ポーンという軽い音のチャイムが響いた。

 「あ、ママね。」

 メイがドアロックを外すと、メイの母親というにはちょっと若い感じの女性が入ってきた。キクノジューンは確かにメイと良く似ているが、ちょっと歳の離れた姉という感じだった。そして身体付きもメイと同様、かなりのグラマラスな成熟した女性であった。

 「お疲れ様。と言っても、とんでもないトラブルを・・・。」
 「ごめんなさい。私ももう少し注意していれば良かったのだけれど・・・。」
 「起こしてしまった事故をどうこう言っていても仕方ないわ。それでそのトラブルの主は?」

 メイはショウの収まっているケースを部屋の中央に引っ張り出し、仰向け状態に倒した。そしてケースの真ん中の3分の1だけを開かれた。手足は拘束されたままで、素っ裸の胴体部分だけが露出させられる。

 「あ、ごめんなさい・・・。」

 ショウは恥ずかしいながらも、まずは謝罪するしかなかった。しかし女社長はショウを全く無視し、露わになった乳房を撫で上げながら、下腹部を僅かに覆っている部分を外し、更に内部に挿入されているディルドーを無造作に引き抜いた。

 「何だ・・・。まだこんな程度なの? これではロジャーさんだって不満足でしょうし、火星での入管をパスさせる程度にするには、まだまだ大変よ。」
 「ウーン、さすがにいきなり女性化するとなると・・・。それに道具もそれ程揃っていなかったし・・・。」
 「器具の不足は仕方がないにしても、下準備はもっとできたでしょう。大体、あなた達はこの子をあまりにも人間扱いしてるわよ。」
 「だって・・・、密航者とはいえ、一応・・・。」
 「何を言っているのですか。ロジャーさんの妻に偽装するとはいえ、この子はあくまでもロジャーさんのセックス処理の道具なのですよ。本来なら有無を言わせず、すぐに女性化手術を施してしまい、セックスアンドロイド並みの性能にしてしまいたいところですが、それだと入管をパスするだけという条件が満たせないから、仕方なしに面倒な方法を執っているのに。この子が心底女性に成りたいと思っているならとにかく、時間が掛かったにしても元に戻せるという可逆改造処置しかできないのですから。」

 ジューンは立ち上がってヘッドセットを通して誰かと通話を始めた。

 「あ、私。予想よりも遅れているわ。積荷の一部変更よ。それで・・・。」

 ショウには分からない記号や数字の羅列で色々と指示をしている。それでも器具や薬品類の変更をしているらしい事だけは分かった。

 「それでよろしくね。あ、そうだわ。そこにショコたん・・・、ロジャーさん用のセクサロイドのデータ。外見の映像データだけでいいわ。それを送って。ううん、比較対照させるだけですから、細かいデータは不要よ。はい、受け取ったわ。それでは急いで準備よろしく。」


 ジューンはメイに向かって叱り付けた。

 「いいこと? 確認させて上げるわ。あなたは以前のセクサロイドの形態しか知らないと思うけれど、今の状態はこうなのよ。」

 小さなボックスを部屋の中央に向け、スイッチを押す。すると空間にメイド服の女性像が現れた。3D映像なのだが、かなり高精細度で、まるでそこに本物の女性が・・・。と言うには、あまりにもデフォルメされている姿だった。

 (エッ、これがロジャーさんのセクサロイドのショコたん? ウエストが嘘みたいに細くて、何よりもとんでもないオッパイ・・・。)

 顔付きは確かに高級セックスアンドロイドらしい顔であり、それはショウが被せられているスキンと似ている。しかしそれ以外は全く想像と違っていた。

 「どう? これがロジャーさんのお人形さんなのよ。こういう嗜好の人の奥さんになろうという人がこんな程度では入管をすんなり通れると思う? 月の場合はまだ整形を始めたばかりという事でかろうじて通るかもしれないけれど、火星では絶対に無理よ。相当きつい改造整形でも私でも絶対に・・・って言う程の自信はないのよ。」 

 メイは少しふて腐れた表情で、

 「それは分かっていましたけど、不可逆改造だと・・・。」
 「甘いのよ! 会社としての命も掛かっているのよ。」

 きつい言葉を発し、険しい顔だった女だったが、ホッとため息をついた。

 「と言っても無理だったのは分かるわ。うちでの改造や性転換処置は、あるいはセックス奴隷みたいに人権無視であっても被改造者の幸せになる事を目標にしますからね・・・。少なくとも素晴らしい快感を受ける肉体にして上げて、自由を失うような事であっても改造されて良かったと思えるようにしてますから。」
 「それで・・・、どうすればいいの?」
 「火星迄にはある程度処置しますが、まだまだ不充分なのは仕方ないわ。それだと多分暫定的な認証しか得られないと思うの。それでも火星から月へ戻る間には何とかなるから、ここで最終処置をすると言う事にすれば、地球での入管を通る事ができると思うわ。要は無事に地球に戻るという事が肝腎なのですから。その為には最終処置に使うと言う事にして、この子の幹細胞から各器官の培養を火星に到着する迄に進めておくの。器官培養中って事にすれば、まず間違いなく性転換手術の準備中って事を納得させられるから。ですからメイは出発迄の間に急いで幹細胞を作るのよ。時間はないわよ。入管審査次第ですが、三日か四日よ。細胞数は少なくていいわ。私が運び込んである設備で増殖させますから。と言っても同時に多数の培養は不可能なのでたくさん作っても意味がないの。確実な幹細胞を作る事が最重要よ。」
 「分かったわ。すぐに始めます。ママ、すぐに研究室に向かいますから、キーロック解除を。」
 「認証権限はメイに移してあるから大丈夫。とにかく急いで。」

 メイは手荷物を抱え、本当にまるで飛ぶかのように部屋を出て行った。



 「こんなに時間的に余裕のない仕事は初めてよ。全くロジャーさんがミスしなければ・・・。ううん、後ろ向きではいけないわ。数百年続いている会社の命運が掛かっているのだから。」

 まだトランクに入れられたままのショウに向かい、

 「分かってますよね。私達は会社組織の命運が、そしてあなたの場合は本当の命が掛かっている事を。もし、あなたが本当に女に成ってロジャーさんのセックス奴隷に成るなら話は簡単なのよ。男に戻りたいと言うから、こんなに面倒な方法を執らなくてはならない。どう? いっその事、オチンチンを切除して本当に女に成ってしまう?」
 「ボ・・・ボクは男で居たいです。」
 「そうよねえ・・・。まあ、ペニスさえあれば、時間が掛かっても元の姿に戻れるけれど、切除してしまえば、それで確定ですからね。とにかく大人しく素直に改造処置を受け入れる事が肝腎よ。私はメイの母で、キクノジューンです。これからの火星往復の一年位はずっと一緒にいる事になるけれど、上手く地球に戻れるかどうかはすべてあなたの態度次第ですからね。」
 「あ・・・、はい。分かってます・・・。キクノさん。」

