翌朝、美奈の目覚めはいつも以上に爽やかだった。しかしその反面、現実に引き戻された時、激しい悲しみが襲うのだった。

 (ああ・・・、夢だったのね。私には叶えられない夢・・・。)

 その時弥生が笑顔で入って来た。

 「お早よう。」
 「アッ、菊野さん。」
 「美奈、もうタイムリミットよ。」
 「エッ?」
 「学生生活に戻る為には、リンクとの交尾をやめ、あなたの身体から犬の匂いを消さないとならないのよ。」
 「アウッ・・・・・・。」

 美奈の心に更に激しい悲しみが襲い、最後迄残っていた人間としての倫理のかけらが完全に蒸発してしまった。

 「菊野さん、お願い。私はリンクの恋人のままで居たい。」
 「どうしたの? それは無理よ。」
 「お願いします。菊野さんは私でもリンクの子供が産めるって言ってましたね? お願いします。私はリンクの赤ちゃんを産みたい。」
 「本気? それは可能よ。だけど本当にあなたは人間をやめるの? ずっと雌犬のままで居たいの?」
 「本気です。もう私はリンクと別れて暮らすなんて考えられない。リンクの赤ちゃんを産んで、ずっと幸せに暮らしていきたい。」

 美奈は涙を流して菊野に哀願するのだった。弥生は困った様な顔で椅子に座った。

 「そこ迄思い詰めていたのね・・・。確かにあなたにリンクの赤ちゃんを産ませる事は可能よ。それにその思い込みが強い程、成功の確率は高いわ。」
 「本当ですか? だったらお願いします。」
 「やっぱりね・・・。」
 「『やっぱり』?」
 「そういう事もあるかも知れないとは予想していたわ。だからそれなりの準備はしてあるのよ。」

 美奈はパッと顔を輝かせた。

 「嬉しい! 菊野さんって、凄いカウンセラーなんですね?」
 「何言っているのよ。確かに私はセックスに絡む事となると予知能力が働くわ。だけどあなたを見ていれば、誰だって気が付きますわよ。それ程あなたがリンクの赤ちゃんを望んでいる事は良く分かっていたわ。だから念の為とは思い、軽井沢では雌犬の卵子を採取してきているのよ。」
 「本当ですか? じゃあ、私はリンクの赤ちゃんを産めるの?」
 「それは保証します。だけど・・・。」
 「何か?」
 「分かりました。美奈さんにリンクの赤ちゃんを産める様に処置しましょう。だけどあなたはその処置費を、そして生活をどうするの? 勿論保険なんか利かないわ。特殊な薬品だし、極めて高価よ。」
 「アッ・・・。」
 「それはお金の問題だから何とかなるでしょう。でもあなたは忘れているわ。あなたの産む赤ちゃんはリンクの血を引いているのよ。そしてリンクの場合でさえ人間のお乳で育ったので、自分を人間と思い込んでしまったのよ。だから美奈をお嫁さんにしたのよ。美奈の赤ちゃんの場合、あなたから産まれるのよ。ずっと裸のままで過ごすあなたであっても、赤ちゃんは当然の事として人間の女性にしか発情しなくなるわ。リンクの場合よりも確実にね。」
 「本当ですか?」
 「その可能性が高いのは美奈でも分かるでしょう?」
 「アッ、それは分かります。あのう・・・、私、ずっと裸で?」
 「当たり前です。もしあなたが衣服を着けていたら、赤ちゃんは服を着た女の人を自分の親だと思う。そしてそういう人に発情してしまう。美奈はずっと雌犬なのよ。それがイヤならきっぱりと諦めるのね。」
 「ああ・・・、もし私の子供が男の子だったら・・・。」
 「死なない様にするには、あなたと同じ被害者が出来るという事。」

 美奈はちょっとムッとした。

 「私は被害者じゃありません。自分で望んだ事です。」
 「だけど最初は違ったわね。そういうきっかけがなければ、美奈はリンクと結ばれたりしないわよ。まあ、私にはあなたの奥の嗜好を分かりましたから、そういう女の人がまだ見つかるでしょう。それは私の努力で何とかなるわね。だけどもう一つ、あなたとリンクの寿命よ。」
 「寿命?」
 「ええ、あなた達が本当の、とても幸せな夫婦に成ったとして、人間と犬の寿命の差よ。普通、犬の寿命は十五年程度よ。交尾を出来る歳で言えば、リンクの場合であと十年未満よ。あなたはその時二十代半ば。まだまだ性欲が強いのよ。」
 「アアッ・・・。」
 「あなたはまた別の犬を求めねばならなくなるのよ。まあ、犬の場合は自分の母親とは絶対に交尾しないわ。二、三年後にまた仔犬を産めば、その子の子、つまり孫ならあなたと時代は合うわね。」
 「エッ?」
 「当然でしょう? 仔犬が大きく成り、独立したら再び赤ちゃんを欲しくなるのは犬だけではないわ。特に美奈の場合、母性本能が強くなるのよ。常に子育てをしていたくなるのよ。それがイヤなら、やっぱり諦めるのね。」
 「違うんです。私・・・、今度だけでなく、何度でもリンクの子を産めるのですか?」
 「どうして? 嬉しいの?」
 「ええ。私、沢山リンクの子が欲しいの。」

 弥生は腕を組んで頷いた。

 「どうやら美奈の本気は本当に本気なのね。」
 「そうです。だから・・・。」
 「じゃあ、現実問題として考えましょう。あなた、生活はどうするの? 稼ぎが無いのよ。方法はない事はないけれど・・・。」
 「エッ? それは?」
 「無理なのよ。確かに美奈でないと出来ない方法が。だけど私からそれを勧められないわ。美奈にはとても耐えられないと思う。」
 「我慢します。私がリンクと家庭を持てるなら。」
 「我慢ではダメなの。諦めて貰う為にハッキリ言いましょう。ビデオ出演と実演ショーよ。あなたとリンクの交尾や、それから犬の子をお産するビデオを撮って裏のマーケットに回すの。それからグループの人を集め、みんなの前でリンクと交尾をして貰うのよ。」

 美奈は呆然として表情で弥生を見つめていた。

 「ネッ? とてもそんな事は無理でしょう?」
 「あ・・・・。私、見て貰えるんですか?」
 「そうよ。大勢の前であなたは・・・? エッ?」
 「私、リンクとの交尾を見せてもいいんですか?」
 「どういう事? まるで嬉しそうな・・・。」
 「嬉しいんです。自慢したいんです。私とリンクがどんなに幸せなのかをみんなに認めて貰いたいんです。とても無理だと思っていたけれど、本当にそれが出来るのですか?」

 弥生はほくそ笑んでいた。催眠術の効果がハッキリ現れていたのだ。

 「いいの? 私達が無理矢理あなたに交尾させ、それを他人に見せるのであれば犯罪よ。だけどあなた自身が自分達の交尾を見て貰いたいのであれば、それはセックスの一形態。それなら私はあなたに費用をお払い出来るわ。だとしたら生活費はいいわね? だけどまだ次の問題が・・・? アラッ? ええと・・・。」
 「菊野さん、何が・・・?」
 「困ったわね。美奈に諦めさせようとしていたけれど、私が説得されてしまったの?」

 美奈の顔がパッと輝いた。

 「いいんですか? 私、リンクの赤ちゃんを産めるの?」
 「仕方ないわね。だけど本当にいいの? あなたは一生雌犬として、裸で暮らすのよ。そして素晴らしい交尾をみんなに祝福されて暮らすのよ。」
 「嬉しい・・・。私は、本当にリンクのお嫁さんに成れる・・・。」

 美奈の嬉しさが分かるのか、リンクも嬉しそうに尻尾を振っていた。

 「だったら、すぐに始めますか? 採取してきた卵子は冷凍保存してありますが、時間制限がありますから。」
 「エッ? 出来るの? だったらすぐにして下さい。一刻も早く、リンクの赤ちゃんが欲しい。」

 いつの間にか来ていた川島は感極まった様に涙を流していた。

 「いいのね? リンクは子供のパパに成れるのね?」
 「私こそ・・・。喜んで貰えるのですか? 私、絶対に反対されるかと・・・。私、とても嬉しい。まさかこんな幸せがあるなんて知らなかったわ。留美子さんにもお礼を言います。だってこちらのアルバイトを教えて貰えなかったら、私はこんな幸せを手に入れる事は出来なかった。菊野さん、お願いです。早く始めて下さい。」
 「分かったわ。それではリンク、ちょっとの間離れていてね。」

 リンクは少し渋っていたが、川島の話し掛けですんなりと離れた。

 「そうよ。リンク、あなたの子供を産んでくれるのよ。」
 「留美子さん、準備は出来ていますね?」
 「はい。いつでもOKですよ。」
 「それでは始めましょうか。美奈、こちらへ。」

 女性達も少し興奮気味であった。美奈とリンクを連れて居間に向かう。居間には小型の簡易内診台が用意されていた。広い居間の真ん中の内診台は何となく卑猥な感じがするのだが、卑猥であればある程美奈に嬉しさがこみ上げてくるのだった。

