種が大きく成る数週間、朦朧とした状態でリッキー達と同様に仰向けで転がっていた。段々と意識がハッキリしてきた時にはおなかがパンパンに膨らんでいた。そしてあちこちで種出産の呻きと、出産後の雌化を確認したリッキーの悲しみの声が響き始めた。リョーにも陣痛がきて、二度目で幾分慣れていたせいもあるのだが、前回と同じ様に十個程の種を出産した。

 「フーッ、やっと出た。つかえが取れた様だ。」

 弛んだ腹部と拡がった膣口をさすりながら肩で息をしていた。

 「でもおかしいな。先輩は遅い。確かメールから半年経っている筈なのに。でも、遅れてくれて良かった。女に成った格好を見られるのは勿論つらいけれど、種を産まされるところを見られるのはもっとつらいもの。」



 リョーは間もなくスコットが来ると信じている。しかしメールの手違いでスコットはあと三ヶ月は来ないのである。



 雌化したリッキーの所にはいつもの通り雄リッキーが木の実を持ってやって来る。処女リッキーのフェロモンが交尾を促進させるのだ。リョーの方は前回と同じで、膣の回復が遅く、雌リッキーが妊娠して居なくなる迄には回復しなかったのだ。
 激しい交尾を心の隅で羨ましげに見ていたのだ。発情していない間のリョーには男の精神が戻っていた。だから時間経過から助けが来ない事に対してはかなりの不安があった。誰も居なくなった女の木の森の中では寂しさが襲ってくる。その寂しさを感じないで済む様に、出来るだけ眠っていたのだ。大人しく蔦の樹液を飲み続けているリョーの身体は、本人が思っている以上に女性化していった。それは女性以上に女性化していったのである。元々がモンゴロイドのリョーは小柄である。いつも歳より幼く見られる程であるのに、バストはリョー自身が思っているよりも大きく成っていた。Gカップは越え、Hカップに近い形に成っていた。そして急激に良く育ったので、完全に半球状で、プックリと盛り上がり、全く垂れ下がらない。ウエストは極めて細く、その位置は高い。スラッと伸びた腰にふくよかで形の良いヒップが盛り上がっている。足も細く長いのだが、手もスラッとしなやかに成っていた。時々男の精神から見ていてうっとりしてしまう程の身体であった。
 リョー自身では見えない所でも素晴らしい女性化が進んでいた。顔はリョーの面影をとどめてはいるが、完全に少女であった。それも愛くるしい可愛らしさであった。髪は長く伸び、肩を越していて、濃い黒い輝きを発していた。サラサラとした柔らかさである。そして女性として一番女性である部分、つまり膣はその筋肉が極めて特殊な変化をしていた。不随意筋であるから自分自身ではそれ程動かせないが、膣自身の意志、発情している時の膣筋は極めて激しく動くのである。種出産の際に鍛えられ、どんなに大きく拡げられてもその筋肉の力は少しも衰えないのである。膣は現状に適応した形に育ったのだ。つまりリッキーのペニスの形に合う様にであった。膣口は比較的狭く、奥のかえしが入る部分で少し広がっている。そしてかえしを押さえ付ける様な丈夫な筋肉があった。欠点もあった。膣の働きが良過ぎるので、バルトリル腺が異常に活発なのである。発情すれば勿論、発情していない時でも愛液が滴り続けているのである。リョー自身も愛液の多さは自覚していた。そしてリョー自身が推察した通りに樹液や女の木の実の効果でもあるのだが、それ以上に身体自身の変化で起きているのだ。樹液や木の実はほんの引き金に過ぎなかったのだ。