 ジューンはショウの耳元でささやいた。

 「メイ達に聞いて分かっていると思うけれど、この部屋には監視用のカメラが仕掛けられているわ。本当にロジャーさんと結婚するつもりかどうかを確認する為にね。結婚しようとしている二人なら、それ相応の行動がある筈。分かっていますね?」
 「あ、はい。分かります。」
 「それでは私はまだ準備があるから戻ります。ロジャーさんと・・・宜しくね。」



 「フーッ・・・。つらいな・・・。まさかこんな身体にされてしまうなんて・・・。それにしてもビューアで見せられたセクサロイドって凄まじかった。あれに近い姿にされてしまうのかと思うと・・・。クーッ・・・、お尻が切ない・・・。機械的に動くバイブよりもロジャーさんの方が・・・。あ、今はそう思ってもいいのか。むしろそう思っていた方がいいんだ。早く来てくれないかなあ・・・。」

 部屋の隅に立て掛けられたケースの中で、ジッと待っているショウはただひたすらロジャーを待ちわびていた。

 そして長い時間経過後、部屋のドアが開き、ロジャーの姿を見たショウは歓喜の叫び声を上げた。

 「ロジャーさーーん!!」
 「おう、待たせたな。」
 「お願い。早くここから出して!」
 「待てよ。俺は今まで積み込みの仕事をしてたんだぞ。シャワーくらい浴びさせろ。エアシャワーだからすぐに済む。」
 「待てないよ。早くここから出たい!」
 「仕方ないな・・・。」

 ロジャーはリモコンを操作し、ケースの蓋を開けた。パカッと開いた途端、ショウはポンと飛び出る。まだ月の重力には慣れていないので、ふらつきながらロジャーに駆け寄った。そして股間を指差し、

 「お願い。これも外して・・・。」

 しかしロジャーはショウを軽々と持ち上げ、ベッドに放り投げた。

 「お前は俺のセックスペットなんだぞ。立場をわきまえろ。ほんのちょっと待つだけなんだから。」 

 シャワールームと言ってもエアシャワーなので狭い空間である。そこで強いエアーで身体を清浄化するのだ。その狭い空間にショウも入り込んできて、かがみ込んでパクッとくわえ込む。

 「ワッ、そんなに待ちきれないのかよ。」
 「ン・・・モゴン。」

 呆れたようにロジャーはショウを抱きかかえ、ベッドに向かう。そして填め込まれていたバイブを取り外し、後ろから突立てるのだった。



 ベッドで一緒に寝ている二人。

 「こんな風に寝るのは初めてだな。アフッ・・・。おい、そんなに強く吸うなよ。」

 フェラチオでロジャーのペニスをしゃぶっていたショウが顔を上げ。

 「今度はボクのお食事だよ。いっぱい出してね。」

 ロジャーはかがみ込み、ショウの耳元でささやく。

 「いくら俺達かが結婚を前提にしているって事にするにしても、お前演技過剰だぞ。」
 「あら、演技じゃないよ。ボクはロジャーさんとセックスしなくちゃならなくされているし、食事にもたくさん精液飲ませて貰わなければならなくされているんだよ。」
 「そうか、そうだったな。しかし無理はするな。これだけしていれば充分だと思う。」
 「ち・・・違うよ。本当はお尻がつらいの・・・。お尻が空っぽだと・・・。ロジャーさん、出して貰わなくてもいいから、挿れておいてくれる?」
 「何だよ。それなら挿れてやるよ。だけど挿れるだけでいいのか?」
 「あの・・・、できたら・・・、ちゃんとしたアナルセックスがいい・・・。そしてもっと出して貰えると・・・。」

 ショウは顔を赤らめながらつぶやいた。

 「ハハッ、それなら演技じゃなくやってもいいんだな?」
 「お願いします・・・。」

 ベッドの上で二人は一晩中重なって腰を動かし続けていた。さすがに疲労で二人とも眠りに落ちるのだが、それでも挿入したまま後ろ抱きで挿入したままで眠るのだった。 



 《お早う、ロジャーさん。》

 枕元のモニターが点き、ジューンが声を掛けた。

 「ん? ああ、お早う。」
 《今日は忙しいわよ。ショウの服を持って行きます。》
 「そうか。今日はショウの面接だったな。」
 《ショウは女の衣服の付け方も知らないでしょうし、いかにもロジャーさん好みの服ですから、着付けも難しいのよ。》
 「そうだな。すぐ支度をします。」

 ロジャーは起きて着替えを始めたが、まだショウは軽い寝息を立てていた。

 「こうして見ると、まるで本物の女だな・・・。」

 トントンとドアがノックされた。

 「お早う。手間を掛けます。」
 「いいえ、ショウは?」

 ロジャーはショウを揺り起こした。目を擦りながら目覚めたショウだが、久しぶりの熟睡で、しかも充実した睡眠で爽快な目覚めだった。

 「あ、キクノさん。お早うございます。」
 「はい、早く支度しないと。」
 「アッ、今日は面接だ。」
 「そうよ。分かっていると思うけれど、あなたの答え方一つで無期懲役か無事に地球に戻るかが決まるのよ。」
 「・・・分かってます・・・。」
 「それでは最初はこれを付けて。」
 「エッ・・・?」

 ジューンの取り出した物は二つのディルドーの付いたT字帯だった。

 「何でこんな物を?」
 「ショウ! あなたは今はロジャーさんの何なの? これから女性化して奥さんに成ろうとしているのよ。でも今はまだロジャーさんに気に入られるように、そしてその為に女性器の拡張をしているのよ。肛門の方はロジャーさんとのアナルセックスをひたすら続けていたので、肛門に何も入っていないとつらいからこういうバイブ機能付きの物を挿れて貰っている。そう言う設定なのよ。」
 「あ・・・。」

 ジューンにまくし立てられ、否応なく取り付けられてしまうのだが、確かに空虚な直腸に填り込む事は快感だった。

 「次は服よ。」
 「あのう・・・下着は?」
 「分かっていないのね。あなたに下着は必要ないの。ショーツは常に下腹部の改造と訓練をする為に裸のままなのよ。それにロジャーさんと事を行っていない時はバイブが入っている。ずっとそうだったので、ショーツを穿く習慣もないし、むしろさらけ出していないと不快。そういう状況なのよ。そしてブラにしたって矯正補整下着で乳房は垂れ下がらないから不要。ただ、素っ裸だと法的に問題があるから裸ではないという意味での服なのよ。本当なら裸で居たいという気持ちでいなさい!」
 「あ、はい・・・。分かりました。」

