マオにとってはセックスにしても地下室でのオナニーにしてもどちらも射精する事には違いはなかったが、その内容は全然違う。精液飲用ではエネルギーの若干の回収にはなるが、それでもただ無駄に精液を出すだけであった。ユリエとのセックスでは受精に供しないとはいえ、子宮に圧入される精液は確実にユリエに快感を与えている。それと一番の違いは外界が見えるという事で、時間の経過が分かるのだった。そしてずっとセックスを続けているという実感をもたらすのだった。

 「フーッ、随分続けていたのね。もう、すっかり夜ね。」
 「本当。最初の内は回数を数えていたけれど、途中からはどうでも良くなってしまったわ。」
 「私の子宮、マオの精液でパンパンに膨らんでいるわ。満腹感とは違うのだけれど、凄い充実感。」
 「その分、私は疲れが出ているわよ。おなかも空いているし。私は出すだけだもの。」
 「そうよね。栄養浣腸をして上げましょうね。」

 ユリエはそう言いながら腰を引いてペニスを引き抜こうとする。相変わらず、ペニスの真珠が噛み込んでいて、簡単には抜き難い。マオと一緒に腰を捻りながら、プチプチッという音とともに噛み込みが外れる。

 「クーッ、オチンチンを抜くのがこんなにつらいなんて・・・。」
 「真珠が擦るからでしょう。」
 「そうなのよ。マオの為に抜かなくてはならないと思うから我慢しているけれど、そうでなければまだ続けていたい。」

 ズブズブという音とともにユリエの膣から幾分ふやけた巨大なペニスが抜け出た。

 「ホーッ、こんなに大きなオチンチンが入っていたのよね。抜いてしまうと、まるで芯が抜かれた様な空虚感よ。」
 「私も圧力が無くなって不安定だわ。」

 ユリエがペニスを抜いた為に、子宮内の精液が膣に流れ出してきた。

 「おっと、精液が流れ出してしまうわ。」

 トイレのビデで処置しにいこうとするのをマオがとどめた。

 「待って、流してしまってはダメよ。それなら私に飲ませて。」
 「アッ、そうか・・・。そうね。」

 ユリエはベッドに腰を掛けて足を開いた。マオはさっと股間に吸い付くのだが、既に漏れ落ちる寸前だったので、ジュルジュルと音を立てて飲み込むのだった。

 「そうか・・・。これがマオとでなければただ洗い流してしまうだけだったのよね。フーッ、子宮の中から吸い出される様よ。これも凄く楽しい気持ち。マオとのセックスでなければ、絶対に無かったのね・・・。」
 ユリエはまるで後戯を楽しむかの様な陶然とした表情だった。

 「ハーッ。ねえ、マオ、美味しいの?」

 マオの膣口から口を離してユリエを見上げた。その表情だけでも理解出来る。

 「ユリエさんのお汁は凄く美味しかったし、私の精液も美味しかったわ。だけどユリエさんの中で良く混じっているからか、びっくりする程美味しいの。」

 喋るのも惜しいという顔で、再び吸い始めようとして、ハッと何かに気が付いた。

 「ねえ、ユリエさん。ユリエさんが居ない時は私は自分でオチンチンを吸っていたけれど、それだけ出せる余裕があるなら、ユリエさんの中に入れておいて欲しいのだけれど・・・。」
 「ん? どういう事?」
 「この別荘に居る間はいいわ。だけど寮に戻ったら、ユリエさんが学校に行っている間は当然の事として、こういう飲み方は出来ないわ。だから、出掛ける前に、出せるだけ出して、ユリエさんのおなかの中に入れておいて欲しいのよ。そうすれば、戻ってきて、すぐに飲めるもの。飲んで栄養が付いたら沢山セックス出来るし・・・。」
 「まあ、それじゃ、私はマオのお食事の袋? マオにはいいかも知れないけれど、それだと完全に妊娠してしまうわよ。私は妊娠し難い体質だけれど、いくら何でも、マオの沢山出した精液をずっと入れたままではね。」

 マオは少し不満があったが、まさか自分とユリエの子供という事迄は考えられない。それでなくても生で中出しをしているのに、それでも妊娠し難いという事が信じられない程なのだ。


 夜になって、涼しくなってきたので、ユリエは窓を開けて外気を入れる。

 「フーッ、涼しくて気持ちいいわ。マオ、もう少し暗くなったら散歩に行きましょう。」
 「暗くなったって・・・。」
 「別に暗くなくてもいいのよ。涼しくなってからという事。それにマオが慣れていないでしょうからという事なのよ。私もこの格好で出掛けるのよ。勿論すっ裸でも構わないわ。」
 「平気なの? 菊野さんだけじゃないんでしょ? 管理人さんとかいう方は?」
 「多分おば様が今日は来ない様に連絡してくれているわ。私は平気よ。去年迄だって、平気ですっ裸でお会いしていたわよ。」
 「そりゃ、ユリエさんと親しい人ならいいわよ。いいとは思えないけれど。だけど、私はこんな身体なのよ。これでは・・・。」
 「だから・・・、マオ程度の身体は内々のグループでは当たり前なのよ。この建物は私達だけだけど、別の建物に来る人達だって、もっと凄さまじい身体にされているのよ。マオは病気でそう成ったらしいけれど、そういう人達は手術や薬で改造されてしまっているのよ。当然自分の意志ではないわ。誘拐されたり、騙されたりしてそういうセックス道具にされてしまっているの。時々はこの別荘で改造される事もあるのよ。私達のセックスは普通から見れば、とんでもない変態セックスだけれど、ここの人達から見れば淡泊で大人しいものなのよ。」

 どうしてもマオには信じられず、ただ呆然としていた。

 「信じられないでしょうね。だけど、後でおば様に話をしておくわ。そういう道具や家畜にされた人を見せて貰いましょうね。マジックミラーで、こっちは見えずに観察出来るわよ。」
 「あ・・・、本当に・・・本当なんですか?」
 「そうよ。マオを安心させる為にこの別荘に来ているのだから。ただ、マオと同じ様な変態身体の人が居るというだけでも孤独感は減るでしょうが、そんな消極的な理由からではないの。マオよりもっとひどい状況の人でも、ずっと幸せだと思っている事を認識して貰いたいのよ。これからの長い一生、幸せに生きていけるという事を実感して貰いたいのよ。」

 相変わらず、マオは呆然としたままだった。



 「いいかしら?」

 弥生がお盆を持って入ってきた。

 「アッ、おば様。」
 「いい様ね。多分もう離れている頃だと思ったけれど。」
 「意地悪。おば様はセックスに関する超能力をお持ちでしょう。私達が終えたのを感じて入ってきたくせに。」

 マオは弥生にユリエとのセックスを知られてしまっていたらしい事に、顔を赤らめていた。

 「ちゃんとした食事をしないとダメよ。今日は最初だから夢中だったでしょうけれどね。」
 「菊野さん、どうせ恥ずかしいついでだからお伺いしますが・・・。」
 「はい、なあに?」
 「私がユリエさんと・・・その・・・、セックスを続けていた事はご存じなんでしょう? どれなのにどうしてそんなに平然と?」

 弥生はニコニコしていた。

 「そうね。普通だったら考えられないかもね。だけど、私達は皆変態なのよ。普通に食事をする様に、楽しい会話をする様に、それと同じなのよ。私達にとってはセックスはごく当たり前の事。それも変態セックスが当然なの。ユリエちゃんは畸型と言ってもいいかも知れないわ。絶対にセックス出来ないと・・・、本当は私が誰か男の子を大きなオチンチンに改造すれば済む事なのだけれど、ユリエちゃんは女の子のお相手でないとダメという事なので、かなり難しかったわ。もしマオさんが現れなければ、多分誰か女の子を誘拐してきて、今のマオさんみたいに改造して上げていたでしょうね。だけど、私の技術ではこんなに完璧なオチンチンには出来ないわ。それに何年掛かるか・・・。だからユリエちゃんが夢中になれるセックスが出来たという事は私にとってもとても嬉しい事なの。マオさんにしてもそのオチンチンが素晴らしい快感の元でしょう。オッパイだって並みの巨乳ではあり得ない程の感度の良さ。それだったらぴったり合うユリエちゃんとのセックスで悦びを得られることは素晴らしい事よ。マオさんは普通の生活は出来なくなってしまっているわ。だけど失った以上の幸せになれるのよ。私が改造した人達もそう。ユリエちゃんもそういう方面の仕事をするのだし、マオさんもそのお手伝いをしてくれれば嬉しいわ。」
 「そんな事・・・。」
 「アッ、考え違いをしないでね。マオさんが不幸な身体に成ったのに、まともな身体でいる人を憎んで、自分と同じ様な不幸な目に遭わせるというのじゃないのよ。確かに入り口では凄く恨まれる。マオさんも後で分かるでしょうが、マオさんの幸せを別の人にも与えて上げたいと思う様になるわ。それに改造される人はそういう運命なの。誰でも改造出来る訳ではないのよ。肉体的な変化は精神的なものを強く受けるの。精神的に改造出来る人であって、絶対に可愛い子でなくてはダメなの。男でも女でもね。」
 「私にはとても信じられません。」
 「いいのよ、これからずっとお付き合いしていくのだから。納得出来ない事は勧めないわ。ユリエちゃん、軽食だけれど、ここに置いておくわよ。マオさんの方が疲れている筈なのに、もう、ほら・・・。」
 「エッ、あっ・・・пv

