったばかりというのに。」
 「まあ、彼岸の者じゃて、顔付きや肌はまるで女子だったが。」
 「そういう意味ではござりませぬ。この汁でございます。」
 「汁?」
 「ほれ。女陰からの汁でございますよ。こんなに溢れ出しておる。無理矢理鍛練しとる訳じゃから、相当につらいし、嫌がってる筈だで、普通ならこんなに出る訳がない。権様、花薬は使っておらんじゃろう?」
 「おう、当たり前じゃ。」
 「心の状態はとにかく、身体はすっかり淫乱な女になっちょるっちゅう事ですわ。」
 「奥方様に比べて、身体がずっと小柄じゃが、こいつは使えるかのう。」

 権が運んできた物の内、太い木を四角く切り、姫達磨の身体を填め込める様にくり抜いた道具だった。

 「ちょっと緩いかも知れませぬが、練り上げるに障りはございませんじゃろ。」

 梅は達麻の胴を掴み上げ、ズボッと引き抜いた。そして目の見えない状態の達麻は、その凹みに填め込まれたのだが、背中全面から無くなってしまっている腕の付け根の部分迄が冷たい物に触れているのは不安だった。

 「な・・・何? ウッ、動きにくい。あっ・・・これ・・・。」

 それは不安ではなかった。いわば絶望だったのだ。両側が何かに触れているという事は、腕が無いという事を常に思い知らされるからだった。そして下腹部の方も股間の部分以外はやはり凹みに触れているのだ。強い嫌悪を感じ、起き上がろうとするのだが、身体のバランスが理解出来ず、しかも巨大な乳房が重りになっていて、腹筋で屈曲しようとすると、尻の方が持ち上がってしまうのだった。

 「さて、夕餉の支度迄は練り上げを続けましょうぞ。」

 梅は蠢いている達麻の乳房に両手を置き、まるでうどんや蕎麦をこねる様に揉み上げ始めた。

 (ウワーーッ! ダメーーッ。おっぱいが痛い!)

 身体が動かせないので、身体が凹みに填まっている事もあり、梅はそれ程力を入れずにしっかりと揉む事ができる。

 「ほれ、もう汁が流れ出してきましたぞ。やはり奥方様の時よりもずっと早うござりまするな。」
 「そうなのか。さすがに奥方様の時には儂は遠慮しておったから分からんのだが。」
 「この姫の場合は宜しいのか?」
 「まあ、姫には違いないが、元々の男だった頃から見知っておるでのう。坊主が自分をまだ男だと思っておるのじゃが、儂もまだ完全に女とは思えぬでのう。ま、姿形は完全に女というか、奥方様同様の蜜壺ではあるが。こんな姿に成ったにしても、繭様を恨んではおらぬし、まるで仔犬の様に懐いておるで、あとは手足の念を乳と尻に移動させれば良い訳じゃ。」
 「それは私には分からぬ事ですじゃ。ですが、奥方様の時には最後の方は分かりましたぞえ。乳と尻をご自分で動かせる様になりましたからのう。」

 梅はまるでうどんをこねる様に達麻の乳房を揉み続けていた。

 「さて、こちらの方も鍛練しませんとな。」

 (ヒーッ、オッパイがつらい・・・。まるで・・・胸にもオチンチンが在るみたいで・・・。気が狂う・・・。お願い、やめてーーっ・・・。ウッ・・・?! イヤだーーーっ、オマンコに変な物挿れるなあーーっ! アグッ、目が回る・・・。ダメーッ、お姉さんのオチンチンにして・・・。アウッ・・・、ボクは・・・、お姉さんのオチンチンをオマンコに挿れたいのか? イヤダーッ! ボクは男なんだぞーーっ・・・。ヒーッ、つらい・・・。)

 達麻は意識を乳房と膣に集め、しかも手足を動かそうとする意志が全く効果がないという事を身にしみて感じる。それは残留思念をより減少させる働きをする。

 権は少し驚きの眼差しで、その念を見詰めていた。





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