母犬 2  (「母犬1」から数年後)


 私は北伏美奈(きたふし みな)。心生学園高等部三年生。この学校はそのまま大学への持ち上がりなので、三年生でも、特別な人以外は受験勉強をしません。間もなくゴールデンウィークなのですが、大体その時期は旅行かバイトです。私にはまだステディも居ないし、第一お金も無いのでアルバイトをと思っています。

 アルバイト募集は学校の学生課に張り出されるのですが、さすがに高等部への募集は少なく、大学の方の学生課にも行きます。しかしゴールデンウィークだけの短期アルバイトは意外と少なく、やはり寮での耐乏生活になりそうです。



 募集要項を眺め終え、諦めて帰ろうとした時、事務室から女子事務員が美奈に声を掛けてきた。

 「あなたアルバイトを捜しに来たの?」
 「ええ、だけど・・・。」
 「あら、高等部の生徒さん?」
 「はい。ゴールデンウィークだけというのは無いですね。」
 「あら、ちょうどいいわ。大学生のバイトは、普通は長期なのよ。こんなのは出しても無駄かと思っていたけれど。」

 事務員は募集要項の紙を差し出した。

 「大学生には給与が安いけれど、あなたらなどう?」
 「どういうお仕事ですか?」
 「ええとね、ゴールデンウィークの期間、お留守番と犬の散歩よ。一日五千円だけれど、食事付き。」
 「ヘーッ、いいですね。散歩させたら、あとは?」
 「何も無し。ただ、お留守番ですから、その家の中に居るなら、何をしていてもいいわよ。当然、その一週間は住み込みですけれどね。」
 「そんなのでいいんですか?」
 「OKなら先方へ連絡するわ。といっても、実を言うと私の伯母なの。二十八日の午後一緒に行きましょう。場所は八王子の郊外だから、車で送って行くわよ。」
 「ワーッ、ラッキー! お願いします。」
 「じゃあ、決まりね。学校が終わったら、ここへいらっしゃい。」
 「分かりました。宜しく。」

 美奈は深々とお辞儀をしたが、女子事務員は歪んだ笑いを口元に浮かべていた。



 いよいよ明日からゴールデンウィークの午後、美奈は旅行気分でアルバイトの準備をし、大学学生課へ向かった。

 「はい、待っていたわよ。すぐ出掛けるわね。」

 女子事務員は既に私服に着替えていた。美奈にはその事務員のグラマラスなスタイルに少し驚きと羨望を感じた。

 「ヘーッ、事務服じゃないと、凄いんですね。」
 「何言っているのよ。この大学には美人が多いのよ。まだまだ・・・。だけど女の子からでもそう言われると嬉しいわ。それに私だって美人の多いこの大学の卒業生だし。」
 「先輩だったのですか?」
 「そうよ。川島留美子です。宜しくね。詳しい事は車の中で話すわ。」



 二人は中央高速で郊外へ向かう。

 「北伏さん、犬は好き? グレートデーンっていう大型犬よ。」
 「大型? 嫌いではないですけれど、私でも大丈夫ですか?」
 「それは安心して。ちょっと変な犬だけれどね。」
 「変?」
 「大人しい点は保証付きよ。ただ、凄く人見知りをするし、甘やかしていたせいか、自分を犬だと思っていないのよ。自分を人間だと思っている様でもあるわ。頭は凄くいいから、ある程度は人間の言葉も理解するわ。アッ、そうそう。悪いけど、私のバッグを開けて。」
 「これですか?」

 美奈は後ろの座席に置いてある留美子のバッグを引き寄せた。

 「中に香水が在るでしょう。それをつけておいて欲しいの。さっき言った様に人見知りする犬だから、初めての人には馴れないのよ。だから伯母様と同じ香水をつけておけば、ある程度はいい効果もあると思うの。」
 「これですか?」

 美奈はちょっとスプレーを手の甲に吹き付け、香りを嗅いでみた。メーカー名もなく、何も書かれていない香水だが、上品な香りである。

 「オーダーメイドよ。伯母様は財産家だから、そういう点にもこだわるの。だからその香りと同じ香りの香水はないので、リンクも・・・、アッ、リンクという名前の犬よ。その香りで、伯母様と似ているから、安心すると思うの。」
 「確かに財産家ですね。こう言っては何ですが、たかが犬の散歩とお留守番でバイトを雇うなんて。」
 「仕方ないのよ。あなたが見つからなかったら、私が留守番をしなくてはならないのだから。散歩と言っても、鎖で引っ張る訳ではないのよ。さっきも言った通り、自分を人間と同じだと思っている犬だから、ただ一緒に庭を歩くだけでいいの。」
 「はあっ? それじゃ・・・。」
 「そう。ただ伯母の屋敷に居るだけでいいの。」
 「ますます分からないわ。それに、どうしてその犬が人間と同じと思っているのですか?」
 「二歳半なのだけれど、考えようによっては可哀想な子犬なのよ。生まれは軽井沢の別の伯母の所なの。その伯母は本当に犬好きで、何頭も飼っているの。リンクはそこのボス犬の子供なんだけれど、産まれてすぐに母犬が死んでしまったの。犬は母性本能は強いけれど、他の犬の産んだ子犬迄はなかなか育てないのよ。ミルクでは育てられないの。グレートデーンは並みの犬よりもずっと大きいでしょう。赤ん坊の時は小型犬と同じ程度なの。だからそういう犬よりもずっと高い栄養のお乳が必要なのよ。」
 「それで?」
 「そこからが犬好きの伯母の悪いところなのよ。その子犬をたまたまオッパイの良く出る人が居たので、そのお乳で育てて貰ったのよ。犬にしては大変な事なのよ。産まれてすぐにオッパイで育てられたら、自分の母親だと思い込んでしまうわ。そして人間の子供だと思い込んでしまったのよ。その人もまるで自分の子供の様にして育てたから・・・。他の犬は当然リンクも自分達の仲間だと思うのだけれど、リンクは自分は人間で、犬達の上位に属すると思い込んでしまったのよ。犬は本能で自分の格付けをしっかり把握するのよ。ご主人には忠実で、自分のランク以下にはボスとして振る舞うの。だからその群の中からはみ出てしまっていたの。そして一番困ったのが発情期なのよ。リンクは雌犬には発情しないのよ。だから精神的におかしくなりそうで・・・。元々が凄く頭のいい犬だから、余計なのね。だから八王子の伯母が引き取り、リンクに自分が犬なんだという事を理解させていたのよ。最近はやっと分かってきた様だけれど、まだまだ自分の事をせいぜい犬と人間の間位と迄しか理解していないわね。だからリンクを完全に犬として扱うと、凄く機嫌を悪くするわ。結構表情の豊かな犬だから、美奈さんにも分かると思うわ。」
 「面倒な犬ですね。」
 「うーん、考え様ではむしろ簡単よ。犬と遊ぶと言うより、子供をあやしていると思えばいいのだから。或いは自分が犬に成ったつもりで付き合うと、結構なついてくれるわ。はい、この先よ。」

 とは言ってもまるで林の中を走っている様だった。人家を外れてかなり走っていたのだ。

 「この山全体が伯母の屋敷の敷地なの。」
 「ヘーッ、凄い!」

 更に山道を上がると、やっと長い塀の家が見えてきた。確かに屋敷の敷地だけでも想像以上に広い。そしてその入り口から更に奥まった所に豪邸が建っていた。古いがしっかりした造りで、やはり資産家らしさを感じる。玄関前に車を止めると、中年の女性が一頭の大きな犬を連れて出てきた。

 「留美子さん、ご苦労様。」

 留美子がドアを開けて顔を出すと、リンクと思われる大きな犬が嬉しそうな顔で走り寄ってきた。しかし美奈もドアを開けると、その犬は驚いて立ちすくんだ。確かに留美子の言っていた様に、その犬の表情は豊かで、驚きと警戒の表情をしながら女性の後ろに隠れてしまうのだ。ちょうど子供が知らない人にいきなり顔を合わせた時の様だった。