 ペニスが再びギンギンに勃起していたのだ。ユリエも抜いたばかりだったのに、再び催してしまっていた。

 「まだマオさんは見られてのセックスは恥ずかしいでしょうから、私は退散するわ。ユリエちゃん、ちょっと地下室に行っているからね。」
 「地下室?」
 「あそこには色々なセックスの器具が在るけれど、少し整理しないとね。済んだら勝手に帰りますからね。」
 「色々と済みません。」
 「じゃあ、ごゆっくり。だけど体調には気を付けてよ。時間はたっぷりあるのだから、無理しないでね。」
 「はい。」

 弥生は笑顔で部屋の奥に入って行った。

 「じゃあ、マオ、また搾って上げるわよ。」
 「はい、ユリエさん。」



 〈ん? 移動ポイントはここだが、ターゲットは居ないぞ。〉
 〈ああ、下りてきた。僅かなタイミングズレだ。〉
 〈いや違う。あれは不可思議な現時人だ。おかしいな、サーチャーによるとターゲットの二人はこの上部に居る。〉
 〈移動ポイントか移動時点の間違いか?〉
 〈合っている筈だが・・・。〉

 弥生は地下室に下り、肉眼では検知出来ない次亜空間の方を見つめた。

 「いらっしゃっていた様ね。」

 〈おい、この現時人はやはり我々を認識している。〉
 〈マザーコンピュータの指示は?〉
 〈異常無しだ。しかし入力レベルが下がっている。故障ではない様だが、どうしてこんなにレベルが低くなるのだ?〉

 弥生は椅子に座ったままニコニコしていた。

 「もう少しお待ちしますか?」

 未来人達は自分達の不安定な状況を見透かされ、ドキッとした。

 「肉眼では見えませんが、あなた達の存在は分かります。前回お話しした様に、あなた達と上の二人についてお話ししたいと思います。」

 〈話? いいのか?〉
 〈ちょっと待て・・・。コンピューター指示は肯定。会話を交わして良いそうだ。〉
 〈しかし・・・、それは現時点の歴史への干渉では?〉
 〈我々は既に大きく干渉している。コンピューターが可としているなら良いのではないか?〉
 〈我々の存在も間もなく無くなるのだから、現時人とはいえ、人類との意思疎通もこれで最後だ。〉

 未来人達は互いに顔を見合わせ、頷き合ってから次亜空間の窓から真空間へと出ていった。その影だけの姿に、分かっていたとはいえ、弥生には少なからぬ衝撃を与えた。

 「あなた達は影なのですか?」

 〈影・・・、そうかも知れない。我々の肉体は未来に残したままで、精神だけが送られてきている。〉
 〈物体の時空間転送は出来るのだが、生物では不可能なのだ。生命を転送は出来ないが、生命としての意思、こちらの言葉で言えば、魂、或いは念の転送という事になる。しかしそれも間もなく無意味となる。〉

 「あなた達の任務の完了が未来の変化に繋がり、未来のあなた達の存在が無くなるという事ですか?」

 〈その通り。我々に未来へ戻る術は無いのだが、たとえ戻ったとしても、我々の存在しない未来へと戻る事になる。〉
 〈存在しない生命の魂だけが残るという事は考えられない。だから我々は最初から存在しなかった事として消滅するだろう。〉

 弥生は暫く首を傾げて考え込んでいた。

 「それはおかしいわ。」

 〈おかしい?〉

 「現にあなた達はここに存在しています。現時点で考えても、あなた達の肉体は存在しないのに、あなた達は現実に存在しているのですよ。もし最初から存在しなかった事として消滅すると言うなら、あなた達は現時点の歴史への干渉も出来なかった筈。だからたとえ未来が完全に変化したとしても、あなた達の存在は確固としたものよ。」

 〈タイムパラドックスだから、我々にも判断は出来ない。〉

 「うーん、タイムパラドックスで考えるよりも、パラレルワールドとして考えたらどうかしら? 未来のあなた達の世界はそのまま存在するけれど、あなた達がこの世界で起こした事柄が現在の歴史の未来への方向付けを変えた。その新しい方向へ進み直したと。」

 今度は逆に未来人達が考え込んでしまった。

 〈そういう考えも出来る。しかし我々には同じ事なのだ。魂にしろ念にしろ、生命体に帰属するのだ。我々は生きた肉体を持たぬ存在であるのだから、急激にか或いは緩慢にか、消滅する事は間違いない。〉

 「それであなた達は幸せ?」

 〈幸せ? 我々はその任務を果たした。幸、不幸の問題ではない。〉

 「それでは未練は無いのですか? あなた達の為し終えた事柄の結果も知らずに・・・。」

 〈それはやむを得ない。〉

 「そうかしら? あなた・・・。」

 弥生はリーダー格の影に向かって、

 「あなたは上の二人の改造に関してはかなり興味を持って仕事をしてきた筈ね。多分元の世界でも非合法だったのでしょうけれど、それを指令の名の下に楽しんでいたわね? もし出来る事ならまだそういう仕事を楽しみたいでしょう? それとそちらのあなた。あなたのお仕事はサブ的かも知れないけれど、改造された二人のセックスを羨んでいる様に感じるわ。あなた達の時代のセックスがどういうものかは理解出来ませんが、激しく感度を上げられた肉体でのセックスに強い興味を持っているわね。」

 〈否定はしない。この時代のセックスがどの程度の価値観として存在するのかは理論的にしか分からない。しかし、実際に処置を終えて、全人生に代えられる程の事であるらしい事は理解した。〉
 〈私は感情を理解しようと試みていた。理論付けは出来ないが、想像を絶する感情の爆発を感じた。我々には得難いものだ。〉

 弥生はニコニコ微笑みながら頷いた。

 「だったらそれを更に押し進めたら? あなた達の時代では非合法でも、現時点では免罪される。未来人が過去においても縛られる法律かも知れないけれど、あなた達を縛る法律は間もなく存在しなくなるのでしょう?」

 〈それはそうだが・・・。〉

 「あなた達は未来からの指令を受けているらしいわね?」

 〈そうだ。しかしその指令もかなり弱くなっている。これは未来が変化しつつあるせいかも知れない。指令が全く届かなくなった時、我々の使命が完遂され、未来が変わった事を意味するだろう。〉

 「リーダーのあなた、生化学者でしたの?」

 〈そうだ。遺伝子研究をしていた。〉

 「それは素晴らしいわ。多分データを完全には把握していないわね? 集められるだけ集めて保持は出来ますか?」

 〈どういう事だ? マザーコンピューターと繋がっている限り、データベースへのアクセスは可能だ。〉

 その間にもう一人の影が操作しながら話に入ってきた。

 〈おい、ちょっと試してみたが、データをロードする毎に指令波が弱くなる。〉
 〈弱くなる? と言う事は未来がより変化するという事か?〉
 〈そうだ。僅かだが、進捗率が進む。だとするとこの作業も使命を助ける作業なのか。〉
 〈良かろう。この現時人の指示は使命を助けるらしい。指令波が受信出来なくなった場合は現時人の指示に従えば良いらしい。〉
 〈指令が無くなれば、我々自身で判断しなければならぬ。〉
 〈それは難しい。我々の資質としての自己判断能力は低い。互いに最初は自分の資質と使命の差に驚愕した程なのだぞ。〉
 〈分かっている。だから我々の自己判断として、この現時人の指示に従うという判断をするのだ。〉
 〈なる程・・・。データロードは完了。指令波が更に弱くなった。これで最後の指示か・・・。『親戚に従え』・・・? 『親戚』? 親戚とは誰だ?〉
 〈何? マザーコンピューターの比喩ではないのか?〉
 〈違う。人間としての『親戚』だ。理解不能。我々は血族関係は不明。この時代に転送されてはいない筈。〉