 ジューンはフリルのたくさん付いた、ゴスロリ風の服を着せる。

 「エッ? こんなの?」
 「そう。これがロジャーさんの趣味なのよ。」

 側で見ていたロジャーも笑いながら大きく頷いていた。

 「そして真っ赤なピンヒール・・・。キクノさん。さすがに俺の趣味を心得てますなあ。」
 「それは当然よ。ショコたんの最初の頃の服ですもの。」
 「ウワッ、この服・・・、胸が危ないよ。」
 「まあね。ショコたんよりも小さな胸ですから、ちょっと引っ張るとポロン・・・よ。気を付けなさいね。まあ、ベルトでウエストをしっかり絞るから、そのままでかろうじて胸に引っかかっていますから。」
 「俺の趣味としては、メイド帽かウサ耳も欲しいところだが、さすがにそれで外に出るわけにはいかないっすからね。」

 着付けを済ませたジューンは再度ショウに言い含める。

 「分かっているわね? あなたは今はロジャーさんの肉奴隷として喜んでいる。いつでもフェラチオをしたいし、アナルセックスもして欲しい。だからまだ色情狂とまではいかないけれど、アナルセックスをしていないとつらい。本当は女性化手術ですぐにでも女に成りたいけれど、それでは子供を産める子宮や卵巣が持てない。だから時間が掛かっても、ホルモン投与と矯正スキンでの女性化中。ロジャーさんは巨乳フェチなので、もっとずっと大きい乳房にして貰いたいと思っている。」
 「あ、はい。」

 ショウはその設定をしっかりと反芻していた。

 「覚えるのではダメよ。そうなのだと思い込まなくてはダメ。」

 言われた通りに自分は本当に女に成りたいと思い込むようにした。そうすれば今の変態的な姿にも満足できるし、実際にもアナルセックスをしていないとつらいというのがその通りなので、割りとすんなりと思い込む事ができるのだった。
 それがジューンの錯話だとも気付かずに・・・。



 ホテルの下の階の面接室に行くまで、何人かの滞在客が驚きと好奇の目でショウを見ていた。その恥ずかしさに耐え、部屋に入りホッとする。しかしそこには二人の女性が待っていて、厳しい目でショウを見詰めていた。

 「お座り下さい。」
 「あ、はい。」

 フワッと広がった服で座るのは意外と難しかった。その様子を見ていて、管理官が問い掛ける。

 「この調書によると、あなたは今女性化の途中という事ですが、それにしては女性らしい仕草がないというのはどういう事でしょうか?」
 「そうですね。肉体的女性化の前に精神的に女性になりたいと考えるのが普通ですから、まず仕草が女性らしさが足りないというのは・・・。」

 いきなりの質問にショウはドギマギしてしまった。それでも自分が本当に女に成りたいのだと強く思い込み、何とか口を開いた。

 「あ・・・、その・・・。ボク・・・いえ、私は今、ずっと女性体形にする事と、女性器の成長を促されていて・・・。ずっと裸だったので・・・、こういう服は初めて着せられて・・・。」

 二人の管理官は何かを話し合って更に質問してきた。

 「ずっと裸だったとの事ですが、ロジャーさんがそうしていろとの事なのですか?」
 「あ、はい・・・。あの・・・。」
 「ここでの会話は全て記録されません。自由におはなしして頂き、その心証だけが記録されます。」
 「ボク・・・、いえ、私は・・・。」
 「普段通りにお話しなさい。正直にね。」
 「ありがとうございます・・・。ボク・・・いえ、私・・・じゃなくて・・・ボクでいいですね? ボクはロジャーさんが大好きなんです。確かに最初は男同士だったのだけれど、それでもボクはロジャーさんとずっと一緒に居たいと・・・。でも、ロジャーさんはゲイやホモじゃないのは分かっていました。だからボクがロジャーさんと一緒に居る為にはボクが女に成れば・・・。だけどロジャーさんの女性の好みはその調書にもあると思いますが・・・。で、詰め物でない本物のオッパイにする事と、やがてはロジャーさんとの赤ちゃんも産みたいので・・・、身体の中から女性にならないと・・・。でも、それ迄の間、ロジャーさんを満足させたいので・・・、いつも・・・その・・・できるように・・・って言うよりも、ボクがして欲しいので・・・。だからロジャーさんが『性処理の道具として扱うが、それでもいいか』って・・・。ボクはそれでも嬉しくて・・・。だからいつでもできるように、それとボクの身体が少しずつでもショコたんに近付いていくのを見ていて貰えれば、ボクの本気が伝わるし、愛して貰えると・・・。それでずっと裸でロジャーさんと一緒に居たんです。やっと結婚して貰える事になって・・・、だから嬉しくて、ボクは、今のボクにできる精一杯のご奉仕を・・・。」

 汗をかきながら一気に話した。

 (信じて貰えるだろうか・・・。そうでないとボクは・・・。)

 「それではなぜその様な物を着けているのですか?」
 「その様な・・・物?」
 「あなたのそこに填め込んでいる物よ。」

 管理官はショウの下腹部を指差した。

 「あ・・・、あの・・・、これ・・・。」

 ショウは顔を真っ赤にした。

 「さあ、正直にね。どんな卑猥な事も。まあ、その様な物を着けさせているロジャーさんの事も。」
 「あ、着けさせられているんじゃ・・・ないんです・・・。ぼく、その・・・ロジャーさんとずっと・・・その・・・してるので、・・・何も入ってないと・・・、つらいんです・・・。前の方は・・・まだまだ小さいので・・・、早く大きくする為に・・・。」

 管理官達は笑いあっていた。

 「宜しいでしょう。私どもの心証は白という事で報告します。お幸せにね。」
 「エッ・・・? あっ・・・ありがとうございます。」
 「但し、この調書によると、この先火星迄の間にも女性化手術を続行するらしいですね。キクノ博士の施術ですから確実でしょう。向こうでも聴取されるのですが、そこでも正直にね。心証を害すると疑いをもたれますからね。」

 ショウは管理官達から書類を受け取った。部屋の外で待っていたロジャーにホッとした笑顔で渡した。

 「オッ、通ったか・・・。ホッとしたよ・・・。これをキクノさんに届けないと。部屋に戻るぞ。」
 「うん、渡したらすぐに戻ってきてね。」
 「何だよ、寂しいのか?」

 ショウははにかみながら、

 「ホッとしたら・・・、また寂しくなっちゃって・・・。心も・・・お尻も・・・。」
 「バカヤロ! まあ、いいか。まだ監視されているかもしれないからな。」



 「キクノさん、無事通過ですよ。」

 キクノはその書類をチラッと見て笑っていた。

 「ご苦労様でした・・・。というところなのでしょうが、ロジャーさんには話をしておきますわね。」
 「何すか?」
 「先程の管理官・・・。あれも偽物。」
 「エッ?」
 「入管係員と同じで、演技をして貰ったのよ。勿論部屋に監視カメラがあるというのも嘘。ショウが演技でも女性化を望む意識になって貰うには、ロジャーさんには演技でなく、本当の対応をして貰いたかったからなのです。でも、ショウの様子では心も身体もすっかりロジャーさんに任せきりになっているようですね。これなら火星迄の間に女性化処置を素直に受け入れるでしょう。そうでないと、本番の火星入星面接で失敗してしまいますからね。」
 「何だ・・・、そうだったんすか・・・。でもホッとしましたよ。絶対に火星でのトラブルは困りますからね。」
 「本当はショウが本当にロジャーさんのお嫁さんに成ってくれればいいのですけれどね。」
 「それは・・・。確かにショコたん並みの身体に成ってくれれば、それもいいっすけど、大体ショウ自身が男に戻りたいって事なんすから・・・。」
 「そうですね。まずは火星通関という大きな目標に向かって努力しましょう。」



