・・・第二章・・・


 ビープ音が響いた。

 オサム達はいつもの様に繋がっていて、まだこれからという時であったので、二人とも不満気な様子でアナライザーを見た。

 「非常事態。ミーナ様、大規模な隕石群です。かなり距離はあるのですが、レーダー反応出ています。密度が濃くて中心部は見えませんが、この船はその中心方向に引かれています。」

 ミーナとオサムは慌てて操縦席に向かった。ミーナが叫ぶ。

 「バリヤー全開。レーダー最高出力。」

 操縦席上部パネルにレーダーによるグラフィックが現われた。

 「キャーッ! 大きい! 無理よ。この船では耐えられないわ。アナライザー! 通過可能確率は?」

 アナライザーは暫く計算している。なかなか答えない。

 「アナライザー!」
 「確率は・・・・・0.0001%未満・・・。」
 「ああ、せっかくここ迄来たのに・・・。」

 ミーナは肩を落としていた。

 「まだぶち当たってもいないのに、もう諦めているのか。アナライザー、計算し直しだ。バリヤーを最大遠距離にして、ハードバリヤーにしろ。円錐形状で、前面だけでいい。船体バリヤーのエネルギーも全部まわせ。レスポンス最大。ビデオスクリーンオン。ミーナ、操縦代われ。アナライザー、ミーナに何かショックアブソーバーを。お前もショックに耐えられる体勢を取れ。」

 オサムがてきぱきと指示すると、ミーナは驚いてしまった。

 「ミーナ様。」

 アナライザーがミーナの了解を求めてきた。

 「あ、オサムの言う通りにして。」
 「了解。」
 「アナライザー、確率は?」
 「まだ低いですが、・・・0.2%です。」

 オサムがメインに着き、アナライザーがサブに着いた。

 「さあ、来るぞ。隕石襲来方向に船首を向けろ。ボクが微調する。おそらく初めは小型でハイスピードだ。段々と大型になりスピードは落ちる筈だ。スピードは無くても大型との衝突は致命的だ。」

 オサムは操縦管を握り締め、緊張していた。

 「しかし、このオッパイとオチンチンは操縦の邪魔になるなあ。」
 「ミーナ様、オサムのペニスと乳房を固定します。宜しいですか?」
 「あ、いいわ。操縦に邪魔になるなら・・・。」

 アナライザーはいつの間にか大きなブラジャーとペニス用の袋の様な物を持って来ていて、オサムの身体に巻き付けた。

 「ん? ブラジャーか。ああ、これなら揺れないから調子いいよ。ペニスの方も身体にピッタリくっ付けておいてくれ。」

 操縦席に腰を下ろし、スクリーンを見つめ、しっかりと操縦感を握った。ミーナはスポンジ状の布団を身体に巻き付け、柱にロープでくくり付けている。アナライザーも別の柱にワイヤーを巻き付け、待機完了となった。


 ハードバリヤーの先端部がスクリーンの彼方に淡く光っている。既に細かい塵がバリヤーに強く吹き付けているのだ。時々小さな隕石が当たり、微振動として船体に伝わって来る。ソフトバリヤーを使っていない為の振動なのだが、ミーナには初めてなので、不安そうな顔をしている。断続的であった微振動が段々と連続的になり、うなりの様な振動へと変わってきた。

 「アナライザー。分かる範囲でいいから、レーダーで捕らえられる限りの情報をスクリーンに表示しろ。」
 「了解。」

 アナライザーはスクリーンの一部に隕石帯と船の位置を示したグラフィックを出した。

 「相対速度。」
 「秒速3キロ。」
 「よーし、行くぞ。」

 オサムは操縦管の握りを強く持った。スクリーンには細かな隕石が次々と吹き出る様に現われてくる。オサムにはその程度の振動はさほどの事はないのだが、ミーナはすっかり恐怖で震えていた。

 「この程度はどうって事はない。まだ始まったばかりだ。」

 少し大き目の隕石が時々現われる様になり、バリヤー越しに振動が響いてくる。オサムはレーダー画面とスクリーンを見比べながら、少ない動きで大き目の隕石を回避していく。向きが変わり過ぎると、隕石に擦る様にして元に戻すのだ。

 「ミーナ様。大丈夫ですか?」
 「アナライザー、助かるかしら?」
 「まだ確率は低いですが、オサムの航法は面白いですよ。エネルギー節約の為と思われますが、方向転換に、隕石との衝突を利用しています。その為に円錐状のハードバリヤーにしたのかも知れません。」

 確かにオサムは的確に隕石流を避けながら進んでいる。隕石は段々と大きな物が現われてくる。

 「アナライザー、相対速度。」
 「秒速4.2キロ。」
 「まだ中心に向かって放物線を描いているな。出来るだけ中心からは離れたい。ミーナ、かなり揺れるぞ。しっかりと固定してあるな?」
 「ええ、大丈夫・・・。多分。」

 オサムは意識的に隕石との接触を始めたのだ。中心に近い方向の隕石との接触により、船を隕石帯の中心から遠ざける様に弾かせたのだ。船は大きく揺れ、舵も思うに任せないのだが、ぎりぎり迄寄せてバリヤーに弾かせ続けた。隕石は段々と大きな物が現われる。オサムはただひたすら方向変更と、姿勢制御に集中していた。

 「相対速度、秒速3.8キロ。」
 「アナライザー、離れてきたの?」
 「違う。中心に近付いてきたんだ。船の速度が引力圏により上がってきている。中心に近い所で一旦相対速度は0になる。」