 弥生は更に微笑み、大きく頷いた。

 「私には分かりますよ。」

 〈お前が?〉

 影の二人は驚いて弥生を見つめた。

 「私が『親戚』に成るのでしょうね。」

 〈なぜ?〉

 「私の考えを述べましょう。あなた達は魂、或いは念であるという事。そして現実の肉体が無ければやがて消滅するという事。もし現実の肉体が在れば、あなた達はその肉体に宿れますね?」

 〈魂の事は良く分からない。しかし可能性はある。〉

 「だったら上の二人の子供に宿って下さい。二人の子供であれば、ユリエちゃんは私の従姉妹だから、当然、あなた達は私と血縁関係。リーダーのあなた、ユリエちゃんは性工学へ進みたいそうなの。その子供が性遺伝学の研究者に成れれば、素晴らしいわ。それとアシスタントのあなたはマオさんの子供という事ね。獲得形態は遺伝しないけれど、多分マオさんの子供であれば、性感帯の発達した子に成りそうね。この時代の性感覚を楽しむ事は出来そう。」

 影の二人は顔を見合わせてジッと考え込んでいた。

 〈そういう事が・・・。〉
 〈しかし上の二人は遺伝子的には互いに女性。産まれる子供はどちらもX染色体だけだから女性だ。〉

 「そういう事ですが、何か問題でも?」

 〈我々にこの時代のセックスは完全には理解出来ていない。しかしアシスタントはターゲットの改造された状態のセックスに興味を持っている。単なる女性であっては・・・。〉

 「それは簡単でしょう? あなたの技術をもってすれば、精子の遺伝子操作をし、女性のままでマオさんみたいなふたなりにする事など。」

 〈それは可能だ。むしろターゲットの女の様に、後天的な移植手術の方が難しい。〉

 「分かりました。それではあなた達にはこの部屋を提供しましょう。」

 〈この部屋を? 何の目的で?〉

 「上の二人の子供の為の受精卵を用意して下さい。その為です。あなた達の居る次亜空間には、かなりの道具、器具類が在るのでしょう? それをこの部屋にしまっておいて下さい。あなた達が実体としての肉体を得、その後の成長により使用出来る様に成る迄は封鎖しておきますから。ユリエちゃんの方はすぐに妊娠させますが、出産したらすぐにマオさんも妊娠させましょう。ユリエちゃんの赤ん坊はマオさんと一緒に授乳させる事で、マオさんの母性本能が刺激されます。そうすればマオさんも自分の子供が欲しいと感じるでしょう。ですから年齢は一歳の差になりますね。その予定でお願いしますわ。」

 〈フーム、まだ完全に理解は出来ないが、納得は出来る。それでは道具類を出して来よう。どうせこのままでは次亜空間も消滅し、内蔵した物も消滅してしまうからな。〉
 〈いいのか? 私はアシスタントだからリーダーには従う。〉
 〈かなりの量が在るぞ。取り合えず遺伝子操作に関する器具を先に出し、私がこの女の指示通りの処置をしているから、残りも全部出してきてくれ。〉
 〈私は力仕事は不得手だが、遺伝子処置は出来ないからな。了解。〉

 影の二人は次亜空間に入り、色々な道具を運び出してきた。現代の金属とは光沢の違う器具類であった。

 〈それではキクノ、どういう仕様にするのだ? マオ達の遺伝子は既に解析済みだ。〉

 「ユリエちゃんの方は通常通りで宜しいでしょう。ただ、ユリエちゃんの体質でいえば、膣が大き過ぎるのが欠点ですね。あなたがその子に成るのですから、余り大きいのも・・・。しかしマオさんの子のペニスも大きくするとなると・・・。」

 〈結論は出ているではないか。膣の伸縮を強化すればよいのでは?〉

 「あなたの相方を悦ばせるのですから、ユリエちゃんと同じ様に、真珠ペニスの填まり込みを良くして下さいね。」

 〈自分自身の改造をしている気持ちがする。事実そうなのだが。まあいいだろう。私にはまだ理解出来ない。快感が強いのも良い事だろう。〉

 「あなたの相方の方ですが、最終的にはマオさんと同じ姿にしましょう。ただ、成長の過程では、産まれた時は男の子にします。ペニスは最終形の為にも最初からある程度は大きいでしょうが、そうですねえ・・・、中学に入る前あたりで爆発的な変態化が望ましいですわ。ペニス内の真珠も自然発生出来る様な遺伝子操作は可能でしょうか?」

 〈なぜ? 最初からふたなりにしておくのでは? 勿論、時限遺伝子にすれば、その様な事は可能だ。〉

 「楽しいじゃありませんか。あなた達は現在の意識は持っていても、それは潜在意識として生まれ変わるのです。マオさんは女だったのがいきなりのふたなりに成ったのですよ。その子供もやはり同じ方が、愛情が高まるでしょう。勿論相方さんには内緒でね。」

 〈分かった。目論見のある改造というのも面白い。何年か後に困っている様子が思い浮かぶ。キクノ、やっとあなたの計画が読めた。きっと我々はキクノ達の仕事に役立つだろう。〉

 「私も楽しみにお待ちしていますわ。それと性格的な事迄遺伝情報を入れられるでしょうかしら? お二人はかなり性的な興味を持った子供として産まれます。しかし一般的にはかなり異常ですから、自分達が少し変態性欲者であるという認識を持っていた方が社会に適応出来ますから。その為にも互いの性感発育は早目にしておいた方が・・・。」

 〈了解した。なぜかワクワクする仕事だ。〉
 〈おい、かなり運び出したが、次亜空間発生装置だけは出せない。発生装置その物が次亜空間なのだ。〉
 〈やむを得ない。それに次亜空間はあと二年弱は使う。〉
 〈ああ、二人が妊娠する迄だな?〉
 〈そうだ。ところでお前が乗り移る肉体に何か希望でもあるか?〉
 〈希望? 我々は肉体の外見に対する評価を持っていなかった。どうでも良いのだが、やはり実体としての肉体にはそれなりの素質は必要かも知れない。〉

 「お手伝いしましょう。あなた達はこの時代の外見への評価を知りませんし、精神的な影響については理解出来ないでしょう。当然ながら知能は高い方が宜しい。リーダーのあなたの外見はユリエちゃん、マオさんの遺伝子情報そのままで宜しいでしょう。二人の子供なら、充分可愛らしいし、女と女の間に産まれる子供ですから、完全に女性らしい女性ですね。ただ、マオさんの子供の方は、卵子、精子ともマオさんですから、マオさんそっくりの子供ですね。但しリーダーには遺伝子操作をして貰いますから、ペニスが形成され、男性の機能を持ちます。でも遺伝子的にはあくまでもXX染色体ですから、どうしてもかなりの女性らしさが出てしまいますが宜しいですね?」

 〈それは構わない。私は生理的には女性だが、この時代の様な男女感覚の差はない。むしろこの時代では男性の方が遥かに上位であると感じる。リーダーには悪いが、この時代ではやはり男性の方が自由であると感じる。しかしこの時代での外見の評価は?〉

 「気になります?」

 〈今の私には無関係なのだが、この時代に産まれる子供としてコンプレックスは精神的に具合が良くない。〉

 「それは大丈夫でしょう。今は男らしい男というのはごく一部でしか流行りません。可愛い男の子はそれなりにかなりの人気がありますし、ニューハーフといって、生理的男性が女性らしい姿にする事も流行っていますから。」

 〈キクノが是とするなら私は指示に従う。私はまだ運び出しを続ける。〉

 リーダー格の影の表情は見えないのだが、弥生にはニヤニヤしている様に感じた。

 「どうぞ、ご自分の意思で遺伝子操作を行って下さい。」

 〈キクノには感情は隠せないな。私は今、アシスタントの生まれ変わる姿を楽しんでいる。私の方の遺伝子情報では無毛症だ。やはり同じにしないと。それとターゲットのマオと同じ様に、生まれ付きの精液嗜好、尿嗜好も組み込んでおく。栄養浣腸は変態化と同時にしよう。そうだな・・・、変態化時の精神的ショックを与えたい。その為には変態化以前は少ないとはいえ男の子らしい顔付きにし、髪の毛もその様にする。そして変態化と同時にマオと同じ様に、女性以上の女性にする。それと・・・。〉

