・・・・・・第七章・・・・・新人類

   ・・・・数年後・・・・

 ポーンという音とともにミーナの前にシーマの立体映像が現れた。

 「ああ、シーマ。お久しぶり。お元気?」
 《いや、それはこちらからの言葉だ。それで順調なのか?》
 「ええ・・・、そうらしいのだけれど、なにぶんも初めての事なので・・・少し不安。」
 《なる程、確かに腹部が少し膨らんでいるな。それで・・・どっちなのだ?》
 「マロエ人ですが・・・、地球人とハーフの女の子と言った方がいいのかも。」
 《まもなくそちらに着く。》
 「あら、予定より早いですね。」
 《それはマロエ史上初とも言える自然分娩なのだ。ニュース映像でも見られるが、やはり現場に立ち会いたい。それにやがては私も妊娠する可能性はある。しっかりと側で見ていたいのだ。ルーナは少し渋っているが、私としてはマロエの歴史に貢献したいのだ。》
 「ルーナは相変わらず臆病ですね。最初の試験でいきなり1級と上級を飛び越え、弩級操縦士に合格したのに。」

 その時ルーナが映像に割り込んできた。

 《ミーナさん。それは違う。私はシーマ隊長の身体を心配しているからなのだ。いくら理論的に可能性があるとはいえ、不具合もあり得る。臆病ではなく、操縦士の資質とは細心の注意を払って事象を掌握するという事なのだ。》
 「なる程・・・。ルーナさん、この航海中に随分変わりましたね。」
 《変わった? ああ、確かに体型に変化はあります。この乳房はミルクの出が良くなり始めた頃に比べると体積比1.6倍ですし、ペニスも同1.5倍になっています。》

 ミーナは笑い出した。

 「それはそうですが、私の言ったのは精神的な事。ここを出発した時には『恥ずかしい』という意味が分かった為か、その乳房とペニスをいかに隠すか悩んでいましたよね。そしてピンヒールやその衣装を嫌がっていました。今は堂々と晒け出して・・・、いいえ、誇らしげにしていますね。」
 《ウッ・・・、誇るなどという我欲ではありません。いつでも隊長に精液とミルクを供給できるように表に出しているのです。シーマ隊長がいつも****の餌を大量に入れてしまう事と、器官の機能が高まっている事が相まって、いつでも放出できるようにする為に効果的である。更にこの衣服で居る事がシーマ隊長の精神的高揚をもたらす効果もあるからです。》
 「まあいいでしょう。それも事実ですから。精神的に随分と強くなったと感じますよ。」

 そこにシーマが口を挟んできた。

 《それにルーナは弩級操縦士という事でレベル的には私やミーナより上位なのだが、それでも私の下の位置に属する事を当然の事としている。もっと大型船の操縦資格や技量もあるのだが。》
 《それも否とします。技術レベルが上がったとしても、私はシーマ隊長のセックス奴隷であり家畜なのです。これは私の認識の中では絶対的レベルの差であり、『女王様』と『奴隷』の関係は普遍であり、絶対的なものです。》
 《まあ、間もなく到着する。その時に色々話を聞かせて欲しい。ミーナが不安だと言いながらも表情は明るい。》
 「シーマの表情を読む能力も随分とアップしましたね。その通りよ。私は今とても幸せです。この様に高揚した感情を嬉しく思っています。このおなかの中に新しい命が宿ったと分かった時の感情の爆発をルーナにも知って貰いたい。『いとおしい』という新鮮な『愛』の感情は至高です。そしてこの感情は絶対善だと確信しています。私の言う不安とは私自身の事でなく、この『愛娘』が無事に生まれてくるかという不安なのです。ルーナ、早く戻ってきて下さい。私と幸せを分かち合いたい。」
 《了解した。オッ・・・? おい、ルーナ! 加速が強すぎる。》
 「さすがルーナ。対応の早い事。」
 《それではそちらに着いたらまた・・・。アッ、制限速を越えているぞ。》
 《速度計の不具合と思量します。着陸後再点検を要します。》
 《おい・・・。》