 「いらっしゃい。北伏さんですね?」
 「初めまして。」

 美奈はピョコッとお辞儀をした。リンクはその女と話している美奈を見て、少し安心した様なホッとした表情を浮かべていた。そして、まだ離れた位置からしきりに美奈の匂いを確認している。そして不思議そうな表情をしていた。美奈にはその様子が微笑ましく、リンクにもちょっと頭を下げて会釈をした。するとリンクも本当に嬉しそうな顔をするのだった。

 「あら、リンク、珍しいわね。初めての人に会うのに、こんなに喜ぶのは珍しいわ。」
 「あのう・・・、私、香水を・・・。」
 「ええ、だけど今迄もそういう事をして貰っていてもなかなかなのよ。留美子さんだって、そうね・・・。」
 「そう、私の時は何年か前だけれど、二、三日は近寄っても来なかったわ。ましてこんな顔を見せたのは一週間もしてからよ。」
 「良かったわ。私が出掛けるのは明後日だけれど、明日でも出掛けられたわね。あらあら、こんな所で話込んでしまって。中へどうぞ。アッ、留美子さん。すぐにお留守番を頼むのですから、北伏さんに手順を教えて上げて下さいね。たぶんもうリンクには大丈夫かも知れないけれど、機嫌を曲げたら本当に子供の様に駄々をこねますからね。」
 「はい。じゃあ美奈さん、私に着いてきて。」

 中は簡素だが豪華であった。一部屋一部屋が広いフローリングだった。

 「本当なら美奈さんも私達と同じ様にリンクに対して主人の位置につくのですが、今回は短期間の上に時間がないの。だからあなたの自尊心を傷つける事になるかも知れないけれど、リンクの友達という位置にいて欲しいのよ。」
 「友達? ですか?」
 「そうなの。さっきも言った様に、リンクはまだどこか自分が人間と思っているの。私や伯母様は時間を掛けてリンクの上位の人間だと理解させたのだけれど、あなたにはその時間がないの。いきなり知らない人が来て、リンクの主人よと言ってもそこは犬。理解出来ないわ。だからお友達という事にしたいの。犬の二歳半は人間で言うと十五歳程度ね。リンクにとってはあなたは同世代なのよ。人間と思っているリンクには、殆ど歳の違わない、しかも女性のあなたが主人とは思えないという訳。」
 「アハッ、成る程ね。男の子だったら当然ですよね。いいですよ。それで一週間のバイトが無事に過ごせれば。」
 「じゃあ、私と伯母様は椅子に座るけれど、あなたは床に座って。リンクには椅子に座らせない様に躾けてあるのに、あなたも椅子に座ると上下関係がおかしくなるの。」
 「そうなの。ごめんなさいね。私の甥達が来た時にもそうして貰っているのよ。」
 「そうよね。あの子達はむしろリンクの子分だわ。リンクがお兄さんぶって引き連れているもの。最初の内は同じ仲間だったのに、リンクの方が早く成長しますからね。」
 「いいですよ。」

 美奈は素直に床にしゃがんだ。すると女性の後ろに居たリンクは鼻を鳴らしながら美奈の顔を見つめてきた。最初の内は不思議そうに首を傾げていたが、その内に尻尾を大きく振り、明らかに好意を示してくるのだった。

 「まあまあ、照れ屋のリンクにしては積極的です事。」
 「それとリンクの食事ですけれど、一緒に食べて上げて下さい。私達と同じ食事をするのです。ただ、子犬と言ってもこの大きさですから、私達と食事をするのは家族の証で、朝と夕方にはちゃんとドッグフードを食べさせます。それとリンクはミルクが好きですから、それもたっぷりとね。一週間分の食事は台所の冷蔵庫にありますから、お好きな様に料理して下さい。ミルクもしまってありますから、リンクの欲しがるだけ上げて下さいね。今朝収納しましたから、普通でも十日は保ちます。それと部屋は自由に使って頂いて結構です。火事だけを気を付けて頂ければね。」
 「はい、そんな事なら。大きさには驚きましたけれど、本当に大人しい犬ですのね。」

 リンクには『犬』という言葉が気に入らなかった様で、顔をしかめた。それに気付いた美奈はすぐに言い直す。

 「アッ、そうか・・・。本当に言葉が分かるんですね。リンクちゃん・・・、もダメか。リンクさんは大人しそうだから。」
 「そうよ。その調子でね。だけどリンクは体が大きいのに、からっきしの弱虫。」

 リンクは情けなさそうな顔で女主人を上目で見ていた。

 「散歩の時、この建物のずっと北の沼には行かないでね。あそこは蛇が出るの。リンクは蛇が大嫌いで。情けないわよ。」
 「蛇・・・ですか? 私も嫌いです。見ただけで足がすくんで。」
 「じゃあ、心配ないわね。どちらも嫌いなら近寄らないわね。リンク、『お姉さん』と仲良くするのよ。」

 リンクは「ウォン」と軽く吠えた。



 すぐに夕食となり、広いダイニングで留美子に教えて貰いながら食事の手伝いをする。

 「この冷蔵庫の中身は何を使ってもいいわよ。」
 「これ、冷蔵庫と言うよりも、冷蔵倉庫ですね。これじゃ十日どころでは・・・。」
 「そうねえ、イメージとして、七、八人前で作るといいわ。リンクは好き嫌いがないから、その程度を食べるわね。ただ、お昼は軽くていいの。それからこの奥がドッグフードだけれど、ビスケットタイプなの。リンクは『ドッグフード』という言葉も好きじゃないから。一応、私達の居る時には何とか犬であるという自覚を持つ様ですけれど、あなたと居る時は戻ってしまうかも知れないですから。それとテーブルも申し訳ないけれど分けるわ。私と伯母様はテーブルですけれど、あなたはリンクと低いテーブルです。気分悪くしないでね。」
 「いいですよ。私も犬に成ったつもりで努力しますから。」
 「アッ、そうそう。リンクにコーラとお酒は飲ませないでね。コーラは成長途中の犬にはあまり良くないし、お酒はなおさらね。あなたもリンクの前では飲まないでね。リンクは何でも興味を持ちますから、あなたが飲むと、きっと欲しがるから。」

 その時リンクはダイニングの入り口でチラチラと美奈に視線を送っていた。ダイニングに入りたそうな顔をしていた。

 「ダメよ、リンク。台所は女のお城。男の出入り無用。向こうで待っていなさい。」

 リンクはすごすごと今の方へ向かっていった。

 「本当に言葉が分かるんですね。」
 「そうよ。とにかく普通の犬とは大違いだわ。まあ、今回は関係ないですが、甥達もここへ入れないの。だけどウフッ、さっきのリンク。あなたが気になるみたいだわね。」
 「気に入って貰えれば、それだけ楽ですからね。」



