「早いな・・・。もうすぐ開花するんだね。」
 「うん・・・。木の上の方でツボミがたくさん・・・。咲いたらあれがボク達の子宮に潜り込んでくるのか。」

 「お二人さん。多分ちょっとのお別れよ。」
 「エッ?」
 「ほら、この前言ったでしょう? この木から離れて・・・、何ヶ月かしたらみっともない姿を見せる事になるわ。あ、やっぱりね。」

 振り返るとメイド達が内診台を押してきたのだ。

 「トニー、分かっていますよね。」
 「はい・・・。」
 「あら、意外と素直なのね。」
 「抵抗が無駄なのは分かってます。どっちにしてもスーツの受精卵を入れられてしまうのですものね。それにこの二人の前でジタバタできないし。」

 内診台に自分から上がり、足を広がっている台の上に乗せる。積極的にメイド達に従っているとはいえ、スーッと涙が流れていた。
 タミオ達も涙を流して見詰めていた。

 不思議な医療器具で膣を開かれ、モニターにトニーの内部が映し出された。そしてモニターの絵はズーッと奥に入っていき、タミオには初めての映像なのだが、子宮口から内部に入っていくのが分かった。そこに細い管が先に進み、子宮壁を何度か擦ってから戻る。

 「はい。終りよ。」
 「そのままちょっとの間安静にしていてね。着床促進剤が入ってはいるけれど、動くと流れ出してしまうかもしれないから。」

 トニーは両手で顔を覆っていた。肩が震え、嗚咽を漏らしていた。

 「これで・・・、これで私の人生は終わったわ。今迄は男から女に成っただけ。それでも人間だった・・・。それが・・・もう人間では・・・なくなったの。家畜・・・、セックスの道具・・・、あるいは活きたままのダッチワイフ・・・。」



 しばらく内診台に乗せられたまますすり泣きしていたトニーだったが、ハッとしたように起き上がろうとした。その様子をジッと見詰めていたタミオ達もトニーの肛門から根がまるで生き物のように抜け出ていくのが見えた。

 「ハアーーッ・・・。やっと女の木から解き放たれたけれど、それは私の胎内でスーツが育ち始めたという事・・・。女にされてしまうという悲しみは終わったのよ。だけど・・・今度は人間でなくなるという苦しみが・・・。皆さん、さようなら。この次に会うのは私が人間でなくなる時ね。」

 台から下ろされ、両側からメイド達に支えられてフラフラと部屋から出て行く姿は、まるで死刑囚が死刑台に向かうような姿だった。4号室に残された3人とも涙を流し続けていた。

 「二人とも・・・、悲しいのは更にこの後よ。」

 一番奥に座っている女が涙声で話し掛けた。

 「この後って?」
 「トニーさんも言っていたでしょう。この前妊娠させられて出て行ったヒートリーさん。多分その台をそこに置いたままという事は、きっとここでサイバースーツ、メイド達はデーモンスーツって呼んでいるけれど。それを産まされ、着せられてしまうのよ。」
 「デーモンスーツ・・・?」
 「そうよ。文字通り悪魔のスーツなのよ。着る前なら単に女性にされただけ。トニーさんも言っていたけれど、着せられてしまったら・・・、自分の身体ですら自分の物ではなくなってしまうの。たとえ眠ってしまっていても、身体だけは次々にセックスさせ続けられるのよ。一生・・・。」

 二人は、特にタミオの場合はピンクみたいなダッチワイフにして欲しいと言ってしまった事を今更ながら悔いていた。


 「イヤーーーッ、ダメーーーッ!!」

 ドアが開いた途端激しい悲鳴が響いた。
 そこにはメイド達に引っ張り込まれる素っ裸の妊婦だった。それが話しに出ていたヒートリーという女だという事が分かった。

 「ダメッ!! 私は・・・、私は人間で居たい!! 助けて・・・。」

 その悲痛な叫びは本当に死刑台に引きずり出される姿だった。
 それでもメイド達の力は強い。ソートリーを軽々と内診台に持ち上げ、革ベルトで拘束する。そして超音波注射器を尻に押し当てた。

 「はい、出産促進剤の注射をしましたよ。」
 「アウッ・・・、おなかの中が・・・動く・・・。イヤーーーッ!! 産みたくない・・・。で・・・出ちゃう・・・。ダメーーーッ!!」

 全員の見詰める中、ヒートリーの膣口がこじ開けられるように開き始め、羊水が流れ出てくる。そして肉の塊のような物が捻れながら出てくるのだった。
 本当の出産すら見た事のない者達にはグロテスクにしか感じられない。それでも目を離す事はできなかった。赤ん坊と異なり、大人の手足が出てくる。メイドがそれを引っ張り出した時、ヒートリーは断末魔のような叫び声を上げた。
 羊水で濡れているそのおぞましい塊を広げると、それは一見オールインワンのような、そしてポリエチレンのような艶があった。

 「ケンは見るのは3度目かしら? だけどこちらの二頭は初めてよね。」

 『二頭』と言われた事が自分達を人間扱いしていないという事なのだが、そんな事はどうでもいい事だった。

 「これが着たら絶対に脱げないデーモンスーツよ。ここを良く見てご覧なさい。」

 広げられた革のような部分の股間の場所には、肛門部と膣の部分に大きな突起が付いている。それを着せられるという事はその部分に填め込まれたら二度と外せないという事も分かる。

 「さあ、人間のヒートリー。お別れよ。」
 「イヤーーーッ!!」

 内診台で暴れているヒートリーの足にそのデーモンスーツの足が宛がわれた。スルスルと足が吸い込まれていく。内診台の拘束が解かれると、ヒートリーは泣きながら、そして悲鳴を上げながら飛び降りた。そしてその革を脱ごうと焦っている。しかし足はドンドン填り込んでいき、下腹部の2カ所の突起が填り込んでしまうと絶望の悲鳴を上げた。生き物であるデーモンスーツはそのまま自分の手でヒートリーの手をスーツの腕に押し込む。


 「生きているみたいな・・・。」
 「あら、このスーツは生き物よ。遺伝子操作をされていて、栄養はお尻の中で吸収しているの。排泄物を栄養にしているの。それだけではないわ。精液も栄養にするので、膣に填り込んだ部分が吸収するの。生き物ですから栄養補給は本能的なものです。ですから、自己保存の為にもひたすらセックスさせてしまうのよ。」
 「そしてこれがこのスーツのリモコン。今はまだ飼い主が決まっていないのでこれで操作するのですけれど、持ち主が決まったら、その方の思う通りに動かされるの。ただ思うだけでいいのよ。精神感応とかで思うだけでスーツが動いてくれるの。試してみましょうね。」

 リモコンを持ったメイドが

 「はい、疲れているところ大変でしょうが、出産したばかりだからお乳が出るわ。皆さんの前で搾って見せて上げましょうね。」

 ヒートリーは泣きながらタミオの前まで歩いてきた。と言うよりも歩かされている。そして自分の乳房を揉みしだく。チューッと白い液がほとばしる。

 「違うのよ。私がやってるんじゃない・・・。」
 「そうよ。私の指示に従っているだけ。勿体ないわね。搾乳室に行って、しばらくは雌牛ね。」

 クルッと向き直り、ヒートリーはスタスタと歩き出す。首だけを無理に回し、

 「みんな・・・さようなら・・・。」

 それを言うだけだった。嗚咽を漏らしながら堂々とした歩きで部屋を出て行った。

 「あれが・・・デーモンスーツ?」
 「ええ・・・。」

 ケンも涙を拭っていた。

 「順番からすると次の開花前が私・・・。」
 「あの服って・・・。」
 「見たでしょう? どんなに嫌がっても強引にセックスさせられるのよ。ヒートリーさんもあのまま乳搾りの雌牛に成るか、セックス道具として売られていくの。そして私も・・・。」

 3人抱き合って泣き続けるのだった。しかしそれもすぐに終わる。開花が始まったのだ。ボーッとし、ツルの樹液を飲みながら木の実を食べ続ける状態になってしまうのだった。合間に意識が戻ってきた時もデーモンスーツを見た時の悲しみは消えていた。そしてタミオはジャニーの事を、ケイはコーネルの事を思い続け、早く買い取って貰う為にダッチワイフに成りたいと思い始めてしまうのだった。