 どの位時間が経ったのだろうか。もちろん亜空間での時間というのは存在しないが、生理的には既に3時間程緊張が続いている。隕石の速度は落ちてきたものの、大きさは既にミーナの船以上の大きさの物が数多く現われ、密度が濃くなっているのでレーダーも殆ど効かない。スクリーンには殆どもやに覆われた空間だけが映し出されており、グラフィックには通り過ぎてきた部分のデータしか現われてこないのだ。

 「相対速度1.5」
 「さあ、いよいよ本体だ。スクリーンは全く見えない。レーダーも効かない。でかい奴と正面衝突したら一巻の終わりだ。」

 その時正面方向に大きな隕石が現われた。オサムは瞬時に船の向きを変え、バリヤーの側面に当て、すれ違って行った。次々に現われる隕石を、まるで予測しているかの様に操縦しているオサムを見て、ミーナは感動していた。

 「相対速度1.2」
 「アナライザー、相対速度が1を切ったら0.1ずつ知らせろ。0.3以下になったら0.05ずつだ。」
 「了解。」

 画面での航跡がそれとなく放物線らしい形になってきているが、まだ最接近位置には達していない。

 「1.0です。」

 オサムは額からの汗を拭いながら前方を注視している。その時その汗をスッとミーナが拭ったのだ。

 「ミーナ、跳ね飛ばされるぞ。戻っていろ。」
 「大丈夫。操縦席に身体を縛り付けて固定したわ。私には何も出来ないけど、一緒に居させて。」
 「0.9」

 船の向きの変化でミーナはかなりふらついている。しかしオサムの汗を拭いながらじっとスクリーンを見ていた。隕石はドンドン大きく、多くなっていく。間をすり抜ける様に進んで行く。相対速度は次第に小さくなっていくので、衝突の可能性は減っていく。

 「0.2」迄下がった時にはまるで岩の中を漂っている様であった。

 「まだ最接近はしていない筈よね?」
 「相対速度だからね。多分マイナス0.5付近の筈だ。」
 「最接近地点の推定相対速度はマイナス0.522です。相対速度0.15」

 アナライザーのキンキンした声が響く。

 「だから最も危険な所はマイナス1.5からマイナス4位の筈だ。」
 「相対速度0.1」
 「ハードバリヤーを近付け、船全体前面を覆え。」
 「了解。0.05」
 「マイナス0.1でバリヤーを元の位置に戻す。」
 「了解。現在相対速度0。」

 全く宙に留まった岩の中に船は浮かんでいた。

 「反転180度。」

 オサムは大きく操縦管を動かした。スクリーン上の隕石郡が一斉に向きを変える。やがて少しずつ隕石は動き出す。

 「相対速度0.05。」
 「さあ、今度はスピードの変化が激しくなるぞ。ミーナ、覚悟しておけ。」
 「覚悟?」
 「0.1。『覚悟』とは地球語で・・・、優先順位が低いので中止します。0.15。」

 ますます密度が濃くなり、視界が悪くなってきた。出現する隕石はますます大きくなりつつあり、小惑星と言った方が良い大きさだった。

 「0.2」

 オサムは殆ど視界の効かなくなったスクリーンを凝視している。

 「速度の第二次導関数が急増しています。相対速度0.35。」

 ミーナはしっかりと操縦席にしがみついているのだが、とてもスクリーンを正視している事は出来なかった。時々バリヤーの先端に隕石が当たると、船は大きく揺らぐ。

 「相対速度0.5。最接近地点です。」
 「これからの方がきつい。速度は桁外れだからな。」

 スクリーン上にこれ迄の航跡が表示されているが、確かに放物線の頂点に達している様だった。

 「速度0.7。加速度が大き過ぎます。」
 「分かってる。このままでは確かにきつい。アナライザー。バリヤーを今迄の半分の距離に戻せ。残りのエネルギーを船全体に覆う。」

 アナライザーはちょっと考えた様子で、ワンテンポ遅れてから

 「オサムの考えを計算しましたが危険です。隕石との衝突で減速し、更に外側への軌道修正をしようとしてします。」
 「アナライザー。いいからオサムの言う通りにして。」

 ミーナがアナライザーを制した。

 「了解。速度1.5。バリヤーの分布を変えます。」
 「しっかり捕まっていろ。接触減速はかなりのショックがあるからな。」

 少しは濁りが消え掛かっているが、まだまだ視界は悪い。オサムはひたすら勘を働かせて隕石を回避していた。

 「速度2.1。」
 「さあ、スピードが上がってきた。行くぞ。」

 オサムは小さ目の隕石に側面を擦り付ける様にバリヤーを押し付けていった。ズズーンという鈍い音とともに船が大きく揺れる。

 「キャーッ!」

 ミーナは大きくふらつき、悲鳴を上げた。オサムは構わず次々に側面接触を試みる。

 「速度3.5。」
 「進路は何度変化した?」
 「正確には計算出来ませんが、約5度です。」
 「30度方向を軸にして、必要変化量を知らせろ。」
 「了解。しかしなぜ30度ですか?」
 「さあ、何となくだ。」
 「相対速度4.1。」

 隕石は尾を引く様に現われては消える。意識しての側面接触が出来るスピードではなくなっている。

 ズズズーーン!