 翌朝、美奈はさっそくリンクとの散歩に出掛けた。まるでリンクが美奈を案内するかの様に颯爽と先に立つ。

 「北伏さん、ただリンクに着いて行くだけでいいのよ。行ってらっしゃい。」

 留美子は美奈達が林の向こうに消える迄見送っていた。

 「留美子さん。本当にあの子で大丈夫なの? ごく普通の女の子に見えるけれど。」
 「いいらしいですよ。菊野さんのご推薦ですから。」
 「難しい事にならなければいいのですけれどね。」
 「ちゃんと準備をしてありますから、伯母様は安心して見守っていて下さい。単なる改造としてなら、菊野さんに頼めばこんな手間も掛けずに雌犬は作り上げられるのですけれど、単なる雌犬ではなく、リンクの恋人としての心からの雌犬となると、心からの改造が必要ですから。」
 「まあ、菊野さんの見立てなら・・・。だけど良く分かりますね。」
 「私も理由を聞きましたわ。でも、それはひらめきと勘だそうですから、私に分かる様に説明するのは難しいそうです。」
 「そうでしょうねえ・・・。シーザーのお嫁さんみたいに、名前からして雌犬に成る為に産まれてきた様な場合であれば。『北伏』さんの場合、『伏』だけですものね。」
 「あら、私は名前も完璧だと思っていますのよ。」
 「エッ、どうして?」
 「『北』っていう字はどういう意味か分かります? 二人の人が、背中合わせに座っている姿なんですって。つまり心の通い合いのない寒い状態を意味するんです。その字が『伏せ』たら、どういう形になりますか?」
 「ええと・・・、アラッ!」
 「そうです、ちょうど犬の交尾結合のスタイルでしょ? そして『伏』は文字通りの『人』と『犬』。或いは『人犬』ですよね。」
 「そしたら『美奈』の方も?」
 「ええ、ちょっとこじつけっぽいですけれど、『美』の上半分は『義』の上半分ですよね。下は『大』ですけれど、『犬』の点の無くなった字です。点はシッポ、またはペニスの象徴ですから、シッポの無い犬、或いはペニスの無い犬、つまり雌犬です。だから『美』は、『義理』の『雌犬』ですわ。」
 「まあまあ・・・。」
 「『奈』の字は、上は同じ様に『大』の字ですし、人間が足を拡げている字です。その下の『示』の中の『小』は子供でしょうね。子供が『大』の足の間に入り込み、『二』を填め込んでいるわ。ところで犬の交尾は、必ず二度の射精で一回分ですわね。それに『二』は先が細くて下が太い。犬のペニスもそうですよね。」
 「あらーーっ・・・。」
 「名前だけなら完全でしょう? それに菊野さんの技術を借りて・・・。」
 「可哀想な程にピッタリなのねえ・・・。」
 「あら、それこそ違いますわよ。皆さんはこれから凄い幸せな結婚を迎えるのですから。そして幸せな家庭生活、素晴らしい夫と子供に囲まれた。」
 「子供? それは・・・。」
 「まあ、人間と犬では絶対に妊娠はしませんが、犬の子を産む事は不可能ではありませんのよ。それが菊野さんの技術の確認の為のモルモットとして、全部無償で施術してくれるのですから。」
 「今日の午後来て頂けるのですが、その時北伏さんと面談して貰うのですね?」
 「ええ、そして治療の第一段階をスタートするのです。」
 「治療? でも・・・。」
 「最初は導入ですから、簡単らしいですよ。これから夏休み迄の間に睡眠学習で刷り込みをするのですが、それを効率良くする為の催眠療法だそうです。」
 「そうですか・・・。だけどまだ心配で・・・。」
 「大丈夫。リンクの幸せの為ですし、軽井沢の伯母様の為でもありますからね。」
 「そうね。預かっている内に、リンクもすっかり家族になっていますから。」



 暫くして美奈がリンクと戻ってきた。なぜか美奈が笑いを堪えていたので、留美子が尋ねた。

 「だって・・・、ウフフ・・・。リンクさんは蛇が苦手なんですよね。」
 「そうよ。出たの? ちょっと見ただけで逃げ出しちゃったでしょう。」
 「それが・・・。」

 リンクの表情は照れ臭そうであった。

 「随分大きい蛇が居たの。私も嫌いだから、悲鳴を上げ、足もすくんでしまったわ。そしたらリンクが・・・。」
 「リンクが? ダメでしょ。どうせ美奈さんを放ったらかして逃げちゃったんでしょ?」
 「違うんです。私をかばう様に前に出て、吠えて追い払ってくれました。だけど、後ろから見ていると、足がガタガタ震えていましたの。」
 「ヘーッ、弱虫のリンクにしては上出来ね。きっと『お姉さん』を守ろうとか、ううん、男の子としていいところを見せようとしたのね。」

 リンクは誇らしそうにして美奈に身体を擦り寄せていた。



 美奈にはバイトと言っても何もする事がない。広いリビングの床に座り、本を読んでいた。リンクも側に寄り添って昼寝をしているが、安心しきっていた。

 「フアーッ・・・。」

 リンクの昼寝がうつったのか、美奈も大きな欠伸をした。そこに留美子がコーラを持ってきた。

 「どう?」
 「だって、リンクの前では・・・。」
 「私があなたに上げるのはいいのよ。リンクからしてみればコーラは好きじゃないのよ。つまり人間の私が犬のあなた達におやつをあげるのだけれど、リンクは欲しくないという事なの。」
 「アハッ、そうですね。私はリンクのお友達でした。」

 美奈はコップを受け取り、ゆっくりと飲んでいた。留美子も横目でチラチラと美奈を見つめながら飲んでいた。コーラを飲み終えた美奈がコップを返そうとした時、なぜか急に眠気が襲い、そのままリンクにもたれ込んでしまった。

 「ワフッ・・・!」

 リンクは美奈の変化に驚いて動こうとしたが、留美子が「シッ!」と制した。

 「リンク、あなたは美奈さんを好きね? お嫁さんにしたい?」

 リンクは舌を伸ばして尻尾を大きく振った。

 「好きなのね? だけどリンクは犬、美奈さんは人。それは分かっているわね? だけど美奈さんが犬に成ってくれればお嫁さんに出来るわよ。だけどそう簡単にはいかないわ。あなたのママのクレオだってすぐに犬に成れたのじゃないの。大人しく見ていてね。時間は掛かるけれど、美奈さんをお嫁さんにするお手伝いをしてあげますから。」

 そこに弥生がそっと入ってきた。リンクは再び尻尾を振って歓迎する。

 「菊野さん、宜しいですか?」
 「ええ、ほんの二、三分ですから。」

 弥生は美奈の額を押さえながら、耳元で何かを呟いた。ほんの少しの時間だったが、すぐに美奈の所から離れる。

 「終わり? いいんですか?」
 「ええ、僅かの催眠で大きな効果。これが一番なんですよ。」
 「だって、何を吹き込んだんです?」
 「だから、今晩からの睡眠学習を催眠学習にしたのです。睡眠学習では心に抵抗があると進みません。だから睡眠学習の時に心を解放させただけですわ。この程度なら催眠効果が減っても心配ないし、本人にも催眠の自覚が起きませんからね。それよりも私はここでの催眠学習を施しますが、留美子さんは美奈さんの部屋での細工を確実にして下さいね。」
 「分かりました。だけど・・・。」
 「不安ですか?」
 「聴いてもいいっておっしゃってましたから、例のテープを聴きましたけれど、何の変哲もない音楽だけでしたけど・・・。」
 「そうですよ。今晩からの私の睡眠学習で、美奈さんは特定の音楽で特定の反応を起こします。半月毎にテープを取り替え、段々とレベルの高い精神改造を施すのです。さあ、そろそろ目覚めますわ。」

 リンクが美奈の顔を嘗めると、美奈は大きく欠伸をして目覚めた。そして弥生に気付き、ハッとして座り直した。

 「アッ、ごめんなさい、お客様?」
 「今日は。菊野と申します。明日から川島さんと一緒に出掛けますので、今晩からご厄介になりますの。」
 「ど・・・、どうも。私、北伏美奈です。お留守番のバイトで。」
 「ああ、そうですか。それにしてもリンクがこんなになついているなんて・・・。動物は優しい人は本能で分かりますからね。リンクの場合は更に特別ですからね。」

 美奈は弥生の言葉を素直に単純な誉め言葉として受け取っていた。



 夕飯の時、留美子と弥生、それと川島夫人はテーブルで、美奈はリンクと一緒に低いテーブルというのは少し抵抗を感じるのだが、それでもリンクが美奈の顔を何か嬉しそうに見つめながら食事をするのは妙に楽しかった。

 「だけど北伏さんみたいな方が見つかって、本当に良かったわ。」
 「そうよ。今迄は伯母様が出張の度、私が留守番していたから、大変だったのよ。犬の事は知っていたつもりだったけれど、リンクは特別ですものね。」