 「美奈、処置の内容は撮影するわよ。それでもいいのね?」

 美奈はちょっと首を傾げていた。

 「変ですよね。本当は恥ずかしい事なんですよね。だけどリンクの赤ちゃんを産めるとなると、どんなに恥ずかしい事でも嬉しいの。嬉しいと言うよりも誇らしいの。私って本当に変態だと思うわ。菊野さんや川島さんだけにしか見て貰えない事が残念だと思うの。私の嬉しさを他の人にも知って貰いたいのです。私も自分のあそこがどう処置されるのか知りたいわ。良く映して下さい。」
 「分かりました。その台に乗れます?」

 美奈は拘束衣の為立てないので、内診台にはしがみつく様にして上がるのだった。弥生達は手早くベルトで胴と足を固定した。

 「撮影はいいわね? これは医療用としての記録でもありますし、美奈にも自分への処置内容を良く知って貰う事で、精神的な安定と平静を得て貰い、それが妊娠の促進になります。まず子宮内の消毒をします。」

 弥生はクスコを美奈の膣に填め込み、静かにネジを回す。キリキリという音とともに美奈の膣が拡げられる。そして細いチューブを挿入する。

 「生理食塩水で子宮内を洗い流します。美奈はひたすらリンクと交尾していましたので、異物であるリンクの精液により、ある種の抗体が出来ています。その抗体を少なくしなくてはなりません。」

 イルリからの水が膣内に流し込まれると、膣口から少し濁った液体が溢れ出し、受け容器に流れ落ちてくる。

 「フーッ・・・。」

 美奈は大きくため息をついた。

 「気持ち悪い?」
 「ええ、まあ・・・。ただの食塩水って、味も素気もなくて・・・。」
 「そうね、精液は勿論、リンクのオシッコも受け入れていた美奈としてはね。」
 「留美子さん、ゾルを・・・。」

 留美子は大きな注射器に長いチューブを付けた物を弥生に渡した。

 「これが第一液です。単純な方法では犬の受精卵はそのままでは絶対に着床しません。その為に第二液に卵子を入れて処置するのですが、その第二液を子宮壁に取り付かせる必要があります。第一液は浸潤粘着ゾルです。」

 弥生は注射器のチューブを膣から子宮口へ挿入した。ピストンを押す事によりその液が子宮内に広がっていく。

 「第一液には免疫抑制剤と女性ホルモン、むしろ母性ホルモンと言った方がいいかも知れませんね。子宮壁の強化、活性化と安定化を図ります。折角受精した卵子でも、そのままでは着床しないの。ですから子宮壁を極端に敏感にし、卵子を吸着させてしまうのです。美奈、少ししみるかも知れないし、これが副作用を起こすのよ。」
 「副作用・・・ですか?」
 「女性ホルモンとしてはかなり効果の強い物なので、筋肉の力が落ちるの。だから歩行が難しくなるのよ。」
 「ウッ・・・、ちょっとしみる・・・。おなかの中が痺れる・・・。歩けないくらい・・・、いいです。リンクの赤ちゃんが産めるのなら・・・。ウッ・・・、ツッ・・・。」
 「本当は受精卵であればそのまま吸着、着床させられるのですが、やはり交尾での受精の方が美奈にもリンクにも嬉しいでしょう。」
 「ええ・・・、アツッ・・・。」
 「痛いですか?」
 「我慢出来ます・・・。それにこの痛みが赤ちゃんを産めるのだと思うと・・・、嬉しいです・・・。」

 美奈は子宮の痛みに耐えていた。

 「それでは第二液を注入します。これに雌犬の卵子を入れてありますから。これを入れると、本当に美奈は雌犬に成るのよ。いいのね?」
 「嬉しい・・・。早く。」
 「第二液は成分は似ていますが、分子構造の違いで、浸潤粘着ゲル剤です。ゼリー状で、一塊になっています。やはり免疫抑制剤と女性ホルモンを含ませていますが、それ以外に人間の卵子ホルモンが入っています。それで子宮壁に対して、いわばごまかす訳ですね。着床促進ホルモンなのです。ゲルはゾルと浸潤し、子宮壁に付着しています。そしてゲルが少しずつ子宮壁に浸潤していき、やがて活性化した子宮壁に吸い込まれていけば、物理的にも着床します。ですから着床は確実に起きますよ。」

 弥生は大きな注射器を手にしていた。内部の液体に少し黄色みを帯びた柔らかそうな物が浮かんでいる。それがゲルなのだ。

 「入れるわよ。」
 「はい・・・。」

 子宮口を貫いているチューブに繋ぎ、ピストンを力強く押し込んだ。そのゲルは勢い良く美奈の子宮内に送り込まれるのだった。

 「暫くジッとしていて。ゲルがゾルに取り込まれる迄よ。」

 留美子も興味深そうに美奈の股間を見つめていた。

 「大丈夫ですか?」
 「ええ、もう少し。生理食塩水を吐き出させ、中にゲルが出てこなければOKなの。」

 美奈は感動で涙を溢れさせていた。

 (私・・・、やっと本当の雌犬に成れる・・・。リンクの赤ちゃんを産める・・・。信じられない。こんな幸せがこの世に存在したなんて・・・。)
 「どう? 痛みはなくなってくる筈・・・、と言うよりも少し麻痺してしまうのよ。浸潤剤を使っているので、女性ホルモンの吸収が早いのね。神経伝達に阻害が起きてしまうの。」
 「はい・・・。胸から下の感覚が減って・・・。」
 「それは暫く無くならないけれど、いいわね? 着床した卵子が順調に育てば、女性ホルモンの効果が不要になるの。そして美奈の身体の中で赤ちゃんを育てるホルモンが活発になる。そうすれば女性ホルモン過剰が無くなるので、副作用も減ってくるのよ。」
 「そしたら、赤ちゃんが産まれる頃には?」
 「大丈夫よ。それ迄にはかなり減っているわよ。だけどどうしても残る副作用があるわ。多分美奈は二足歩行がかなりつらくなるわよ。まあ、リンクのお嫁さんなのですから、ずっと四つ足歩行ですから、問題は少ないとは思いますが・・・。それと神経の阻害が舌に起きるの。喋り難くなるわ。これも雌犬であれば問題はないわ。そういう副作用が出るのよ。どう? 今ならまだ中止出来るわ。」
 「いいえ。私の決心は変わりません。それに人間としての副作用は問題でしょうが、私はもう雌犬。それより、あのう・・・、菊野さん・・・。」
 「はいはい。分かっているわよ。美奈は早くリンクと交尾したいのよね。だけどもう少し我慢して。まだ麻痺しているから、巧く交尾出来ないし、折角の交尾も感覚が鈍りますからね。」
 「そうですか・・・。」

 美奈は少し残念そうに、下で座っているリンクを見つめた。

 「今晩はこのままよ。明日の朝迄は身体を動かしてはダメ。ゲルがゾルに浸潤し、安定するのにかなり時間が掛かるわ。それに卵子も冷凍されていましたから、体温で目覚めても、活発になるのにやはり時間が掛かります。」
 「じゃあ、明日の朝に?」

 弥生はニッコリ微笑んでいた。

 「そうよ。みんなで祝福して上げる。お客様を大勢呼んで上げるわね。みんなで美奈とリンクの結婚を応援する為にね。」
 「ワーッ、嬉しい。私、幸せ・・・。リンク、幸せになろうね。」
 「そうそう、美奈は初めての妊娠だし、リンクの赤ちゃんとなると、本などでの知識は役に立たないわ。妊娠初期の状態が大切よ。だから知っておいて欲しいのだけれど、卵子が受精しても、美奈の場合は着床し難いのは分かっているわね? ホルモンが助けるけれど、受精から着床の間は結構不安定なの。ゲルの浸潤で卵子を押さえていても、沢山入っている精液を一気に出してしまうと、その勢いで粘着が離れてしまう可能性があるのよ。だから受精しても暫くは静かにしていなさいね。」
 「どれ位ですか?」

 美奈は期待に目を輝かせていた。

 「そうねえ・・・。データでは丸二日。子宮はかなり敏感になっている筈だから、着床が始まると分かるらしいわ。そして安定するのに一時間程らしいわ。普通では分からないのよ。女性ホルモンが大量に入っていますから、着床すると一斉に妊娠状態を促進するの。だからその時は少し目眩がしますし、もう一度副作用が出てきます。だから逆に言えば、目眩と神経伝達に支障が出たら、それは美奈がリンクの赤ちゃんを身篭もったという証拠ね。それより少し休んでいた方がいいわよ。その方が明日の交尾は素晴らしいものになるから。」
 「そうですね・・・。素晴らしい事は分かります。だって私がリンクの本当のお嫁さんに成れる交尾なのですから。」
 「そうですよ。ホルモンの影響で、神経が弱っていますから、良く眠れるわよ。さあ、話をしていてはいつ迄も精神的に興奮してしまうわ。皆さん、静かに美奈を休ませましょう。ほら、リンク、あなたもよ。」
 「じゃ、美奈、お休みなさい。」
 「はい、留美子さん、川島さん、お休みなさい。」