 「クーッ・・・、ちっとも慣れない・・・。」
 「脱力して気分を落ち着けていた方がいいわよ。産まれそうになったら一気に息めばいいの。あっ・・・、来たわ。」

 ケンが大きく息むと黒い種がボロボロッと弾き出されてきた。

 「あっ、ボクも来たみたい・・・。イテテテ・・・。」
 「まあ、タミーさんのは今回も大きい。」

 全員が種出産を終え、それぞれの股間に何個もの種が転がっていた。その収穫にメイドが来たのだが、やはりタミオの種には驚いていた。

 「今回のも大きいわねえ。しかも粒が揃っている。どれも6センチ近いわ。」

 タミオはフッと苦笑いをした。

 「大きいとそれだけ最初がつらそうですよね。」
 「まあね。あなた達の場合は5センチ程度迄の肛門拡張で済んだけれど、今の子達は6センチだからかなり時間が掛かっているわ。おかげで家畜としての飼育が少し遅れています。だけど、タミーの種で発芽した子の飼育は凄く順調。木も凄く早く成長するし、最初だけが時間が掛かるけれど、その後のスピードはとても速いのよ。」



 「ハーッ、種を産むだけっていうのはむなしいわね。」
 「やっぱり赤ちゃんを産みたい? ケイさんは。」
 「それは当然でしょう? せっかく女に成ったのに、産むなら赤ちゃんよ。でもいいの。種を産んでいると子宮も産道も丈夫になるらしいから、本当に赤ちゃんを産む時は楽になるらしいわよ。ただ・・・。」

 今迄の笑顔が急に曇った。

 「それは私のご主人様が妻として扱ってくれる場合。ただのダッチワイフにされたら妊娠はさせて貰えないわ。妊娠期間はダッチワイフとしてのお仕事に差し支えますからね。あなた達にも言っておくわ。買い主が現れた時、いいセックスをして気に入って貰う事よ。売れ残ったりしたら、闇の世界で一生を終えるのよ。私達を買いに来る人達ってかなりの資産家か高級官僚が多いわ。勿論表に出られる可能性はほとんど無いけれど、それでも専属であれば・・・。場合によってはご主人の子供を産む事もできる。どんなにイヤな事でも悦んでお勤めして上げるのよ。それがダッチワイフとしては一番の幸せなのですから。」

 開花終了後の精神的安定期にも関わらず、涙を流す事になった。



 ドアが開き、新たな仲間が4号室に連れられてきた。まだ幾分少年の面影が残ってはいるが、それはタミオ達だからこそ分かるので、普通に見れば完全な少女だった。

 「今日は・・・。」

 ケイが声を掛けたが、その少女は涙を拭ったまましばらくは黙り込んでいた。

 「それ程長い期間ではないけれど、私達と一緒なのですから、宜しくね。」
 「はい・・・。」

 小さな声で返事をした。

 「どうされるかは分かっているでしょうし、この部屋の意味も分かるでしょう? 絶望していると思うし、私が何を言っても慰めにならない事は分かっているわ。だけどつらさを吐き出すと気持ち的には楽になるわよ。」
 「そうね。ここではとんでもない事をされるのだけど、それでもどうすれば楽にできるかは教えて上げられるわ。」
 「だけど若いわね。坊や何歳?」
 「『坊や』って言われるのは昔はイヤだったけど、今は嬉しいです。もう『お嬢さん』って身体なんですけど。ボク、15です。」
 「あらあ・・・、やっぱり若いのね。どうしてこんな所に?」
 「ボクは大好きな先輩が居たんです。」
 「それで?」
 「ボクの通っていた学校の14年生の素敵なお姉さんだったの。当然ボクなんか相手にして貰えないと思ってたけど、コンパか何かで酔っていた時にちょっと声を・・・。そしたら部屋に誘ってくれて・・・。舞い上がっていたらいきなり裸にされ・・・。」
 「それで、それで?」

 皆、興味深そうに身を乗り出してきた。

 「すぐに・・・、その・・・。」
 「まあ。でも一応は望みが叶ったのよね。羨ましいわ。」
 「あ、そうじゃないんです。」

 その娘は顔を真っ赤にし、恥ずかしそうに小声になった。

 「ボクがされちゃったんです・・・。」
 「された? でもいいじゃない。」
 「そのお姉さん・・・、ニューハーフだったんです・・・。だからボクが・・・。」
 「まあっ!! だけどそれがなぜここに来る事に?」
 「お姉さんは心は女だけれど、身体は男だから、お相手は女じゃないとダメだって・・・。それで只で性転換できる所があるからって・・・。ボクはお姉さんが望むならって一大決心してここに来たのに・・・。」

 呆れ顔でその少女を取り囲んでいた。

 「ここは確かに女性化されるけれど、セックスの為のダッチワイフを作る所なのよ。」
 「ええ、ボク・・・騙されてたんです。1号室で透明な道具に入れられた時、お姉さんが来てボクのお尻に・・・。そして女の木の種を入れたのも・・・。楽しそうに笑ってました・・・。ボクはお姉さんの為に女に成ろうとしてたのに・・・。」

 顔を埋めて泣き崩れていた。

 「可哀想にね・・・。好きで信じていた人に騙されてセックス道具にされてしまうなんて・・・。」
 「でも若い時の出産って、つらいんじゃないのかしら・・・。」
 「エッ・・・、出産? ボクが?」
 「ああ、赤ちゃんを産むのではないのよ。むしろ赤ちゃんを産めるならその方がずっといいのだけれど。あなたも入れられた女の木の種。それを産まされるのよ。肉体的にはそれ程でもないけれど精神的には悔しくてつらいのよ。種を産む事によってますます女性化が進むらしいわ。」
 「ああ、その話は聞きました。女の木って独特な方法で種を作るって。本当なんですか?」
 「ええ、本当よ。ボクとケイさんは既に2回。ケンさんは3回でしたね。」
 「そうよ。そしてその次は・・・。」

 少女はケンの醸す雰囲気に黙りこくってしまった。

 「色々お話ししたいけれど、今は何を話してもつらく悲しいだけ。開花期の前後は多分香りのせいで精神が高揚し、悲しみも薄れるのよ。その時ならどんなつらくて酷い事も平気でお話しできるわ。だからそれ迄は樹液と木の実を食べて寝ているといいわよ。」
 「そうね。どうせ他の事もできないし、つらさを感じるのは短い方がいいものね。」



 「この臭いを嗅ぐと頭がボーッとしてしまうんですけど・・・。」
 「そう。ミッチの木にもツボミがあるでしょう? ボク達の木の方はもっとたくさんあるけど・・・。それが咲くと・・・。」
 「私の最後の種の出産・・・。そして・・・。もう、諦めていたのに・・・。眠りから覚めたら・・・。お休み・・・。」

 一斉に開花が始まった。4人はそれぞれの木の根本で眠りに落ちていた。



 「ワッ・・・、これ?」

 ミッチの驚きの声に目を覚ました。

 「お早う・・・。ああ、それが女の木の種を産み付けられたのよ。」
 「これが種・・・なんですか?」
 「完全に女に成ったという証拠らしいのよ。もう少しで陣痛が来るわ。そしたら種を出産するのよ。」

 ミッチは膨れた腹部を恐る恐る撫でていた。

 「とうとう女に成っちゃったんですね・・・。」

 タミオはその先の言葉を言う事ができなかった。ケンの悲しそうな顔を見ると。

 「ウッ・・・、来たわ。」

 ケンが種出産の為に木に寄り掛かり、立て膝の足を開いて上を向いて大きく息をしていた。

 「ミッチ。あの体勢が一番楽よ。私達は慣れたから随分楽になったけれど、最初は緊張してしまって結構つらかったわ。精神的にはつらいでしょうけれど、肉体的なつらさもイヤですものね。アッ・・・ボク・・・。」
 「ウッ・・・。ボクもおなかの奥が痛く・・・。ツツッ・・・。」