 「おう、待たせたな。何だよ、もう素っ裸で。」
 「だって・・・、ボク、ずっと裸だったでしょう。服を着ていると・・・、こんな恥ずかしい程露出が多いのに、それでも気持ちが悪いの。」
 「おいおい、それって露出狂の言葉だぞ。まあ、2日後に出発するから、そこから半年は誰も居ないからな。その間はどうせ俺とのセックスかキクノさんによる処置で常に裸で居なくてはならないからな。」
 「ねえ、早く・・・。」

 ロジャーは肩をすくめてショウを抱き上げ、ベッドに向かうのだった。



 「また、このケースで?」
 「仕方ないだろう。お前の体形で既製品の服なんか無いのだから。」

 ショウはセクサロイド運搬用のケースに収まるしかなかった。それでも無事月基地での入管をパスできたという事で、精神的には安定していた。

 駐機場には見慣れたロジャーの船が見つからない。移動していく自動カートの前面窓から見えるはずなのだ。顔は動かせないので、目だけを動かしながら探していたが、近付く船を見てショウは少し驚いた。中型コンテナという事だったのだが、それは大きなドーナツ型のコンテナだった。回転する事により人工重力を発生させる、旅客用の物だった。

 「ワッ・・・、ボクが乗り込んだ為にこんなコンテナを・・・。相当費用がかかってしまうはず・・・。」

 自分のせいで大勢に迷惑を掛けてしまった事を改めて悔やむのだった。



 《ポート、オールグリーン。》
 「ラジャー。テイクオフ。」

 いきなり強いGが来るのだが、さすがに何度か経験している為に落ち着いていられた。

 「現在加速度5G。このままアーススイングポイントまで加速。」

 エンジンの轟音の為にロジャーの声は聞こえないが、操縦席越しに見えるスクリーンに船の現在位置が映し出されている。

 「クーッ、加速が長い・・・。オッパイが・・・、重くてつらい・・・。」

 スクリーン上の船を示す光点が段々と早く移動していくのが分かる。そしてほぼ地球との中間地点まで来た時、
 激しい震動が治まった。メインエンジンがストップしたようだ。ショウは操縦席の後ろに固定されている。ボコッとケースが少しへこむと音が聞こえてきた。船内に空気が充満し、操縦席に居たロジャーとジューンがヘルメットを脱ぐ。

 「キクノさん、居住区へ移動して下さい。」
 「ロジャーさんは?」
 「これから人工重力の為に船を回転させます。慣れていない人は目眩を起こしますから。」
 「ああ、そうなのですか。」
 「大型じゃないんで、結構回転が早いんすよ。だからこいつも一緒に運んでいって下さい。着いたら連絡下さい。それから回転始めます。できるだけ床面に近い場所にいて下さい。重力発生し始めた時、天井に近い所に居ると床面に落ちますから。まあ、最初はゆっくりですから、激突ってわけじゃないっすけど。」
 「分かりました。気を付けます。」

 ジューンはショウの入っているケースを浮かし、押すようにして操縦室を出て行った。
 円周部の狭い通路をくぐるようにして進むと比較的広いスペースに出る。その外周部に近い所にショウのケースを固定し、ジューンは取っ手を掴んで位置を確保した。

 「ロジャーさん。OKです。」
 《了解。回転始めます。》

 大きく回転し始めたらしく、ギシギシと音が響く。回転しているという感覚はないのだが、段々と体重を感じるようになった。

 「少し重力を感じ始めました。」
 《現在0.1G。・・・0.2G。・・・0.25G。安定させます。》

 ショウはケースの中からジューンに問い掛けた。

 「キクノさん。この程度なのですか?」
 「ああ、火星に行く場合、旅客用だと0.4G程度なのですが、これは中型コンテナなのでそこ迄上げるにはかなりの回転速度になってしまうのです。」
 「ボクのせいで燃料も節約しないとならないですしね。」
 「あら、それとは無関係よ。回転が安定すれば、ほとんど噴射は必要ないわ。着陸前に回転を止める時に逆噴射で使うだけですから。火星の重力は地球の半分。ですから旅行客に到着時の重力変化のストレスを減らす為に設定されているのですから。」

 ショウは小さな窓から見えている恒星が勢い良く流れているのを見ながら感心していた。

 《間もなく地球最接近。通過後姿勢変更します。その時は横Gが発生するので、体勢確保。》


 窓の外に地球が見え始めた。回転が速く、見える時は一瞬だった。そして横Gが掛り始めるが、ケースに収まっているショウにとってはさほどのGではなかった。


 「お疲れ様。」

 ロジャーがキャビンに入ってきた。

 「慣性飛行に移りましたから、当分仕事は無しです。」
 「それで到着予定は?」
 「予定では168日12時間です。まあ、俺の飛行にしてはのんびりしてますから。」
 「そうでしょうね。純粋に貨物だけだったらもっと加速できたでしょうから。」
 「それでも良かったすよ。月で1週間出発が遅れたら、星位置の関係で更に80日余計に掛かるんすから。」
 「でも私にとっては時間は足りない程ですよ。すぐに準備します。」

 ジューンは手すりを伝うようにして次のキャビンへと歩いていった。

 「ショウを出して、済みましたら処置室のキャビンへ運んで下さいね。」
 「了解。」


 「おう、待たせたな。」
 「ロジャーさん、早く・・・。」

 待ちかねていたショウはロジャーの宇宙服のジッパーを開き、もどかしそうに逸物を引っ張り出す。そして呆れ顔のロジャーの物をいきなりしゃぶり始めた。

 「やっぱり演技じゃなかったのかよ・・・。ほれ、むこう向け。」
 「あっ、こっちに?」

 ショウは嬉々として尻を向け、壁に手を付いた。二穴T字帯を外して貰い、すぐに喘ぎ声を上げ始めるのだった。

 (こいつ・・・本当に男に戻りたいと思っているのかな? まだまだ膣は小さいが、キクノさんの手術でちゃんとなった場合、どうなんだろう・・・。俺も変な気分なんだよな。確かにショコたんに比べたらセックステクニックは勿論、道具その物も遙かに下なのに、なんか・・・可愛いと思ってしまうんだよな・・・。もし・・・偽装が偽装でなくなったら・・・。いや、やっぱりこいつは男だし、結婚するなら本物の女でないとな。何も性転換した男では・・・。)