 川島は渋っているリンクを引っ張り、他の二人と一緒に部屋を出て行った。後には内診台に固定され、両足を広げて股間を晒したままの美奈だけが残った。

 「嬉しい・・・。本当よね? まだ夢を見ているみたい・・・。」

 麻痺がだんだん全身に広がる感じで、やがて美奈は眠りに落ちていった。

 その間、弥生達の準備は忙しかった。留美子と川島は『招待客』への電話を、弥生は『結婚式』の準備に取り掛かっていた。

 「川島さん。これから本当に最後の催眠術を掛けます。明日の朝から二日程度は美奈はかなり暴れますけれど、静かに見守って上げて下さい。」
 「暴れる? そんなに痛みが?」
 「ええ。但し、精神的にですから。」
 「分かりませんわねえ。だって、あれ程待ち望んでいるのに。」
 「私の催眠術で、美奈の最後の人間としての倫理を打ち砕きます。それが済めば、名実ともに本当の雌犬に成れるのです。今でも充分に雌犬ですが、かなりの部分、私の催眠術の影響を受けています。ですからその影響が薄れれば、猜疑心が起きたり、疑問を感じたりしてしまいます。それでもすぐに肉欲の虜で雌犬に戻るでしょうが、出産近くなったら交尾が出来ません。そしてその時期が一番精神の安定が必要なのです。ですからそういう状態でも人間の倫理が沸き起こらない様、その倫理を絶望で砕いてしまうのです。それに、そういう状態での交尾の方が、ビデオ映像としてはドラマチックですしね。」
 「そうですか・・・。私には良く分かりませんが、全て菊野さんにお任せしています。」

 弥生は再び美奈の居る居間へ静かに戻るのだった。

 内診台の美奈は軽い寝息を立てている。それを確認してからそっと耳元で囁き始めた。

 「美奈、あなたは幸せ。深い眠りに落ちていく。そして私の声以外の音は何も聞こえない。」

 弥生は一息入れてから声の調子を変えた。意識的に低音にし、重々しい口調で喋り始める。

 「これから私の話す言葉は、あなたの心の一番深い所に刻まれる。絶対に忘れない程深いのに、あなた自身は気が付かない、思い出さない程に深い所に。そしてそこに既に在る意識は何かしら? そう、人間としての本質、倫理、道徳よ。私はその深い所に雌犬としての倫理を植え付けていたわ。多分美奈の心には葛藤や戦いがあった筈。人間の倫理は交尾の良さに目を眩ませられて妥協していたでしょうけれどね。さあ、美奈の人間としての倫理、価値観、道徳は全部表に出てきなさい。人間の心を押し潰して活きるより、それをあらわにしなさい。そして根本は雌犬に譲るのよ。どう? 恥ずかしさが出てきたわね? そう、それが人間の心よ。今迄とどう違う? 分からない? あなたは今迄人間のセックスと比較して素晴らしい交尾を楽しんでいたのよ。当然、交尾の方が素晴らしいから、それを理由にして獣姦を容認していたの。今は? もう交尾は当たり前の事ね。だからそれを失いたくない、だけど人間としての尊厳が抵抗しているのよ。さあもっと恥ずかしがりなさい。それは人間の心が表に出てきた証拠。そしてその分、雌犬の心が深い位置を占拠していく事なの。」

 美奈は少し苦しそうに呻いていた。息遣いも激しくなり、心臓の鼓動も早くなっていた。

 「苦しそうね。まずはリラックスしなさい。さあ、美奈、今あなたは普通の学生に戻りました。学校が終わり、暗くなった夜道を歩いています。寮に戻ろうとするといきなり髭もじゃで髪もぼうぼうの野獣の様な男があなたの前に飛び出したわ。あなたは驚いて悲鳴を上げ、逃げ出そうとする。だけど腕を掴まれ、押し倒されたわ。」

 美奈は小さいが鋭い悲鳴を上げた。

 「あなたは衣服を引き裂かれ、あそこに強い嫌悪の痛みを感じる。そう、あなたは犯されたのよ。気が付いた時は誰も居ない。そしてあなたは股間から血を流しているの。やがてあなたはその野獣の子を宿した事を知る・・・。」

 涙が溢れ、嗚咽の悲鳴がずっと続く。

 「どうしたの、奈美? あなたが人間だったら、人間の赤ちゃんを産むのは当然なのよ。」

 美奈は泣き声を上げて首を振っている。

 「はい、その悪夢から目が覚めたの。あなたは今リンクの隣で眠っていたのよ。良かったわね。今のは夢だった。リンクが優しい顔であなたの顔を嘗めてくれた。美奈、嬉しいでしょう? 少し大きく成ったおなかにはリンクの子が居るのよ。」

 美奈はホッとした表情に戻り、笑顔を浮かべていた。

 「さあ、美奈の人間性がどんどん表に出てきたわよ。少ししか残っていない人間性だけれど、その人間としての心を働かせなさい。人間として、犬と交わる事は正しい事? 以前のあなただったらすぐ答えられる。今は当たり前の事だけれど、本当なら絶対にあってはならない事よ。まして交尾されて悦ぶという事は人間として許されない事。」

 美奈の表情が少し翳る。

 「さあ、思い出して、以前の心を。美奈、あなたはリンクの子、犬の子を産まされようとしている。人間では絶対に許されない、人の道に反した事。だんだん苦しさが出てきたわ。それが人間の心よ。あなたはあと少しで犬の子を孕まされるのよ。人間でなくされてしまう。だけど身体は悦びを受けるわ。」

 美奈がもがいているのをジッと見つめていた弥生は口調を変えた。

 「美奈、あなたの人間の心が本質である雌犬の心を覆い包む。雌犬であるのに人間の心が隠しているの。人間としてリンクとの交尾はつらく恥ずかしい。だけど身体は雌犬。心と身体は激しく対立している。あなたは交尾を拒絶したい、だけど身体は求めてしまう。そう、リンクがあなたの中に射精したわ。すぐに受精するでしょう。だけど着床しなければ犬を産まされないで済む。あなたは抵抗する。リンクのペニスが抜ければ、精液を押し出して一緒に卵子が出てしまう。だけど無理だったわ。あなたにも着床した事が分かる。犬の子を妊娠した事が。あなたの人間としての尊厳が打ち砕かれたの。だけど雌犬の身体としてのあなたには凄さまじい快感と幸せが襲う。心と肉体が激しく戦い、心は砕かれてしまう。どの心? そう、表面を僅かに覆っていた偽の心。さあ、美奈、あなたはリンクの可愛い子供を産めるのよ。本当の自分の心を取り戻して。雌犬の心。素晴らしい幸せにあなたは震えている。そしてその時、どうして自分が拒絶しようとしていたのか分からないし、覚えてもいない。分かるのは幸せだけ。私が美奈に謝っているわよ。私は美奈に犬の子を産ませたくない。だから催眠術で拒否したいと思わせていた。だけど私の催眠術よりもあなた達の愛の方がずっと強かったわ。・・・・、さあ、眠りが深くなるわ。そして私の言った事は忘れてしまう。だけど絶対にその通りになるの。目覚めは少し苦しいわね。だって、人間の心が浮き上がっているのですから。もっと深い眠りに・・・・。お休みなさい、そしてさようなら、人間の美奈・・・・。」



 「ウッ、私・・・?」

 美奈の目覚めは催眠術の影響で、不安で不快だった。

 「キャーッ、私、何て格好で・・・?」
 「お早よう。」

 弥生が手に何かを持って入ってきた。

 「ワッ、菊野・・・さん? 私・・・何を? アッ、犬の子を?」
 「そうよ。美奈がリンクの子を孕むのよ。」
 「リンク・・・? エッ、どうして? アッ、・・・アアーッ!」

 美奈の人間の心が悲鳴を上げさせた。

 「あら、どうしたの?」
 「留美子さん、川島さん? お願い、助けて・・・。私、犬の子を産まされる。」
 「そうよ。美奈の望んでいたリンクの子よ。」
 「イヤーーッ、助けてーーっ!」

 留美子と川島は驚いて顔を見合わせた。

 「菊野さん、美奈はどうしたの?」
 「ええ。なぜかしらね。昨晩迄はあんなにリンクの子を欲しがっていたのに。美奈、大丈夫?」
 「私、イヤです。私は人間です。犬の子を産むなんて・・・。」
 「あまりの喜びに精神錯乱?」
 「違いますメ@アッ、私・・・、昨日迄が狂っていたんです。お願い、助けて・・・。」
 「分からないわねえ・・・・・。折角美奈の結婚式に大勢招待したのに。」
 「助けて・・・。私、恥ずかしい。こんな格好で、恥ずかしい所を晒したままで・・・。」
 「菊野さん、本当に美奈はどうしたのかしら?」
 「本人がイヤと言うのでは・・・。しかし一時の気の迷いかも知れませんわ。ですから美奈に任せるしかありませんわね。」