 全員に陣痛が来、そして次々に種出産を迎えた。



 「フーッ、終わったわね。エッ・・・?」

 ミッチ以外が驚いて大声を上げた。

 「な・・・何ですか?」

 「ミッチの種・・・。タミーのと同じ位・・・。」
 「あ、本当。数は少ないけれど、大きいわよ。」
 「あのう・・・大きいと何か?」

 いつの間にか後ろに種集めの為にメイドが来ていた。

 「いいわねえ。この娘もいい種を産むわ。」

 そして所長のキクノもやってきた。

 「所長。おっしゃっていた通り、この娘も大きな種でしたよ。」
 「やはりね。適合度が高いと大きい種になるのは確定的ですね。こういう娘ばかりだったら、野生の種収集の苦労が減りますよ。」

 オズオズとタミオが尋ねた。

 「ミッチの適合度ってどのくらいなのですか?」
 「タミーと同じよ。初期値が97%。現在98%。あ、タミーの現在値は98.5%になってるわ。ダッチワイフに成る時はほぼ完璧な値になっているはずよ。」
 「タミーさん・・・、適合値って何ですか?」
 「教えて上げていいわよ。さあ、早速この種を調べないと。」

 メイド達が引き上げていってから、タミオは不安に苛まされていた。最初はジャニーの妻になりたいと思っていたのだが、その経過でのデーモンスーツを着せられてしまう恐ろしさが湧いてきたのだ。タミオが話せないようなので、ケイが話を引き継いだ。

 「ミッチはピンクさんっていうメイドさんを見なかった?」
 「ピンクさん?」
 「ええ、木の実採集担当だそうで、あまりここには来ないのですけれど、途轍もなくオッパイの大きなメイドさんなんだけど。」
 「ああ、あの人かな? ここのメイドさん達はみんな胸が大きいけれど、まるでバレーボールを二つ抱えているようなメイドさんが居ました。」
 「そうそう。それがピンクさん。ピンクさんがこの星で最初にダッチワイフに成った人なんだそうよ。そしてデーモンスーツの適合度が100%だったんだって。俺にはその適合度というのがどういうものかは分からないけれど、ダッチワイフとしては最高の機能になるんだそうなの。タミーもほぼその数値なので、ピンクさんみたいに成るそうなのよ。」
 「エッ、あんなオッパイに?」
 「それはどうかな。確かに俺達、オッパイは大きくされてるわ。だけどどんなに頑張ってもあの大きさは無理よ。俺達は種出産が2度目ですけれど、あと2回産まされても、さすがにあの大きさには・・・。」
 「そうですよね。いくら性能がいいって言ったって、ダッチワイフの性能なんて・・・。」

 その時やっとタミオが口を開いた。

 「違うのよ・・・。今迄のダッチワイフにされた人は種を入れられてから1年と少しでここを出てダッチワイフにされていってるわ。だけどピンクさん仕様の場合は3年程度って言ってたのよ。だからボクの場合、少なくとも2年以上はここで種を産まされ続けるのよ。その間も女性ホルモンタップリの樹液と木の実で・・・。1年でこんな身体に成ってしまうのに、それがあと2年も続けられてしまうのよ。」
 「アッ・・・。そしたら・・・。」
 「だけど・・・、オッパイがどんなに大きくされたとしてもダッチワイフにされてしまうのだったら関係ないわ。闇の世界でセックスされ続けるのだから・・・。」
 「でも・・・。うまく逃れられたとしたら・・・。」
 「それは絶対にないの。諦めた方がいいわ。デーモンスーツを着せられたら完全に自由を失う事になるの。リモコンで操られる身体に成ってしまうの。絶対に脱げないのよ。ボク達がこの部屋を出られるのはこの根が抜け出てから。その根が抜ける条件が妊娠する事なんですけど、そのデーモンスーツを自分の子宮内で育てさせられるの。」
 「それ・・・本当の事なんですか? メイドさんに聞いてはいたけれど。」
 「ええ、次の開花前にミッチの来る前に出て行ったヒートリーさんが来るはず。私達を諦めさせる為なんでしょうけど、そのスーツをここで産ませ、着せられる所を見せつけられるのよ。」

 ミッチは震えながら泣いていた。淡い期待、ほとんど無い可能性すら完全に断ち切られたからだった。



 「ツボミが出てきたのね・・・。」
 「ケイさんは4回種出産をしてるから・・・。」
 「多分・・・。タミーはまだなのかしら・・・。」
 「分からないわ・・・。アッ!」

 内診台の運ばれてくる音が聞こえた。そして1台だけだった。

 「さあ、ケイ。あなたの番よ。」
 「ウェンディーさん・・・。ボクは?」
 「タミーはまだ先よ。あなたはピンク仕様ですものね。」
 「分かってます。早いか遅いか・・・、ダッチワイフに成る事は決まっているのだから・・・。」

 ケイは顔を覆いながらも自発的に立ち上がり、内診台に乗る。嗚咽しながらも素直に足を広げ、デーモンスーツ受精卵を受け入れる。

 「はい、終了。」

 しばらくは静かな部屋にケイのすすり泣きの声だけが聞こえていた。
 そして女の木の根が動き出した時、大きな泣き声に変わった。

 「タミー、ミッチ・・・。行ってくるね。人間としての俺とはお別れね。お先に・・・。」


 4号室に残された二人は互いに抱き合ったまま泣き続けるのだった。



 そして後から4号室の送り込まれてきた仲間達が次々にデーモンスーツを着せられて居なくなっていくのだが、タミオとミッチだけはいつ迄もそのままだった。卒業していった家畜達の残した女の木が段々と多くなる。新たに連れ込まれ植栽される木はタミオ達の位置からも随分離れた場所になっていく。

 「ボク達はピンクさん並みのオッパイにされる為にいつ迄もここに居るのですか?」
 「そうよ。それはあなたが望んだ事だったでしょう?」
 「ボクは? ボクはタミーさんとは違って、そんな事は望まなかった。だけどもうメイドさん達よりもずっと大きなオッパイに成って・・・。」
 「ああ、それはあなたの適合度が凄く高いので、望むと望まないに関わらずピンクさん仕様なのよ。それに二人の産む種は凄く成績がいいのよ。この部屋が野生の女の木と森のようになればその種は不要なのですが、それ迄の分として、かなりの数が必要なのですって。それにこの大きい種だと私達も楽しいし。」
 「楽しい・・・?」

 メイドは笑っていた。

 「あなた達の場合は5センチ程度だったけれど、今の種はほぼ6センチ。もっと大きいのもあったけれど。それだと肛門拡張にかなり時間が掛かるのよ。それだけ男の子を虐め続けられるから楽しいのよ。ここの木にしても、最初の頃から比べれば、4号室に運ばれる木がかなり大きくなっているのよ。そしてそれだけたくさんの肥料を必要とするので、男の子達はかなりたくさん木の実を食べなくてはならないの。だから女性化が促進されるの。最初の肛門拡張で掛かる時間よりも、途中の女性化はずっと早いのでトータル時間短縮になっているわ。」

 「ボク達ってみんなを苦しめているんだね。」
 「うん・・・、騙されてここに連れられたのがついこの前だった気がします。今でもこんなオッパイの女に成ってい待っているのが夢みたいな気分・・・。」
 「そうよね。頭がハッキリしている時間は短いから、ボクもついこの前まで男だったって気がする。」
 「ああ・・・もう開花期なのか・・・。また種出産までは眠ってしまう・・・。」
 「タミーさん・・・、お休み・・・。」
 「お休み・・・、ミッチ・・・。」



 実時間で2年であっても、意識混濁の時間は長いので、二人にとってはそれ程の時間には感じない。目覚めるたびに乳房はドンドン大きく成っていく。

 「ミッチのオッパイも随分大きく成ったわね。」
 「ほら、比べてみるとタミーさんの方がずっと大きいわよ。」
 「でも、身体の大きさが違うから、バランス的にはミッチの方がずっと大きく見えるわ。」
 「これだけ大きいと、歩くのも大変そうよ。」
 「そうね。立った時、持ち上げていない時はかなり反り返らないとならないし。」
 「そろそろかしら・・・。ツボミができてきたわ。」
 「ボク達だけ離れた場所になってしまったので、向こうの人達の様子が良く分からないけれど・・・。」
 「頭がボーッとしている期間が長いので、今度が誰だったかが分からなくなっている。」
 「アッ・・・、来たわよ・・・。」