 激しい音とともに船は凄さまじいショックで大きく振動した。

 「キャーッ!!」

 ミーナの絶叫とともに、ミーナは自分を固定していたロープがちぎれて部屋の隅の方へ投げ飛ばされた。スクリーンの隕石中心が大きく外れる。オサムは必死で操縦管をコントロールする。

 「アナライザー。」

 オサムはアナライザーの返事が無いのでちょっと横を見た。アナライザーもひっくり返っていて、動作を停止している様だ。

 やっと船の位置を保持し、オサムはただひたすら隕石帯脱出に集中した。幾分小型にはなったが、殆ど形を捕らえられない程の速度ですれ違っていく。

 暫くしてアナライザーが再起動を始めた。ブーンという音がしてゆっくりと起き上がり、

 「ブート完了。データ転送。相対速度16。必要修正量4度。」

 アナライザーが告げたのだが、オサムには聞こえていなかった。スクリーンは殆ど濁りが無くなっていて、まるで雨が降る様に小さな隕石が降り注いでいる。時々大きな物が現われるのだが、オサムはその出現前に軌道を変化させている。

 「相対速度19。聞こえていない様ですね。」

 スクリーン上に描かれている航跡にはレーダーもある程度効く様になってからの状況も追加されているので、間もなく脱出出来るのが分かるのだった。

 「相対速度28。なる程、自由放物線方向から30度ずれた所の渦の腕の隙間を狙った訳ですか。しかしレーダーの効かない内になぜ分かったのか。」

 やがて隕石は小さな石程の物が時々かすめて行く様になってきた。オサムは大きく息を吐いて、

 「脱出した。アナライザー。バリヤーを通常状態に・・・。」

 ハッとしてアナライザーが転がっている方を見たオサムはアナライザーが復帰している事を知った。オサムにはアナライザーが微笑んでいる様な表情をしている様な気がした。

 「あ、戻っていたのか・・・。そうだ、ミーナは?」
 「ミーナ様はショックで気を失ってはおられますが、生命、健康状態はOKです。」
 「良かった。ミーナも疲れているだろうから、ベッドに寝かせて上げて。ボクも少し休む。」

 オサムはふらつきながら操縦席を離れた。アナライザーは細い腕にも関わらず、ミーナを軽がると持ち上げベッドに移した。オサムの方も長椅子に横になって目を閉じると、すぐに眠ってしまった。

 「オサム。ミーナ様は・・・。もう睡眠状態に? 何と早い。準備状態が殆ど無いとは。」

 アナライザーは毛布をオサムにも掛けた。一段落して現況の把握に取り掛かった。

 「船のダメージ状態は?」

 データを収拾、整理する。

 「発電量75%。メインエンジン出力35%。エンジンのダメージは大きいが、亜空間内では影響は無い。外壁損傷は修正不能。しかし気密に関しては問題無し。」

 一応の安全を確認し、操縦室内の乱れの後片付けを始めた頃、ミーナに意識が戻った。

 「ん? 私はなぜここに?」

 ハッとしてミーナはスクリーンを見た。そこには隕石群の姿は無く、亜空間独特の薄明るい光だけであった。

 「助かったの・・・・・?。」

 暫くは脱力感で声が出なかった。

 「オサムは?」
 「疲労の為睡眠中です。地球人の代謝構造がまだはっきりしていないのですが、それでも肉体的、精神的に限度を越えた疲労の蓄積があります。」
 「じゃあ・・・。」
 「ご心配なく。疲労に対する代謝がマロエ人とはかなり異なるので、生命、健康には影響が無いのです。疲労率はマロエ人では完全に死に到るレベルなのに、地球人では許容レベルの範囲内だったのです。」
 「そう。それ程強い生命力の種族なのですか。」
 「最初の測定値より一桁上がっていますので、改造による好影響もある様です。それと回復力も信じ難い高さです。とは言え、あの隕石帯の中を抜けるのにかなりのエネルギーを使っていますから、長時間の休養を要します。」
 「そうだったの。良かった。」

 ベッドの上に起き上がったミーナは暫くオサムの寝顔を見つめていた。

 「アナライザー。オサムをこのベッドに寝かせて上げて。椅子よりも楽な筈だわ。」
 「ミーナ様もまだ疲労が残っています。」
 「私よりオサムの方がずっと疲れているのでしょう。私は目が覚めたのだから、眠っているオサムをここへ運んで。」

 アナライザーはオサムも軽々とベッドへと運んだ。仰向けに寝かされたオサムの股間の物を見て、

 「あら? 萎えているわね。」
 「それだけエネルギーを使い切った証拠です。あの改造では通常状態では絶対に垂れ下がらないだけのエネルギーを保持し続ける筈でした。」
 「****の餌を食べさせたらいいかしら?」
 「エネルギー価は高いですから、回復力の強化にはなりますが・・・。」
 「何か問題があるの?」
 「ミーナ様がそのエネルギーを放出させてしまう恐れがあります。」
 「アハッ、何だ、そんな事。オサムが回復する迄は我慢します。じゃあ、持って来て。」

 ミーナはアナライザーが****の餌を持って来る迄の間、オサムのペニスと大きくされた乳房をつつきながら微笑んでいた。オサムの身体は、眠っていてもそれなりの反応をする。ペニスが少し大きく成ってきて、乳首も少し飛び出してきた。

 「ミーナ様、持って来ました。」
 「あ、有難う。じゃあ入れますね。」

 ミーナはオサムの足の金属円筒に念じて、少し広げて上に持ち上げた。そして肛門のリモコン括約筋に対しても拡がる指示を出す。オサムは少し不快そうな表情をするのだが、相変わらず深い眠りの中にあった。ミーナは****の餌をゆっくりとオサムに押し込み、逆蠕動させると餌はスーッと入って行くのだった。