 そう言いながら、弥生は注射器で膣の中に僅かの水分を注入した。

 「エッ、菊野さん、それは?」
 「結婚式の為の準備でしたのよ。リンクは美奈が大好きですから、そのままでも交尾したいと思うでしょう。今入れたのは本当の雌犬のフェロモンです。だからますます美奈と交尾したがるわよ。」
 「イヤーッ、ダメーーッ!」
 「だから美奈が本当にリンクの子を産みたくないのだったら、交尾を拒絶しなさい。」
 「ダメッ、ダメなのよ! リンクに迫られたら、私抵抗出来ない。」
 「それだけではまだ妊娠しない。着床するのに二日は掛かるわね。その間にリンクから逃れられれば、妊娠しないわね。川島さん、お客様をお招きして下さい。そしてちょっと経ってからリンクを連れてきて下さい。」
 「ワーッ、やめてーっ。私に獣姦させ、それをみんなで・・・。」

 泣き叫ぶ美奈の手足のベルトを弥生と留美子が外し始める。しかし外れても美奈は簡単には内診台から下りられない。手足が幾分麻痺したかの様に、思い通りには動かせないのだ。二人に支えられて床に下りた時、数人の人間が部屋に入って来たのだ。美奈の初めて見る顔に、驚いて身体を隠し、悲鳴を響かせるのだった。

 軽井沢の伯母、家政婦のカオル、校医の佐渡、そしてそれ以外にも沢山の女性達であった。そして美奈を取り囲む様に周りの椅子に座るのだった。

 「な、何ですか? この方達・・・。」
 「おめでとうございます。今日はリンクと美奈の結婚式にお招き頂きまして。」
 「違います。私は・・・。」
 「アラッ? 菊野さん、様子が違いますわね。」
 「ええ、なぜか今朝・・・。」
 「見ないで! お願い、獣姦なんかさせないで・・・。」

 身体を縮め、震えている美奈を不審そうに見つめる視線は、美奈にとって痛い程に突き刺さる。

 「お待たせしました。花婿の登場ですわ。」

 川島の明るい声に全員がドアの方を向いた。そして美奈は凍り付いてしまった。リンクが嬉しそうに、そしてペニスを怒張させて入って来たのだ。リンクは部屋の中で鼻を高く上げ、クンクンと匂いを嗅いでいた。美奈の膣に入れられたフェロモンを感じたのである。

 「ダメッ、来させないで!!」

 美奈は恐れおののき、後ずさりをする。リンクはそんな美奈の態度を訝しげにしているのだが、それでもフェロモンに惹かれて美奈に近付くのだった。

 「ヒーーーッ!」

 美奈は両手で股間を押さえ、リンクを睨み付ける。リンクとしては不愉快だった。自分の支配下にある美奈がなぜか自分を拒否している。しかも大勢の人間の居る前で。リンクはしてみれば自尊心を損なう美奈の態度だった。

 「ウーーーッ・・・。」

 自分が美奈の主人であるという意味の威嚇をするのだが、美奈は更に怯えていた。そしてリンクは美奈の股間に鼻を近付け、フェロモンを更に強く感じたのだった。そしてリンクなりの結論を得たのだ。

 《美奈は俺の妻。今迄は子を孕まなかった。しかし今は子を産める匂いを出している。美奈は子を孕むと俺との交尾が出来なくなる。だから好きなのに交尾をイヤがる。だが俺は子供が欲しい。交尾してしまえば美奈は大人しくなる。俺と繋がれば良がり狂う。俺は美奈に子供を孕ませる。》

 「ガウッ!」

 リンクは美奈にのしかかった。そして周りからは拍手喝采が沸き上がる。

 「ダメーッ、助けてーーーっ!」

 力の入らない美奈の足の間にリンクは分け入り、股間を押さえている手を押しのけてペニスが割り込んできた。

 「ヒーーーッ・・・!」

 美奈はひたすら這って逃れようとしていたが、リンクの熱い肉棒が美奈の割れ目に填まり込んでしまった。リンクはなぜか拒絶しようとする美奈を両前足でしっかり捕まえ、腰を前後してペニスの先端をより深い部分に押し込んでいくのだった。

 「ダメーッ、このままじゃ・・・。ヒーーッ・・・!」

 肉体には快感を感じている。しかしそのままで居れば美奈は犬の子を産まされてしまう。リンクの激しいピストンに愛液が噴き出し、どんどん高まっているのが分かる。

 「お願い、リンク・・・。やめさせてーっ・・・。交尾すると私の心は雌犬に成ってしまう。アッ、来ちゃう・・・、アハーーッ!」

 美奈の周りの鋭い視線がリンクとの結合部に集中している。
 「ダメッ、見ないで・・・。イヤーーッ・・・、アヒーーーッ!」
 (ダメよ、美奈。早く逃げないと。ウッ、募る。リンクのオチンチンが気持ちいい・・・。だけどダメなのよ。私の子宮には犬の卵子を入れられている。リンクが射精したら・・・。私、犬の子を・・・。ああ、ますます気持ち良くなってしまう。みんなにこの恥ずかしい姿を見られているのよ。気を遣ってしまう事は、私が雌犬だという証拠なのよ。つらい・・・。私は露出狂? 見られていると余計に嬉しく感じてしまう。ダメッ、私は人間に成りたいメ@違う、私は人間なのよっ。アアッ・・・、リンクのが・・・。)

 ピストンが早まり、リンクの第一時射精が始まるのが分かる。

 「ダメーッ、誰かーっ! 抜けなくなっちゃうのよーーっ!」

 しかし周囲の人間はそれを待ち望んでいるのだ。

 「もうすぐなのですね?」
 「それにしてもこの雄犬、テクニック抜群ですわね。」
 「そうですね。こんなに雌犬を良がらせて。」
 「私は・・・、雌犬なんかじゃ・・・。アーーーッ!」

 ついに人間と決別の瞬間が来た。リンクの激しい息遣いとともに、ペニスが強く押し込まれ、ぐぐっと膨らみを増したのだった。美奈の心に絶望が走る。その絶望の激しさは美奈の人間としての心にひびが入った。確かにピシッという音を感じたのだ。そして肉体は激しい悦楽を感じていた。その絶望の中でリンクは向きを変えた。本格射精に移る為に。

 美奈の心には周囲のざわめきが更に強く突き刺さる。誰もが美奈の交尾を楽しんでいるのだ。

 (どうして・・・、雌犬に成ってしまうのに、どうしてこんなに気持ちがいいの? どうして交尾が嬉しいの? アッ、リンクのオチンチンが蠢いている。このままでは・・・、受精してしまうのよ。そうしたら私は犬を産まされるのよ。私は本当の雌犬に成ってしまうのよ。ワーッ、始まる! イヤーッ、私の身体は待ち望んでいる。違う、身体はスケベだから交尾を悦んでいるのよ。ダメッ、一時の悦びで、私は人間ではなくなってしまうのよ。このままずっとリンクに交尾をされ続けてしまうのよ。リンクの赤ちゃんを産んで、ずっとリンクと交尾を続け、幸せな家庭を作るのよ・・・・。違う! どうして幸せだなんて・・・。アアッ、凄い。リンクのが中で・・・。)

 美奈は精神分裂を起こしていた。身体は絶頂を迎える歓喜に震えているが、心はズタズタであった。そしてリンクは美奈の心の不調を感じ、より強い射精でそれを解消させようとしていた。

 「アヒーーーッ! 来るっ・・・。ウオーーーーッ・・・!!!」

 激しいアクメの声はリンクの精液が膣に圧入された為であった。美奈の精神では時間が止まっていた。そして周囲の祝福を込めた歓声が虚しく美奈の中を通り過ぎていた。



 精神的失神をしていた美奈が再び意識を取り戻した時、大勢の囃し立てる中、リンクに引きずられたまま交尾結合しているところだった。

 「アアーッ、私、交尾してるーーっ!」

 リンクは二度目の射精の為のペニスボールの移動をさせている最中だった。

 「いいわねえ。獣姦というのは、してる本人も素晴らしいでしょうが、見ていての楽しみも素晴らしいわね。」
 「ええ。やっぱり犬の獣姦が一番ですわ。抜けなくなるというのが、とても楽しいわね。」
 「お願い。助けて・・・。私がスケベなのは認めます。だけど・・・、私は犬の子を産まされてしまう・・・。ダメッ、アアッ、また・・・。」

 弥生がしゃがみ込んで美奈に話し掛けた。

 「どうしても犬の子を産みたくないの? あなたは随分望んでいたのよ。それに本当にイヤなら抜けばいいのよ。」
 「菊野さん、助けて。私、おかしかったんです。犬の子なんか・・・、産みたくない。」
 「だから抜きなさい。」
 「ぬ、抜けないんですよーっ。」
 「それは、リンクのペニスが膨らんでいるからだけではないのよ。あなたの膣が絞り込んでいるから、抜けないのよ。一度の射精では精液の量が足りないから、受精しないかも知れないわ。ゲルはそれなりの抵抗があるから、精子が侵入し難いの。だけどもう一度射精すれば、子宮内の精液の圧力が高まるから、ゲルの中にかなりの圧力で押し込まれます。だから受精させない為には、二度目の射精の前に抜く事ね。」
 「出来ないんですーーっ! アヒッ、凄い・・・。私、いきそうなのよ。ダメッ、リンクが・・・、ヒーッ!」