 「あなたはユリエちゃんの子供としての性格は完璧ね。私達一族は潜在的にM。改造趣味も強いから。」

 影の未来人は一心にコンピューターを操作し、未来のマオの子供の遺伝子改造を進めていた。



 〈運び出し完了。〉
 〈遺伝子操作も終了した。キクノ、これからの予定は?〉

 「あとはある程度の精子量を確保すれば宜しいですわ。マオさんに対する人工受精は私の役目ですわね。アシスタントのあなた、あなたは次亜空間で一年待機して下さい。」

 〈了解。出現地点はここで良いのか?〉

 「この部屋は封鎖されていますから、隣の建物の私の部屋へ。」

 〈私は?〉

 「リーダーはここで一日待って下さい。精子の増産をして頂かねばなりませんし、今晩がユリエちゃんの排卵予定です。明日には受精卵が着床するでしょうから、それに乗り移って頂きます。」

 〈キクノ、精子量は一億になった。この程度で良いのか?〉

 「充分です。保存瓶に入れてアシスタントに渡して下さい。」

 アシスタントは小瓶をジッと握り締めた。

 〈リーダー、それではこれがお別れですね?〉
 〈そうだな。長い付き合いだった。未来はハルマゲドン回避に成功した様だ。我々の一生はその使命の為だけだった。新たに生まれ変わって、未来の平和を確信して楽しい人生を凄そう。〉

 「そうですね。有り難うございました。」

 〈別れと言っても一年だ。しかもその間次亜空間で待機するとなると、別れを感じるのは私の方だけだ。〉
 〈それでは・・・。〉
 〈ああ、次に来る時は赤ん坊の私に会う事になる。さよならは言わない。また会おう。〉

 アシスタントの影は感無量という様子で次亜空間の窓から消えていった。

 〈不思議な感慨だ。別れではないとはいえ、寂しい。さて、私はデータのまとめをしておこう。何年後か先に使える様に・・・。〉

 「それでは明朝、お迎えに参ります。」

 〈分かった。それでは宜しく・・・。〉

 影の未来人は寂しげに肩を落としながら作業を続けていた。



 上ではマオ達はひたすらセックスを続けていた。マオのペニスはまだ改造による成長を続けている。時々は抜いてユリエの子宮内の精液を飲んでいたが、段々と抜き難くなっていくのだ。
 「ねえ、ユリエさん。私のオチンチン、まだ大きく成っている?」
 「そうね。丈夫に成っているのは感じる。真珠の出っ張りが強いものね。だけど私には凄く気持ちいいわよ。」
 「私も・・・。だけど今は夏休みだからいいけれど、セックスしても数回いっただけでは抜けないわよ。」
 「そうね。繋がったままで居なければならないものね。だけどそれも楽しい。」
 「ユリエさん、妊娠したら?」
 「それは平気。マオは知らないでしょうけれど、完璧な避妊薬があるの。もっともそれは私達にしか使えないのだけれど。だからこそ平気で生出し出来るのよ。」
 「どういう事?」
 「私達は受精とか着床を感じる事が出来るらしいわ。そういう能力があるのよ。だから受精したと分かったら、子宮に後避妊薬を入れれば着床しないの。着床しても三日程度なら効くのよ。」
 「ヘーッ、凄いのね。」
 「マオの子供もいいけれど、まだ私は高校生よ。もっと先ね。」
 「そうよね。私だって高一、しかも女の子だったのに、いきなりパパに成るなんてね。」
 「そうよ。だから安心してもっと楽しみましょう。」

 ユリエは再びマオのペニスを自分の膣に引き入れた。



 「お早よう・・・。」
 「アッ、ユリエさん。ウフッп@私達、繋がったままで眠ってしまったのね。」
 「さあ、起き抜けの一発しましょう。」
 「スケベ・・・。」
 「だって、マオにも分かるでしょ? ギンギンよ。それに子宮の中の精液は吸収されてしまっているみたいで、寂しいわ。」

 マオはニコニコしながら起き上がり、長いストロークピストンを始めた。そして互いに絶頂に達した瞬間、新たな精液がユリエの子宮に迸り込んだ。

 「アハッ。マオ、今・・・。」
 「エッ?」
 「受精したのよ。きっとこれがそう。分かるのよ。凄く幸せな感じがする。」
 「ヘーッ、凄いんだ。だけど可哀想ね。折角産まれるチャンスがあるのに。どうするの? すぐに避妊薬入れるの?」
 「ちょっと待ってね。母親に成るって、こういう幸せを感じるのね・・・。少し位は待って上げてもいいでしょ? それに今はまだオチンチンを外せないものね。」
 「本当ね。ユリエさんの幸せ感が私のオチンチンにも響いているわ。それでなくてもなかなか抜けないのに、ユリエさんのオマンコがしっかり喰わえているわよ。」
 「マオのオチンチンも凄く固い。真珠の出っ張りが強いわ。きっと・・・。」

 ユリエは少し悲しそうな表情を見せたので、マオは不審に感じた。

 「どうしたの? ユリエさん。」
 「ん? ええ・・・。マオも言った様に、折角産まれる可能性のある子なのに、このまま消えてしまうのかと思うと・・・。それに私もマオも身体の方は子供を産みたがっているみたいわよ。自分では意識していないのに、オマンコの締めが凄く強いの。マオのオチンチンの真珠も絶対に抜けない程突き出ている。まるで避妊薬を入れさせないぞって頑張っているみたい・・・。」
 「ユリエさんがそう思うなら、私はパパに成って上げるわよ。だけど、私みたいなパパなんて、考えてみれば可哀想な子ね。産まれるにしても流されるにしても不幸な子よ。」

 ユリエは自分の意識とは無関係に涙が流れていた。別に本気で可哀想だとは思っていないつもりだったが、止めどなく涙が溢れ続けるのだった。その様な精神的不安定さは二人が続けて始めたピストン運動によってかき消されてしまう。抜かないまま何度も射精とアクメの繰り返しであった。抜かないではなく、抜けないのだ。達した後の精神の落ち着き状態ではしっかりと真珠が噛み合っている。抜こうという意識が働くと、自律神経が真珠を突き出し、膣筋肉が緊張するのである。だからセックスの為に動かそうとすれば、スムーズに抜き挿しが出来るのだ。自分の心を偽ろうとしても、ペニスはしっかりと填まり込んだままになってしまうのだった。
 「フーッ、さすがに疲れたわね。子宮内がパンパンに膨れているわ。」
 「私もユリエさんのお汁が飲みたくて、途中で抜こうとしたけれど、どうしても引っ掛かってしまうのよ。」
 「あら、私も。ちょっと我慢して、マオが射精した直後を狙ったりしたんだけれど、どうしても噛み合ってしまうのよ。だからセックスで抜き挿ししている時に抜いてみようとしたんだけれど、抜ける少し前で引っ掛かるの。そうなるともうダメ。一旦押し込んでしまうと、もう抜こうとする意識が無くなってしまうのよ。」
 「ユリエさん、いいの? 受精したんでしょう? 避妊薬は?」
 「受精しても必ず着床する訳ではないの。私達の親戚達は殆ど生出しよ。望めば確率は高いけれど、そうでないとなかなかなのよ。それに一度出産すれば、二人目の子供はなかなかね・・・。X染色体の方が生き残れる率が高いから、どうしても女の子しか産まれないのよ。だけどどちらにしても着床する前だとすぐに効くのよ。万が一、着床後でも一日以内なら完全よ。それを過ぎてしまうと、面倒だけれど、三日間避妊薬を入れていればいいの。」
 「それを過ぎると?」
 「イヤな事を言わせないでよ。そうしたら後避妊薬ではダメ。掻爬しかないわよ。痛くて厭なものだそうよ。それとこれも私の親戚の体質として、自分の子供を産みたいと思うとまず流産しないし、子宮口が丈夫に成って、掻爬出来ないそうよ。だけど変なのよ。その分なかなか妊娠しない筈なのに・・・。」
 「アハッ。じゃあユリエさん、私の子供を産みたいんだ。」
 「バカな事言わないでよ。嫌いではないけれど、私はまだ高校生よ。おば様達じゃあるまいし・・・。」
 「ヘッ。菊野さん?」
 「そう。おば様は少し遅い方だけれど、大学一年で出産したわ。その時の旦那様は高二だったけれど。」
 「ヘーッ、それで遅い方なの?」
 「そうよ。小学生の父親とか、中学生の母親とかも居るわよ。初精、つまり初めて出した精子で父親に成った子も居るそうよ。だけど私は・・・、アアッ・・・!!」