 「ミーナ様、現状分析の内、最重要項目を表示します。」

 スクリーン上にマロエ語の文字がズラッと並ぶ、ミーナはじっと見つめていた。コンソールを叩きながらブツブツ呟いている。

 「アナライザー。このデータに誤りは無いの?」
 「誤差0.001以下の表です。どの部分を詳細表示しますか?」
 「オサムの行動に関して一桁も二桁もイメージと違うわ。」
 「情報処理速度の項目ですね。」
 「そうよ。生理的に私とオサムにそれ程の違いは無い筈よ。分泌物機能は別にして。脳の情報処理速度は私の方が多分15%位早い筈よ。オサムの方が幾分原始的だから、肉体の反応速度は早いにしてもこんなに差は出ないわ。」
 「推論ではありますが、仮説を立てる事が出来ました。ご説明しましょうか?」
 「ええ。」
 「まず通常状態の時。ミーナ様を基準値1として説明します。目視による反応が脳へ伝わる時間比はオサム0.95。これは神経組織の長さによる若干の差です。脳が反応し、例えば手へ指令信号を出す迄の時間比は1.23。信号により手がその処理をする迄の時間比は0.78。この部分はオサムの方が優れています。」
 「そうでしょう。脳の反応時間の割合が最も多い筈だから、合計時間にはそれ程差は無い筈よ。」
 「それは通常状態の時です。オサムには反射状態というものがあるのです。」
 「反射状態? 何、それ。聞いた事がないわ。」
 「これはまだ仮説です。但し数値的には良く合います。」
 「どういう事?」
 「つまり目視による刺激が脊髄迄到着した時点で、その刺激は勿論脳へ運ばれるのですが、一部が手へ送られるのです。つまりそれ以前の脳からの命令で、目視の刺激を直接運動刺激に代えてしまうという命令です。」
 「脳を経由しないで?」
 「非論理の論理です。時として誤った動作をする可能性があります。しかし、手の動作が認識と違ったら脳が制御するので、時間は掛かるのですが、全体的な所要時間は先程説明した通り、ミーナ様より短くなるのです。」
 「極めて不安定であると思うけど。」
 「しかしまだかなりの誤差があります。緊急時の反応は更に約50%向上するのです。場合によっては目視の認識より早く、目視そのものより先に手の運動を開始しているのです。オサムは『勘』と言っていましたが、これは科学的にはまだ説明出来る仮説が出来ません。」
 「フーン。かなり特殊な才能なのね。地球人の特徴なのかしら。」
 「ミーナ様。オサムが隕石帯を乗り切ってきた航跡のデータは整理終わりました。シュミレーション出来ますが、ご覧になりますか?」
 「そうね。不安定の差で原始人に負けたとしても、操縦技術で負けたくはないわ。私だって宇宙飛行士としてはレベルが高い方なのだから。」
 「では操縦管はコンピュータと連動し、シュミレーションを始めます。プロット抜き出しで行ないます。最初は突入直後で、相対速度8.0です。」

 スクリーンには本当の遭遇の時よりもクリアな映像になっている。データを処理して靄を消してあるのだ。ミーナはゲーム感覚で回避操作を始めたが、すぐに激突大破してしまう。

 「アーン、ダメだわ。アナライザー、バリヤーはこれでいいの? 速度を少し落として。」
 「速度を二分の一にします。」

 再スタートした画面には先程よりもゆっくりと隕石が流れている。しかし時々現われるイレギュラーにより、船体ダメージが増していく。

 「ダメだわ。良くオサムは平気で乗り切ったわね。ここら辺はまだ最初の頃でしょ? それじゃ、オサムの回避動作を見せてみて。」

 画面中央下部に操縦管の絵が現われる。

 「速度二分の一のままいきます。」

 スクリーン上の隕石が動き出す。操縦管がこまめに動かされている様子と、隕石回避の状況が同時に見えるのだ。

 「ウワーッ。こんなに細かく、しかも素早く動かすの? じゃあ、再接近後の厳しい状況で見せてみて。スピードはこのままでいいわ。」

 画面が一旦中断し、再度現われた時は大型の隕石郡の中に居る。勿論靄は消してある。スタートすると、操縦管の動きは早過ぎて、ミーナには認識出来ない程であった。

 「アッ、ダメ。早過ぎる。速度を十分の一に落として。」

 画面の動きがパッと遅くなった。しかし相変わらず操縦管の動きを読み取れる程ではなかった。

 「もういいわ。私には絶対不可能な技術よ。悔しいけど。アナライザー、こういう状況をコンピューターで回避出来るかしら?」
 「私のコンピューターでは不可能です。不確定データが多過ぎますので、処理が間に合いません。何台かの並列制御を行なえば可能ですが、推定250台必要です。」
 「そんなに?」
 「その場合でも回避確率は約35%です。」
 「たった? でもオサムは一人でやったのよ。」
 「思考方法が異なります。私のコンピュータでは不確定データの処理に時間が掛かるのです。オサムの思考方法を研究すれば、不確定データ処理の新しい理論が展開出来るものと考えられます。」
 「へーっ。凄いのね。もしうまく戻れたら、新しい科学の発展が望めるのね。」

 ミーナはベッドに寝ているオサムの方に向き直り、頼もしそうに寝顔を見つめていた。



 オサムが目を覚ました時、隣でミーナも横になっていた。すっかり回復して突き上げているペニスを両手で握りしめて寝ているのだった。オサムが起き上がると、ミーナも目を覚ました。

 「お早よう、オサム。長い事眠っていたのね。ありがとう。あなたの起こした奇跡で助かったのよ。」

 ミーナの誉め言葉にオサムは少し照れていた。

 「偶然うまくいっただけですよ。ボクだって死にたくなかったし。」
 「謙虚ねえ。それも地球人の性格なのかしら?」

 アナライザーが口を挟んだ。

 「地球での夫の妻に対する思いやり、愛情の現れです。」
 「愛情ってこういう事なの?」
 「さあ・・・。ボクはもう地球には戻れないし、もし戻れたにしてもこの身体では地球人の生活は出来ないでしょ。あ、ミーナを恨んでいる訳じゃないよ。不可抗力だもの。でもそれより・・・。」
 「それより・・・、なあに?」
 「ミーナさんはボクにとって初めての女だし、この身体、結構いい気持ちだし・・・。」
 「何か意味合いがもう一つ掴めないけど、オサムが私の所有物に成って良かったと言う事かしら?」
 「合っている様な、違う様な・・・。」
 「でも、これ私の物よね?」