 内診台が運ばれてきた。1台だけなので奥の方の誰かだと思っていた。しかしその台がタミオ達の前に止まった。

 「エッ? ここ?」
 「タミーさん? それともボク?」

 二人とも真っ青になっていた。

 「今日は二人ともよ。」
 「二人? ボク達一緒に?」
 「そうよ。種は充分に集まりました。長い事お待たせしましたね。いよいよ4号室卒業と同時に人間卒業よ。」

 いつかは来ると分かっていた事だったが、いざ目の前に内診台が置かれていると涙が止まらなかった。ミッチは失禁してしまっていた。

 「どちらが最初?」

 ミッチは身を縮めて泣き続けていた。

 「それじゃミッチ、ボクが先に行くわね。今迄ずっと一緒だったのですから、ダッチワイフに成るのも一緒よ。」

 しかしその声は涙声になっていた。立ち上がり、内診台に上がる。そしてデーモンスーツの受精卵を子宮に送り込まれる時、ミッチは大声で泣き出すのだった。奥の娘達も抱き合って泣いていた。

 「はい、終了。根が抜けたらミッチの番よ。」

 (ああ・・・、ボクもとうとう人間でなくなってしまう・・・。自分自身で自分を人間でなくしてしまう物を産まされるなんて・・・。あっ・・・。)

 ピクッと動いた時、メイドが不思議そうに尋ねた。

 「分かったの?」
 「ええ・・・。今・・・着床・・・っていうの? ボクの子宮の中で命が・・・。」
 「ヘーッ、やっぱりね。ピンクさんも受精が分かったって言ってたのよ。さすがに最高級ダッチワイフになる人は凄いわね。ああ、確かにそうね。根が抜け始めたわ。」

 女の木の根が腸内で蠢きだした。長い事感じる事のなかった排泄の感覚が起きる。それは久しぶりに感じる快感だった。息みもせずに腸が空になっていく感覚が心地良かった。

 「さあ、ミッチ、あなたよ。」

 タミオが台から下りると、ミッチもガタガタ震えながら交代する。

 「怖い・・・。タミーさん・・・。」

 ミッチの差しのばした手をタミオはしっかり握りしめるのだった。そして同じ作業が繰り返される。モニターを見る事はできなかった。と言うよりも涙で見える状態ではなかった。

 そして・・・。

 「アッ・・・、これ?」
 「ミッチ分かった?」
 「ええ・・・、これが新しい命なのね。」
 「悪魔の命だけれど・・・。」

 二人とも嗚咽を堪えきれないでいた。



 根の抜けた二人は久しぶりに歩く事ができた。そして二人の思っていた通り、巨大な乳房がその重みを両手にしっかりと感じさせていた。

 「デーモンスーツ出産迄はこの部屋で待機ですよ。」

 案内された部屋はそれ程広くはないのだが、それぞれにベッドが用意されていた。精神的疲労の為か、ミッチはすぐにベッドに横たわり、そのまま眠りに落ちた。タミオもしばらくは自分の身体を見ていたが、いつの間にか同じように眠っていた。



 「お早う・・・。」

 ミッチの声で起こされた時、窓から陽が射していた。

 「あ、お早う・・・。そうだったわ。私達、女の木から離れていたのね。」
 「ええ。しばらくぶりのベッドでしばらくぶりに熟睡できました。」
 「あら・・・。お尻が・・・変・・・。」
 「タミーさんもですか? ボクも」
 「ずっとお尻には女の木の根っこが入っていたから、肛門が拡がったままだったのよ。それがなかなか戻らないから・・・。」

 「あら、お早う。もう起きていたのね。」

 メイドがいつもの木の実を盆に盛って運んできた。

 「デーモンスーツは大体3ヶ月で育つの。赤ちゃんよりもずっと早いから、それだけ余分に栄養を必要とするのよ。だからたくさん食べてね。」

 タミオ達はキッとした顔でにらんでいた。

 「それと、たくさん食べるとそれだけ排泄物の量が増えるわ。ご覧のようにここにはトイレがありません。それに木の実を食べると排泄物の中に発芽した芽がたくさんあるので、それをこの地域の周りで育てます。ですからあなた達の排泄は特別の容器に集めます。」

 部屋の隅のキャビネットを開けると、そこには不思議な器具が二人分用意されていた。透明な大きな椀状のカップが2個あり、座る部分らしい所に明らかに男根を模したディルドーが二つ突き出ていた。そして下には大きめの容器が台になっている。

 「使い方は何となく分かりますよね。大小便とも排泄はここでして貰います。但し、一度座ると30分程は乳房のマッサージと膣内ではバイブが駆動します。すぐにミルクが出るようになるでしょうが、その場合は搾乳機も兼ねます。」

 二人は恐ろしい物を見詰めるように震えていた。

 「宜しいですか? もし排泄物をこの容器の外に漏らした場合、当然罰があります。その台に座って貰い、固定された上で2時間程喘いで貰います。ただ、強度は強いですよ。あなた達はまだ女としての快感に慣れていないでしょう。場合によっては精神異常を起こすかもしれません。あるいは耐える事ができても、色情狂になってしまうかもしれません。ただ、ダッチワイフとしてはとても良い事なのですが。」


 タミオ達はテーブルに乗っている木の実と恐ろしい排泄器具を見比べていた。しかし空腹感が強く、無意識の内に木の実を口にしていた。

 「ウワッ・・・、食べちゃった・・・。」
 「タミーさん・・・どうしよう・・・。ボクオシッコしたくなってる・・・。」
 「この恥ずかしい機械で? ウウッ・・・ボクも・・・。」
 「それなら・・・二人一緒に・・・。」

 二人一緒にその器具に座る。肛門と膣に同時にディルドーを填める感覚はまだ二人には耐えられない責め苦だった。しかし強い尿意で一気にしゃがみ込むしかなかった。

 「アフッ・・・。」
 「クッ・・・。」

 膣内にディルドーが入っていると排尿しにくい。しかも直腸内で膨らんだので、慌てて立ち上がろうとしても抜ける事なく、そのまま息むしかなかった。

 「これ・・・、お尻の中で膨らんじゃってる・・・。」
 「30分このままなのかしら? ワッ、オッパイが・・・。」
 「痛い! 強すぎる!」

 3カ所同時に責められるのだった。二人には快感には感じられず、ただ痛みと刺激に悶えるだけだった。



 「これ・・・つらい・・・。」
 「おトイレのたびにこんな事されないとならないの?」
 「せっかくお尻が戻り掛けていたのに・・・。」

 それでもすぐに空腹に負け、木の実をたくさん食べるとその機械を跨がねばならなくなる。

 「つらいけど・・・。」
 「そうよね・・・。30分であれだけひどいのに、2時間なんて・・・。しかももっと強くなるなんて・・・。」

 やむを得ず何度も喘ぎ苦しまねばならなかった。
 常に三所責めを意識させられる事により、二人の心にはその箇所の意識が強く刻まれる事になる。



 「アハッ・・・、ミッチ・・・。ボク・・・変になりそう・・・。」
 「エッ・・・? 苦しいの? まだもう少し外れないんでしょ?」
 「苦しい・・・。目が回るのよ・・・。変よ・・・、変・・・。つらい・・・。」