 そこでパッと映像が消えた。

 「ミーナさん、大丈夫なの?」
 「シーマよりもルーナの方が早く帰還したいみたいだわ。」
 「それはボクにも分かりますよ。ルーナさんは人を羨む時はすぐに顔に出るから。」
 「羨む?」
 「うん。ボクが赤ちゃんの父親になるという事を羨ましがっているよ。本能的にシーマさんの卵巣や子宮が充分発達した事が分かっているのだと思う。だから早くここに戻り、排卵誘発剤を処方して貰いたいと思っているんだよ。」
 「いつもながら、オサムのセックスに対する推察力は凄いわね。」
 「ねえ。ちょっと飲んで欲しいんだけど。」
 「ああ、溜まったのね。もうこの時期だとセックスは難しいものね。」
 「****の餌を入れなくても、このオチンチンはかなり機能が高いから。」
 「はい、いいわよ。」

 ミーナはオサムのペニスをいとおしそうに頬張るのだった。



 「ウワッ、シーマ隊長。基地周辺は駐機スペースがありません。」
 「オオッ、こんな上空からでも分かる程混んでいるな。それに幾つもの簡易施設が建っている。おそらく学者や報道関係者だろう。ルーナ、お前もかなりのインタビューを受けるだろう。覚悟しておけよ。」
 「隊長、私は外見だけだと思いますが、隊長は次に出産になるはずです。当然、今のミーナさんの代わりのインタビューを受けますよ。」
 「む・・・、それはまずい。できるだけ基地に近く、裏側から入れる位置に着陸許可を取れ。」

 その通りにしたものの、ルーナはレポーターに取り囲まれてしまった。そして迎えに出たオサムも一緒に取り込まれてしまった。シーマだけが急いで研究所内に飛び込んでいった。


 「フーッ、聞きしにまさる。」
 「そうね。私が妊娠したという事でかなりの報道陣が集まりましたが、実際はオサムの方へのインタビューが多かったわ。それで、****の餌の食事の実演をさせられたり、その後の食事を提供させられたりで大変だったわ。私が妊娠したのでセックスしにくいから、溜まりに溜まったけれど、それも実演で搾り出させられたり、ミルクもそうよ。」
 「ウッ・・・、まさかセックスを要求されたりはしなかっただろうな?」
 「それは絶対にさせない。シーマ達にも『結婚』の意味は理解できたと思うけれど。」
 「意味は理解できたし、私もそうする。ただ、なぜ絶対の確信なのだかが分からないのだ。」
 「それは私達マロエ人も動物だったという事よ。本能に刻み込まれているのよ。それにまだ興味本位ですから、セックスを求める人は居ないですしね。だけどオサムやルーナのミルクの成分に関しては色々な分野で物議を醸しているわ。」
 「だろうな。いきなりあのデータを示されてもすぐに信じられるものではない。まして味に関してはデータの取りようもない。元々、味というのは低位の感覚とされているのだから。」


 しばらくしてオサムとルーナも駆け込んできた。

 「ミーナさん、あの騒ぎは何なのですか? 乳房とかペニスとか触られまくりで・・・。」
 「我々は歴史を塗り替える可能性のある偉大な実験者だからな。まあ、それ以上にルーナ達の外見は一般には非常に興味深いはずだから。」
 「それより私はオサムに聞きたい。ミーナさんは妊娠しているわけだが、それについての不安はないのか? そして父親・・・というのかな? それになる事に関して嬉しいというのはどういう意味を持つのだ?」
 「ウーン・・・、言葉で言うのは難しい・・・。」
 「そうだわ。ルーナは想像力が逞しいのだから、私の言う事を想像してみなさい。思考実験よ。」
 「了解した。」
 「それに途中までは実際に私が経験している事ですから想像しやすいでしょう。」
 「ミーナ、それに関しては私もやってみたい。いつになるかは不明だが、それ程先の事ではないだろうからな。」
 「そうね。シーマの方が負担が大きいのですから。」