 ミーナは勃起しているオサムのペニスを強く握った。ベッドに仰向けに寝て、

 「私の物だもん、私の中に仕舞っておくわ。」

 足を開いてオサムを誘った。

 「はい。ミーナさんの中に仕舞いまあす。」

 二人の愛撫が始まり、蚊帳の外のアナライザーは呆れた様な風で、メンテナンスの続きを始めた。



 ある日、オサムはミーナの動きに少し異常を感じた。何となく右肩に疲労がある様で、腕を時々回転させているのである。左肩のオーラが少し暗く、その為に右肩に負荷が掛かり過ぎているのではと思えた。

 「ミーナさん。肩が疲れていませんか?」
 「どうして?」
 「だって左肩がおかしいのでしょう? それで右肩に無理をしている様で・・・。」
 「どうして分かるの? アッ、アナライザーに聞いたのね。」
 「私は知らせていません。また、知らせる程の機能低下を招く異常ではありません。」

 ミーナは少し不審げな様子で、

 「どうして分かるの? それもオサムの第六感なの?」
 「そうじゃなくて、ミーナさん、右肩を時々動かしているでしょ。疲れているって分かりますよ。」
 「アナライザー、私そんなに疲れている様に見えるの?」
 「パターン認識はレベルが低く、判断不可能です。しかし通常レベルの動作ですから、オサムの認識力の高さによるものと思われます。」
 「それもオサムの能力ね。でもなぜ原因が左肩だと。確かに隕石群との遭遇の時に打撲したけれど、それ程痛みは無いのよ。腕を上げると痛むけれど、自己治癒出来る程度だし、暫くすれば直る筈よ。」
 「この船には治療器具は在りません。鎮痛剤を使う程でもありません。」
 「オーラが、ミーナさんの左肩のオーラが少し薄いので。」
 「オーラ?」
 「オーラとは地球の科学レベルですら否定されていますが、生体エネルギーの放射を意味するものと思われます。勿論、存在しません。」

 オサムはオーラの見える事をあからさまに否定され、少しムッとしたが、

 「じゃあ、指圧して上げる。横になって。」
 「指圧?」

 怪訝な顔のミーナを強引にベッドにうつ伏せに寝せた。そしてオーラの特に薄い部分に指圧を施した。

 「痛いっ!! だめっ、オサム。痛いわよ。」

 オサムはひたすらツボを押し続ける。

 「ダメよ。どうして分かるかは知らないけれど、ただ痛いだけよ。」

 ミーナは起き上がってしまった。

 しかしオサムの目にはミーナのオーラが殆ど回復している様に見えていたのだ。

 「ああ、痛かったわ。痛い所を押すだけでは痛みを増すだけでしょう。それもSMなの?」

 ミーナは左肩をさすりながら、

 「これじゃ、余計ひどくなって、ますます腕が上がらなくなって・・・? あら? 上がるわ。痛くもない。」
 「ミーナ様。神経系統の異常が解消しています。薬品は使わず、治療器具の使用もせずに、論理的非合理です。」

 オサムは少し鼻が高かった。もともと専門的に習った訳ではないが、オーラが見えるという事はツボが良く分かるという事に気付いたのである。そしてミーナもそのオサムの能力を、まるで魔法を見ている様な畏敬の目で眺めるのであった。



 漂流中は、隕石群等との遭遇が無ければ、何もする事がない。船の修理にしても外壁の修理は出来ないのだ。亜空間内に出る事が出来ないからである。ミーナ達が最初に落ち込んだ時は、不安と焦りでただ消耗するだけであったが、オサムとの出会いによって何も無い空間での、何も無い生活が楽しかった。

 オサムは結構自分の身体に馴染み、セックス前後の乳房のマッサージ、搾乳も気に入っていた。バストの快感はペニスの快感とは異質の感覚で、ミーナの為にもミルクの出る乳房に成って良かったと思っていた。相変わらず拘束衣を着せられているのだが、脱ぎたいとは思わなくなっている。その拘束衣が自分の運命の源であり、ミーナと自分の立場を決定付ける物であるからである。

 オサムの船に比べるとただ広いだけの殺風景なキャビンも段々と内装が変わってきている。カーテンが掛けられ、絨毯が敷かれ、照明も間接照明が増えている。いわゆる少女趣味風の内装になっていくのだが、オサムの知識と資料からミーナがアナライザーに作らせているのだ。余りにも操縦室というムードから懸け離れてくるので、オサムも少しやり過ぎではないかと苦笑いする程であったが、ミーナはお構いなしであった。

 「ねえアナライザー。ミーナさんは少しやり過ぎじゃないかな。」
 「そうですね。オサムのイメージから見ても船の中らしくなくなってきました。」
 「あまりゴテゴテしていると、隕石群の中に飛び込んだりした時にいろんな物が飛び散って危険だし、振り飛ばされた時にぶつかる物が多くて危険だよ。」
 「ああ、そういう心配はありません。オサムの星には無かった様ですが、どんな小物にもアブソーバーが付いています。」
 「アブソーバー?」
 「急激なG変化があった時、付帯している別の物体との間に引力が働きます。つまり、振り飛ばされる様な強いGに対してそれを妨げます。次に別の物体が急激に接近して来た場合は斥力が働きます。試してみますか?」