 ミッチは心配そうにタミオの元に駆け寄った。

 「飛んでるのよ・・・。回ってる・・・。アーーーーッ!!」

 そのままガクッと仰け反り、白目を剥いてヨダレが泡となって流れ出していた。

 「ワッ、タミーさん!! 誰かーーっ!! タミーさんがーーっ!!」

 その叫び声にメイド達が駆け込んできた。

 「タミーさんが・・・。」

 メイド達はタミオの様子を調べていたが、やがて笑い出した。

 「ミッチ、心配いらないわ。タミーは、いったのよ。」
 「いった・・・?」
 「あなた達は女の身体に成ったけれど、まだ絶頂の経験はなかったのね。男と違って女は達する迄に時間が掛かるけれど、いった時は男よりも遙かに激しいのよ。」
 「そうね。すっかり忘れていたけれど、私も男だった時にはそれが凄い快感だと思っていたのに、女に成ってからは全然違うのでビックリしたわ。」
 「大丈夫なのですか?」
 「ウーン、これは癖になるわよ。あなたももうすぐ分かるようになるでしょうけれど、ダッチワイフとしての性能の高いあなた達ですから、きっと病み付きになるわ。ううん、心で拒否してもダメ。身体がセックスを望むようになってしまうのよ。」
 「ボクも・・・。」
 「そうよ。セックス依存症と言って、セックスしていて当たり前。していない事がつらくなるのよ。この機械は排泄を制御する為の物なのですが、実際には淫乱な色情狂にするのが本当の目的。ああ、ミッチも拒否は無理よ。あなた達は既に数日使っているのよ。身体がそれに慣れてしまっているの。麻薬的な効果のある機械なのですから。」


 「あ・・・。」
 「タミーさん・・・。大丈夫?」
 「ボク・・・いったい・・・?」
 「いったらしいですよ。」
 「いった? これが・・・。」

 タミオは台から下りてもボーッとしたままだった。

 「どうだったんですか?」
 「凄かったわ・・・。これが女としてのセックスなの?」

 ミッチは無意識に下半身をモゾモゾ動かしていた。

 「あ、ミッチ。まずいわよ。お漏らししたら罰が待ってるのよ。」
 「エッ? ボク、漏らしてない・・・。アッ・・・。」

 足に液体が滴り伝っていた。

 「ワッ、大変!」

 ミッチは慌てて台に座り込んだ。

 「フーッ、あれ・・・? ボク、やっぱりオシッコしたい状態ではないですよ。」

 タミオもその意味に気付いた苦笑いしていた。

 「ミッチ。女として催してしまっていたのよ。だけどそこに座ったら、30分間は離れられないのに。」
 「アーア・・・。まだ胸を揉まれるのが強くて・・・。排泄してないから動き始めちゃった。仕方ないですね。」
 「無理に耐えようとしないで、機械の動きに身を委ねていた方がいいわよ。」
 「それは分かります。緊張して力が入っていると、この機械を強く握り込んでしまうんですよね。のんびりとされるがままにしておいた方が気持ちいいし・・・。」

 タミオもそれは良く分かっていた。

 「アッ、こういう事かしら?」

 顔を真っ赤にし、細かく震えていた。

 「ダメッ・・・、こんなの・・・。」
 「イヤなの?」
 「ち・・・違う・・・。自分が・・・分からなくなって・・・。アアーーッ!!」

 離れる事のできない器具であるが、ミッチは身体を激しく揺らし、逃れようとしていた。

 「ヒーーーッ!! 来る・・・。ヒーーーーッ・・・!!」

 「ミッチもいっちゃったのね。ワッ、まずい・・・。今のを見ていたらボクも催しちゃった・・・。ミッチよりも流れ出し方が激しい・・・。」

 いった余韻の残っていたタミオだったが、迷う事なくその責め具に填り込むのだった。



 「タミーさん、これってボク達を・・・。」
 「そうなのよね・・・。我慢できなくなって填め込んでしまうと・・・。そうすれば木の実をたくさん食べなくてはならないし、そうしたら排泄しなくてはならない・・・。」
 「このままだとボク達本当にセックス依存症になってしまうかも・・・。」
 「あの人達の思惑通りなのが悔しい・・・。」
 「今迄の人達もこうしてダッチワイフにされていったんでしょうね。」
 「ボク達はダッチワイフとしては性能がいいって言ってたよね。と言う事はボク達がどう足掻こうと、今迄の人達よりもずっとその可能性が高いのよ。確かにこの機械で高められている間、ボクは本当の男の人とのセックスを思い浮かべているのよ。ダッチワイフに成って本当のセックスをしたいと思っているの・・・。」

 ミッチは涙を拭いながらも頷いていた。



 「ウーッ、座りにくい・・・。」
 「おなかが大きく成ってきたからね。ボク達、相当細いウエストにされていたけれど、それでもこの台に当たってくる。」
 「そうよね・・・。あらっ? タミーさん、お乳が出てるの?」
 「ええ、今朝から・・・。ミッチだってにじみ出ているわよ。まだ下の容器に溜まる程ではないですけど。」
 「ワーッ、ボク達・・・、乳搾りの家畜にされてしまう可能性も・・・。」
 「このお乳を自分の赤ちゃんに飲ませる事ができないのが悔しい・・・。」
 「タミーさん、赤ちゃんを産みたかったの?」
 「それは当然でしょ? ボク達女にされてしまったのですから、それだったら赤ちゃんを産みたいと思うわよ。」
 「アウッ・・・、ボクも自分の赤ちゃんって考えたら、急に・・・。」
 「いきなり出が良くなったわね。」
 「だけど・・・。」

 二人とも責め具に対する慣れが出てきた事と、女としての悦びを楽しむ余裕ができてきた事で失神するには到らなくなっていた。それは快感をより強い快感へと誘っていた。

 そしてその様子をモニターで見ていた3人は笑みを漏らしていた。

 「順調ですね。」
 「いよいよ俺もダッチワイフを持てるのか。」
 「私用のもいい出来具合ね。」
 「ジャニーさん、薫。分かっていますね。特に今回は普通のダッチワイフとは違うのですよ。向こうからあなた達を頼ってくるようにしなくてはなりません。」
 「分かってます。台本通りにやりますよ。」
 「しかし、カオル。やっぱりお前もキクノの血統なんだな。ちゃんと一発で適合度が分かったんだからな。」
 「ロジャーがピンク型をゲットしたって聞いたら、私だって絶対欲しいって思ったのよ。だからずっと学内を歩き続けて探したのよ。」
 「変態いとこだから心配していたが・・・・。やっぱり極め付けの変態だな。」
 「あら、キクノ一族で言えばジャニーさんの方がおかしいのよ。伯母様・・・だって旦那様は。」
 「先祖代々そうでしたね。なぜか私もその血筋を引き継いで、ニューハーフでないと夫にできませんでしたから。キクノ家は母系家族ですし、なぜか男の子はあまり生まれないのですよ。たとえ甥でも男の子として産まれた時は皆喜んだのに・・・。結局は・・・・。」
 「いいじゃないの。心と下半身だけはちゃんと男なんですから。」

 カオルはケラケラと笑っていた。



 「おなかが・・・。」
 「そろそろデーモンスーツができる頃ね。」
 「そして・・・。」
 「ええ、ボク達がダッチワイフに成ってしまう・・・。」

 二人は抱き合って泣いていた。そこに数人のメイドとキクノが内診台を運んできた。

 「アッ・・・、とうとう・・・。」

 「さあ、どちらから?」

 泣いている二人だが、既に諦めはついている。タミオが先に立ち上がった。

 「促進剤を注射しますから、すぐに済みますよ。」

 内診台に乗り、固く目をつぶっていると、体内からの痛みが起きてくる。種出産よりも激しくつらい痛みだったが、心の痛みの方が遙かに強かった。

 (ボクは・・・とうとうダッチワイフに成ってしまう・・・。お尻に種を入れられた時から決定している事なのに、いざとなると・・・。悔しい・・・。悲しい・・・。ウッ・・・、出る・・・。)

 ミッチが悲鳴を上げた。何度も見ていたデーモンスーツ出産なのだが、現実に自分に及ぶとなると直視できないでいた。

 取り上げられた不気味な肉塊を広げ、足を入れられた時もタミオはジッとしていた。

 (さようなら、人間のボク。スーツの中はドロッとしている。ちょっとピリピリする。反対の足も入れられちゃった・・・。もうこのスーツは脱げないのか・・・。グハッ・・・、お尻とあそこに填り込んでいく・・・。お尻の方は永久に抜け出ないんだったな。もう排泄もさせて貰えないのか・・・。アッ、足が勝手に動いてる。これが自分で動かせないっていう事か・・・。)