 ユリエはピクッと震えた。

 「どうしたの?」
 「今、着床したわ。まずいわ、こんなに早く付いてしまうなんて・・・。早く抜いて避妊薬入れないと・・・。」
 「そうね。なぜかオチンチンもオマンコも元気だわ。このままではすぐには抜けそうにないわね。」
 「ダメよ。本当に冗談ではないのよ。それに着床してしまったのだから、すぐに入れないと。そうでないと、これから毎日避妊薬入れないとならないのよ。だけど・・・こんな状態では必ず抜ける自信がないわ。」
 「分かったわ。私もユリエさんの可愛い子供を見てみたい気もするけれど、確かに高校生ではね。まさか大きなおなかで大学の入学式に出る訳にはいかないわね。だけど簡単には抜けないみたいよ。」
 「仕方ないわ。力の限りセックスするしか・・・・。」
 「ウフッ、ユリエさん、スケベ。」
 「そうか・・・。マオは私とセックスし続けたいから、わざと妊娠を願ったのでしょう。」
 「あら、逆じゃない? ユリエさんのオマンコの力が抜ければ、簡単ではないにしても抜けるのよ。しっかり喰わえ込んでいるのだもの。」
 「クーッ、言い返せない・・・。だからいいわよ。私はスケベ。ひたすらマオのオチンチンを搾り続けるわよ。それっ。」
 ユリエは騎乗位で腰の上下動を始めた。ピストンが出来るという事は、無理すればペニスを抜く事が出来る筈なのだが、セックスをやめるという事には精神的抵抗感が強く、どうしてもアクメを迎える迄は一直線だった。そしてペニスの真珠が膣にしっかり喰い込んでしまうのを悔やむのだった。



 「マオ・・・、大丈夫?」
 「アッ、私眠ってたの?」
 「ダメッ、私グロッキーよ。オマンコの感覚が無くなる位しちゃった。」
 「私もオチンチンがすっかり疲れて・・・。だけど、どうして抜けないの?」
 「困ったわ。もう一晩経ったみたい。着床もしっかりとしてしまった。これから毎日避妊薬を入れないと。」
 「だって、それもオチンチンが抜けてからでしょう? 私のオチンチンもすっかり力がないし、ユリエちゃんのオマンコだって・・・。だけど噛み込んだままなのよ。これじゃ、明日も明後日も抜けないわよ。そしたら・・・。」
 「ダメよっ! 仕方ないわ。おば様に頼もう。」
 「エッ? こんなセックスしたままのところを?」
 「だって・・・。マオは私が孕んでもいいというの?」
 「・・・・・。」



 「どうやら着床は完全ね。それじゃ、十ヶ月のお別れね。」

 〈お世話になりました。〉

 「乗り移り方は分かります?」

 〈こんな事は初めてだ。こういう事があるという事も知らない。しかし菊野さんを見ていれば完全な可能性として感じる。この姿は生体の私自身のイメージなのだ。念、或いは霊としての私には姿、形、大きさは無関係だ。ただ、ユリエの受精卵にとどまれば良いのだろう。それでは・・・。〉

 影はお辞儀をしてスーッと薄くなった。それは次亜空間に戻る消え方ではなかった。弥生には存在位置だけが分かる。念となった未来人は、地下室の天井をすり抜け、交合ったままの気配のする二人の方へ滑り込んでいく。

 「さようなら、未来人さん。そしてはとこさん・・・。」


 「私だって恥ずかしいけれど、仕方がないのよ。さあ。」

 ユリエは繋がったままのマオを引っ張る様にしてベッドを下りた。

 「あ、ウッ・・・!」

 ユリエは子宮内に何かを感じた。それは異物感でも嫌悪感でもない。しかし何かが入り込んだのを感じた。そしてそれが精液でもないのは分かる。暖かい可愛らしい感情が子宮内に広がるのだった。

 「ユリエさん?」
 「私・・・。」

 ユリエの目から涙がスーッと糸を引く。

 「私の赤ちゃん・・・。」
 「ユリエさん、どうしたの?」
 「私・・・。変なのよ。今迄は着床した受精卵としての感じはあった。だけど、今、おなかの中に赤ちゃんの魂が宿ったのよ。」
 「魂? ユリエさん、大丈夫?」
 「自分でも変だと思う。おなかの中の赤ちゃんって、こんな感じなの? まだ細胞だけなのに、とても可愛い。どうしよう、マオ。私、赤ちゃんが可愛いのよ。育てたい。産みたいのよ。」

 それにはマオの方が焦ってしまった。冗談で父親に成ってもいいとは言ったものの、まさか現実になるとは思ってもいなかったのだ。

 「どうしました?」
 「アッ、菊野さん。」
 「おば様、私・・・。」
 「あら、妊娠したのね。ヘーッ、産みたいの?」
 「どうしてそれが?」
 「私はセックスに絡む事には超能力的勘が働くのは知っている筈よ。」
 「菊野さん、いいんですか? ユリエさんはまだ高校生なんですよ。それに普通の子供じゃないのよ。こんな変態な私の子供なのよ。」

 弥生はただ黙ってジッと微笑んでいた。

 「ユリエちゃんもやっと私達の血族になったのよ。大体、高校生でバージンという事自体が変だったのだから。それに親戚では遅い方ですものね。何の為に心生学園に通っていたんだか。」
 「ヘッ?」

 マオは素っ頓狂な声を上げた。

 「マオさんには変に聞こえるでしょうけれど、私の親戚は大体高校、中学で出産するのよ。女だと小学生では身体がもたないけれど、夫になる子は小学生の事もあるのよ。それにユリエちゃんだって変態家系の人間なのだから、女同士の結婚だって、それ程の違和感はない筈。確かに染色体は女性ですけれど、私達の親戚では、旦那様は皆巨乳、巨根が原則なのよ。夫婦で授乳するのが当たり前なの。」
 「ヒッ・・・?」

 マオは呆然としたまま、二の句がつげなかった。

 「それに私には分かるわ。とても可愛くて、二人に幸せをもたらす子供よ。ユリエちゃんにはもう幸福感が宿っているみたいだわね。」
 「おば様、いいの? 私、本当に産みたい。」
 「いいのよ。ちゃんと面倒見て上げますから。だけど、この子は生まれ付きの変態だわよ。だって、羊水の代わりに精液の中で育つのですから。」
 「菊野さん、私達、離れられないんです。」
 「何か不便?」
 「そうじゃなくて、このままでは避妊薬を・・・。」
 「ユリエちゃんは産むのだから、お薬は必要ないわ。おなかの中の赤ちゃんを守ろうとする本能が二人ともしっかりと働いているのよ。抜けたら避妊されてしまうかも知れないでしょ? だから避妊が出来なくなり、掻爬も出来なくなればちゃんと抜けますから。私達には流産という言葉は無縁。だから二、三週間すれば、もう安心なの。そうすれば外れる様になる筈よ。」
 「二、三週間? その間、私達はずっと繋がったままで?」
 「いいじゃないですか。どうせ夏休みなんだし、そうでなくても構わないのだけれど。無理に外そうと、励み過ぎない様にね。」

 ユリエと弥生はニコニコしていたが、マオだけはただ唖然としたままだった。



 「ユリエさん、赤ちゃんの具合は?」
 「まだまだよ。まだ三日よ。形なんか無いわよ。」
 「三日・・・。もう避妊薬はダメですね。」
 「ごめんね。無理矢理マオをパパにしちゃって。だけど、戸籍上は大変ね。まさかマオを父親としては届け出せないし。」

 マオはちょっと寂しそうな表情を見せた。

 「やっぱりイヤ?」
 「違うの。私はユリエさんが羨ましいわ。例え戸籍上は父親が居ない子供でも、ユリエさんは母親に成れるのですもの。私は・・・。」
 「マオだって成れるじゃない。オチンチンはあるけれど、女の部分だってちゃんとしているもの。」
 「そりゃ・・・。だけど、どうやって妊娠するんですか? こんな身体の私を相手にしてくれる男性なんか居ないわ。居たとしても私はイヤよ。愛していない男の子供なんて。私はユリエさんの子供の父親に成るのよ。私の子供はユリエさんの子供の兄弟だわ。だけど私達以外の人の子供だなんて・・・。」