 シーマとルーナは居ずまいを正してミーナの話を聞く。

 「シーマの子宮と卵巣はほとんど卵子が発生できる程に発達しているはずよ。生物学で受精についての勉強はしているはずですから、妊娠とはどういう事かは分かりますね。ルーナの精子とシーマの卵子が結合して子宮内で細胞分裂を始めます。」
 「その程度なら分かっている。私が知りたいのは、既に胎児として成長している子供をどう感じているかなのだ。それは苦しくはないのか?」
 「確かに腹部膨満は本来なら不快でしょう。それに今迄に感じた事のない部位での膨満感ですから。ですが、それが大変嬉しい。時々内部で動くのですが、それがまた嬉しいのです。」
 「それで・・・私の役割は?」
 「ルーナはシーマが妊娠したら取りあえずは役目は終わりですが、出産後は授乳のお仕事がありますよ。」
 「授乳? それは普通の動物では母親の仕事だが・・・。まあ、私の場合はオサムの乳房細胞を移植されているが・・・。」
 「マロエ人はその機能が退化しています。とは言え、妊娠により女性ホルモンが大量に作られるはずですから、私達も少しは発乳するでしょうね。実際、検査によると乳腺の増加が見られます。さて、ルーナ。シーマが出産したと仮定します。そしてその赤ん坊をあなたが抱いています。そして乳房をまさぐる・・・。」

 ルーナは目を閉じてその状況を想像してみた。

 「ワッ・・・、これは・・・。」

 慌てて搾乳機を手にするのだが、まだ宛がう前からも乳汁が糸を引くように溢れ出していた。

 「どうですか?」
 「乳房がいきなり活発化したが・・・。」

 ルーナは涙を流していた。

 「この感情は・・・? 私はその赤ん坊にミルクを与えたい・・・。シーマ隊長・・・。私は・・・、早く赤ん坊が欲しい・・・。隊長!! 一刻も早く妊娠して下さい。」
 「そ・・・、そうは言っても・・・。私の卵子が発生するまでは・・・。」
 「隊長! 訓練を続けましょう。セックスが発達を促すのですから。」

 たじろいでいるシーマの手を引き、強引に抱きかかえて隣の寝室へと向かうのだった。  




 内診台に乗っているミーナの周囲には数多くの機械とカメラが取り囲んでいた。円形のホールの中央部に設置してあり、大勢のマロエ人が取り囲んでいる。そしてその窓越しにもかなりの人数が詰めかけていた。

 「ミーナ、宜しいか?」

 レイム親子と数人の医師団、それとオサムやシーマ達も内診台の周りにいた。

 「はい。」

 紅潮したミーナは少し震えていた。

 「レイム。血圧及び脈拍上昇。精神的ストレスが高い。安定剤投与が良いかと。」
 「了解した。レイナ、準備を。」

 その時オサムが割って入った。

 「ちょっと待って。」

 そう言いながらオサムはミーナの手を握った。

 「頑張って。落ち着いてね。」

 「ん? 数値下降。何を施したのだ?」
 「これが地球人の能力なのだ。レイナ促進剤投与。」

 「ウッ・・・、ウムム・・・。」

 ミーナのうめき声に全員が緊張し、息を止めて見つめていた。



 「ンギャーー。」

 赤ん坊の声が響いた時、部屋全体が揺れるような歓声が沸き上がった。
 あちらこちらでレポーターらしい人物がそれぞれのカメラに向かって話をしていた。ざわついている中、一瞬静寂が起きる。何個かのセンサーを取り付けられた赤ん坊をオサムが抱き上げ、ミーナに見せるのだった。

 「ミーナ・・・。ボク達の赤ちゃん・・・。」

 ミーナは涙を流しながら手を伸ばした。その手を赤ん坊に触れさせる。

 「私の・・・私達の赤ちゃん・・・。」



 「レイムさん、色々とありがとうございました。」

 オサムはお辞儀をしながらレイムの手をしっかり握った。マロエ人には握手という習慣はないのだが、それでもオサムの謝意は感じられる。

 「いや、むしろ私の方が感謝すべきかと思う。この様な歴史的事案を担当できたという事は生物学者としては希有の事であるが、マロエ人としての誇りを満足させるものだ。」
 「でも、こんなに大勢のスタッフで万全の体勢をとって貰えたなんて・・・。お医者さんもこれ程の人数なんて・・・。」
 「医者? 医療従事者は今ミーナの側に居る3人だけだが。」
 「だって・・・。赤ちゃんの取り上げをしてくれた人とか、色々とお世話をしてくれた人達が・・・。」
 「そうであった。地球では産婦人科という分野の医療従事者が居るそうだが、ここにはその様な分野はないのだ。マロエでは人体で出産をさせる事はなかったのだから。あのメンバーは地球で言うところの獣医なのだ。マロエ母星には動物は数少ないが、属星には家畜や野生の動物が居る。ミーナの出産という事で急遽集合したメンバーなのだ。」
 「獣医・・・って・・・。」
 「出産の補助という点では秀でた人材を集めたのだ。」
 「そうですよね。」