 美奈はその『特別』という事を知りたかった。

 「川島さん、その『特別』というのはどういう事なのですか? 人間のお乳で育てられたそうですが・・・。」
 「そうなのよ。最近なのよ、自分が犬である自覚が出だしたのは。だけど私には子供が居ないので、自分の息子の様に可愛いのですけれど、それでは一生リンクはお嫁さんを持てないですからね。自分に家族が居ないから良く分かるの。リンクにも家族が必要なのよ。お嫁さんと子供・・・。まあ、無理かも知れないですけれどね。」
 「そうなんですか・・・。」

 そしてリンクの頭を撫で、

 「ボーイフレンド、ガールフレンド無い歴ずっと同士ね。仲良くしましょ。」

 リンクは美奈の言葉が分かったかの様に嬉しそうに吠えた。



 「ウーン、何だか・・・。」

 美奈は大きく伸びをした。

 「飲み過ぎた? 明日は朝早いですから、もう休んだら?」
 「そうですか? そんなにお酒に強い訳ではないですけれど、それでも疲れているせいか・・・。」
 「無理しないで。お部屋に行けます?」
 「大丈夫で・・・。」

 フラフラと立ち上がった美奈だったが、すぐ崩れ落ち、眠り込んでしまった。

 「いい様ね。すぐ始めます?」
 「見ていていいですか?」

 川島夫人も興味深そうに美奈の寝顔を覗いていた。

 「それはちょっと・・・。私の精神集中の妨げがありますし、それよりも私の催眠が皆さんにも影響してしまうかも知れないわ。そして一番の問題は、これから私が施す催眠の内容を皆さんが知ってしまうと、夏休みでの皆さんの態度が不自然になってしまうかも知れないのです。ごく自然に、美奈さんの自分の心の底から沸き上がってきた感情という事にしないと・・・。」
 「分かりました。私は本当にリンクと北伏さんが幸せになれるのがいいのですから。」

 女と留美子は席を立ち、それぞれの寝室へと向かうのだった。



 「さてと・・・。」

 弥生は眠っている美奈を椅子に座らせた。リンクは心配そうに「クーン」と鼻を鳴らす。

 「心配しないでいいのよ、リンク。リンクは美奈さんが好きよね。美奈さんもリンクが好きな様だけれど、もっともっと好きにして上げるのよ。」

 リンクは照れ臭そうにしゃがみ込んで二人を見ていた。

 「さあ、美奈さん。心を落ち着かせてね。これから私が話す事はあなたの心の奥底にしっかり刻み込まれるの。心の深い深い所に刻み込まれるわ。自分でも気が付かない程に深い所にね。目が覚めたら私の言った事はすっかり忘れています。絶対に思い出しません。だけど、身体はずっと覚えています。始めるわよ。美奈さんはリンクが好きね。今はただ可愛い犬という事で好きなのね。だけど本当はもっともっと好きなの。犬と人間という関係以上に好きなのよ。」

 弥生は美奈の耳元で囁くのだが、その言葉は心に深く刻み込まれていくのだった。

 「ほーら、嫌悪感が消えていく・・・。何を嫌悪していたのかしら? あなたには羨望の言葉よ。『交尾』という言葉に強く惹かれるわ。ほら、『交尾』という言葉を聞くと、あなたの女性としての感情が高まっていくわ。『獣姦』も心地良く響くわ。ねっ、たまらなく素晴らしい響きよ。美奈さんは犬のペニスを見た事あります? おそらくハッキリとはないわね。だけど見たらたまらなく素晴らしい物に思えるわ。美奈さんは人間の男性にはあまり興味が湧かないのよ。」

 美奈は少し苦痛そうな顔をしていたが、弥生の囁きに少しずつ解れていく。

 「だけど美奈さんは元々が良識的な人間だわ。だから今の私の言葉が刻み込まれたとしても、なかなか表には出てこないわね。今迄のあなたは、たとえばSM、スカトロ、アナル、エネマ・・・、こういう言葉にも嫌悪感があるわ。それを時間を掛けて意識改善していきましょうね。この音楽を聴いて。」

 弥生は小型のテープレコーダーを美奈の耳元に近付けた。スピーカーからはゆったりとした音楽が流れる。

 「あなたはこの曲を聴くと、とても心が落ち着くの。ほら、気分がゆったりとしてきたわ。これからもあなたの寮でも毎晩聴く様になるけれど、その度にリラックス出来るわよ。そして次にこの曲。『悶え』という曲よ。良く聴きなさい。これはあなたを気持ち良くするの。ほら、とても気持ち良くなるわ。あそこがムズムズする程気持ち良くなるのよ。」

 美奈は顔を赤らめて足をキュッと閉じた。何となく手をその部分に当てたそうにしていた。

 「次にこの曲よ。これは『リンクのテーマ』。ほら、リンクの嬉しそうな顔が浮かぶわね。そして次の曲。『交尾』よ。犬のセックスよ。あまり好ましくない? ううん、あなたはリラックスしていて、気持ち良くなっている。そしてリンクが嬉しそうにしているわ。ほら、少しずつ好ましくなるわ。そして次は『獣姦』。美しい響きの言葉ね。そして・・・。」

 弥生はテープの曲を聴かせながら、色々な言葉のタイトルを付けた曲を聴かせた。そのメロディーとタイトルはしっかりと心の中に刻み込まれたいく。

 「そしてこの曲が『仔犬』。これは可愛いわね。そう、リンクの子供なのよ。これは心の一番深い所に刻まれるわ。最後の最後に表に出てくるのよ。美奈さん、あなたはこれから毎晩ずっとこの曲を聴きます。その度にその曲のイメージが湧くのよ。だけど目を覚ますとすっかり忘れているの。ううん、そのイメージは心に刻まれるのに、目を覚ましている間は全然思い出さないわ。さあ、今晩はゆっくりお休みなさい。テープは暫くかけておくわよ。そして毎朝、目覚めはとてもいいわ。毎日が爽快な気分で目を覚まします。お休みなさい。」

 弥生はテープを再び最初からスタートさせてから部屋を出た。リンクは部屋に居たそうだったが、弥生はリンクを引っ張っていく。「クーン」と寂しそうな声を出した。



 「ウーン・・・。」

 美奈は大きく伸びをして目を覚ました。

 「アラッ? 私、飲んで、あのまま眠っちゃったみたい。もう朝ね。さあ、仕事、仕事・・・。」

 急いで身支度を整え、リンクの散歩の準備をするのだった。

 「お早よう。」
 「アッ、菊野さん、ごめんなさい。私、あのまま・・・。」
 「私もよ。久しぶりか、すっかり飲み過ぎて。」
 「リンクの散歩ですよね。行ってきます。」

 リンクも尻尾を振って美奈にまとわりついてきた。

 「はいはい、行きましょうね。」

 リンクは先に立ち、まるでリンクが美奈を散歩させる様に外に出ていった。

 「どうかしらね。催眠は効いたと思うけれど、効果は表面には出ない様にしてあるから・・・。」

 弥生はニヤッと笑っていた。



 「ただ今・・・、アッ、お出掛けですね?」
 「お願いしますね。」

 女が弥生の車に向かおうとした時、リンクはバッと先回りして乗り込もうとした。

 「ダメッ、リンク。あなたはお留守番よ。」

 リンクは驚いた様な表情で女を見上げていた。

 「お仕事なのよ。北伏さんがあなたの面倒を見てくれるわ。大人しくお留守番していらっしゃい。」

 リンクはオロオロと女の足下を回り、自分も連れていって欲しいという仕草をしていた。しかし女が叱りつけると、シッポを垂らし、悲しそうな顔で美奈の方に戻ってきた。

 「リンク、大人しくお留守番していましょうね。」
 「そうよ。こんなお婆ちゃんやおばさんでなく、若い女の子と居た方が楽しいわよ。」
 「私がおばさん?」

 弥生がちょっと不満そうな声を出したが、顔は笑っていた。

 「美奈さん、戻る前には連絡しますよ。お願いしますね。」
 「分かりました。行ってらっしゃい。」

 ドアが閉まり、車が発進すると、リンクは悲しそうなうなり声を上げたが、ジッと美奈の足下で見送っていた。

 「さてと、お食事ね。リンク、いらっしゃい。」

 見えなくなった車の方をチラチラと見送りながら、リンクは美奈に着いて家に入る。



 アルバイトと言っても、実際には何もする事がない。ただボーっとしていると退屈で、リンクを枕にして昼寝をしてしまうのだった。リンクはそれを苦にせず、むしろ女が出掛けている寂しさを紛らわせる為か、常に美奈についているのだった。
 テレビを見ていても、リンクはずーっと美奈に寄り添っていて、入る事を禁じられている台所以外はどこにでも着いてくるのだった。