 自分の意志ではなく台から降り立った。その間に背中の部分がせり上がり、腕も勝手に吸い込まれていく。 そして溢れ続ける涙を拭う事もできなかった。

 「さあ、タミー。ミッチを台に乗せなさい。」
 「エッ・・・、アアッ・・・。」

 タミオは動かされてミッチを抱え上げた。

 「ごめんね。ボクじゃないのよ。」
 「タミーさん、分かってます・・・。ボクもすぐにダッチワイフに成りますから・・・。」

 そうしてミッチも同じようにデーモン出産をさせられるのだった。



 「この先、ボク達どうなるのかしら。」
 「多分ダッチワイフとして売られていくのよね。」
 「そろそろ乳搾りの時間かしら?」
 「タミーさん、ボクの方は随分張っているから、動かされる前に搾ります。」
 「そうね。どうせ搾られるのだから、ボクも出してしまおう。」

 二人は乳搾り器に座り、カップに乳房を填め込む。

 「ハーッ、スーッとするわ。アハッ・・・。」
 「このスーツも気持ちいい・・・。」
 「バイオという意味が分かるわ。機械が動くのと違い、ずっといいわ。だけど・・・。」
 「これってボク達をセックス依存症にしてしまうんでしょう?」
 「何を今更・・・。ボク達とっくにそうよ。それがダッチワイフの必要条件なのですから。」
 「それでいつ迄ここに居られるのかしら・・・。売られてしまえば、もうタミーさんと会う事はないのよね。」
 「そうね・・・。だけど・・・、ボク・・・。」
 「えっ?」
 「とてもつらいのだけれど、ボク、早く売られていきたいって気もするのよ。」
 「何を・・・。」
 「ボク・・・、心迄ダッチワイフに成ってしまっているらしい・・・。デーモンスーツはそれなりに気持ちがいいのだけれど、心の底では本物のオチンチンを挿れて貰いたいと思っているのよ。だから早く売られれば、それだけ早く・・・。ごめんね・・・。」

 タミオは泣き出してしまったが、ミッチも同じように泣き出すだけだった。



 「今日は。」

 「お早う・・・ございます・・・。あ、ピンクさん。」

 ピンクがいつものメイドに代わって木の実を運んできた。

 「ピンクさん・・・。この先ボク達がどうなるのか・・・分かりますか?」

 ピンクは少し困った顔をしていた。

 「分かっていてもお話しできないのよ。ただ・・・。」
 「何ですか?」
 「多分あと一週間であなた達の人生を大きく変える事が起きるという事だけは・・・。」
 「それ・・・、ボク達がダッチワイフとして売られるという事ですか?」

 タミオ達は震え上がった。

 「ううん、そうではないわ。売られるにしてももっと先です。」
 「それじゃ・・・。」
 「ごめんなさいね。今はここ迄。これからもつらい事がたくさんあるわ。頑張って・・・とは言えないのよ。でもあなた達の未来は決まっているので、従容として受け入れるしかないのよ。一日一日を苦しんでいくか、楽しんでいくかは心の持ちようよ。」

 そう言うとピンクは手を振って出て行ってしまった。

 「一週間・・・。何があるのかしら・・・。」
 「分からない・・・。だけど怖い・・・。」

 ピンクの言葉でかえって不安が増すのだった。



 そして運命の日。それが分かるのはキクノ、ピンクを含め、メイド全員が集まってきたからだった。

 「な・・・何なのですか・・・。」

 タミオとミッチは抱き合って震えていた。

 「それでは二人が・・・、いいえ、間もなく二個が完璧なダッチワイフとして完成します。」

 「二個・・・? 完璧・・・?」

 「自分達がどう成るのか・・・。最初にピンク仕様とか分離型とか聞いていますよね。それが分からないと不安でしょうから先輩のピンクさんに完璧なダッチワイフとはどのような物なのか示して頂きましょう。」

 ピンクは部屋の中央に進み出た。そして恥ずかしそうにメイド服を脱ぐ。素っ裸になると自分達と同じような巨大な乳房であるにも関わらず、そのアンバランスとも言える姿は驚異の美しさを放っていた。他のメイドも久しぶりに見るピンクの裸体に感嘆していた。

 「それではピンクさん。」

 ピンクは大きく頷き、腰に両手を宛がう。そして

 「分離!」

 その声と同時に部屋に大きな声が響いた。メイド達の歓声とタミオ達の悲鳴が・・・。

 デーモンが支えていたピンク本体は二人のベッドに下ろされる。恥ずかしそうにしているピンクだったが、それでもダッチワイフとしての自意識で笑顔で二人を見ていた。

 「ピンクさん・・・?」
 「その・・・身体・・・。」
 「ええ、これが完璧なダッチワイフとしての身体なの。ほら、お尻もあそこもデーモンから抜かれているから、凄くつらいのよ。何か填っていないと・・・。それよりも、今の私はスコットさんとのセックスしか考えられなくなっているの。」
 「まさか・・・ボク達も・・・そんな風に・・・される・・・?」
 「いいえ、される・・・ではなくて、もう成っているのよ。」

 タミオ達は慌てて自分達の身体を探る。

 「さあ、タミー、ミッチ。分離しなさい。」

 そして大きな悲鳴が響き渡るのだった。



 ダルマ娘の姿で二人はいつ迄も泣き続けていた。

 二人から分離したデーモンは部屋の隅に不気味な姿で立っている。
 ベッドは二人の涙と汗、そして膣に何も填り込んでいない事の肉体的欲求不満による愛液、そして乳搾りをしていない事による溢れ出ている乳汁でベタベタになっていた。

 その時デーモンに指示が与えられたらしく、二体のデーモンはそれぞれの本体を持ち上げ、乳搾り器にセットするのだった。

 「イヤだーーーっ!! 戻して・・・!」
 「お願い・・・。ダッチワイフとして売られてもいいから、身体を・・・。」

 しかし搾り器にセットされると、二つのディルドーが填り込み、激しい蠢きを始めた。

 「アヒーーーッ・・・!!」
 「こんな・・・こんな格好でするのは・・・イヤーーッ!!」

 しかしダッチワイフとしての性能はすぐに発揮された。あれ程激しく泣き叫んでいた二人なのだが、高まるに連れ喘ぎ声を上げて夢中になっていってしまうのだった。

 絶頂に達した時、二人とも涙を流していたが、それは悦びの涙であった事には気付かなかった。



 「タミーさん・・・。ボク達、本当にダッチワイフに成っちゃったんですね。」
 「そうよね・・・。まさか、こんな身体に成るとは思わなかった。自分ではオッパイが邪魔していて良く見えないけれど、ミッチの姿を見ていると思い知らされるわ。」
 「ねえ、まだ男の時の心を思い出せます?」
 「それはあるわよ。ついこの前までは普通の男だったのですから。」
 「だったら、その男の心でボクを見てくれませんか? 男だったら、ボクを見てどう思うでしょう。」
 「そうねえ・・・。ボクが男だったら・・・ウフフ・・・。ミッチは素晴らしいダッチワイフだと思うわよ。ぜひセックスしたいと思うような。」
 「でしょうね。ボクもタミーさんを見てそう考えましたから。」
 「だけどボク自身が完全にダッチワイフに成ってしまったと実感できる事があるの。それは今セックスではないけれど、3カ所揉み続けられているわ。それがとても気持ちいいし、本当は悔しくて悲しいはずなのに、気持ち良さの方が勝っているの。」
 「タミーさん、それは言わないで。ボクもダッチワイフでいいから早く本当のセックスをしたいって思ってしまうのよ。」
 「ごめんね。ぼくもそうなの・・・。段々とこの機械では満足できなくなってきているのよ。」

 「さあ、準備しましょう。」

 キクノが二人のメイドと入ってきた。メイド達は大きなバッグを運んでいる。

 「準備・・・?」

 タミオは恐ろしい予感でつぶやいたが、キクノはいつものように笑顔で答えた。

 「あなた達は素晴らしいダッチワイフに成ったのよ。オークションに出して高く売られていくのよ。」

 悲鳴は上がらなかった。既に諦めていた事であり、当然そうなる事は分かっていた。しかし涙だけはドンドン流れ出てきていた。

 「相当高く売れると思うわ。だけど個人では無理な値段でしょうね。裏の組織が買い取り、そして大勢のお金持ち相手に秘密クラブで稼いで元を取るでしょう。」

 それも予想していた事だった。淫猥な部屋のベッドに転がされ、大勢の男達に次々に犯され続ける・・・。そして心からの嬌声を上げ続ける。
 人間としての人生は既に終わっている事も分かっていた。