 美奈は子宮内へ熱い迸りを受け入れてしまった。

 「アッ・・・、精子が・・・、入った・・・。私、受精してしまう・・・。アアーーーッ・・・。」

 その瞬間、身体は一気に燃え上がり、心のコントロールが出来なかった。そしてパリパリという音が聞こえた。それは美奈にも人間の心のひびが広がり、欠落していく音であった。精神の崩壊を少しでも先送りにするには、やはり失神しかなかったのである。



 「アウッ・・・?」
 「あら、起きたの?」
 「私・・・?」

 リンクと結合したままだが、リンクはのんびりと伏せたままであった。そして川島と弥生だけであった。

 「皆さんが折角結婚式を祝福してらっしゃったのに、何だか申し訳なかったわ。留美子さんがお送りしていますけれどね。」
 「結婚式・・・a@アッ、私、犬の子を・・・。」
 「そうですね。卵子は受精しているでしょう。あとは着床すれば、美奈はリンクの赤ちゃんを産めるのよ。」
 「アーーーッ! ダメーーーッ!」

 美奈は慌ててリンクから離れようとした。しかしリンクは腰をグッと引き、美奈を引っ張るのだった。

 「ごめんなさい、菊野さん、私、ダメーッ。リンク、抜いて。このままでは・・・。」
 「美奈さん、昨日迄のあなたはどうしたの? あれ程リンクの赤ちゃんを望んでいたから、私達は苦労してあなたにその処置をしたのに。」
 「ごめんなさい。私、気が狂っていたのです。私は人間・・・。なぜか自信は無いけれど、犬ではありません。だから・・・。」
 「以前にも言いましたよね。美奈が人間であるなら、そしてリンクとの交尾を望まないなら美奈自身でペニスを抜く事が出来るのよ。」
 「だから・・・。私の身体は変態です。どんなに心で拒絶しても、身体は悦んでしまっているの。どうして・・・、どうしてリンクは抜いてくれないの?」
 「リンクにも分かっているのよ。リンクは子供が欲しいの。だから着床する迄は抜かないわ。」

 美奈はもがきながら何とか離れようと試みていた。しかしそれはリンクのペニスへの刺激となり、再び美奈ののしかかるのだった。

 「アハーン、ダメッ、こんな時に交尾は・・・。アヒーーッ!」

 リンクの交尾はリンク自身の快感の為とは少し異なっていた。リンクには分からない美奈の精神の不安定を治める為、そして本能で分かる、妊娠の為の良い方法としてであった。だから射精迄への時間は極めて長く、数時間に渡って美奈を良がり続けさせるのだった。



 「ハーッ・・・。」

 失神から目覚めた美奈は快感の余韻に浸っていた。しかしハッと気が付く。

 「アッ、私は・・・。」

 子宮は精液で痛い程に膨らんでいる。

 「抜かないと・・・、このままでは私は犬の子を産まされる・・・。どうして私はそんな事を望んだの? 着床したら私は・・・。」

 その時、美奈は不思議な感覚を子宮内に感じた。痛みでも熱でもない。しかし温かい、心地良い波が広がったのだ。

 「・・・これ・・・a@何? まさか・・・。赤ちゃん・・・?」

 精神と肉体が完全に乖離した。肉体の歓喜を伴う歓びと精神の崩壊であった。ガラガラと音を立てて弾け飛ぶ心をハッキリと感じたのだった。

 「イヤーーーーーッ・・・!!!」

 激しい絶叫の悲鳴とともに、美奈は精神分裂の失神をしてしまった。



 「私・・・?」

 美奈が目覚めた時、三人の女性が微笑んで見つめていた。リンクも美奈から離れ、女性達と一緒に嬉しそうに尻尾を振っていた。

 「私・・・、リンクの子が・・・? アラッ・・・?」

 心が妙に浮き浮きしていて、なぜかおなかの中がいとおしかった。

 「ごめんなさいね。私、美奈に催眠術を掛けていたの。」
 「催眠術?」
 「美奈はリンクの子を妊娠したのよ。嬉しい?」
 「妊娠? やっと・・・? 本当に?」

 美奈の瞳は輝いていた。しかしふと不思議なものを感じた。

 「嬉しいのよ。だけどどうして・・・。」
 「私が美奈の心を催眠術で少し細工したの。ごめんなさいね。だけど確実に着床させる方法だったのよ。美奈に普通の人間の心を植え付け、犬の子を妊娠する事に拒絶感を感じさせたのよ。だけど思った程には効かなかったわ。どんなに細工しようとしても、美奈とリンクの愛にはかなわない。」
 「催眠術・・・。だから・・・。」

 美奈は何となく納得したが、不満気だった。

 「折角私がリンクの赤ちゃんを身篭もる事が出来たのに、そして大勢の方に祝福を受けたのに、私ったら・・・。どうせなら私も喜んで妊娠したかったのに・・・。」
 「本当はね。だけど美奈が犬の卵子を着床させるには、ずっと子宮を塞いでおかねばならなかったのよ。もしリンクがペニスを引き抜くと、その途端に精液が溢れ出し、一緒に受精卵が流れ出てしまうの。だけど今迄のあなた達は仲の良い交尾をしていたでしょう。リンクも安心してペニスを抜いてしまうわ。どうしても二日間はペニスを抜かれてはダメだったの。その為には最初の頃の様に、美奈がリンクの交尾を拒絶すれば良かったのよ。そうすればリンクは意地になって交尾結合を続けますからね。だけど本当に難しい催眠術だったのよ。本人の望まない精神操作でしたから。」
 「どうしてかしら・・・? あの心は催眠術だったからなの? 本当につらくて苦しかったわ。」
 「植え付ける心はごく普通の、美奈がリンクに会う前の心よ。だけど精神抵抗が強くて、手間取ったわ。」
 「美奈、菊野さんの催眠術って凄いのよ。セックスに絡む事ですから、完璧なの。」
 「でもそれが簡単でなかったのは、美奈の愛情が強かったから。これからはもう美奈の思う通りでいいの。ところで、学校はどうします? 暫くは行けないわよ。だって妊娠しているとなるとね。」

 ちょっと美奈は残念そうな表情をした。

 「そうですよね。もう私は雌犬だし、リンクと離れるのは少しの間だけでもイヤだし・・・。」
 「だけどきちんとした生活はしないとダメよ。それにちゃんとした生活の上にしか幸せな生活はないのよ。美奈、考え違いはダメよ。あなたは雌犬だけれど、肉体と頭脳は人間なのよ。ちゃんと高校は卒業し、大学だって・・・。自立出来る生活力が無くては。」
 「高校? 大学? だけど・・・。」
 「その点は安心なさい。通信教育、インターネットによる授業もありますから。ここに居ても大丈夫なのよ。それに妊娠はしたものの、まだ流産の危険性は極めて高いのよ。人間の胎内で犬の胎児を育てるのですから、色々とホルモン治療をしないとね。副作用もありますから、ここで養生をしながらでないとね。
 「私、このまま高校生で? だけど私はリンクの奥さんで、雌犬だから・・・。」
 「確かに雌犬ね。だけど人間でもあるのよ。あなた次第ではあるけれど、あなたの一生はまだまだ長いのよ。あなたのおなかの中に居るリンクの赤ちゃんの為にもしっかりした生活をしなければならないのよ。」

 美奈は腹をさすった。

 「赤ちゃんの為に?」
 「ええ。前にも言ったわね。あなた達の赤ちゃんは当然だけれど人間相手にしか発情しないわ。何年か先にはその赤ちゃんにもお嫁さんが必要になるのよ。こんなに素晴らしいリンクのお嫁さんに成った美奈ですら、最初は普通の女の子だったのよ。そしてたまたま獣姦嗜好が強かったからお嫁さんに成れたの。候補者は私達で探すにしても、美奈さん程強い獣姦嗜好の子がそれ程居るとは思えないわ。まあ、ある程度は素質のある娘を探しはしますが。だけどその場合でも相当抵抗が強いと思うの。その時に美奈さんがきちんとした生活をしていて、ちゃんとした人間性を保ったままで幸せな生活をしているところを見せられたとしたらその娘はどう思うかしら? だけど逆に、完全な雌犬としての獣性だけがあらわな美奈さんでは・・・。美奈はその娘の姑よね? まだまだ若いですけれど。品のいい知性溢れた美しく幸せで美人な美奈がリンクとの素晴らしい結婚生活をしていると分かれば・・・。」

 美奈はパッと顔を輝かせた。

 「分かりました。私もまさかリンクとこんな結婚が出来るとは信じられなかったし、想像も出来ませんでした。だけど私の幸せを教えて上げたい。そしてこの子とその奥さんとも幸せに暮らしたい。」
 「そうよ。美奈は人間としてしっかりとした生活を送り、そして雌犬としてリンクとの生活を楽しむのよ。」
 「色々と・・・有り難うございます。」