 ロジャーは誰も見ていないのに照れている事を不思議に思い、それを振り切るかのように腰の動きを大きくするのだった。



 「はい、ショウ。すぐ始めるわよ。」
 「すみません・・・。」

 ショウは内診台に上がり、足を開いた。ジューンは胃カメラのような物を膣に挿入し、モニターを見ながらコントロールする。
 恥ずかしい格好なのだが、ジューンの事務的とも言えるテキパキした動きに、医者に診察して貰っているような気分だった。

 「キクノさん・・・、どうなんでしょう?」
 「どう・・・とは?」
 「ロジャーさんがそっちでセックスできるようになるのは・・・。」
 「あら、したいの?」
 「あ、そうじゃなくて・・・、どうせロジャーさんとするなら、ロジャーさんが喜んでくれた方が・・・。」
 「手術で膣形成をするのであれば一週間でも可能だけれど、それだと完全に男性器切除が必要ですし、膣粘膜ができないので、完全な膣にはなりにくいわ。」
 「そうですか・・・。どっちにしてもダメなのか・・・。」

 ショウのつぶやきを聞き、ジューンは笑顔を堪える為にそっぽを向くのだった。

 「それでも早いに越した事はないわ。ホルモンジェルを増やし、膣拡張機も太くします。少しつらいけれど、我慢しなさい。」

 少し太い拡張機が挿入される。微震動しながら押し込まれる感覚は不快感をもたらす。本来空洞のない部分に押し込まれる感覚がつらかった。しかも強い圧迫感になり、痛みと言うよりも嫌悪感と汚辱感でつらかった。

 (ツツッ・・・。お尻と違って、内臓に何かを差し込まれたみたいで、気持ち悪い・・・。グッ、太くなるのか・・・。)



 火星行き貨物船の場合、パイロットの仕事は離着陸の時以外はほとんど仕事がない。イレギュラーに隕石との遭遇があるが、それもある程度事前に警報が鳴り、レーザーで除去できる。
 だから惑星間飛行をするパイロットにとってはその数ヶ月は退屈この上ない期間なのだ。ロジャーのように性欲の強い男にはセクサロイドは必需品だった。単なる性処理人形では飽きられるので、会話の機能は絶対に必要なのだ。しかしそれでも生身の人間でない悲しさで、慣れてくると反応も分かってしまう。やはり人間との違いの限界を感じてしまう。それが今のロジャーのように結婚や家族を望むようになってくるのだ。パイロットの年齢制限というのはない。しかし30代で引退してしまう人が多い。それでも50代後半以降の臨時パイロットが多いのも事実で、それは生活が安定し、家族が独立した後に再び宇宙へ挑みたくなるからなのだ。それも夫婦での搭乗が多くなるのだ。ロジャーの夢もそうだった。

 操縦席に座っていたロジャーはショウが施術中であるので、のんびりと休憩していた。そしていつの間にか眠りに落ちていた。


 【パパ・・・、おかえり・・・なちゃい。】
 【おう、ちょっと見ない間に随分大きく成ったな。】
 【お帰りなさい。お仕事ご苦労様でした。】

 ロジャーは愛娘を抱き上げた。

 【パパはお疲れなのよ。明日はみんなで遊園地に行くわ。早くお休みしましょうね。】
 【はーい。パパ・・・、おやちゅみ。】

 【お仕事どうでした?】
 【今はお前と娘が同乗できないからな。当分、月迄の仕事だから、楽なもんさ。それでも半月以上掛かるから、結構つらいぞ。】
 【まあ。あなたがつらいのは・・・。ウフフ・・・。】
 【そうだよ。だから早く。】
 【せっかちね。バスもまだでしょう?】

 ロジャーは妻の衣服を脱がせる。そして服を着ていた時ですらハッキリと目立つ爆乳は剥き出しになるとその凄まじいまでの大きさが分かるのだった。

 【ショコ・・・。愛してる。】
 【私もよ・・・。】

 妻の顔はショウだった・・・。


 「ワッ・・・!」

 ロジャーはいきなり目を覚ました。

 「ウッ、危ない・・・。寸前だった・・・。」

 股間は激しい突き上げをしていた。

 「それにしても・・・なんて夢だ・・・。」



 「あ、ロジャーさん。」
 「キクノさん、どんな具合ですか?」
 「今はまだ本格的な拡張スタートしたばかりです。申し訳ないですが、半日はこのままですので・・・。」

 ショウはロジャーの様子で分かっていた。

 「ショウ、どうだ?」
 「ロジャーさん、ごめんね。」
 「それはいい。何だかつらそうだが。」
 「う・・・、うん。内蔵の中を突き込まれているようで・・・。ロジャーさん・・・、お願い・・・。飲ませて貰える?」
 「無理するな。」
 「ううん、飲めば気分が楽になりそうだから・・・。」
 「そうか。」

 ショウがロジャーの催しを知っての事だと思うのだが、その優しさを感じてしまうとますます愛おしく感じてしまった。



 「フーッ、ずっと圧力が掛かったままで、つらい・・・。ジェルがずっと送り込まれているのも分かる。この上の方のつらさは人工子宮の部分なのかな。触った感じではスキンのせいで分からないけれど、内蔵が押し上げられているような・・・。」

 そしてショウも固定されたままジッとしていて、いつの間にか眠っていた。


 【パパ・・・、おかえり・・・なちゃい。】
 【おう、ちょっと見ない間に随分大きく成ったな。】
 【お帰りなさい。お仕事ご苦労様でした。】

 ロジャーは愛娘を抱き上げた。

 【パパはお疲れなのよ。明日はみんなで遊園地に行くわ。早くお休みしましょうね。】
 【はーい。パパ・・・、おやちゅみ。】

 【お仕事どうでした?】
 【今はお前と娘が同乗できないからな。当分、月迄の仕事だから、楽なもんさ。それでも半月以上掛かるから、結構つらいぞ。】
 【まあ。あなたがつらいのは・・・。ウフフ・・・。】
 【そうだよ。だから早く。】
 【せっかちね。バスもまだでしょう?】

 ロジャーに衣服を脱がされる。そして服を着ていた時ですらハッキリと目立つ爆乳が剥き出しにされるとその凄まじいまでの大きさが分かるのだった。

 【ショコ・・・。愛してる。】
 【私もよ・・・。】

 ベッドの脇にある鏡に映っている女性の顔は今のショウの顔だった。


 「ワッ・・・。イテテ・・・。」

 急に目覚めたショウは膣に圧力を掛けてしまい、強い異物感を感じた。

 「フーッ、楽にしていないと痛みが・・・。それにしてもなんて夢を・・・。」



 《ママ、どんな状況? あ、今、大丈夫かしら?》

 月からのメイの定時連絡だった。

 「今はいいわよ。二人とも睡眠中。」
 《データ送ります。》
 「はい、受け取ったわ。」
 《それで分かると思うけれど、K11が膣粘膜組織として最適。B301は子宮頸部。D02が子宮壁ね。》
 「なるほど。それで卵巣と輸卵管は?」
 《それも順調に培養中です。》
 「発送の方も大丈夫かしら?」
 《培養完了したら、特急便で送りますから、ママが到着した3日後に着くわね。》
 「分かったわ。こちらでのセットの時間からもちょうどいいわ。」
 《それで睡眠学習の方は?》
 「勿論抜かりはありませんよ。戻る時は・・・。ウフフ。地球での準備も宜しくね。」
 《はい。分かっています。それじゃ。》