 リンク用に屋内に一応大きな犬小屋は在る。実際にはあまり使っていないらしく、大きな玩具の家という風情である。この家はフローリングなので、どこでも好きな所に寝られるのだ。それでも僅かに抜けるリンクの毛を掃除する為、掃除をしていて、その犬小屋の中を拭いていると、リンクがなぜか嬉しそうに尻尾を振っていた。

 「エッ、リンク、なあに?」

 美奈が出ようとすると、リンクは鼻で美奈を中に押し戻す。

 「あら、やだ。私にここに入っていろって言うの?」

 大きいとはいえ、天井の低い犬小屋にしゃがみ込んでいると、リンクも入り込んできて、美奈と並んでしゃがむのだった。

 「アハッ、私も犬扱い? そうよね。リンクとは人間対犬ではなく、お友達同士でって言われていたわ。私がここに居るのは嬉しいの?」

 リンクは「ワン」とハッキリと肯定を意味する声を発した。

 「あら、本当に言葉が分かるのね。いいわよ。どうせ何もする事がないのだから、ここに居て上げる。そうね、マットと毛布を持ち込めば、一緒に寝て上げられるわね。」

 リンクの表情に一瞬の驚きと、そのあとの照れ臭そうな表情に犬と言うよりも男の子と一緒に居る様な錯覚さえ感じさせられた。



 アルバイトの期間はすぐに過ぎてしまった。弥生から電話が入り、数時間後に川島達が戻ってきた。車の音にリンクは嬉しそうに飛び出していき、女の足下をグルグル回るのだった。

 「はいはい、ただ今。元気にしていた様ね。」
 「お帰りなさい。」
 「ご苦労様でした。」
 「いえ、別に。リンクも素直で大人しかったですから。」
 「まあ、そうでしたの?」
 「北伏さん、別に遠慮しなくてもいいのよ。リンクは凄い寂しがり屋だから、伯母様が居ないと、凄く機嫌が悪くなるのは知っているの。私が留守番の時だって、結構手こずったのだから。」
 「エッ? 全然・・・。私も退屈な位暇でしたよ。お陰で昼寝ばっかりで・・・。」

 美奈は少し照れ臭そうに笑った。

 「ヘーッ・・・。」

 弥生は川島と顔を見合わせた。

 「北伏さんて、犬の扱いが巧いのね。こんなに気性の変化の激しいリンクを一週間近く大人しくさせておけるなんてね。」

 美奈は自分が何もしないのに誉められている事を面はゆかった。

 「美奈さん、準備出来ています?」
 「ええ。何も大した物は持ってきていませんでしたし、勉強もしませんでしたから。」
 「それなら私は戻りますから、一緒に乗せていきますよ。」
 「分かりました。」

 美奈はバッグを取りに家に入っていったが、リンクは何かを感じてオロオロしていた。

 「川島さん、有り難うございました。」

 美奈は帰り支度をして川島にお辞儀をした。リンクは美奈にすり寄り、心配そうに見上げていた。

 「リンク、お別れね。楽しかったわ。」

 その言葉にリンクは美奈の居なくなる事を悟り、激しく吠え立てた。そして弥生の車に回り込み、必死に吠えている。

 「リンク! ダメよっ!!」

 川島の強い口調に驚き、後ずさりをするが、それでもひたすら悲しそうに吠えるのだった。女がリンクを制し、押さえ付けておいて美奈はやっと車に乗り込めた。その間中、リンクは狂った様に吠え続け、川島はリンクを押さえ付けるのに苦労していた。

 「菊野さん、早く戻って下さい。北伏さん、お礼の言葉もそこそこでしたが、色々有り難う。」
 「有り難うございました。さようなら。」

 弥生は急いで車を出したが、リンクの悲しい遠吠えはずっと聞こえていた。



 「有り難う。お陰で助かったわ。」
 「いいえ、本当に私はただのんびりしていただけですから。」
 「ううん、本当に助かったわ。そうだ、これからもお留守番があったら、頼まれてくれない? リンクがあんなになついているんだから、ちょっと他の人には頼めないわね。」
 「いいですよ。あの程度で喜んで貰え、しかもお金迄頂けるなんて、願ってもないですもの。」
 「だったら、夏休みの最初の一週間、頼める? 今度は私達、仕事でなくて旅行なのよ。八王子と言っても、結構奥だから涼しいわ。避暑を兼ねてどう?」
 「いいですねえ。お願いします。」



 学校が始まると、意味は分からないのだが、美奈は体長の変化を感じた。毎朝の目覚めはすがすがしいのだが、それにしては疲労感があるのだった。そして一番困る事がショーツの汚れだった。

 「あーあ、どうしたのかしら・・・? オシッコの漏れじゃない様だけれど、そんな感じはしていないし・・・。」

 それも数日続くと、やはり大きな悩みになっていた。

 「変ねえ・・・。どうして夜中に催してしまうのかしら・・・? お股が緩くなっているみたいで、学校でもなぜか時々ジュンとしてしまう。」

 やむを得ず、ナプキンを着ける事となったが、それでも段々と量が増えていき、一日一枚では足りなくなるのだった。

 「参ったなあ・・・。私って、スケベな身体に成っているなあ・・・。」

 その夜もナプキンを着けたショーツで休むのだった。暫くすると、ベッドの頭の後ろ側に仕掛けられたテレコがスタートする。それは川島の家で聴かされ、潜在意識に深く刻み込まれている音楽だった。

 (心が落ち着くわ。そして身体が疼いてくる。)

 自分自身で催眠術を掛けてしまうのだった。しかし、自分で自分を慰める様にはされていないので、ただ高まったままで肉体的欲求不満状態に置かれたままなのだった。そして色々な変態セックスをイメージさせられ、しかも嫌悪感を消されていく。そして最初の内は少しずつだったが、時々留美子がテープを交換していたので、獣姦のイメージが強くされていた。そしてそのイメージの嫌悪感は薄れ、むしろ好ましい心の響きとして変化していった。
 そして朝方には催眠学習を受けていた事を忘れさせられ、心地良い目覚めを起こす音楽で終了するのだった。



 「美奈さん、例のアルバイトだけれど・・・。」
 「ああ、八王子の?」
 「明日から夏休みですけれど、大丈夫よね?」
 「勿論、OKです。」
 「良かった。ところで夏休み後半の予定は?」
 「いいえ、別にないです。」
 「そう。だったら夏休み中居ない? 私はずっとあそこに居るつもりなの。ちょっとした別荘ですもの。バイト代は出ないかも知れないけれど、いい避暑地よ。」
 「いいんですか?」
 「いいわよ。それだったら一月半分の必要な物を用意しておいて。」
 「ウワーッ、凄い。だけど、これから用意するとなると、整理するのも大変だわ。」
 「構わないわよ。ワゴン車で行くわ。箱詰めする必要はないわよ。ありったけ、後ろに放り込めばいいわ。使わなければ、そのまま持ち帰って上げるから。」
 「お願いします。」