 ユリエもちょっと寂しそうな顔をしていたが、ハッと閃いた。

 「それなら大丈夫よ。マオにはオチンチンがあるのよ。私を妊娠させる事の出来る精子があるのよ。だからマオ自身で・・・。」
 「エーッ? 自分自身で? そんな・・・。」
 「ダメ? きっとマオそっくりよ。マオ自身が父親で母親。そうすればマオの子供と私の子供は同じ父親の子供よ。完全な兄弟だわ。」
 「それって・・・。やっぱり・・・。」

 マオ自身の精神が乱れていた。まさか、自分自身で妊娠するなどとは考えてもいなかったのだ。しかし可能性としてはあるが、さすがにそこ迄変態的な妊娠はやはり考えたくなかった。



 二人の毎日は殆どがセックスであった。いつ迄も飽きる事なく、常に快感に翻弄されている。ユリエの子宮も常に精液でいっぱいに膨らんだままで、少しずつ胎児の成長は続いている。マオは繋がったままなので、自分の精液もユリエの尿、愛液も飲めないので、栄養浣腸だけで過ごしていた。弥生が毎日世話をしてくれている。たまに搾り立ての精液を持ってきてくれるのが、デザートの様な楽しみであった。

 「フーッ、美味しい。自分の精液とは味が違うけれど、美味しいわ。」
 「良かったわね。ここに居る間は搾ってくれる人が居ますから。」
 「菊野さん、私のオチンチンは沢山出せるけれど、この精液の人も私みたいに?」
 「勿論、普通の男の子ではないわよ。いっぱい出せる様に改造されているの。マオさんと同じ様な巨乳だけれど、まだお乳は出せないのよ。精液を搾り出せば出す程、オッパイも大きくなる改造なの。ミルクが出せる様に成ったら持ってきて上げるわよ。」
 「グッ、男の子でしょ? そんな事?」
 「ここでは普通なのよ。」
 「おば様、どんな仕様の子?」
 「可愛い子よ。当然ですけれどね。オチンチンのいい素質の子なので、自家受精で更にいい素質のペットの子供を作るの。」
 「ヘーッ、活きたバイブね? どんな具合?」
 「やっと膣が形成されたの。子宮はまだまだだわ。後一年は掛かるわね。なかなかお薬が入手し難くて。」
 「あのう・・・、自家受精って?」
 「子宮が出来て、卵子が作られたら自分の精子で受精させるのよ。そっくりの子供が出来るし、大体が素質は更に優れた子供になるの。」
 「まさか・・・、男の子が子供を産まされるなんて・・・。」
 「あら、珍しい事ではないのよ。ただ、改造で進めるのは大変なの。そうでない場合は・・・・。」

 まだマオは新たなショックを受けていた。



 二人は繋がったままでの生活に馴染んでいた。弥生以外には見られないので、二人はずっと繋がったままでの生活を楽しんでいた。それ程遠くない場所迄の散歩も楽しいものだった。

 「フーッ、マオ、催しちゃった。」
 「戻ります?」
 「ここでして。」

 二人は青空の下、芝生の上でセックスを始めるのだった。


 「もう二週間になるわね。」
 「ウフフ・・・。小さいけれど、赤ちゃんが分かる。マオの精液の中でしっかり育っているわ。」
 「こんなに続けていていいのかしら・・・。」
 「大丈夫よ。私が分からなくても、身体が教えてくれる。あら? マオのオチンチンに隙間が?」
 「アッ、抜けそう。抜きます?」
 「そうね。たまには抜いて、オマンコを乾かさないとね。」
 「まっ、イヤらしい。いい、抜くわよ?」

 今迄、何としても抜けなかったペニスだが、少し身体を捻りながら真珠を外すと、ピチピチッと音がしてペニスが外れる。ズブーッと音がしてペニスが外れた。ユリエの開ききった膣口から精液が激しく噴き出してきた。

 「アッ、勿体ない。」

 マオは急いでユリエの膣口に口を宛てがい、愛液と精液の混合物を美味しそうに音を立てて飲み始めた。

 「フーッ、久しぶりにオマンコが空になったわ。何だか寂しいわね。」

 マオにしてもペニスへの圧迫感がないのは寂しいのだが、それでも久しぶりにユリエの膣口からの飲み物はこの上もない美味しいものだった。

 「アハッ、マオのオチンチン、すっかりふやけてしまって・・・。」
 「フーッ、美味しかった。ユリエさんだって、オマンコ開きっ放しよ。」
 「本当。何だかバランスが取り難いわね。繋がっているのが当たり前だったのに。」
 「だけど、抜けたっていう事は、ユリエさんの赤ちゃんが確実に産めるという事ね。」
 「そうね。後はジッと待つだけ。何だか凄く嬉しい。」


 ユリエの腹はそれ程大きくは成らなかった。いつも精液で子宮が膨らんでいるので、胎児が成長しても、それ程目立たないのだ。

 夏休みが終わっても、二人は別荘に居続けた。二人ともインターネットで授業を受けていた。寮に戻る事も出来るのだが、ユリエの方は授業が少ないし、どうせマオとのセックス浸りであるならという事だ。それでも秋の終わりには周りも寒々としてくるので東京に戻った。ただ、寮でも相変わらずセックス浸りの毎日だった。そして冬にはさすがにユリエの腹も目立ってきた。

 「ユリエさん、当分学校には行けないわね。」
 「そうね。このおなかではね。だけど凄く幸せ。どうして親戚の人達が皆若い内に子供を産んだのか、やっと分かった気がする。さすがにこれだけ大きいと、強いセックスは難しいわ。」
 「私はいいわよ。私も射精だけがセックスじゃないって分かったの。オチンチンをユリエさんに挿れているだけで幸せなの。だけど赤ちゃんが大きく成っているから、深くは挿れられないわ。だけど私も赤ちゃんが待ち遠しい。だから我慢出来るの。」
 「ごめんね。マオが自分で吸い出しているのは知っているけれど、もうそんなに沢山の精液は入らないのよ。あと半年、辛抱してね。」
 「分かってる。無理して赤ちゃんに万が一の事があったら・・・。その代わり、赤ちゃんが産まれたら、寝る間も与えずセックスしまくるからね。」
 「つくづく私達ってスケベね。いいわよ。二人で繋がったまま、赤ちゃんをあやすのもいいわ。」



 ユリエの大学入学は出席出来なかった。臨月に近い大きなおなかでは無理だったからだ。書類上の入学で、弥生の手続きで済ませていた。

 「ユリエちゃんの出産は連休の頃ね。だとすると二学期からしか出席出来ないわ。だったら、まだ早いけれど、別荘で産みますか?」
 「そうね、おば様。普通の産婦人科には行けないし、マオにも立ち会って貰いたいわ。」
 「佐渡先生に頼みましょうね。」
 「ああ、あのスケベ先生ね?」
 「あなた達よりはまともよ。それにあなた達の様な変態夫婦には、色々アドバイスをして貰わないとね。」
 「あのう・・・。佐渡先生って?」
 「ああ、私の親戚よ。勿論変態。だけど専門は産婦人科なのよ。普通の医院を開いているけれど、本当は私達や改造された人達の変態の出産を手伝ってくれるの。産婦人科だから、性器については詳しいわ。改造のお手伝いもして貰っているし。」
 「じゃあ、私達を変だとは思わない人なんですか?」
 「そうよ。実際、もっと凄さまじい人達のお産を手伝っているわ。東京でのセックス異常者のお世話も頼んでいるし、変態性欲者を匿って貰うの。」
 「ヘーッ、菊野さん達の組織って、結構凄いんですのね。」
 「当然よ。そうでなければ違法、合法に関わらず、こういう変態セックスを楽しめないわよ。」



 そしてゴールデンウイーク。

 「おば様。陣痛。」
 「佐渡先生。お願いしますわ。」
 「はい。私の本業ですから。ええと、旦那様は?」
 「恥ずかしがっていて、隠れているんです。」
 「それどころではないでしょう? 菊野さん、呼んできて下さい。どんな方かはちゃんと知っていますから。」
 「分かりました。マオさーん!!」