 オサムは苦笑しながら周りのスタッフ達にもお辞儀をした。

 「専門家がこんなに大勢集まって頂けて感謝でいっぱいです。」

 レイムも笑顔で応えていた。

 「ところで本当に子供の養育はオサムとミーナだけでいいのだな? 資料によると地球ではそうらしいが、ここでは半年は保育器で養育するのだが・・・。まあ、自然分娩の記録などないので、野生児・・・、これは言語として不適当か。」

 そこに授乳を始めていたミーナが声を掛けてきた。

 「オサム・・・。これでいいの? オサムの記録にあった方法だけど。」

 ぎこちない抱き方で赤ん坊に乳房をふくませていた。しかしその顔はオサムにはまぶしい程のオーラに輝いていた。

 「うん、それでいいよ。」

 周りのスタッフ達も興味深そうに見つめていた。

 「嬉しい・・・。そして幸せ・・・。」

 その時ミーナの後ろにある機械が警報音を発した。スタッフ全員がビクッとして慌ててその数値を読み取るのだが、全員が訝しそうにしながら機械を調べ始めた。

 「どうしたのですか?」

 オサムも少し不安そうにしながら覗き込んだ。

 「異常数値だが・・・。センサーの不具合か?」
 「事前データでミーナの感情のデータ幅の変動の大きい事は理解している。しかし、このその他の項目に当たる部分が測定限界を超えている。ミーナ、今の異常数値の感情は何なのだ?」
 「私には分かります。オサムにも分かりますよね。」
 「うん。分かる。それは幸福感だよね。」

 スタッフ達は機械とミーナを見つめていた。

 「シーマ、ルーナにも分かりますよね。でも正直なところ、私自身の予想を遙かに超える至福感です。今は何も考えられない程嬉しくて・・・。」

 涙越しに見える我が子は輝いている。そして周りを囲んでいるシーマ達も別の色の輝きを感じた。

 「ああ・・・、オサム。私にもみんなのオーラが見える。これがオーラというものなのね。」
 「そうだね。みんながとてつもない幸福のオーラを放っているよ。」




 《それでオサム。『面接』の結果報告を。》

 愛娘のミームに乳房をふくませているオサムと、ミーナの前のデスクの上にネンリ隊長の立体映像が映し出されている。

 「はい。A候補としてリュアン、ケーマのペアとリュカ、ハームのペアを選出します。」
 《ほう。その組み合わせは今迄とは異なるな。》
 「そうですね。現在迄の研修生の4グループは全て母性S船長と父性M操縦士の組み合わせでしたが、リュアンチームは父性S船長と母性M操縦士。リュカチームは母性M船長と父性S操縦士。でも、相性はボクの感じる限り前回のチームよりも上だと思います。」
 《そういうものなのか。特にリュカ、ハームの場合はSM分類法の通り、操船技術に関してはあまり上位とは言えない。》

 オサムはちょっと照れ笑いをしていた。

 「でも、父親の方がS傾向だと、改造も楽ですし、母親となるべき人の子宮訓練もずっと早くなりますよ。」
 《ほほう・・・。そのデータは得ていなかったが、その根拠は?》
 「ええ、父親の改造に関してはルーナでも分かる通り、あれほど拒絶していたにも関わらず、その快感の素晴らしさに魅入られましたよね。Sの人って主体的で行動的な人が多いので、ボク達やシーマさん達のセックスを見ていたら絶対に自ら希望すると思うんです。」
 《なるほど。あり得るな。》
 「それにボクの場合はミーナさんに拘束されていたので、溜まってつらくでもなかなかさせて貰えなかったでしょう。最初の頃のルーナさんもそうだったけれど、あれほど強引にシーマさんにのし掛かっていたものね。ボクも拘束されておらず、主導権がボクにあったら、きっと激しく責め続けていたと思う。多分空っぽになる迄突っ込んでいたと思うよ。だとしたら相当訓練が進むと思いますが。」
 《だとすると、ペニス移植に関してはルーナの時のように強引に勧めなくても本人自らの希望という事でできそうだな。》