 アナライザーはオサムに金属棒を渡し、

 「その花瓶を叩き壊してみて下さい。」
 「いいの?」

 オサムは不安だったが、アナライザーが自信たっぷりの様子なので、受け取った棒を中段に構え、力いっぱいなぎ払った。

 花瓶に当たったと思った瞬間、まるでスポンジにくるまれたゴムを叩いた様な感触にオサムは驚いた。花瓶は全く動いていない。花瓶を直接手で触り、セラミックである事を確認した。

 「へーっ。凄いね。科学力の差を見せつけられるなあ。」

 オサムはミーナの方を振り向いた。ところがミーナもまた驚いた表情でオサムを見ていたのだ。

 「オサム、あなた・・・。」
 「エッ?」

 オサムにはミーナが何を驚いているのかが分からなかった。

 「オサム、もう一度その花瓶を叩いてみて。アナライザー、オサムの動きを記録して。」

 オサムは怪訝そうな顔をしていたが、ミーナに言われるままにもう一度構えをとり、花瓶に向かって打ち込んでいった。相変わらず手ごたえの無さに、打ち込みの時の壮快感はない。中段からの後は上段から、そして突きを決めてみた。

 「後のはサービス。ミーナさん、これでいい?」

 金属棒をアナライザーに返し、

 「オッパイが大きいから、打ち込みし難いよ。踏み込みはハイヒールのせいで力が入れ難い。」

 ミーナはアナライザーの分析を待っているので、オサムの話を聞いていない。

 「オサム、今の動きは地球で習ったの?」
 「ああ、ボク達の国、国の概念が違うかな、ボクの生まれた地区の昔から伝わる剣道です。昔は実用的な面もあったらしいですけど、今はスポーツの一種です。もっともかなりマイナーですけどね。」

 アナライザーが二人の会話に割って入った。

 「粗分析終了しました。」
 「で、どうだった?」
 「ミーナ様推察の通り、相似率65%で、オサムの体形変化の為の機能低下を除外するとおよそ88%になると予想されます。」
 「相似率って、何との?」
 「オサム。あなたの星の古代にはやはり剣での争いがあったと思うけど、マロエでもそうだったの。だから剣の舞なども伝統として残っているけど、あなたの動きは伝説の勇者の舞の形に似ているわ。普通は剣は両刃だけれど、伝説の勇者の剣は片刃だったのよ。」
 「そうですよ。日本刀も片刃だから、同じ様な動きになるのでしょうね。」
 「形は伝わっていないから、どんな形だったか分からないのだけれど、あなたのはどんな形か分かる?」
 「勿論本物ではないけれど、荷物の中に入っていた筈ですけど。」
 「見せてくれる?」
 「いいですよ。アナライザー、分かるかな?」
 「分かります。オサムの品物も区分けしてありますが、スポーツ用品としての登録の中に日本刀モデルというのがありました。大小二本です。」

 アナライザーは倉庫ブロックの方へ動いて行った。そしてすぐに刀を持って来た。それをミーナが受け取る。

 「随分と重い物なのね。なぜこんなに反っているのかしら。でも綺麗な形ね。」
 オサムはミーナから刀を受け取り、抜いて見せた。
 「本来、刀は武器だったのですから、人を・・・いや、戦いの為の道具だった訳です。これは突いたり叩いたりするのではなく、切る武器だったので、こういう風に反っているのです。」
 「原始的で、野蛮な武器の割りには美しい物なのね。」
 「刃は付いてませんから、飾りとしても使えますよ。ミーナさん、宜しかったらどうぞ。」
 「頂けるの? ありがとう。」

 ミーナは壁の空いている空間に浮かして留めた。アンバランスなムードだが、ミーナはオサムに教えて貰った、部屋の飾り付けに夢中なのだ。



 時間は進まないので、どの位経過しているかは分からないが、オサムの感覚では隕石群脱出後ほぼ一ヶ月程経った頃、相変わらず二人はセックスに明け暮れていた。オサムの乳房はその機能も充分に成長し、ミルク量は毎日1リットル以上になっていたのだ。ミーナはオサムの精液、尿、大便と乳で栄養を得ている。オサムは****用の餌の外に、プランターで促成栽培した野菜を食べていた。マロエ人の内臓では到底消化出来ず、相当の加工を施してやっと食料になる物らしいが、オサムには申し分ない生野菜なのである。そしてそれから出来る排泄物がマロエ人にとっては最高の料理になってしまうという不思議な共生関係を保っていた。ミーナにはオサムが居なければ全く食料が無いのだ。

 「ミーナ様、位相歪が現われました。」

 アナライザーがスクリーンにレーダー画面を映す。

 「時間位相差は不明ですが、空間位相は墜落の時と同じです。位相歪の落ち込むと言うか、歪から飛び出すと言うか、どちらにしても、元の空間に戻ります。対ショックアブソーバー起動します。」

 ミーナとオサムは繋がりを抜いて操縦席へ向かった。

 「ボクが動かす。ミーナは対ショック体勢。アナライザー、エンジン起動。」
 「亜空間内では推進エンジンは効きません。」
 「分かってる。歪を通り抜けた直後に最大出力になる様セットしろ。もう一度落ち込まない様、出来るだけ離れる必要がある。それと緊急通信用の送信をしながら歪を抜ける。真空間に出た時の衝突を避ける為だ。」
 「了解。」

 ミーナはオサムがてきぱきと指示をしているのを見て感心していた。

 (私だったら、通り抜ける事だけしか気を払わなかったわ。もっと大きな船の操縦士、いえ、船長に成れるだけの技量があるかも知れない。)