 モニターが消えたが、それでもジューンにはまだメイのはしゃぎ振りが感じられていた。



 毎日・・・と言っても船の中では時間は無意味なのだが、一番時間経過を気にしていたのはショウだった。目覚めにロジャーとのアナルセックスをした後はすぐにジューンによる処置をされ、長時間肉体的につらい状況におかれる。そしてやっとロジャーと愛し合った後も処置をされたまま眠りにつくというサイクルだった。
 寝ている時はいつも夢を見る。楽しい夢とつらい夢を。


 【バカヤロー! 何をノロノロやってるんだ!】
 【あ、はい・・・。】

 年をとったショウがどこかの作業場で荷物を運んでいる。姿形はすっかり男だったが、やつれてやせ細っている。

 【長い時間掛けて男に戻ったのに、ボクは男としては非力だったんだよなあ・・・。家族もなく、その日暮らし・・・。ああ、今日は珍しく星が綺麗だ・・・。あれは火星か・・・。懐かしいなあ・・・。】

 そのショウはブルブル震えていた。

 【寒い・・・。空腹のせいもあるが、心が寒い・・・。】


 ハッとして目覚めたショウは顔を伝っている涙に気付いた。

 「なんて・・・。夢なんだぞ。だけど・・・。」



 「イテテ・・・、ウッ・・・、キクノさん。」
 「あら、やっと痛みが出てきたのね。」
 「胸とかおなかが・・・。それとおなかの中も・・・。」
 「スキンの収縮で強く圧迫されているからよ。ホルモンで体形変化させないとね。」

 超音波注射器を取り出してきたジューンだが、何か思い付いたというような顔をした。

 「そうだわ・・・。ロジャーさん。」
 《ほい、何でしょう?》
 「ちょっとご相談があるので。」

 すぐにロジャーが処置室に顔を出した。

 「やっとスキン収縮により女性体形に近付いてきたのですが、女性ホルモンの超音波注射を予定していました。それだと予定通りに火星到着前で何とか入管審査をなんとかパスできる程度です。それでもまだショウはスキンの体形になる為には地球へ戻る途中までは着用していなくてはならないのです。」
 「そうっすね。そういう予定でしたよね。」
 「ただそれだと結構ショウはつらい時間を長く過ごさなくてはならないわ。それなら麻酔を掛けて集中的に処置すればショウのつらい時間は短いわ。ただ・・・。」
 「何なんすか?」
 「集中処置を一週間続け、そして二日間覚醒。そして再び一週間・・・の繰り返しだと火星到着一ヶ月前には完了するの。そして一番良い点は、スキンを脱げれば人工膣細胞、子宮細胞の移植ができるのよ。その移植さえしてしまえば、完璧に入管審査は通るのよ。」
 「ホーッ、それはいいすね。でも相談・・・てのは?」

 ショウも痛みを堪えながら話を聞いていた。

 「ショウの方は処置中は意識がないから短時間で処置が終わる感覚でしょうけれど、ロジャーさんの方は一週間はできないって事。」
 「アアッ・・・、そいつは・・・。」

 ショウの方を見詰めながら困った様子だった。しかし、

 「いいっすよ。一週間我慢して、うんと濃いのを二日間ぶっ込んでやる。そして空っぽになるまで出し切って、次の一週間を待ちますよ。それに擬似でも膣ができれば、本当にショコの代わりになるって事ですし。」
 「いいのね。その方が私としても楽ですからね。それではショウ、少し待ってて下さいね。ロジャーさん、火星便の荷物の中に向こうの研究室に届ける器具があるの。悪いけどそれを出したいのよ。」
 「ワーッ、キクノさんもですか・・・。重量バランスの計算が面倒だ・・・。」

 ショウは申し訳なさそうにお辞儀をしていた。


 透明な筒の中にショウは立たされている。股間にはチューブがつながれ、呼吸用のマスクからも伸びている。

 「いいわね。これからホルモン剤を入れるけれど、ゆったりとしていればいいのよ。」

 とは言え、不安がつきまとう。そして少し粘度の高い液体が足元から上がり始めた。

 「何だか・・・怖い・・・。」

 しかし、麻酔ガスが送られたのか、意識が薄れ始めた時、液体はショウの全身を包み込んでいた。

 「何だか昔のムービーのような形ですね。」
 「まあ、ある意味、培養しているようなものですから。重力が低いというのもいいわね。ホルモンジェルの重量が軽くなっているので、更に圧力を掛けてもこの筒は楽に耐えられるわね。」
 「圧力?」
 「そうですよ。ホルモンジェルを強引に体内に押し込むのですから。特に膣と子宮には更に送り込みます。それでなくても腹部は押さえ付けられているので、麻酔を使わないととても苦痛に耐えられません。子宮の膨張で内臓は押し上げられます。それでウエストを更に細くできるのです。」
 「ほう・・・。」

 液体の筒の中で揺らめいているショウを見詰め、ロジャーは何かを考えていた。ジューンにはその意味が分かっていて、暖かい笑みを浮かべていた。



 「ん・・・。」
 「おい、ショウ。」
 「あ、ロジャーさん。アレッ? やり直し?」
 「寝ぼけるなよ。もう一週間経ったんだよ。」
 「エッ? ちょっとウトウトしたと思ったら目が覚めたので、まだなのかと思った。」
 「それで痛みはどうだ?」

 キクノがバキュームで水滴を吸い取りながら、ウエストに手を宛がった。

 「この付近が痛かったはずだけれど。」
 「ああ、痛みはないです。ウッ・・・、オッパイが随分大きく・・・。」
 「そうか? 俺は毎日見ていたので、大きく成ったと言われても分からんけど。」

 ショウには一週間前の乳房との違いがハッキリ分かっている。

 「それはスキンが少し変形したからよ。体脂肪が吸い寄せられて大きく見えるだけ。それでも本当に大きく成らないとパスしないのよ。」
 「おい、ショウ!」
 「あ、はい? 何か・・・?」
 「何かじゃない。お前にとっては一瞬だったかしれんが、俺には一週間なんだ。早く来い!」
 「あはっ・・・。」