 そこにミーナも話に入ってきた。

 「今の4チームは疑似ペニスで訓練中なのですよね?」
 《そうだ。当然ながら、ルーナの時と同様に体バランスの不具合を克服する訓練だと言ってある。オサムの観察により潜在的にオサムやルーナのペニスを望ましいと思ってはいるが、改造までは望んでいない。まあ、ある程度の訓練が完了した時にはルーナ同様改造可能の身体に成っているはずだが。》

 ネンリ隊長のニヤッとした笑みにミーナ達も苦笑いをした。

 《私自身の自己分析では私はSに属すると思うが、オサムどうだ?》
 「はい。完璧にSだと思います。」

 大きな笑い声が響いていた。

 《感情を抑圧しないという事がこれ程精神状態の安定をもたらし、自分自身を向上させるという事は新しい発見だった。まだまだ世の中では認知されていないが、向上に寄与するものであれば、過去の一般常識に反する事であっても、それを受け入れるのが合理的なマロエ人なのだ。》
 「そうですね。まだまだセックスに対する誤解は大きいですが、時間を掛け、大勢に認識して貰えれば、やがてマロエの常識になるでしょう。まだ私達だけですが、もうすぐシーマが出産し、訓練中のグループもすぐに・・・。そして新人類が増えればマロエは大きく生まれ変わります。その為にも私達は更に一層の努力をします。」

 まだ苦笑いをしていたオサムがミーナをチョンとつついた。

 「え? オサム、何かおかしい?」
 「ミーナさん。言っている事は本心だという事は分かるけれど・・・。」
 「けれど・・・?」
 「ミーナさん。本当はセックスが楽しくて、それを大勢に見せ付けて自慢したいという意志が・・・。」
 「ウッ・・・。悔しいが否としない・・・。」

 《ミーナ、了解している。報告は受け取ったので、会議を終了する。私にオサム程の洞察力はないが、それでも分かるぞ。解散する。》

 パッとネンリの姿が消えた。

 「フーッ、やっぱり隊長にはばれていたね。ミーナさん、お願い。」
 「ウフフ・・・、私もよ。ミームは眠っているようね。じゃあ・・・。」

 颯爽と歩き出すミーナの後をペットと化しているオサムがペニスを突き上げたままスキップしながら着いていくのだった。



 《培養の方の進捗は?》
 「はい、ネンリ隊長。予定よりも若干早い程度です。順調に生育しています。」
 《そうか、それは良かった。》
 「それにしても遺伝子学、生物学の専門家として、たった一人の異星人の遺伝子でこれ程の成果が得られようとは・・・。」
 《そうだな。今のマロエは全ての科学的分野が限界に近いという閉塞感があった。それがオサムにより、新たに遙かな地平線が現れたようだ。》
 「効率という当然と思えていた哲学が多様性という切り口で変革を迫られています。」
 《しかし私の世代で新しいマロエの黎明期を迎えられるとは思わなかった。無邪気に楽しんでいる二人が新人類の祖になるのだな。フフフ・・・しかし良く続くものだ。》
 「エッ、モニターなさっているのですか?」
 《レイナに頼んで映像を送ってもらっている。学術的に記録する必要もあるが、楽しみの為に・・・という地球式思考によるのだが。》
 「隊長もでしたか。しかし数世代後の新マロエ人の祖先の姿を残しておく事は重要です。」
 《そうだな。私達は新しい歴史の証言者として記録を残しておかねばならない。いつも見えている同じ星空が全く新しい形に見える気がする。》

 レイムもモニターの向こう側の窓の外を見つめた。
 地平から僅かに顔を出した太陽はいつもの太陽ではなかった。よりまぶしい輝きがやはり新しいマロエの太陽だった。


・・・・・・・終わり・・・・・ 


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