 メイド達により搾り器から下ろされ、身体を拭われる。そしてハッと気付いた時には唇に以前も塗られた接着剤を塗り付けられていた。しかし二人とも抵抗はしなかった。今更悲鳴を上げる必要も気力もなかったからだった。

 「それでは洗ったら梱包をして下さい。」

 「よお!」
 「今日は!」

 聞き慣れた懐かしい声にタミオはビクッとして目を開いた。

 「あら、二人ともいらっしゃい。」

 ジャニーとカオルだった。

 「ムググーーーッ!!」
 「ブムーーーッ!」

 「ピンク仕様のダッチワイフができたって聞いたので見に来ましたよ。」
 「ワーッ、素晴らしいわね。一気に二体できたなんて凄いわね。」
 「偶然ね。あなた達が最初にアナルセックスをして上げた子、そして最初に女としてのセックスを味あわせて上げた子達なのよ。」
 「ヘーッ、そしたら・・・伯母様・・・。」
 「そうねえ・・・。発送は明日の朝早くですから、ダッチワイフとしての初めてのセックスをさせて上げるわ。」
 「おおっ、いいんですか、キクノさん?」
 「ありがとう! こんなダッチワイフとできるなんて最高!」
 「個室は開いていたわね。ご案内しますわ。」

 ジャニーはタミオを、カオルはミッチを軽々と抱え上げそれぞれの個室に入っていった。


 「まさかピンク仕様のダッチワイフとできるなんて思わなかったよ。」
 「ムググ・・・!」
 (ジャニーさん、ボクだよ!! タミオだよ! おねがい、気付いて!)
 「待ってろよ、そんなに騒ぐな。すぐにしてやるから。」

 ジャニーは衣服を脱いでタミオに近付いてくる。タミオは必死にアピールするのだが、視線はジャニーの股間に集中していた。

 (ジャニーさん。ボクですよ。ダッチワイフに成っちゃったけれど、ボクなんです。色情狂のダッチワイフで、いつも本当のセックスをしたいと思っているボクです。ああ、早く挿れて・・・。本物のオチンチンが欲しいボクなんです・・・。アアッ・・・・・・。)

 前戯無しで挿入できる程愛液が溢れている膣にジャニーのペニスが填り込んできた。

 (アハーーーーーッ・・・!)

 その時点でタミオはタミオではなくなっていた。ジャニーのペニスをしっかりと握り込み、ひたすら引き込むのだった。手足がある程度分離し始めていた頃から脳は代償作用として膣筋の自律神経を育てていた。しかし今はタミオの意識として、膣筋を強く意識し、新たなニューロンを作り上げていたのだった。自律神経としても強く握り込める上に、自分の意志でも制御するようになっていくのだった。

 (アア・・・、ジャニーさんの精液が子宮に入る・・・。ダメ、もっと欲しい・・・。もっと・・・。)


 「いやあ、さすがに凄いな。膣はまるで別の生き物だ。両手で握られているように凄い。最高のダッチワイフだな。」

 夢うつつでジャニーの言葉を聞いていたタミオは、褒められている事を素直に喜んでいた。

 (ボク・・・、ジャニーさんを感動させる程のダッチワイフに成れたんだ。ジャニーさんをもっと気持ち良くさせて上げたい。そしてボクももっと・・・。)



 ポーン

 映像は出ないが、モニターからキクノの声が聞こえてきた。

 《お早うございます。お目覚めの時間です。》
 「オッ、そんな時間か・・・。」
 《そのダッチワイフはいかがでしたか?》
 「いやあ・・・、最高ですね。お陰ですっかり・・・。」
 《それは宜しゅうございました。そろそろ発送準備なので、デーモンを向かわせます。》
 「ウーン、残念ですな。それじゃ・・・。」

 ジャニーが起き上がった時、タミオにもいよいよ別れの時が来た事が分かった。

 「ムルルル・・・!!」
 (イヤだ!! ジャニーさんと別れたくない!! 売られていくなんて・・・イヤだ・・・。)

 支度を終えたジャニーは手を振って部屋を出て行く。タミオは悲鳴に似た嗚咽を続け、自由にならない身体でもがき続けていた。


 ドアが開き、タミオの抜けたデーモンが入ってくる。そしてそのままタミオを填め込み、部屋を出るのだった。
 ホールにはジャニーとカオル、そしてキクノが談笑していた。そこにタミオと同じようにデーモンに組み込まれているミッチも歩いてきた。ミッチもひたすら首を振りながら訴えようとしている。

 「アア、来ましたね。デーモン、それぞれを梱包用のケースに収めなさい。」

 キクノの言葉に不自然に頷くジャニーとカオルだったが、二人には分からなかった。

 大型のスーツケースのようなバッグが開かれると、中にはタミオ達がスッポリ填るような窪みがある。その中に再び外された二人が填め込まれる。

 「さあ、ダッチワイフ達、これでお別れです。あなた達の手足だったデーモンはここで次のダッチワイフを育てる仕事をして頂きます。売られていけばあなた達は完璧なダッチワイフとしてたくさんの男の人を楽しませる事になります。それではごきげんよう。」

 ケースが閉じられ、真っ暗になった。

 「グムムムム・・・・!!!」
 (イヤだーーーっ!!! 助けて!! ジャニーさん、ボクはタミオなんだよ!! こんな芋虫の格好で一生活きたダッチワイフなんてイヤだーーっ!!)

 しかしケースが起き上がり、スーッと移動していくのが分かる。ケース越しにかすかに聞こえていたジャニー達の声が遠ざかっていく。

 何人かの声が聞こえていたが、すぐにゴトゴトという音とともに船のエンジン音が響き、その震動とともにいきなりGが掛かった来た。

 (アアッ・・・。飛び立った・・・。ぼくは・・・・。)

 急に眠気が催してきた。

 (睡眠ガスか・・・。生物運搬用の・・・。そうだよな・・・ボクも一応生物の・・・ダッチ・・・ワイ・・フ・・・。)



 逆噴射の震動と着陸のショックがしてタミオは目を覚ました。

 諦めきっていたタミオは何も考えていなかった。ただ周りの状況は音で分かるのだが、それは全く無意味だった。

 「ほい、この二つだ。」
 「OK。ご苦労さん。」

 スーッとケースが動いていくのが分かる。

 (二つ・・・って事はミッチも一緒なのかな?)

 長い距離を移動している感じがしたが、大勢の歓声が聞こえてきた。

 「お待たせしました。本日最後の出品となります。」

 更に拍手と歓声が響く。

 「今回の目玉商品としてご紹介しておりました、活きたダッチワイフ二体です。詳細はご存じでしょうが、今回は特別方式のオークションといたします。なにぶんにも特殊な出品ですので、皆様全員にはお見せできません。」

 ブーイングが響く。

 「ご不満は重々承知ですが、一部訴追の恐れがないわけではありません。それで最終的に5人様まで絞られた時点での公開とさせて頂きます。なお、オークを下りられた方はその時点でご退場お願いします。」

 そして再びブーイングが響いてきた。木槌の音が大きく響く。

 「スタートは10億ダラーから!!」
 「20!」
 「30!」

 (ボク達って・・・、そんなに高いの? だけどそれだけのお金を使うって事は、ボク達は寝る間もなくセックスされ続けるんだろうな・・・。最高級の活きたダッチワイフとして・・・。)

 「200億!」
 「200の声が掛かりました。ちょうど残りが5人となりました。競りを続ける前にここで公開致します。ご自身の目で商品をお確かめ下さい。」

 (どんな人に売られるのだろう・・・。ウッ、眩しい・・・。)