 弥生はクローゼットに隠れているマオを引っぱり出した。

 「菊野さん、やっぱり恥ずかしい。こんな身体で・・・。それに・・・。」
 「それに?」
 「あのう、オッパイが痛くて・・・。」
 「痛い? アラッ? マオさん、お乳が滲み出しているわよ。」
 「お乳? アッ・・・。」
 「やっぱりね。マオさんの子供が産まれるのよ。父親だけれど、女の部分は母性本能を刺激されているのよ。産まれたらすぐにお乳を飲ませて上げなさい。それがあなたの役目よ。」

 マオはフラフラしながら弥生に手を引かれてユリエの側に寄った。佐渡はチラッとマオを見、やはり少しは驚いた様子だったが、それでもマオが予想していた程ではなかった。

 「破水したわ。産まれますよ。菊野さん、産湯はOKね?」
 「いいですよ。」

 その途端、ユリエの息みの声と同時に佐渡は赤ん坊を引っぱり出した。そして元気な泣き声が響く。佐渡のホッとした様子がマオにも嬉し涙を誘った。そして乳房の張りが益々ひどくなった。

 佐渡はユリエの後産の処置をし、弥生は新生児を産湯に浸けていた。

 「フーッ、ユリエちゃん、元気な女の子よ。」
 「女の子? 私が父親なのね?」
 「そうよ。ほら、目鼻立ちがしっかりしているわ。女性同士の子供だから、とても可愛らしい女の子よ。」
 「ハーッ、私もとうとう母親か・・・。まさか産めるとは思わなかった。とても嬉しい・・・。」
 「音川さん、とても安産でしたね。いつもこういうお産だと楽なんですけれどね。」
 「ウフッ、それって悪口かしら?」
 「ユリエちゃん。意地悪よ。確かにあなたは産道が広いから、楽なのよ。だってマオさんのオチンチンが出入りする広さなんですもの。」
 「フーッ、疲れたわ。あら、マオ?」
 「オッパイが・・・、痛くて・・・。」
 「アッ、お乳が出てる。」
 「ユリエちゃん、最初からマオさんのお乳を上げてもいいかしら?」
 「勿論いいわよ。マオ、お願い。」

 弥生は産着にくるんだ赤ん坊をマオに手渡した。マオはぎこちない手付きで赤ん坊を受け取り、乳房を含ませようとする。ちょうどペニスと乳房に挟めば安定する。皆は笑っていたが、それはマオをバカにした笑いではなく、嬉しさの表現であった。赤ん坊は最初のお乳を吸い始め、マオも感動でいつ迄も涙が止まらないでいた。


 「本当に可愛い子ね。女同士の子供は初めてだけれど、やはりとても可愛らしいわ。」
 「あのう、佐渡先生。先生は色々な形の出産に立ち会われているそうですけれど・・・。」
 「菊野さんに聞いていません?」
 「凄い変態だとか・・・。」
 「そうね。変わったところでは、男の子だった子が出産した事もあるのよ。」
 「本当なんですか?」
 「それも二通りあって、ペニスを無くされて女性化して、別の男性の妻として産んだ場合、或いは保存しておいた自分自身の精子で妊娠するの。それとこう言っては何だけれど、金田さんみたいなふたなりにされて、自分自身の精子で受精する場合。勿論、表には発表出来ない出産なの。」
 「もし、本当にもしなんですが、私が自分で妊娠する事も可能なんですか?」
 「当然ですよ。金田さんは精子を出せるのは実証済みだし、女性自身は何等変化なしですからね。」

 マオは赤ん坊に授乳させながら、自分の膣がキュッとすぼむのを感じた。



 数日で新生児の表情から赤ん坊の可愛らしさが増した子供はユリエとマオで授乳の取り合いとなる。

 「ねえ、マオ。名前を付けないと。」
 「アッ、そうなのよ。初めてだから、気が付かなかったの。」
 「おば様に名付け親になって貰っていい?」
 「そうね。是非。」


 弥生が幾つか用意した名前の中から二人で決めたのは『美紀』だった。弥生としてはハルマゲドンの無くなった美しい世紀を意味させていた。



 三ヶ月して夏休みの頃、ミキは益々可愛らしさを増していた。その頃からマオは授乳をさせながらも暗い表情をしていた。

 「どうしたの、マオ? この頃少し変よ。」
 「私も・・・、ユリエさんみたく母親に成りたい・・・。」
 「美紀じゃダメ?」
 「美紀ちゃんもとても可愛いわ。私の子供ですもの。だけど、私も母親に成りたいの。」
 「本当に? だったらいいわよ。マオが産んだ子は美紀の妹。だとしたら私の子でもあるのよ。一人っ子の私としては姉妹が欲しかった。だから美紀には妹を。」
 「いいのね? だったら私・・・。」

 そこに弥生が入ってきた。

 「アッ、おば様。」
 「そろそろだと思ったわ。マオさん、この特殊コンドームで採精して。」

 マオはおそるおそる大型のコンドームを手にした。まるで大きな袋である。それをペニスに被せ、シュコシュコと擦り始める。なかなか射精出来ない。それでもやっと放精出来たが、快感は感じなかった。

 「それでは準備してくるわ。マオさん、その間、精神をリラックスしていてね。」
 「おば様、大丈夫なの?」
 「ちゃんとマオさんの排卵タイミングは分かっているわ。この精液を濃縮、水分分離してきますからね。」


 マオは目を瞑ったままベッドに横たわっていた。


 〈菊野さん、宜しいか?〉

 「はい、いらっしゃい。遺伝子操作してある精子を。」

 〈これだが。〉

 弥生はそれを長い嘴の注射器に吸い上げた。

 〈リーダーは?〉

 「ご安心を。ちゃんと産まれていますよ。まだ自意識は無いでしょうけれどね。これからマオさんに受精させてきます。暫く待機していて下さいね。」

 〈私も見てみたい。次亜空間の中から覗いていて良いか?〉

 「結構ですよ。それでは。」

 弥生は準備した人工受精用注射器を持って一階に上がった。


 「いいですね? マオさん、足を開いて、少し腰を上げて下さい。」

 マオは目を瞑ったまま、言われた通りにした。弥生が膣口を拡げ、注射器を挿し込んだ時、ビクッと硬直する。弥生は手探りで嘴を子宮口に挿し込む。鈍痛に呻き声を上げるマオだが、ジッとして、僅かに震えていた。そして弥生はゆっくりとピストンを押す。マオの子宮には遺伝子操作された精子が静かに流れ込んでいった。

 「終わったわよ。」

 マオはまだ目を瞑ったままジッとしていた。

 「おば様、受精した?」
 「まだね。マオさんには分かるかしら?」
 「分からない・・・。だけどこの気持ちは・・・。」
 「後悔しています?」
 「そうかも知れない・・・。私は子供を産みたいけれど、その子の父であり母であるのがこんな身体の私。こんな私の子供が可哀想で・・・。」
 「それは安心して。私には幸せな予感があるの。この勘は確実よ。」
 「そうよ、マオ。おば様の勘は予知能力と言うべきもの。おば様が確信しているのだから、絶対なのよ。」
 「そう? 心配しないでいいのね?」
 「大丈夫。美紀の妹だもの。」
 「あら、妹と決まった訳ではないでしょ?」
 「だって・・・、私の時と同様、X染色体同士なのだから・・・。」
 「そうでもないのよ。確かにX染色体同士では女性だけれど、XXでの男性も居るのよ。マオさんの場合、このペニスで分かる様に、男性化形質を持っていると思っていいわ。」
 「もし男の子だったら珍しいわね。親戚一同、男の子は知らないわ。」
 「そうね。遠い親戚では分からないけれど、私の知っている限り、女系家族ですもの。」
 「アッ?」
 「まあ、マオさんにも分かるのね。今、受精したわ。」
 「これが妊娠?」
 「どう? 幸せを感じる?」

 マオはゆっくり起き上がり、下腹部を撫で回した。

 「分からない。まだ不安で・・・。」
 「ゆっくりお休みなさい。ユリエちゃん、今晩はセックスを避けて。受精卵が流れ出てしまうからね。」
 「分かったわ。マオ、そのままにしていなさい。私が着いていて上げる。美紀の妹の為にもね。」

 弥生は再び地下室に下りていった。既に影の未来人も真空間に出ていた。

 〈受精はしたらしいな。〉

 「もうすぐ着床します。そうしたらお別れね。この部屋は封鎖します。リーダーが自我を取り戻したら開けて上げますよ。」

 〈色々世話になった。いや、これからも世話になる。どんな子供として産まれるかの不安はあるが、菊野さんが居れば心配ないだろう。有り難う。〉

 「あら? 思っていたよりも早いわね。着床したみたいだわ。きっとリーダーが精液の中に着床促進の因子を入れていたのね。分かります? あなたは念として受精卵に乗り移って下さい。リーダーの弟として産まれるのです。」