 寮の裏にとめてあるワゴン車はかなりの大きさだった。衣類やある程度の本類を詰め込んでも、かなりの余裕がある。

 「日用品も入れていったら? 一週間はあなただけよ。食器や家電品だって、使い易い方がいいでしょう?」
 「アハッ、まるで引っ越しみたい。」
 「そうね。」

 留美子は笑っていたが、心の中の黒い笑いは押し隠していた。



 八王子の山奥に着いたのはかなり暗くなってからだ。荷物を何でも詰め込めと言う留美子の言葉に、思いの外に何でも詰め込んだので、以外と時間が掛かったのだ。

 「いらっしゃい。」
 「伯母様、今晩は。あら? リンクは?」
 「ええ、この前、北伏さんが戻られてから、ずっとすねているんですよ。それでつい私もリンクに強く当たってしまったもんだから、すっかり反抗期よ。」
 「まあ、本当に人間ね。」
 「だけど良かったわ。こんな状態でリンクを別の方にお願いしたら、きっと手こずるから。」
 「そうですよね。美奈さん、リンクを呼んで上げて。」
 「私が?」

 美奈は微笑んでいる二人の顔を見、大きい声で呼んでみた。

 「リンクーーーッ!!」

 するとまるで毛皮の塊が転がる様にして家の中から飛び出てきた。

 「ワゥーーーン・・・。」

 まるで涙を流しそうな程に感動を表情に表し、美奈に飛び付いてきた。しかししっかりと力をセーブし、押し倒す程の勢いは殺していた。

 「やっぱり。私が北伏さんを追い返したと思い込んでいたらしいのよ。リンクにしてみれば、折角仲良くなった『お姉さん』と無理矢理別れさせられたと思ったのよ。」

 美奈にしては少し面映ゆかった。屈み込んでリンクの目の前に顔を寄せ、

 「ごめんなさいね。今度は暫く居ますからね。」
 「あら、いいの?」
 「伯母様、美奈さんに話しておいたのだけれど、夏休みはここにずっと居てくれるって。」
 「まあ、良かった。一週間で帰られてしまうと、またリンクの不機嫌と付き合わないとならないと思っていましたわ。」
 「いいんですか? かえってご迷惑に・・・。」
 「とんでもない。私としてはずっと居て頂きたいのよ。」
 「じゃ、宜しくお願いします。」

 美奈はピョコッとお辞儀をした。

 「それじゃ、伯母様。明日の準備を。菊野さんは?」
 「お待ちしていましたよ。」

 弥生も笑顔で家の中から顔を出した。

 「北伏さん、私からも宜しく・・・av

 弥生が少し変な顔でリンクを見ていた。リンクはずっと美奈の腰の周りを嗅ぎ回っていた。美奈もあまり下腹部の匂いを嗅がれ続けるのは恥ずかしかったのだが、リンクの動き周りで股間に真っ赤な長い肉棒が見えた時、更に恥ずかしさで真っ赤になってしまった。

 「あらあら、リンクが発情しちゃった。」
 「エーッ? あら、本当。」
 「菊野さん、犬の発情は春でしょう?」
 「うーん、だけどねえ・・・。」

 弥生は少し困った様な笑い顔をしていた。そしてみんなを家に招き入れた。弥生達は椅子に座るが、美奈は前回同様に床にしゃがむ。そしてリンクも美奈の隣に座ったが、その発情したペニスがあからさまであった。

 「この頃は犬も栄養がいいですから、発情期も少し変化し易いの。」
 「菊野さん、栄養がいいと?」
 「ええ、そしてエアコンのせいで、季節感が少なくなりましたからね。そしてリンクは頭がいいから。人間には発情期がないでしょう? いつでも発情期と言ってもいいわね。そして本来なら春先に発情期を迎えるのですが、リンクはその時期を逸したわ。そこに大好きな美奈さんが現れ、一気にホルモンバランスが崩れたのよ。言葉は悪いけれど、リンクは美奈さんに発情したのよ。」
 「エエーッ?!!」

 美奈はちょっと戸惑い、リンクの股間を見つめた。本当なら恥ずかしさと嫌悪感が沸き上がっていい筈なのに、むしろまともな発情期を迎えられないという哀れみが先に立った。

 「ちょっと散歩は困ったわね。美奈さん、リンクの発情期が終える迄は積極的な散歩はしないでいいわ。」
 「積極的?」
 「ええ。どうしてもリンクが表に出たい時だけにして上げてね。」
 「分かりましたが、どうしてですか?」
 「説明しましょう。これが普通の時期の発情期でしたら、問題は少ないのですけれど。」

 美奈には『発情期』という言葉が妙に心に引っ掛かるのを不思議に思いながらも弥生の話を聞く。

 「発情期の雄同士は互いに雌を奪い合うわ。その為にはかなり激しい争いをします。但しリンクはその点では凄い臆病ですから、リンクが逃げ出してお仕舞い。ところが発情期じゃない犬と出会うと、リンクとしては攻撃するのだけれど、相手はその気がないのよ。そうすると、相手の犬にとってはただ喧嘩をふっかけられただけだから、場合によってはリンクが負けても、ずっと追い掛けられるわ。下手をすれば大怪我する迄ね。それから相手が雌犬の場合、リンクは交尾したいでしょうけれど・・・。」

 そして美奈は再び『交尾』という言葉になぜか惹き付けられる。

 「発情していない雌とは絶対に交尾出来ないのよ。人間の場合は強姦という事もありますが、犬の場合はないのよ。勿論発情していても雌犬が嫌がる事はありますが、交尾に成功すれば、必ず射精出来ますからね。」

 美奈は弥生の言葉にちょっと怪訝な顔をした。

 「おかしい? 美奈さんは犬の交尾の過程を知らないでしょうね。犬は人間と違い、結合状態に合わせ、三回に分けて射精するのよ。一回目の本格射精には三十分以上要するわ。」
 「『本格』?」
 「犬のペニスは完全に勃起すると根本が球根の様に膨らみ、射精しきる迄小さくならないの。射精行為中にペニスが抜け落ちない為のものなのね。交尾結合中、より確実に子宮に射精する為の機能なのよ。そして第一射精は大量のカウパー氏腺液。これを放出したペニスは根本が膣内でボール状に膨らんで本格的な射精に移るの。圧迫される膣の中でペニスはポンプの様に運動しながら同じく大量の射精を始めるわ。リンクみたいな大型犬ともなるとその射精は三十分にもなるわよ。」

 美奈にはかなりの精神的ショックなのだが、下腹部の高まりを感じてしまうのだった。

 「だから、まず居ないと思うけれど、発情している雌犬を見付けて、リンクが行おうとしたら止めないで欲しいの。犬は受精すると発情期が終えていなくても交尾は拒否するわ。逆に受精し損なった場合は何としても受精させる迄、何度でも交尾したがるのよ。それを途中で止めると、リンクの場合は精神的な不安定からかなり凶暴になる恐れがあるわ。リンクの父親がそうでしたから。それにさっきの話は一般の犬の場合ですけれど、リンクはその血筋から少し異なると思います。」
 「もっと凶暴になるのですか?」
 「ううん、もっと・・・、えげつないと言った方がいいかしらね、受精を確実にさせる方法を持っているのよ。さっきも言った様に、犬の交尾には二時間近く掛かるけれど、リンクの血筋ではもっと続けられるのよ。それと第一射精の膨らみを、多分自分の意志で変化出来るのね。雌犬が逃げ出しそうだと分かると、いつ迄も膨らませていて、交尾結合を続けていられるのよ。」
 「まあっ・・・!!」

 美奈は初めて聞く犬の交尾を興味深く聞いていたが、催眠学習の影響もあり、自分でも気付かずに股間を湿らせていた。それを気付いたのはリンクが美奈の股間に鼻を近付けようとするからだった。

 「犬でも男女の差は分かるのよ。特にペットの場合自分を人間と思っているケースも多いのよ。犬の場合、発情期には様々な匂いに反応するわ。女性の尿の匂いには驚くべき反応をするの。リンクの場合は更にね。美奈さん、汗の匂いだって成分は尿と同じよ。リンクに余計に発情させない様に、お風呂と下着の替えは確実にね。」
 「はい。」