 美奈は心の底から感謝し、涙を溢れさせるのだった。

 「さて、リンクの子を産むについての母親教育をしないとね。」

 弥生は椅子に座ってファイルを開いた。美奈は自然に床にしゃがみ込んでいた。

 「そう。その気持ちよ。」
 「ハッ?」
 「美奈、今あなたは自然に床に座ったわ。リンクと同じ犬である以上、犬に成り切るのよ。身篭もったとはいえ、まだあなたが犬か人間かはリンクには分からないの。あなたがリンクの子を産んだ時、初めてあなたが雌犬だという事を理解するの。そうなればあなたが椅子に座ってもリンクにとって既に雌犬のあなたなのだから、人間の真似をしているという事なの。」
 「はい。分かっています。」
 「犬の出産は六ヶ月なの。だからどんな大型犬でも、産まれる時は小さいのよ。美奈さんには楽なお産になる筈よ。安産のお守りとして犬の物が使われるのはその為なの。ところが産まれてからの成長は凄く早いわ。犬の母乳は凄く濃くて栄養価が高く、量も多いのよ。リンクの様な大型犬だとなおさらよ。だから普通では人間のお乳では足りないのよ。そこで美奈さんに聞くのだけれど、美奈の母乳に追加して人工乳を使う方法と、美奈のお乳の出を良くして賄う方法とどちらが宜しいかしら?」
 「私の・・・お乳の出を良く出来るのですか? それなら勿論その方がいいです。」
 「但し、今の美奈の乳房ではダメ。活性化させないとダメなのは当然として、乳腺細胞その物を増やさないとならないのよ。それがどういう意味か分かります?」
 「ええ、乳房を大きくするとか・・・。」
 「その通りよ。」
 「それならお願いします。私は雌犬だけれど、人間としてのスタイルの良さも嬉しいし・・・。」
 「うーん、それはどうかしらね? どの程度だと思っているの?」
 「どの程度って・・・、巨乳なんですか? だけどあまり大き過ぎると、垂れ下がってしまうから・・・。」
 「垂れ下がる事はないわ。活性化させると言ったでしょう。そして乳腺も密度を濃くしないとならないのよ。と言う事は大きな乳房でも、密度の濃い乳房に成ると言う事なの。それに私の治療はもっと別の効果もあるわ。普通は巨乳って感度が悪くなるのよ。乳細胞の大部分は脂肪ですからね。脂肪細胞には神経が少ないわ。私の治療で密度の濃い乳腺細胞が増えると言う事は、普通の乳房よりもずっと感度が高く成るのよ。ハッキリ言いましょうね。感度が高く成り過ぎてしまうのよ。まあ美奈には無関係ですが、ブラは出来なくなるわよ。」
 「ブラジャーが?」
 「美奈は雌犬なのよ。人間の衣服、下着は着けられないのよ。それ以上に、ブラの布ズレに耐えられない程なのよ。それに・・・、耐えられたとしても、その乳房を覆えるブラジャーが無いという事なのよ。」
 「無い? どういう事ですか?」
 「最近では既製品でも結構色々なサイズが出ているわ。普通ではFカップね。特別に注文すればGとかHとかも在るわ。だけど、美奈の場合、最低でもLカップよ。多分NかOカップとなるとねえ・・・。」
 「O・・・!」
 「そうよ。犬よりも栄養価の低いお乳しか出せない人間の場合、その程度にしないと。西瓜並みの大きさよ。そんなに大きいオッパイをずっと晒したままなのよ。そして凄い感度なのよ。勿論交尾の時の感度は凄いし、実際に授乳させる時には素晴らしい幸福感が湧いてしまうのよ。それに仔犬がある程度育って離乳したとしてもミルクは出続けるわ。お乳が張るのはつらいわよ。そうなったら搾乳機で搾らないとならないけれど、それでは雌犬でありながら雌牛よ。人間らしさが失われてしまうわ。今は歩き難いし、立ち難いでしょうが、それ程の乳房では本当に歩くのがつらくなるわ。やはり無理でしょう?」

 美奈は少し考えていたが、パッと顔を明るくした。

 「お願いします。どんな大きなオッパイでも、私の子に沢山お乳を上げられるなら。歩く必要なんかありません。誰に私の姿を見せる訳でもないし、それだけ大きなオッパイが母親の証なら、私は自慢出来る身体よ。是非お願いします。」
 「分かりました。美奈の願い通りにしましょうね。」



 「今日は。」
 「ハウーン! アクッ、菊野さん・・・。アッ、アッ、リンク・・・。」

 弥生が尋ねてきた時も美奈はリンクと交尾の最中だった。もう見られての交尾に恥ずかしさはなく、むしろ嬉しく、自慢とも感じていた。弥生は美奈の交尾が一段落する迄、椅子に座って眺めているのだった。

 「ハヒーーーッ!!」

 一際高いアクメの声とともに仰け反る様にして達した美奈はガックリと脱力していた。そしてシーザーも激しい息をしている。まだ二匹は尻で繋がったままで蠢いているのだった。

 「どう? そんなに激しくてはおなかの赤ちゃんに影響はないの?」
 「はあ、はあ・・・。だけどリンクが・・・。自分では大丈夫の・・・様な気が・・・します。」
 「前から言っていたでしょう? リンクが求めても、美奈が拒絶すれば交尾出来ないって。だけど本当に微笑ましい夫婦ね。普通は受精した雌犬は交尾を拒否するし、雄犬も控えるものなのよ。まあ、リンクのスケベさは血統書付きですしね。だけど、美奈は学生でもあるのよ。ちゃんと勉強はしているのでしょうね? 心生学園大学へは推薦入学で入れるけれど、それでも形だけの試験はあるのよ。」
 「はい。時々ですけれど。私が身篭もっているので、リンクが求めてくるのは少し減りましたから。」
 「そうなの? 何だかそうは見えなかったけれど・・・。まあ、美奈は成績は優秀ですから、今の学力なら充分ですけれどね。」

 リンクは美奈と繋がったままで部屋の中を歩き回っている。それは美奈が本当に自分の妻となり、子供を孕んだという事を自慢する様な態度だった。

 「リンク、分かっているわよ。もうすぐおなかが大きく成ってきたら、交尾は控えて貰わないとね。ところで美奈。これからのあなたの事ですけれど、ここに住んで、ずっとリンクだけと暮らしたい? それとも大勢の仲間と・・・。」
 「大勢? 私はもう雌犬ですけれど、それでも一般社会の常識からすると変態です。とても・・・。」
 「違うのよ。あなたは雌犬よ。仲間と言ったら犬よ。それにあなたの子供がたった一匹で居るよりも、他の仔犬と遊べる方がいいでしょう?」
 「それは・・・。」
 「リンクの産まれた北軽伊沢に行かない? あそこにはマーガレットも居るし、リンクの父親も居るわ。そしてあなたには今迄秘密にしていたけれど、リンクの育ての親、母親も居るのよ。」
 「育ての親? ああ、リンクにお乳を上げて育てたという女の方ね?」
 「少し違うの。リンクの父親はシーザーという名前の雄犬ですけれど、その母親はシーザーの奥さんでクレオという名前の雌犬よ。」
 「雌犬? 人間のお乳で育てられたと聞いていますけれど・・・。」
 「そうですよ。美奈、あなたの産む赤ちゃんはどうなの? 人間のお乳を出す雌犬に育てられるのよ。」
 「エエーッ?! じゃあ・・・、私みたいな?」
 「それも少し違うの。美奈は最初は女でしたけれど、クレオは男の子だったの。」

 美奈は頭が混乱してしまっていた。

 「男? お乳って・・・。雌犬?」
 「クレオが雌犬に成った過程は美奈とは全然違うのよ。軽井沢の伯母様は犬好きが高じてクレオの父親、シーザーのお嫁さんを捜していたのだけれど、リンクと同じで、一年中発情したままなの。その為には犬では無理なので、人間を捜したわ。ただ、美奈の様な素質の子は居なかったので、男の子で代用したのよ。」
 「代用って・・・。」