 やがて位相歪が段々大きくなる。それに伴いスピードも上がってきている様だ。オサムは操縦管を小刻みに動かし、歪の真ん中の、靄の少ない部分を抜ける様操縦していた。

 「エンジン出力最大になりました。」

 アナライザーの声が頭の中に響く。

 「抜けるぞ!」

 船の中が一瞬霞んだ様になり、まるで身体が引き伸ばされた様な錯覚を起こした。それは一瞬だった筈なのだが、時の流れが止まってしまった様な一瞬であった。



 オサムがハッとした時、スクリーンには銀河が映し出されていた。

 「抜けた! アナライザー、全空間レーダーを映せ。」

 画面がパッと3D画面に変わる。

 「障害物は? 他船との衝突は?」
 「ありません。歪との距離、0.5光秒。」
 「よし、1光秒離れたらエンジン停止。」
 「あら、オサム。もっと離れた方がいいのと違う?」
 「大丈夫。慣性飛行でも距離は充分にとれる。それよりエネルギーが殆ど残っていないから、遭難ビーコン出しておいた方がいいよ。」
 「あ、そうか。私達は漂流しているんだったわね。」
 「1光秒離れました。エンジン停止。ビーコン出します。」
 「さあ、後は相手任せだ。いつ見つけてくれるかだけど、時間差はどれ位ある? 落ち込んだ時と、今との間で。」
 「基準時計がありません。現在位置と恒星の視差から計算しなければなりませんが、基準軸に最低5光時必要です。」
 「5光時移動に掛かる時間は?」
 「約一週間です。」
 「そんなに掛かるのか。仕方ないね。」
 「でもそれ迄にビーコンを捕まえて貰えるかも知れないわ。ゆっくり待ちましょう。」

 ミーナは嬉しそうにしていたが、オサムの顔に陰りがあるのに気付いた。

 「オサム、どうかした?」
 「ウ、ウン。助けが来たとすると、ボクもその人に会う事になるだろう? この身体では人前に出られない。」
 「ああ、何だ。そんな事。」
 「そんな事って、こんな身体では恥ずかしいよ。」
 「平気よ。あなたは異星人。それでも私達に似ている、珍しい例よ。むしろ私としてはみんなに見せて自慢したい。ええと、何だっけ。ああ、『結婚』している私達をね。」
 「でも・・・。」
 「オサム。あなたはある意味での英雄なのよ。自信持っていいのよ。オサムの言う『恥ずかしい』という言葉も少しは理解出来ているつもりだけど、『恥ずかしい』と思うのはオサムだけで、他のマロエ人には分からないと思うわ。相手が『恥ずかしい』と思っていなければ、オサムが『恥ずかしい』と感じる割合はかなり減少するわね。」
 「まあ、そうかも知れないけど・・・。」

 オサムはアナライザーの方を向いた。

 「あなたの行動分析からすると、私に意見を求めている様ですが、データ不確定の為、結論は出ません。データは提供出来ます。」
 「そうだよなあ。この身体でマロエ人に会った地球人のデータなんかある筈ないものね。ミーナさんの考え方は論理的には合ってるのかなあ。」
 「論理的には不合理です。」
 「不合理?」
 「以前のミーナ様でしたら結論は合理的でした。『恥ずかしい』という意味はマロエ人には何ら合理的意味合いがありません。当然無視されます。ですから緊急事態に陥った為、異星人の有効な助力を得る為の僅かな改造を施し、危機を脱出した。その結果、異星人が当方の空域に取り残された。それだけです。」
 「冷たいなあ。」
 「それはこの場合温度を意味してはいない言葉と判断します。」
 「私には分かるわ。多分、アナライザーの言葉が、オサムの精神状態を不安定にし、活動を押え込む働きをする、という意味でしょう?」
 「チェッ。ミーナさん迄・・・。」
 「オサム。それは『ふてくされた』状態ね?」

 そしてミーナはアナライザーのみへの思考を送った。

 「だいぶ落ち込んでいる様だけど、精神に活力を与える為にも久しぶりに『SM』をやってみるわね。」
 「オサムの精神状態への配慮からの意見ではありませんね。」
 「分かる? 『SM』をやる為の口実よ。」

 ミーナはアナライザーに片目を瞑って見せた。

 「オサム! 何をグタグタ言ってるの。たとえ結婚したとはいえ、お前は私の奴隷である立場を忘れたの?」
 「ミーナさん・・・・?」

 オサムはちょっと意外そうな表情でミーナを見つめた。オーラから感じる感情と異なった状態なのだ。

 「確かに船を救って貰って感謝してるわ。でもあれは非常事態だからね。あなたの身体は私に責められて悦ぶ身体に成ってるのよ。あなたの衣服だって拘束衣なのよ。これからもずっとそのままだし、口や肛門だって私の自由。アナライザー、****の餌を持って来て。今日は三本入れて上げるわ。三本も入れたら、あなたはしたくてしたくてたまらなくなる筈よ。でもして上げない。自由にならない身体で悶え続けていなさい。私の奴隷で、私が居なければ生きていけない身体だっていう事を思い知りなさい。」
 「ミーナさん・・・。」

 ミーナは久しぶりにオサムの手足に付いている拘束リングに思念を送った。手足がガチッと押さえ付けられた様になり、更に四つん這いの体勢にされる。そこへアナライザーが****の餌を運んで来た。