 なぜか下腹部の興奮してしまっているが、リンクがそれに反応しているのは良く分かった。しかし弥生の言う様に汗という事にしておくのだった。



 「それではお願いしますね。」
 「はい、分かりました。」

 川島達は車で出発していった。

 「フウ・・・メ@参ったわね。バレなくて良かったけれど、リンクだけじゃなく、私も『発情』しちゃっているわ。」

 既にナプキンから漏れ出しそうな程に下腹部が濡れていて、リンクはどんなに押さえても美奈の下腹部に鼻を当ててくる。そしてペニスが一段と伸び上がっていた。

 「ダメよ。本当にスケベな犬なんだから。下着も替えないと・・・。それよりも、もう一度洗い流さないと。」

 美奈はリンクを押し出しながら家に入り、風呂場に駆け込んだ。リンクは風呂の外でジッと待っていた。



 「フーッ、朝風呂って、さっぱりするわ。」

 美奈は大きなバスタオルで身体を纏い、風呂場から出てきた。リンクが擦り寄ってくるのだが、匂いが消えたせいか、いつもの大人しいリンクだった。

 そしてその時・・・!!

 美奈には意識されなかったが、いつもの催眠学習の音楽が流れてきた。美奈が意識したのは、下腹部が急に高まり、愛液が股を伝わって流れ落ちてきた事だった。

 「アフッ、どうしたのかしら? 急に・・・。」
 「ワフッ・・・!!」

 リンクは鋭敏に美奈の高まりを感じた。伸びていたペニスが更に伸び、湯気を立てていた。そしてリンクはバスタオルの中に首を突っ込んだ。

 「ワッ、ダメッ!!」

 いきなりリンクが美奈の股間を嘗め上げたのだ。

 「キャッ、リンク、どこ嘗めてんのよ。」

 しかしプクッと飛び出てしまったクリトリスをザラッとした舌で嘗め上げられた時、美奈は全身に電気が走った。

 「ヒーーーーッ!」

 美奈の足の力は抜け、ガクッと膝をついて四つん這いになってしまった。バスタオルが裸けてすっ裸になった美奈にリンクは後ろから覆い被さった。

 「ダメーーーッ!」

 ヌ・ヌ・ヌ・・・・

 先の細い犬のペニスが美紀の膣に捻込まれていく。愛液の溢れる膣には殆ど抵抗もなく填め込まれていくのだった。リンクは腰を押し付け、荒い息をしながら更に押し込んでいく。

 「アッ・・・、アッ、アア・・・ッ・・・。」

 美奈の抵抗は意識だけだった。身体は痺れる様になっていて動けない。

 「アッ・・・、はっ・・入っちゃった・・・っ。ウソ・・・あっ・・・ああっ。」

 リンクは腰を激しく前後し始めた。

 「私・・・ナニ・・・してるの・・・。私・・・、あっ・・・あ!」

 嫌悪すべき獣姦という意識は残っているのだが、美奈はしっかりと押さえ込まれ、リンクの激しいピストンに理性を失っていた。

 「うあンっ・・・ああン!」

 悲鳴がいつの間にか喘ぎ声に変わってしまっていた。リンクは大きく吠えて更に激しく突き込む。

 「あン、リンク・・・。はあ! ああ、こんな事って・・・! でも・・・! あん。ダっ、ダメーーッ! あン、ダメーーッ!!」

 美奈は人間としての自尊心を保とうとした。しかし既にリンクのピストンに合わせて自分も腰を揺すっていたのだ。激しい愛液の迸りが分かり、リンクのピストンに合わせて膣口の隙間から音を立てて噴き出しているのだった。

 「ああ! はあっっ、リンク・・・。ああ、リンク。ああン、はあ、アアッ・・・。おっ・・・堕ちる・・・。堕ちちゃうぅ・・・。」

 身体は悦びに震え、既に美奈には自分で体を動かす事は出来ない。

 「あっ、はあっ・・・ああ・・・。」
 (・・・私・・・! 私・・・犬としてる・・・メ@犬と繋がってる・・・。)

 リンクの細いが長いペニスは美奈の膣内で太く、硬くなっていた。ペニスの出入りする音が激しく響く。

 (犬のペニスで・・・!)
 「はああ! あっ、ああーーっ! アハッ・・・。」
 (犬に・・・。)

 リンクはペニスを突き上げてきた。美奈もそれに合わせて背を伸ばし、自分からリンクに合わせている。

 「アッハ。 あ・・・ああ・・・っ。ハァア!」

 リンクのピストンが小刻みになり、強く押し付けてきた。それが何を意味するのかは美奈にも分かるが、肉体は既に待ち望んでいた。

 (リ・・・リンクの熱いのが・・・中に・・・入ってくる・・・!。あ・・・っ、イ・・・イイ・・・!)

 リンクの第一次射精だった。美奈は全身を振るわせた。その時、膣内のペニスがググッと膨れた。

 (・・・え・・・、な・・・何・・・? 大きく・・・なって・・・?!)

 更に膣内の逸物が大きく膨れ上がった。僅かに美奈に理性が戻り、犬との獣姦である事を思い起こさせた。

 「何・・・これっ。大きくなって・・・、あっ・・・! あっ・・・ああ・・・!」

 ガクガクしながらも美奈は動こうとした。しかし膣口からは愛液が溢れてくるが、膨らんだペニスは膣口よりも大きく、美奈の体内で蠢くだけだった。しかも美奈の膣は意識とは違って、しっかりとリンクのペニスを握り込んでしまうのだった。

 「やっ・・・ぬっ・・・抜けなっ・・・いっ・・・、はあ・・・。」

 ドクッ、ドクッと脈打つペニスに美奈は最後の理性も消えてしまった。完全に牝と化していた。
 リンクはペニスを填め込んだまま体勢をグルッと入れ替えた。尻同士を付き合わせる、犬の交尾スタイルになった。その時に回転するペニスに美奈は完全に虜になっていた。

 「あっ・・・リ・・・リンク・・・。あっ、スゴっ・・・、何で・・・これ・・・っ。はああっ!」

 そしてその結合状態でリンク達はひたすら腰を前後していた。美奈の膣の中のリンクのペニスは膨らんだ部分が中を移動し、ペニスの動かないピストン状態であった。

 「リンクッ・・・、リンク・・・。はあああああ!!」

 リンクは本格射精に移るところだった。ペニスの先端が美奈の子宮口に填まり込み、こじ開ける様にして侵入する。そしてグンと突き込まれたペニスは大量の精液を放出したのだ。膣の中のペニスの球状の部分に遮られ、精液は子宮内に圧入されるのだった。

 「凄いっ・・・。どうなってるの? これ・・・!!。」

 リンクの射精はいつ迄も続き、そして大量であった。子宮から卵巣へも押し込まれる精液に美奈は歓喜の涙を流し続ける。

 「とっ・・・止まんな・・・いっ・・・、あっ、アヒア・・・ッ。あ・・・、は・・・、はひ。へああ・・・、あはああ・・・!。」

 身体がガクガク震え、完全な牝としての美奈のアクメの声であった。

 「あは・・・! ・・・あ・・・。スゴ・・・リン・・・ク。また・・・いく・・・。いっ・・・ちゃっ・・・、あ・・・あっ・・・あっ!」

 リンクは遠吠えの様なうなり声で悦びを示した。そして同時に美奈も吠えた。

 「はあああ! アーーーッ!」



 いつの間にか外は暗くなっていた。美奈は呆然としたままジッとしゃがみ込んでいた。股間からはリンクの大量の精液が溢れ出たままであった。それでも目は覚めているが意識の無い様な状態だった。ただ、涙を流したまま、拭いもせずに僅かに嗚咽が漏れていた。