 「美奈、あと一月で産まれる筈ですから、そろそろ軽井沢へ出掛けるわよ。」
 「何だか恥ずかしくて・・・。」

 美奈の腹は人間の場合と異なり、臨月の様に大きくはなかった。僅かに膨らんでいる程度なのだ。

 「このところおなかの中で動いているのが分かるんです。ここで静かに産みたいとも思うのですが・・・。」
 「軽井沢へ行くのは、赤ちゃんの為でもあるし、あなた自身の為でもあるのよ。クレオだってリンクを育て上げたからこそ雌犬と認められたのよ。美奈はクレオに比べて、ずっと不利なのよ。リンクだって巧く仲間と認めて貰えるかどうか・・・。ただ、美奈が本物の雌犬の中で赤ちゃんを産めば、あなたは雌犬と認めて貰えるわ。そうすればリンクだって仲間と認めて貰えるのよ。それとね、シーザーやリンク程ではないけれど、シーザーの血をひく犬も何頭か居るの。あそこのコロニーは全体で一つの家族なのよ。だからそういう雄犬の性の処理も仲間のお仕事よ。」
 「エエーッ? そんな・・・。」
 「クレオだって最初はシーザーしか雌犬と認めなかったから、ずっと一緒だったけれど、雌犬と認められたら他の犬ともしているのよ。それが家族なの。まあ、春から夏に掛けては大変よ。それにあなたの赤ちゃんももし男の子で、大きく成れば、美奈と同じ様にお嫁さんが必要になるのよ。どんなにスケベな犬でも、絶対に母親と、同じ母親から産まれた姉妹とは交尾しないの。あなたはそのお嫁さんの義理の母親よ。みんなが仲良く交尾している姿を見れば、美奈の場合よりは自分の心に素直になれるわ。犬との交尾その物は素晴らしいという事はあなた自身が良く分かっている筈だけれどね。」
 「分かりました。私もリンクの両親にご挨拶したいし、産まれる赤ちゃんを見せて上げたい。」
 「それでは明日よ。車の中での交尾は難しいですから、今晩はたっぷりして上げていいわよ。但し、おなかの赤ちゃんに負担が掛からない様にね。」

 弥生が部屋を出て行き、美奈はリンクに擦り寄っていった。リンクは美奈の腹を嘗め上げ、嬉しそうに尻尾を振っている。美奈が尻をリンクに向けると、リンクはちょっと戸惑った様な顔をしていた。普通の雌犬であれば子供を孕めば発情は治まってしまうのだ。雄犬も身重の雌に対しては交尾をしようとはしない。リンクの場合は年中発情しているとはいえ、余程の事がない限り、交尾を我慢するのだ。それが美奈から求めてくるという事に驚いていたのだ。しかし暫く我慢していたので喜んで美奈の上に覆い被さるのだった。

 (俺はスケベだ。だけどお前は孕んでいるのだろう? いいのか?)

 おずおずとペニスを填め込んでくる様子が、美奈にも微笑ましく感じるのだった。

 「ああ、リンク、赤ちゃんを心配してくれているのね。以前みたいにいきなりは填め込んでこないのね。私も本当にスケベよ。だけど・・・、リンクが填まり込んでいると凄く嬉しいの。」

 時間の掛かる交尾だったが、美奈には楽しい一時が長くなるだけだった。激しい爆発ではなく、落ち着いた快感が長く続く。そして暫くしてペニスが膨らんでしっかりと噛み合ってからも、後ろ向きになって腰を揺するのにもゆったりとしたピストンだった。リンクは交尾を楽しむという態度だったので、なかなか射精はしない。強い放精が胎児に悪影響を与えてしまう事を知っている様に、ただゆったりと繋がっているのだった。



 「お早よう・・・、あらあら。」

 弥生が部屋に入って来た時、二匹は繋がったまま眠っていたのだ。

 「アッ、お早ようございま・・・アッ。」
 「いいの? 美奈の身体の事は美奈が一番分かっていると思うけれど。」
 「すみません。リンクも私の身体の事を気遣ってくれていて、射精しないで交尾してくれたものですから・・・。」

 リンクも少し照れ臭そうに弥生を見上げていた。

 「だけど、リンクはいいの? 溜まっているでしょうに。」

 そして立ち上がると美奈も引っ張り上げられてしまう。

 「アッ、リンク、出掛けるから・・・。」
 「だから美奈、リンクは何度射精しても抜かせずにいられるのよ。そんなリンクが射精をしないで抜く事が出来る?」
 「そうですね。」
 「お気楽ねえ・・・。まあ、いいでしょう。どうせ車の中は見えなくなっているのですからね。そのまま乗りなさい。」

 美奈はリンクに引っ張られたまま庭に出る。そこには弥生の乗ってきたワゴン車があり、窓はスモークシールドになっている。

 「リンク、乗るのよ。」

 弥生は後ろのドアを開け、二匹を中に入れる。

 「お早よう、美奈、リンク。やっぱり繋がったままだったわね。」

 後部座席には川島達が座って待っていた。

 「はい、出掛けますよ。今の時期は混んでいないからスムーズでしょうけれど、それでも三時間ちょっと掛かるわよ。美奈、あなた達は外から見えないけれど、万が一検問なんかでドアを開けられるかも知れないわ。あなたには平気でも、一般的には異常な事なのよ。その隅に大きなタオルが置いてあるけれど、それで身体を隠すのよ。」
 「アッ、そうですね。そうなんですよね。」

 美奈には不安があるが、それでも不思議な期待で心が弾んでいた。



 「美奈、もう期末試験は終わったわね? どうでした?」
 「ええ、お陰様で。一応体育以外はAでした。」
 「そうね。実技は出来ないものね。だけどいい事よ。持ち上がりとはいえ、来年は大学生よ。その前に卒業式は出られなかったのは残念ね。」
 「いいんです。卒業式は形式だけの事だし、私にはリンクの子の出産の方がずっと大切ですから。」
 「普通の犬の出産時期と外れていますから、それにまだ軽井沢は寒いわ。暫くは家の中だけになるわね。美奈の肌にはあの寒さは無理ね。クレオだって、さすがに今の時期の外出は無理ですものね。」
 「クレオさんでもって?」
 「あの子は雌犬に成って四年かな? ずっと裸で過ごさせていたから、かなり寒さには強くなっているけれど、それでも冬はきついのよ。温かくなってからが一番忙しい季節ですからね。美奈の場合は出産してすぐの時期が発情期のピークですから、それには間に合わないわ。クレオはまだ自分が完全に犬だと言う自覚はないし、多分犬に対しては発情しないから、その時期は大変よ。」
 「大変?」
 「ええ。周りで発情した犬同士が交尾していて、或いは雌犬がリンクを誘うかも知れないけれど、リンクは応じないわね。だから周り中発情している中で、独りぽっちになってしまうわ。美奈、少しつらいでしょうけれど、産後は出来るだけ運動をし、早く身体を整えてね。」
 「はい、頑張ります。」

 車は雪の積もっている軽井沢から、更に奥へ進む。さすがにシーズンオフで、スキー客もこの辺りには殆ど居ない。新雪に新たな轍を残し、目的地へと向かうのだった。

 「さあ、着いたわ。」

 さすがに車の隙間から入り込む風は冷たかった。

 「いらっしゃい。お待ちしておりました。」

 老婦と白衣の医師らしい女性が迎えに出てきた。

 「寒さには慣れていないでしょうね。急いで部屋へ。」
 「はい。」

 弥生は車を降り、後ろのドアを開けた。

 「寒いわよ。すぐに部屋へ。」

 言われる迄もなく、冷たい風が美奈の肌を刺す。しかしリンクと繋がったままなので、なかなか巧く動けず、モタモタしていた。そんな様子を老婦人が見て驚いた声を上げた。

 「まあ、交尾したままで?」
 「そうなのよ、伯母様。さすがシーザーの息子、そしてそのお嫁さんよ。」

 それでも何とか冷たい雪の中を急いで家の中へ走り込むのだった。

 「ワォン!」
 「ワン!」

 奥から嬉しそうな犬の声がして、リンクもそれに反応した。
 リンクは小走りに走ろうとするので、美奈は強く引っ張られ、慌てて合わせて動くのだった。

 「あらーっ、この雌犬もしっかり躾けられているわね。」
 「アッ、すみません。ご挨拶も出来なくて・・・。リンク、待って。」

 新たな人間に交尾を見られる事が恥ずかしくない事が美奈にも驚きだったし、それ以上に美奈の変態交尾を違和感無く受け入れてくれる事の方が驚きだった。そして更に美奈を驚かせたのは、リンクの父親のシーザーらしい犬がやはり女と繋がって、引っ張りながら寄ってきたのだった。

 (まあっ・・・。あの方がクレオさん? 若いし、凄い身体・・・。)

 互いに相手の姿を見て、幾分照れ臭そうにしている。そしてリンクとシーザーは互いに顔を嘗め合って親子の情を交わしているのだった。

 「アッ、初めまして。私リンクさんの妻の美奈です。」
 「ワゥン!」

 クレオもお辞儀をしながら小さく吠えた。

 「エッ?」
 「ああ、美奈。クレオは喋れないのよ。吠えるだけ。最初の内はハウラーギャクで喋れなくされていたのだけれど、外れた今も、大量の女性ホルモンの副作用で喋れなくなっているのよ。」
 「あのう・・・。」

 美奈はクレオの乳房と、シーザーとの結合部を覗きながら尋ねた。

 「クレオさんは男の子だったって聞いていますけれど・・・。」
 「そうよ。だから大量の女性ホルモンを注射されたのよ。子宮迄出来たのよ。だけどさすがに卵巣は不可能ね。」
 「私と違って、シッポは着けていないのですね?」
 「そうよ。クレオは最初は男の子でしたから、シーザーとの交尾はお尻の穴でしていたの。今は膣も出来ているからちゃんとした交尾が出来ますけれど、最初の内の習慣で、今でもシーザーはオシッコをクレオの中にするの。だからシッポは着けられないのよ。」