 〈弟か? 私としてはどちらでも構わない。しかし肉体的には女性であったが、マオのペニスを羨ましいと思っていたから、ペニス快感を感じられるのは良い。〉

 影は存在が薄くなった。

 〈さようなら。〉

 かき消す様にスーッと消え、その存在位置だけが分かる。天井を通り抜け、マオの方へと寄っていった。


 「ハッ!」

 マオの表情がパッと輝いた。

 「マオ? どうしたの?」
 「分かった。これね?」
 「着床したの?」
 「そうらしいわ。おなかの中が暖かい。ジーンと幸せが広がる。これが母親に成るという幸せなのね?」

 嬉し涙がいつ迄も流れ続けていた。



 「マンマ・・・。」
 「エッ、美紀ちゃん? ユリエさん、美紀ちゃんが喋ったわよ。」

 マオの声にキッチンに居たユリエは慌ててマオ達の方へ走ってきた。

 「喋った?」
 「ええ、今『ママ』って・・・。」
 「美紀ちゃん、もう一度喋って。」

 美紀は二人に挟まれ、ニコニコしながらもう一度「マンマ」と言った。

 「ワーッ、喋った。そうよ。二人ともママよ。」

 二人の喜びは美紀にも分かり、二人が喜ぶ事で自分も喜び、立て続けに「マンマ」を喋り続けた。
 喋りだけでなく、這い這いも普通の子より早かった。



 夏休みが終わる頃だが、ユリエは迷っていた。

 「どうしようかしら・・・。大学へ行くとなると美紀の世話が。」
 「そうね。オッパイはとにかく、外に出られない私と一緒だと・・・。」
 「ううん、マオだけに任せっ放しにするのを心配しているんじゃないの。私達は普通の母親よりはずっと若いから、育児についても不安なのよ。二人居てやっと一人前だもの。それにあの寮は狭いし・・・。」
 「まだ美紀ちゃんは乳飲み子だから、確かに大学は無理ね。それにまだ目立たないけれど、私もおなかが大きく成ったら、一人では大変だと思う。」
 「分かったわ。大学は延期。インターネット授業で、出来るだけ遅れなくするけれど、四年が五年になってもいいわ。」
 「じゃあ、当分この別荘で?」
 「おば様に頼むわ。マオにしてもその方がいいと思うの。妊婦の運動不足は赤ちゃんの成長にはマイナスよ。寮では出歩けないからね。」

 二人は決心して、暫く別荘住まいをする事にした。



 軽井沢の秋はかなり涼しい。局部を晒したままでしか居られないマオにとっては寒いと言っていい。

 「ユリエさん、お昼は?」
 「済んだわ。」
 「何も私の前で食事してもいいのよ。」
 「だけど、マオは食べられないのに、その前でガツガツするのは可哀想で。例えマオが平気でも、私はそこ迄無神経じゃないわよ。」
 「そんなに気を使わなくてもいいのよ。私は普通のお食事は美味しいとは思えないし、精液やユリエさんのお汁やオシッコの方がずっと美味しいわ。私ばっかり美味しい物を飲める事の方が申し訳ない程よ。それに美紀ちゃんが正しい食事の方法を覚えないわよ。」
 「分かったわ。美紀のオッパイは?」
 「おなかいっぱいらしくて、眠っているわ。」

 赤ん坊はマオの巨乳とペニスの間でスヤスヤ眠っている。そして小さな手で亀頭の真珠をこね回している。

 「やっぱりユリエさんの血を引いているわよ。こんなに小さいのに、もう私のオチンチンをいじり回しているのよ。お陰でずっと催したままになってしまって大変。」
 「本当。マオ、ギンギンなんでしょう? して上げる?」
 「美紀ちゃんが眠っている間にね。」

 マオは赤ん坊をベビーベッドに寝かせ、ユリエを引き寄せた。そして絡み合うのだった。



 「フーッ、妊婦って結構つらいのね。」
 「そうね、私もその程度のおなかの時は結構大変だったわ。だけどマオはそれ以上だわ。おなかが大きいだけでも重いのに、マオはオッパイとオチンチンの重量も凄いから。」
 「そうなのよ。おなかが突き出て、オチンチンを強く押すのよ。折角美紀ちゃんにオッパイを上げるのに、抱っこ出来ないんですもの。」
 「美紀は掴まり立ち出来るのよ。だからもうすぐ歩く様になるわ。」
 「早いわよね。それに親の欲目かも知れないけれど、普通の子に比べて、ずっと可愛いと思わない?」
 「ううん、親バカだけじゃないわ。確かに可愛いわよ。何と言っても、女同士の子ですからね。より女っぽいのよ。だけどスケベになりそうなのは確か。仕方がないけれどね。」
 「私達の激しいセックスを平気で見ているんだもの。」
 「早く産まれて欲しいわ。マオのおなかが大きいと、いいセックス出来ないんだもの。」
 「ごめんね。私もつらいわ。ユリエさんに挿れていると気持ちいいけれど、おなかが重いから良く動けないわ。」
 「その分、おなかの中の子が良く動いているわよ。」

 美紀が目を覚まして、ヨチヨチ歩きで二人の方へ歩いてきた。

 「ママ・・・、パパ・・・。」
 「はい、いらっしゃい。」

 ユリエが手を差し伸べたが、美紀はマオの方へ寄っていった。そして大きなおなかに手を当てる。

 「パパ、男、赤ちゃん、出たい。」
 「エッ? 美紀ちゃん、パパは女だけれど男よ。」
 「違う・・・。赤ちゃん、男。チンチンよ。」
 「赤ちゃんが男? 美紀ちゃん、分かるの?」
 「そう言えば、おば様もそんな事言ってたわ。だけどXXなんだから女の筈よね。」
 「ううん、チンチンあるよ。早く、出ておいで。」
 「美紀ちゃんも早くお姉さんに成りたいのね。だけど産まれるのはもう少し・・・・、アタッ・・・!」

 マオが少し身を捩った。

 「どうしたの?」
 「痛い・・・。ウッ、これって陣痛?」
 「陣痛? 本当?」

 ユリエは急いでマオをベッドに寝かせた。そして電話で別棟に居る弥生に電話を入れた。



 「佐渡先生、産湯は用意しました。」
 「菊野さん、金田さんは間もなくよ。アッ、破水したわ。産まれますよ。」

 マオは出産の痛みに耐えていたが、それでも大きな悲鳴の様な声を上げる。
 ユリエとミキは心配そうにジッと見つめているだけだった。そして大きいいきみの声とともにマオの膣口が大きく拡がり、ペニスの位置がググッと上に上がった途端、ペニスの付け根の下から胎児が頭を表した。

 「それっ!」

 佐渡がその胎児を掴み上げ、ググッと引き出した。

 「オギャーーッ!」


 「マオ、男の子よ。」
 「男? じゃあ・・・。」
 「可愛いわよ。マオとそっくり。ちゃんとしたオチンチンが付いてるわよ。」
 「おめでとう、マオさん。だけど私も初めてよ。親戚中で男の子が産まれたのは初めてなのよ。」
 「良かった・・・。私、こんな身体に成ってしまって、母親に成れるなんて思えなかったの。美紀ちゃんのパパに成った時も凄く嬉しかったけれど、ママに成る嬉しさって全く別なのね。凄く幸せ・・・。」
 「マオ、あなたは特別に幸せなのよ。私達は母親には成れるけれど、あなたは母親にも父親にも成ったのよ。」

 弥生がニコニコしながら弥生にお祝いの言葉を掛ける。

 「どう? 私が言った通りでしょう? マオさんは幸せに成れるって。それも並大抵の幸せではないって。病気でこういう身体に成ったけれど、今でもつらくて悲しい?」

 マオは涙を振り飛ばして首を振った。

 「ううん、私、幸せ。この世で一番幸せかも・・・。ねえ、赤ちゃん抱かせて。」

 佐渡は産着にくるんだ赤ん坊をマオの横に寝かせた。マオには赤ん坊の顔が涙で良く見えない。しかしまるで女の子の様な可愛い顔は更にマオを幸せに包む。部屋全体が幸せの光に包まれているのだった。



・・・・完・・・・



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