 「クゥーン・・・。」
 「リンク・・・。」

 リンクがすり寄ってきた時、やっと僅かな意識が戻った。無意識だった間に泣き続けていた為か、ショックはかなりやわらいでいた。しかし僅かな理性の部分で、リンクとの獣姦をしてしまった事を悔やんでいた。いや、正確には、悔やもうとしていたのだった。しかし弥生の言葉が脳裏に浮かび、それは美奈の心に鋭く突き刺さるのだった。

 《発情していない雌とは絶対に交尾出来ないのよ。》
 「じゃあ、私は発情した雌?」

 リンクはジッと美奈を見つめていた。しかし今迄の様に甘えた顔ではなかった。

 「ワフッ。」

 リンクの獰猛そうな顔に美奈は怯えた。そして歯を剥き出して美奈に飛び掛かった。

 「キャッ、イヤッ!」

 美奈は仰向けに倒され、馬乗りの様に押さえ付ける。

 「ちょっ・・・、リンク・・・、ダメッ。やめて!」

 美奈はリンクの股間にヌメヌメとして真っ赤なペニスが伸び出しているのを見た。

 「・・・命令・・・してるの・・・?」

 リンクは荒い息遣いでのしかかってくる。

 「自分のものだって・・・私を・・・。私を自分の・・・。」

 美奈は慌てて逃げ出そうとした。

 「ダメーッ!! 違うの・・・! リンク、もう・・・、やぁあ!!」

 リンクに後ろを見せて逃げようとした時、リンクは美奈を後ろから押さえ込み、ズルッとペニスを滑り込ませた。

 「あっ、はあうン・・・。ああっ、あっはっ、誰かーーーっ!!」

 しかし悲鳴はすぐに良がり声に変化してしまっていた。

 「アアアーッ! あっあっ・・・、はっ、ああっ、はああ・・・!」

 伸び上がった美奈の視線に弥生の顔があった。微笑んでしゃがみ込んで美奈達の獣姦を眺めていたのだ。美奈の僅かな理性が甦る。

 「キャーッ、弥生さん、見ないで・・・。」
 「どうして? 二人の邪魔をしちゃ悪かったかしら?」
 「アフッ・・・。あっ、お願い、助けて・・・。」

 しかしリンクは更に激しくピストンを続ける。ペニスの先が子宮口をつつき上げる。

 「うっあ・・・っ。あああっ、はっあ! 助けて・・・。このままでは・・・。」

 激しい快感は僅かに戻った美奈の理性を吹き飛ばしてしまった。

 「はあっ、あっ、はっ、はあンっ。あっ、はあ。」

 もう弥生の姿は美奈には見えていなかった。

 (・・・凄い・・・。身体が熱くて・・・とろけて無くなりそう・・・。)

 弥生の理性とともに記憶も消えていくのだった。

 (・・・私・・・は・・・幸せ・・・。とっても・・・気持ち・・・いいの・・・。どうして・・・? 犬と・・・してるのよ・・・。)

 弥生は美奈の脇に寄り、ジッと美奈の表情を見つめていた。美奈は虚ろではあるが至福の表情をしていた。

 (なのに・・・なぜ・・・。こんなに・・・!)
 「楽しんでいる様ね。でもこんなものじゃないのは知っているわね。」

 美奈はガクッと肩を落とした。それはリンクの第一時射精を身体が分かったからであった。

 「アヒッ。アハッ、あぅ・・・。」

 ドクンとペニスが響く。そしてドクドクッとカウパー腺液が送り込まれ、美奈の膣内で再びペニスが球状に膨れるのだった。

 「ひ・・・いあっ。ああああ・・・っ。くっ・・・くるっ。なに・・・これ・・・くる・・・の・・・あ!」

 美奈は全身を痙攣させた。そしてリンクは再び向きを変え、尻を付き合わせた体勢になる。

 「はあああっ、あっ。あっは・・・。」
 「昨日もお話ししたわね。犬のペニスは人間のとは随分違っていてね、射精も三回に分けて行うのよ。第一射精は大量のカウパー腺液。これを放出したペニスは膣内でボール状に膨らんで、本格的な射精に移るの。圧迫される膣の中でペニスはポンプの様に運動しながら同じく大量の射精を始めるの。大型犬ではその射精は三十分にも及ぶわ。人間ではとても味わう事の出来ない程の快感よ。」

 リンクの射精が始まり、ペニスが膣内で蠢き始めた。美奈は乳房を床に擦り付けながら喘いでいる。弥生の言葉は聴こえているという意識はないのだが、心に深く刻み込まれていた。

 「この悦びを知ったら、もう二度と犬から離れられなくなるわ。そう・・・、牝犬に成りたいと感じる様になるのよ。」

 「あっ、はあっ、あっ、はっ・・・!」

 リンクの射精が始まった。ゴボゴボと音を立てて子宮に押し込まれていく。

 「ハアッ、凄い・・・。ああ、凄いのっ。いっぱいっ奥に・・・、あっ、くるっ・・・。」

 結合部からは美奈に愛液が噴き出てくる。

 「きちゃうっ、きちゃうぅ! はぁあ!」

 美奈はビクビクッと痙攣している。腕で身体を支えていられない。這い蹲って蠢くだけなのだ。尻だけがリンクのペニスで引っ張り上げられている。

 「ああ・・・あ・・・こんなの・・・、こんなのって・・・はああああ・・・!」

 一度目の射精が終えた時、美奈は精神的、肉体的に全く無防備だった。涎と涙でベタベタの顔は、視線が定まらずに目は宙をさまよっている。弥生は優しい口調で美奈に囁いた。

 「もう何も心配する事はないわ、美奈・・・。あなたは『女』なのよ。何も気にせずに『女』を楽しみなさい。」
 「オ・・・オン・・・ナ?」

 かろうじて声を出すが、それは自分自身への語り掛けであった。

 「リンクはあなたの『恋人』でしょ?」
 「恋・・・人・・・。」

 そして二度目の射精で更に精液が体内に送り込まれ始めた。

 「私・・・、オンナ・・・。リンク・・・の・・・。」

 ペニスから大量の精液が子宮を膨らませる。

 「・・・そう・・・、『牝(おんな)』・・・よ・・・。」

 美奈は再び自分から尻をリンクに押し付け始めた。

 「リン・・・ク・・・、あっ・・・、リンク・・・。」

 まだ続く二度目の射精を美奈自身から求めるのであった。弥生はホッとした表情で腕を組み、いつ迄も微笑みながら見つめていた。



 美奈はずっと失神状態だった。肉体的にはずっと興奮を保っていたが、意識を失っていたのだ。

 「もう、大丈夫ね。」

 弥生は美奈の耳元で囁いた。

 「美奈さん、あなたはずっとリンクと『交尾』を楽しめるのよ。そして『交尾』の最中は、どんな事があってもやめられないわ。ううん、やめようとは思わないわよ。だって凄く楽しくて、幸せいっぱいなんですものね。リンクは発情したら美奈さんと『交尾』をしない限り治まらないわね。美奈さんもそうよ。どんなに心が反発しても・・・、ううん、本当の心は待ち望んでいても、普通の人間としての良識とか体面とかいう、偽物の心ね。身体は絶対に無理よ。それに従ってリンクから逃げるといいわ。逃げられそうな雌犬には、リンクは雄として色々努力しますものね。でも素直に恥ずかしがる事はいい事よ。だって恥ずかしい状態での『交尾』って、それだけで刺激的でしょう? さあ、私は居なくなるわ。美奈さん、私は居なかったのよ。ずっとあなたはリンクとだけで楽しんでいたの。あなたの心からは私に見られたという事を忘れるわ。そして深い眠りに落ちます。明日の朝は清々しい目覚めをするわ。お休みなさい・・・。」

 リンクは美奈が眠りに落ちた事を知り、ペニスを引き抜いた。ドボドボと音を立てて精液が溢れ出る。美奈が逃げ出さない事を理解しているリンクは自分の意志でペニスを細く出来るのだった。そして帰ろうとする弥生に満足そうに尻尾を振り、甘え声で感謝の意を表している様だった。






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