 美奈は驚きの目でクレオを見つめていたが、クレオも照れ臭そうにしながらも美奈の身体を見回していた。そして老婦人が声を掛けた。

 「クレオはリンクの後も、何頭かの仔犬を育てたわ。見ての通り、オッパイは凄く大きいので、沢山のお乳が出せるの。だけど、育ての親には成れても、実の母親には成れないのよ。そこに美奈の話を聞いて、凄く羨ましがっていたの。自分でも赤ちゃんを産みたいって。だから美奈が無事に赤ちゃんを産んだら、自分にもと願っていたのよ。」
 「だから菊野先生にも来て頂いて、この春にもクレオに妊娠させて貰うお手伝いをして貰うつもり。」
 「そうですか。アフッ!」
 「どうしたの?」
 「リンクのが・・・。」

 リンクはずっと射精を我慢していたのだった。そして車で揺られ、やっと目的地に着き、両親に会った途端に緊張が解けた為か、強い発情を起こしてしまったのだ。

 「あらあら・・・。」

 大勢の女性達に見られたまま、美奈達は尻を揺すり始めてしまうのだった。



 やっとリンクが満足の射精を済ませるのに一時間以上掛かっていた。それでもペニスは膨らませたままで繋がっていた。美奈は荒い息をしたまま伏せていた。その間に何頭もの犬が二匹の周りを取り囲んでいた。女性達は椅子に座ってお茶を飲みながら、その様子を楽しそうに見ていた。

 「どうかしら、他の犬達は美奈を雌犬と認めているのかしらね?」
 「そうねえ、マーガレットだけは確実なのだけれど。」

 以前美奈と会った事のあるマーガレットは美奈の顔を優しく嘗めていた。それは他の犬達にも美奈を雌犬と認めさせる事となる。人間の姿であっても、クレオで慣れている犬達には当然であった。そして交尾中も、終えてからでも繋がったままの姿は雌犬以外の何者でもなかった。

 「リンクは少し不安なのよ。美奈は自分の物という意識はあるでしょうけれど、誰か別の雄犬に交尾されてしまう事を心配しているのよ。自分が発情しているから、他の犬が発情期でない事に気が付かないのね。」
 「という事は・・・。リンクも自分が犬である事を認識している訳?」
 「そういう事になるわね。だけどリンクにとっては美奈は雌犬よ。人間ではないのよ。だとすると、巧くこの犬の群に溶け込めるかも。」
 「それならいい事だわ。やっぱり犬でも、両親や仲間と一緒に暮らすのが一番なのだから。」
 「不思議ね。人間だった美奈と結ばれて、やっと自分が犬である事を認識するのですから。」
 「川島さん、この具合からすると、以前申し上げたコロニーが作れるかも・・・。」
 「本当? 私なら宜しいですよ。確かに最初はクレオの時にも、シーザーの為とはいえ、獣姦させて迄犬を守ろうと言う意識でした。それがその後のクレオ達や、今こうしてリンク達を見ていると、犬だけでなく、雌犬に成った人間も凄く幸せそう。犬の気持ちは分かりますが、やはり雌犬程には意志が通じません。私は人間嫌いと言うよりも、新たな人間関係が嫌いなの。だけど雌犬であればそんな事はないわ。リンクの子供にしても、クレオが産みたいという子にしても、菊野さんのおっしゃる通りに人間相手にしか発情しないでしょうね。だとしたらこの美奈さんみたいな獣姦趣味のある子を連れてきて頂ければ・・・。話の出来る雌犬は大勢居た方が楽しいしね。」
 「分かっています。美奈はまだ沢山の子供を産むつもりらしいの。クレオだって成功すればきっとね。そうなるとシーザーの血をひく子が沢山育つ事になりますね。出来るだけ精子の確認をして雄犬だけが産まれる様にしましょう。そうなると、本当の雄犬と、クレオや美奈の様な変態雌犬だけのコロニーになりますよ。」

 荒い息をしていた美奈が口を挟んできた。

 「菊野さん。」
 「なあに、美奈?」
 「本当ですか?」
 「コロニーの事? そうしたいと思うわ。」
 「是非お願いします。」
 「そうね。美奈にとっても自分の子供にお嫁さんが欲しいでしょうからね。」
 「それもありますが、犬との交尾って凄いんです。私の場合は偶然でしたけれど、クレオさんの場合は無理矢理だそうですよね? だけど交尾をしてその素晴らしさが分かったの。もうリンクとの交尾をやめる事は出来ないわ。それ程素晴らしいのに、その素晴らしさはクレオさんと私だけしか知らないのよ。こんな素晴らしい交尾は大勢で楽しみたいわ。みんなにもその良さを教えて上げたい。」
 「そうよね。美奈が言うのだから間違いないわ。美奈やクレオの場合は倫理に反しているという意識があったから、なかなか雌犬に成りきれなかったわ。だけど、あなた達の交尾を見せ付けておけば、すんなりと雌犬に成ろうとするかも知れないわね。」
 「そうです。だから私からもお願いします。」
 「分かったわ。だけどその為にも元気な赤ちゃんを産む事よ。」
 「はい。頑張ります。」

 美奈は心の底から雌犬であった。



 三月になり、来た軽井沢にも春の息吹が訪れる。まだ残雪は多いが、それでも陽の光はいかにも春であった。

 「美奈、そろそろ?」
 「ええ、赤ちゃんが下りてきて・・・。」
 「人間の赤ん坊と違い、犬の子は小さいのよ。そして一匹だけですからね。川島さん、お婆さん達を呼んできて。」
 「はい。」
 「アッ、リンクも。それと雌犬も全部集めて。」
 「雌犬も?」
 「そうよ。美奈が犬の赤ちゃんを産むところ見せれば、どの犬も美奈が犬だと認めるわ。」
 「分かりました。」

 留美子が走り去った。

 「カオルさん、準備はいい?」
 「ええ、お湯は用意してあります。新しいタオルも。」

 バタバタと足音がし、老婦が入ってきた。そしてシーザーもクレオと繋がり、引っ張ってくる。それからゾロゾロと犬達が留美子と一緒に入ってきた。そしてリンクは心配そうに美奈の枕元に来た。

 「人間の犬のお産は私も初めてだから良く分からないわ。美奈、産まれそうなら四つん這いになって。」
 「四つん這いですか?」
 「そうよ。犬のお産はうつ伏せなの。そういう産み方でないと犬らしくはないわ。」

 美奈はゆっくりと起き上がった。腹部は人間の赤ん坊とは異なり、それ程の膨らみはしていない。

 「この方がビデオ撮影も巧くいきますからね。」
 「分かりました。私は雌犬ですから。ウッ・・・、下りる・・・。」

 四つん這いの美奈の膣口が少し拡がり、破水らしい水が流れ出してきた。

 (私がリンクの子を産む・・・。そうよ、私が産むのよ。アアッ、私の赤ちゃん、早く産まれて!)
 「出るわ。カオルさん!」
 「はいっ!」

 室内に緊張が走る。どの犬も美奈の股間をジッと見つめていた。

 「アウッ・・・!」

 美奈の息む声と同時に膣口がブワッと拡がり、ヌルッとした塊が顔を出した。それを弥生とカオルが掴み、グッと引き出す。

 「ググッ・・・。」

 茶色の塊が引っ張り出され、すぐにカオルはタオルで擦り、産湯につけるのだった。弥生はまだ拡がっている膣口をガーゼで拭いながら後処置を始める。

 「美奈、大丈夫?」
 「赤ちゃんは?」

 カオルが大きな声で叫んだ。

 「大丈夫よ。元気な男の子!」
 (私が産んだ・・・。リンクとの愛の結晶。やったわ。とうとう私は本物の雌犬に成れた。)

 産湯で洗われ、タオルにくるまれた仔犬が美奈に渡された。

 「私の赤ちゃん・・・。」

 まだしっとりとしていて、プルプル震えている仔犬の顔を見ようとする美奈だったが、どうしても涙で霞んでしまうのだった。

 「ワォン!」

 リンクが覗き込み、仔犬の顔を嘗める。尻尾を一杯に振っている。それはリンクだけではなかった。大勢の犬達が一斉に美奈を取り囲むのだった。美奈にはどの犬も微笑んでいる様に見えるのだった。そして初めて自分の乳房に仔犬の口を宛てがう。小さい口が乳首を喰わえた途端、美奈は全身に電気が走った。交尾の時の快感とは全く異質の喜びに包まれたのだった。

 (私の子よ。私が産んだ子。坊や・・・。)

 弥生が美奈の心を砕いた時の催眠術の時、幸福の象徴として見せられたシーンがまざまざと甦った。それは既に催眠術の影響ではなかった。美奈の本当の心としての喜びだった。
 沢山の犬と女達、全員が美奈の幸せの絶頂を共有していた。そしてクレオも羨ましそうにしながら涙を流していた。自分も仔犬を産む事が出来るかも知れないという期待とともに。


・・・・・完・・・・・




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