 「さあ、肛門を開いて。そうだアナライザー、『瓢箪尻尾』を用意して。」

 オサムの肛門はミーナの指示に従い、ググッと開き始める。いつもは普通の『食事』の為の準備行為であったのだが、今回は屈辱感が強い。

 「ミーナさん、どうしたの? いつもと違うよ。ボクは餌を入れる時は大人しく言う通りにしてるじゃない。」

 ミーナはそのいつもよりも肛門を大きく開かせた。

 「アタタタ・・・。ごめんなさい。お願い、静かにしているからやめて。」
 「奴隷がご主人様に命令するの?」
 「ごめんなさい。お尻が痛い・・・。」

 ミーナは****の餌を勢い良く押し込む。

 「痛い。ミーナさん、ごめんなさい。大人しくします。だから、アウッ・・・。」

 ミーナは立て続けに餌を押し込んできた。こんなに怒っているミーナを見るのは始めてであった。オサムは自分の何がミーナをこんなに怒らせたのか考えようとしたが、三本目を入れられた時には既に餌の効果が表れ始めていた。息が荒くなり、覗いて見ると大きな乳房の下で赤黒く輝いている亀頭の先端から、透明な粘液が細い糸を引いていた。

 「ククッ・・・、ミーナさん。三本も入れちゃうから、ダメッ、お願い、抜いて。」
 「どうもダメね。まだ自分が奴隷だって事の認識が足りない。私に命令するの?」
 「ア、違います。ごめんなさい。オチンチンがいっぱいになってる。抜いて欲しいんです。」
 「何言ってるの。暫く苦しんでいなさいって言ってあるでしょう。さあ『瓢箪尻尾』着けるわ。そこらで転がっていなさい。」

 ミーナは合金製の『瓢箪尻尾』をオサムの肛門に押し込み、肛門を締め付けさせた。手を後ろ側に回し、拘束リング同士をくっ付いた状態にし、足は自由にした。

 オサムは立ち上がろうとしたが、『瓢箪尻尾』のせいで立ち上がれない。といってしゃがんだ格好ではいられず、尻をモゾモゾ動かしている。後ろ手にされているが、その手は尻の方へは届かず、『瓢箪尻尾』を引き抜く事も出来ない。もっとも、引っ張っても抜ける事は無いのだが。ミーナがさせてくれない以上、自分の手で処理してしまおうと色々もがくのだが、起き上がる事すら出来なかった。

 「ミーナさん・・・。」

 オサムは哀願する様にミーナに声を掛ける。しかし知らんぷりのミーナの態度は冷たかった。そしてオサムはとうとう泣き出してしまった。

 アナライザーがミーナにだけのテレパシーで話す。

 「ミーナ様、オサムの感情がかなり不安定になっています。」
 「そうね、もう限界かしら? それにしても地球人というのは、感情の起伏が激しく、それを平気で表に現すのね。」
 「精神構造的には野生に近い状態ですから。」
 「なる程ね。動物の様なものなのね。ある意味でのペットという事になるのかしら? 理性のあるペットなんて素晴らしいわ。」
 「ミーナ様。オサムも人間です。人権があります。」
 「ええ、分かってるわ。SMする時だけペットにするのだから大丈夫よ。」

 ミーナはオサムの前に立ち、自分の股間をオサムの目の前に突き出した格好で、

 「どう? おまえは私のペットという事を理解出来た? セックスしないと耐えられない身体に成っているのよ。私に奉仕しなさい。そうすればあなたも気持ち良くなれるのだから。」

 オサムは涙を流しながら小さく頷いた。

 「では挿れさせて上げるわ。おいで。」

 ミーナはオサムの肛門を緩めた。途端に『瓢箪尻尾』がゴトンと音を立てて抜け落ちる。手足のリングの拘束も解かれて自由になったのだ。ミーナは足を開いてしゃがみ込んでオサムを招いている。オサムはベソをかきながら膝でミーナの方へと摺り寄って行った。三本もの****の餌を入れられ、ペニスはカウパー腺液を流し続けている。

 「ミーナさん、ごめんなさい。」

 オサムはただ謝りながらいきり勃った物をミーナの股間に押し入れていくのであった。自分の何がミーナを怒らせたのかは分からないが、論理的で冷静なミーナが怒ったのはやはり自分に落ち度があったのだろう。それが異星人の精神構造で分からないのだ。しかしこのままでは自分達の『愛』がダメになってしまう。そうなればオサム自身の生存も危うくなるのだ。地球に戻れず、もし戻れたにしてもこの身体では自分から戻る訳にはいかない。一生ミーナと一緒に居なければならないのだ。許して貰える様、怒りが治まる様にミーナとの『愛』の証であるセックスで、ただひたすら奉仕するしかなかったのだ。

 「ウフッ、凄いわ。アナライザー、オサムはとってもいいわよ。」

 ミーナはアナライザーにテレパシーを送った。アナライザーはちょっと首をすくめた様な態度で、返事をしなかった。

 オサムはただひたすらピストンを繰り返す。肉体的には頂点に達しているのだが、精神的にはミーナの怒りへの不安により発射には至らない。

 「アッ、オサム・・・。いいわよ。凄い。お願い・・・。」

 その喘ぎ声の中には怒りは感じられない。いつもの優しいミーナの感情がオーラとなって二人を包んだのだ。オサムはそれを敏感に感じ取った。ミーナの心を知ろうとしていたオサムにはミーナのオーラの変化が嬉しかった。

 「アッ、もうダメ・・・。来て・・・。」

 そしてオサムも上り詰め、同時に達したのである。溜まりに溜まっていた精液はいつもよりずっと濃く、ずっと多い量でミーナの子宮に圧入されたのだった。

 「アフーーーッ!!!」

 悲鳴にも似たミーナの叫び声が艦内に響く。そして二人ともガックリしてオサムはミーナにのし掛かったまま全身脱力状態となっていた。

 アナライザーは冷静に分析している。激しいセックスで、肉体的、精神的疲労を感知し、暫くの間回復をさせる為に放っておいたのである。

 オサムは涙が流れていた。ミーナも同じ様に涙が流れていた。どちらも歓喜の涙であった。




・・・・第2章・・・・終わり



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