 ケースが開けられたが、闇の中に居た目が慣れるのには時間が掛かる。その光の中に5人のシルエットが見えるだけだった。



 「・・・・・・・・・。」

 手があれば目を擦りたい気分だった。

 目の前に一人の男が歩み寄ってきた。

 「ムブルグ・・・?」

 唇に新たなクリームを塗り付けられた。接着剤が溶けていく。そして口が自由になった時、タミオは叫んだ。

 「ジャニーさん?!!」

 同時に隣のケースからも絶叫が響いた。

 「カオル・・・さん?!!」

 デーモンがそれぞれに寄ってきて、二人を組み込んだ。感覚はないものの、自分の意志で手足が動かせる。

 「エッ、何で・・・?」       

 ジャニーは笑いながら、

 「よっ、タミー。いいダッチワイフに成ったな。」
 「ミッチ、あなたもとっても良かったわよ。」

 ミッチとタミオは見つめ合っていた。そこに赤ん坊を抱いた女性が声を掛けてきた。

 「お久しぶり。タミー、ミッチ。」
 「エッ・・・?」

 まだ二人とも頭が混乱していた。

 「忘れた? それとも分からないかしら? 私よ。ケイ。」

 それはタミオと同時に種を植え付けられ、かなり先にデーモンスーツに組み込まれてダッチワイフとして出て行ったケイだった。そしてケイの隣に笑顔で立っていた紳士は確かに見覚えのあるコーネルだった。

 「どうして・・・?」
 「ここの方達ってひどいでしょう? 私もすっかり騙されていたの。夫ったら、私を最初からこういう風にする為にここに送り込んだのよ。でも、見て。この子。まだ10ヶ月ですけれど、私の赤ちゃん。」
 「ケイさんの・・・?」

 目眩がして倒れそうだったが、デーモンスーツはしっかりと二人を立たせていた。

 「コーネルさんはケイさんを妻にする為にダッチワイフ化したが、俺は違うぞ。」
 「ええ、私も違うわよ。」
 「ジャニーさん・・・。」
 「カオルさん・・・?」
 「俺はタミーを最高級のダッチワイフにする為にここに連れてきた。カオルも同じだな。」
 「そうよ。完璧な適合度のミッチはピンク仕様のダッチワイフに成るべきだったのよ。」
 「そんな・・・。」
 「そしてこの最高級のダッチワイフには一生俺の性処理をして貰う。」
 「そうよ、ミッチ。あなたも一生私の玩具。これからもズーッと私のセックス道具よ。」
 「エッ・・・? それって・・・。」

 キクノが微笑みながら話しに入ってきた。

 「あなた達ダッチワイフには拒否権がありません。タミーの所有者登録はジャニー。ミッチの所有者登録はカオル。既に完了しています。あなた達は所有者の意志通りに動かされるダッチワイフなのです。」

 しばらく唖然としていた二人だが、涙を溢れさせ、それぞれの『所有者』に飛び付いていくのだった。



 「ねえ、ジャニーさん。」
 「ん?」
 「今更こんな事を聞くのもなんだけど、ジャニーさんはどうしてボクをこんなダッチワイフにしたの?」

 タミオがジャニーとセックスする時は常にデーモンから外されたダルマ娘の形でだった。

 「それはお前も分かるだろう? こんなに凄いセックスができるからだ。俺はキクノ一族の一員だから、並外れた性欲だからな。」
 「それも分かるわ。だからそれがどうしてボクだったの?」
 「それは適合度が理想的だったからだよ。俺だってそれを見分ける勘があったからな。だからタミーがバイトで俺の所に来た時、絶対俺の理想的なダッチワイフにするって決めたんだ。」
 「じゃ、何でよ。なぜボクを何年も苦しめたのよ。本当に闇の世界に売り飛ばされて、一生肉奴隷にされてしまうって覚悟したのよ。」

 すねるタミオにジャニーは申し訳なさそうにしていた。

 「ボクはたまたまジャニーさんのダッチワイフに成れたから、運が良かったと思っているわよ。一歩間違えたら・・・。」
 「あれ? 知らなかったのか?」
 「何を・・・?」
 「ここでダッチワイフにされている子は最初から全員所有者が決まっているんだぞ。所有者がダッチワイフにして貰うように送り込まれているんだ。」
 「エッ・・・?」
 「だからここでダッチワイフに成った子は全員幸せになってる。」
 「だって・・・。誰もがただのダッチワイフとして売られていくって・・・。それなら、なぜみんな苦しんでいなくちゃならないの?」

 ジャニーはちょっと考え込んでいた。

 「もし・・・、俺がタミーにこの身体みたいなダッチワイフに成ってくれって言ったら成ると思うか?」
 「そりゃ、成るはずないわよ。」
 「だろう? それじゃ、タミーをダッチワイフにすると言ってここに連れ込んだら、そしてダッチワイフに成った後に俺とセックスしろと言ったらするか? 心の底から俺としたいと思うか?」
 「んーー・・・。ずるい・・・。」
 「どうだ? 本当の事を話したのだが、俺への愛が醒めたか?」
 「ンフッ。醒めていたらこんなに強く握ったままにしていないわよ。」
 「イテテ・・・!」
 「でも、ダッチワイフの身体って本当に最高のセックスが味わえる身体なのよね。でも、私もケイさんみたいな子供が欲しい・・・。でも、まだジャニーさんとのセックスを中断するのはつらいけど。」

 ちょっとジャニーが暗い顔をしたのをタミオは見逃さなかった。

 「ジャニーさん。ボク達の子供は欲しくないの?」
 「いや、そうじゃない。俺も子供と一緒の家庭にあこがれている。ただ・・・。」
 「何か・・・。」

 ジャニーは真剣な顔付きになった。

 「カオルの方のミッチもそうなんだが、お前のDNAはピンク型適合度が凄く高いんだ。その適合度はY染色体でほとんど決まるらしい。お前は生物学的には男なんだから、卵子ができるとするとXかYだ。勿論俺もそうだけどな。YYの組み合わせはできないので、タミーの方のXかYで男女が決まる。」
 「あら、待ってよ。ジャニーさんの方のYだってあるはずよ。」
 「それが、俺達キクノ家の人間はなぜか女ばかりが産まれる。Xが極端に強いらしい。俺とかカオルは極めて希な男子なんだよ。その分変態性欲が極端に強く表れるのだが。だからお前の方に赤ん坊の男女の決定権がある。」
 「それでもいいじゃない。男でも女でも赤ちゃんは可愛いわ。」
 「それも単純じゃないんだよ。デーモンスーツのDNAは人間とはかなり違うが、それでもXY染色体が存在する。デーモンとの適合度はYがなければダメなので、デーモンスーツを着せられるのは男しかダメなんだ。デーモンスーツはバイオつまり生物なんだ。生物には当然子孫繁栄欲が本能としてある。新たなデーモンスーツ出産者を擁立したいのだよ。だからタミーが受精する時、当然ながらY染色体の卵子だけを育て、Xは育てない。だから必ずタミーのY遺伝子の子供しか生まれない。」
 「いいわよ。男の子だって。」

 ジャニーはまた言い淀んでいた。

 「実は・・・、タミーをダッチワイフ化して貰う条件として、子供もタミーと同じようにピンク型のダッチワイフにするって約束で・・・。」
 「エエッ・・・??!!」

 「すまん。俺としては将来の子供の不幸よりも今のタミーだったから・・・。」

 怒ると思っていたタミオが笑顔を見せていた事にジャニーはちょっと意表をつかれた思いだった。

 「私・・・不幸? とっても幸せよ。ただ、ずっと騙されていたという事には頭に来たけれど。私の子供が男だったとして、男らしく育って欲しいという思いもあるけれど、私みたいに幸せになって欲しいという気持ちもあるのよ。でも・・・、悲しませたくはないのよねえ・・・。」
 「しかし産まれた時からずっとお前を見続けて育つ。タミーが最初は男でも、今はとても幸せなダッチワイフとして、子供も産んで嬉しいって事をずっと知って育つ。それに賭けるしかないかな。」
 「あら、こんな時間よ。明日の朝、出発なのよ。私だって朝のお支度はいろいろあるのよ。」
 「そうだな。俺としては助手としてのタミーの力には助かっている。仕事に差し支えるから無理はしないで早めに寝ないとな。」
 「あーん、違う!! 寝る前にもっとーーっ。」


 ベッドの上でダルマ娘のタミーは全身を蠢かして喘ぎ続けるのだった。



       ・・・・・・・終り・・・・・・ 





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