 ロジャーはショウの手を引っ張ってキャビンを移動していく。ニコニコしながら着いていくショウを見ながら、ジューンも微笑んでいた。


 「いいか、お前は2日起きていたら、また一週間あそこに入る。その間眠っているわけだから、2日くらい寝ないでも平気だな。」
 「はい。」

 ショウは嬉しかった。ロジャーが2日間寝ずに頑張るという事だったから。

 もどかしそうに気密服を脱いだロジャーは何の前戯もなしにいきなり押し込んできた。

 「あは〜ん、せっかち・・・。」


 「はうっ・・・。ロジャー・・・、凄い・・・。」

 いきなり大量の精液が大腸に押し込まれた。

 「フーッ、俺が一週間も我慢していたなんてな、無いからな。少しは落ち着いた。」
 「ハーッ、しみ込む・・・。アウッ、元気・・・。」

 ロジャーは続けざまに二回戦に及んでいた。


 「ロジャーさんが高価なセクサロイドを買ったというのが分かる。」

 ロジャーはまだまだ固い逸物を収めたまま、後ろからショウの乳房を撫でている。

 「そうだよ。俺はかなり性欲が強いからな。その俺がセクサロイドを月に残したまま飛んでるんだ。お前はその代わりなんだからな。」
 「ごめんなさい。ボクが生き残る為にもロジャーさんに奉仕しないと。」

 (これがショコたんと違う点なんだよなあ。あいつは定型的な受け答えしかしない。セクサロイドだから仕方がないが・・・。まずいなあ・・・。俺、本当にショウが可愛い女としか思えなくなってきてる。)



 「ロジャー、ショウ。」

 「ん?」

 ロジャーは目を擦りながら起き上がった。

 「ほら、ショウも起きなさい。時間よ。」

 「ああ、そうか・・・。ほれ、ショウ。起きろ!」

 ショウもやっと目を覚ました。そして培養筒に入れられ一週間眠りにつくのだった。



 ショウの意識では目覚めている間はずっとロジャーとつながっていた。ロジャーとしてはジリジリしながら待ち、一気に放出するので、ショウにとっては激しいアナルセックスをひたすら続けられている感覚だった。

 「ウワッ、また大きく成ってる・・・。」
 「ウーン・・・。確かにでかく成ってはいるな。ショコよりも背が低いから、同じ大きさでもずっとでかく感じる。」
 「ショウ。どこか痛む?」
 「いいえ、今のところは・・・。」
 「膣も?」
 「ああ、前回までは強い圧迫感があったんですけど、今度は随分楽です。」
 「それは良かったわ。ロジャーさん、ショウの膣はスキン通りの形になったという事よ。」
 「エッ・・・!」
 「スキンを脱ぐのは次回でしょうね。それでも前も使える大きさに成ったという事よ。」
 「おう!! じゃ、いいんすか?」

 ショウは少し複雑な気分だった。

 (ボクにオマンコができたって事はロジャーさんに喜んで貰える。だけど一段と女性化してしまったって事だし・・・。前だったら凄くイヤな事だったはずだ。だけど今のボクは喜んでる。ボクは地球に戻ったら男に成るんじゃなかったのか。・・・あ、違う。戻るんだ。あ、これも違う。ボクは早く女に成って、ロジャーさんのお嫁さんになるという事を望んでいる事にしないとならなかったんだ。だったら今のボクはどう考えればいいのかな? そうだ。ロジャーさんを悦ばせる事が最優先なんだ。)


 「それじゃ、いいな?」
 「うん・・・。」

 緊張した二人はベッドの上で向かい合って座っていた。そしてショウは目を瞑って静かに仰向けに寝る。ロジャーもいつものようにいきなりというのではなく、隣に横になり、ショウをゆっくり抱き寄せる。そして全身を撫でる。

 「ハウッ・・・。」

 乳首が突き立ってくる。そして下腹部に触れられた時、頭の中にスパークが走った。今迄もアナルセックスの時に何度も触れられていたのに、全く違う感覚だった。全身が痺れ、身体が宙に舞うような感覚にショウはロジャーに抱きついていた。
 ロジャーがショウの上になり、足の間に入ってくる。そして・・・・・。


 「ヒアーーーーーーッ・・・!!!」

 (な・・・、何・・・これ・・・? 怖い・・・。飛んでる・・・? 回ってる・・・。キャーーーッ!! 目が・・・回る・・・。墜ちる・・・!! アアーーーッ!!)


 別のキャビンにも聞こえてくるショウの悲鳴にジューンはクスクス笑いをしていた。

 「思った以上の効果ね。ひょっとしたら催淫剤や興奮剤を使わなくても良かったかも。これでショウは・・・。ウフフ・・・。」



 初めての女性としてのセックスにショウは意識が飛んでいた。いつ迄も涙が流れ続けている。

 (これ・・・が、セックス・・・? 動けない・・・。ううん、動こうとする気力も力もない・・・。凄かった・・・。ああ・・・、まだロジャーさんのが入ってる・・・。脈を打っている。動いていないのに・・・気持ちいい・・・。これが、セックス・・・。)

 そしてロジャーもショウに覆い被さったままだった。

 (確かに偽物の膣でのセックスだったはずだ。ショコとのように完璧なセックスではなかったのに・・・。どっちも偽物なのだから、ショコの方がいいはずなのに・・・。この愛おしさは何なのだ・・・? ショウは地球に戻ったら男に戻るんだ・・・。そしたら俺は・・・。クソッ・・・!! 俺は・・・。)

 ロジャーの意識としては地球に戻るまでの数ヶ月しか楽しめないという事を残念に思うのだが、それでも少しずつ、女性としてのショウへの愛情を感じる事がつらかった。どんなに否定しようとしてもすぐに沸き立ってきたしまっていた。


 そしていつも以上に激しいセックスの連続となっていた。


 「ウフフ・・・。」
 「何だ?」
 「あのね・・・。初夜って、こんな感じなのかな・・・って。」
 「まあ、確かにお前にとっては処女喪失だからな。」
 「ウワッ・・・! 処女・・・。」
 「そうだろう? 女としての初めてのセックスだったんだから。」
 「そうか・・・。ボク、処女だったんだ・・・。」

 ショウは感慨深げにしていたが、それもロジャーが再び腰を動かし始めた事で夢中になってしまっていた。



 「チッ、今回もこれで終りか・・・。」
 「ロジャーさん・・・。ボクはヘトヘトだよ。」

 「さあ、次に出た時はスキンを脱いでいるから、本当の肌と肌の触れ合いができるわよ。」
 「まあ、それを楽しみに我慢しますか。それで終りなんでしょ?」
 「ごめんなさいね。あと2回よ。」
 「2回? まだ掛かるんですか?」
 「ええ、次でスキンを外せるけれど、スキンが外れたら膣と子宮に培養細胞を植え付けるの。それで入管は完璧に通過できる条件を満たす事ができるわ。」
 「ロジャーさん、ごめんね。少しでもショコたんの代わりができるようになりますから。」

 そして培養塔に入るのだった。



 「痛い!! キクノさん!!」
 「ちょっと待ちなさい。すぐに溶けますから。」
 「ショウ、大丈夫か?」
 「オッパイが・・・、オッパイが潰されそうに痛い!!」

 ロジャーは心配そうに見ていたが、ジューンはスプレーをショウの全身に吹き付けていた。
 そして、パリパリっと音がして、乳房の部分のスキンが飛び散り、その後全身のスキンにひびが入った。

 「アアッ・・・?!!」

 ロジャーの驚きの声が響いたが、すぐにショウの悲鳴がそれを覆い隠した。


 「これ・・・。本物のオッパイ・・・っすか?」
 「そうよ。ロジャーさんのお好みに仕上げたわよ。」
 「しかし・・・、スキンの大きさだってショコたんより遙かに大きかったんですぜ。」
 「エッ・・・? それなら・・・。」
 「あら、ロジャーさん、大きすぎた? 小さくするのは簡単よ。」
 「いや、勿体ない・・・。火星に着いたら自慢して連れ歩きたいっすよ。」
 「こんなオッパイで? イヤだよ!」
 「おい、ショウ。お前は俺の妻って事になるんだぞ。そして俺の趣味に合わせた身体って事だ。俺の巨乳フェチはパイロット仲間にも知られてる。ショコを連れて歩いた事もあるからな。」
 「そうですよ。それだったら入管審査前に既に若奥さんだって分かるわよ。」
 「だけど・・・。」

 ショウは低重力下でもかなりの重量を感じる乳房を支え上げて涙を流していた。

 「さあ、来いよ。時間が勿体ない。」

 ノロノロ歩くショウをじれったさそうにしていたロジャーは抱き上げてベッドのキャビンへ走っていった。


 「ウオッ! すげーっ、このオッパイ!!」
 「ロジャーさん、痛い。」
 「オッ、すまねえ。この迫力、この弾力! いやーっ、ショコの時はバランス考えてあの大きさにしたが、本当はこの大きさで良かったのか。」

 ロジャーは新しい玩具を貰った時のようにはしゃぎまくっていた。ロジャーの嬉しさがそのままショウにも感じられた。

 (ロジャーさんのオッパイフェチって、筋金入りだな。いくら何でもこんなに大きなオッパイなんて・・・。ボクの頭よりも大きいのに。まるでスイカだよ。これだけ大きくされちゃったら、戻すのも大変だ。あれ・・・?)

 乳房を元に戻すという事を考えた時、無性に悲しくなってきてしまっていた。

 (悲しい? ボクが・・・? ボクは男に戻るんだから・・・。ああ、分かった。今のボクはロジャーさんのお嫁さんになるように思い込まなくてはならなかったんだ。ロジャーさんがこんなに悦んでいるオッパイなんだから・・・。そうだ。ボクは地球に戻るまで・・・。いや、最後の難関、火星からの出星手続きを済ますまではロジャーさんの奥さんでなくてはならなかったんだ。)

 ロジャーはショウの巨乳に顔を擦り付けながら腰も蠢かしていた。最初の内はロジャーの嬉しそうな顔でショウも嬉しかったのだが、すぐにショウの方が激しい悶えで全く分からなくなっていた。逆にロジャーの方がショウの高まりを確認しつつ腰を動かすのだった。



 「ロジャーさん・・・。」

 さすがに疲労で眠っていたロジャーだったが、ジューンに起こされ、ローブを羽織ってキャビンを出てきた。

 「ショウは培養筒に入れてある間に栄養補給させてますから、二日くらいは大丈夫でしょうけれど、ロジャーさんの方が栄養不足になるのですから、きちんとお食事をしないと。」
 「まあ、そうっすね。」

 ロジャーは照れながら用意されていた食事を摂っている。

 「いかがでしたか? ショウの出来具合は。」
 「ええ・・・。」

 ロジャーはちょっと暗い顔をしていた。

 「分かりますよ。」
 「エッ? 何が・・・? アッ、そうか・・・。こういう事に関してはキクノさんには隠せないんだった・・・。」
 「ロジャーさん好みの形にしてありますからね。まだまだ性能的にはショコたんには及びませんが・・・。と言うよりセクサロイドと比較する事自体が無駄ですが。やはり相手が人間という事が一番ですから。とにかくあと数ヶ月・・・。火星からの出星管理局が最後の難関。そこを無事通過できればゆっくりと男性化処置をしながら地球に戻る事になります。地球では積荷の通関だけですから、問題ありませんからね。」
 「そ・・・、そうですね・・・。」



 「さあ、今度で最後ですよ。完璧を期す為に、火星に着いたら出発前に人工卵巣を入れます。向こうの施設にありますから出星管理局の検査前には処置しないとなりません。それ迄は何もありませんから、出たらずっと楽しんでいて宜しいのです。ロジャーさん、それを楽しみに最後の我慢をして下さいね。」
 「あ・・・、ああ、了解っす・・・。」

 培養筒が横にされ、ジューンはマジックハンドを使いながら最後の処置を始めた。

 「これでショウの膣が完成なんすか?」
 「そうですよ。今迄は粘膜化されていなかったので、少し違和感があったのではないですか?」
 「いや・・・、そんな感じはしなかったっすが・・・。」
 「ただの空洞でしたからね。このままではすぐに融着してしまうのです。粘膜を移植すれば本物の膣になるのですから、愛液の分泌もするようになるのです。子宮粘膜にしてもそうなるのです。」
 「はあ・・・。」
 「後は火星から出発する前に人工卵巣を移植します。そうすれば完全にパスできるはずです。」
 「あのう・・・、人工卵巣って事は・・・卵子もできるって事ですか?」
 「それは可能ですが、『卵巣で発育した卵子が発生』するにはかなりの時間を要します。どんなに処置したとしても1年以上は掛かりますよ。ですから男に戻るショウには問題はありません。」
 「そうなんすか・・・。」



 「はい、終了。順調ですね。膣粘膜はしっかり移植できています。子宮口や子宮粘膜も完全ですから、これで本物の女性器になりました。ショウは本物の女性としてのセックスになります。火星から出発するまでの間、充分楽しんでおくのよ。」
 「はい・・・。」

 照れていたショウだが、瞳の奥には喜びきれない曇りがあるのだった。

 「ショウ、早く来い!」
 「あ、はい。」

 まだショウが女性でいるのは数ヶ月あるのだが、二人にとっては数ヶ月しかなかったのだ。

 (アッ・・・、来る・・・。ダメッ・・・、良すぎる・・・。どうして・・・。アアーーッ・・・。)


 (ボクのおなかの中・・・、ここが子宮なのかな? ロジャーさんの精液で膨らまされている・・・。気持ちがいい・・・。これが女としてのセックスなのか・・・。もっと・・・欲しい・・・。)

 なぜかショウの目から涙が一筋流れ落ちるの だった。しかし喜びだけでなく悲しみも含んだ涙だった。



 定時連絡の時以外、ロジャーは常にショウを求めていた。疲労困憊で眠りに落ちている時ですらショウの巨乳を抱え込むようにしていた。




雲の糸5へ          メニューに戻る
inserted by FC2 system