 「スコット先輩・・・。どうして来てくれないのですか? 忘れたのですか? アフッ・・・、また発情し始めてしまったみたい。先輩、早く助けて・・・。」

 愛液が霧の様に噴き出し始めた。まるで小便の様に激しく噴き出る。そしてそれを待っていたかの様に雄リッキー達が寄って来たのだ。

 「ああ・・・、ボクはまたリッキー達と交尾し続けなくてはならないの? 先輩、早く来てーーーっ。スコットーーーッ、お願い・・・。」

 リョーはスコットを愛しい男性の様に思いながらリッキー達との交尾を始めたのであった。



 この星の季節はめまぐるしい。三ヶ月で一年であり、女の木の開花というイベントがその季節をハッキリと分けている。リョーにとっては開花寸前の駆け込み交尾の時期は最も忙しい時である。リョー自身はいくら交尾の数をこなしても発情は治まらないので、クヨクヨ考えている時間は無い。それに発情してしまうと精神的には完全に雌に成っている。ひたすら交尾を求め、快感の中に溺れているのであった。
 そして木に捕まったリッキーの雌化の時期が僅かにゆったりとした時間である。自分自身もそうであったが、雌化されてしまうという事は本当につらく悲しいものなのだ。そのつらさを思い出させられるのであるが、精神的には慣れてきたリョーには、その犠牲のリッキーに同情出来るだけの余裕があった。種を植え付けられてからの朦朧状態の時はリョーには時間感覚は無い。意識が戻る時は出産が始まる時である。そして発情が始まる迄の期間。だからリョーにとってのこの星の一年、リョーにとっては三ヶ月の間、意識が割りとハッキリしているのはほんの数週間に過ぎない。種出産が終えるとすぐに次の開花になるという具合なのだ。
 リョーはスコットが来る、長い時間を待つのであるが、つらく待つのは少しで、ずっと交尾の快感の中で過ごしていたのであった。

 次の開花によって別のリッキー達の雌化がされる。リョーが思っていたスコットへの延期連絡時間からは五ヶ月以上経っていた。

 「どうしたの、スコット・・・。ボクの事を忘れたのかしら。もうとっくに来てくれていい筈なのに。それとも・・・、まさか・・・。本当はもう来たのかしら。そしてボクが居なかったので、諦めて帰っちゃったとか。だとしたらボクは永久にこのままで・・・。」

 リョーは捕まったリッキー達と同じ様に悲しみの嗚咽を上げていた。

 種出産に伴うホルモン摂取により、リョーの身体は更に女性化へと進む。女性以上の女性化であった。乳房はグンと大きく成る。Jカップ程にも成る。そしてますます形はこんもりしてくる。肉体が女性化するスピードには追いつかないが、精神もどんどん女性化してくる。無意識ではあるが、仕草も殆ど女性であり、種でおなかを膨らまされて横になっている時も女性らしい恥じらいの様なものが出ていた。



 スコットにとってはリョーからのメール予定時期を既に二ヶ月過ぎていた。大学を卒業し、研究員の身分でかなり辺鄙な星での研究観測に就いていた。リョーの事は少しは心配していたが、それでも緊急連絡が無いという事でそのままにしていたのだ。世話を掛けたのに、時々の連絡が無い事に少し腹も立てていた。
 新米研究員なので、特に辺鄙な星へ追いやられた事も機嫌を損ねる原因になっている。しかし間もなく就職後半年、仕事に慣れてきて、リョーからのメールの無い事に不自然さを感じてきていた。

 「おかしいな。リョーの研究期間ももうすぐ一年になる。食料は自活出来ると言っていたが、燃料や電源は尽きてしまう筈だ。メールは来ていないけれど・・・。えーと、前回のメールはいつだったかな?」

 スコットはコンピューターを操作し、リョーからのメールを再確認する。そして差し出し日とオープン日付の違いを見て驚いた。

 「ウッ・・・。リョーのメールはどちらも半年前・・・。一日違いだ。そして俺のメールはオープンされていない。」

 慌ててスコットは緊急メールを発信した。エクスプレス料金は極めて高いのだが、そんな事には構っていられない。

 「まずいぞ。ひょっとして何か事故が・・・。よし、休暇を取って迎えに行こう。」

 スコットはメールの返信が有る迄の間に休暇申請を出していた。幸いにもスコットの星はこれから夏を迎えるので、いわゆる夏休みを取れる。取り合えずの一ヶ月はすぐに許可が出た。宇宙船にキャンプ用程度の資材を積み終えた頃メールの回答が来た。「不着」であった。つまりリョーのメールには届かない、機器故障か電源切れなのである。スコットは慌てて出発した。



 リョーは三回目の種植え付けをされていた。回を追う毎に麻薬効果が薄れるので、身体の自由は効かなくとも意識は割りとあるのであった。しかし意識がある方が精神的につらい。助けを絶望しながら、それでも時々期待する、つらい日々であった。
 おなかがいっぱいに膨れてきて、種出産が間もなくという時に懐かしいチッチリが顔を見せたのだ。

 「ロッチチリ。」
 「エッ? ああ、チッチリ。『ロッチチリ』か。懐かしい名前よ。今ではボクは完全に『リョッチチー』だものね。久しぶりね。ボクは子供も作れないからずっとこのまま・・・。」

 リョーは涙がこみ上げてきた。

 「ロッチチリ。ロッチチリ・ナカマ・キタ。」
 「エッ? 仲間?」
 「ロッチチリ・ス・ナカマ・ヒトリ・キタ。ナカマ・ロッチチリ・サガス。チッチリ・ハナシタ。コトバ・ワカラナイ。」
 「まさか・・・。スコットが・・・。お願いチッチリ。スコットを連れて来て。そうだこの翻訳器。ボクには無くてもチッチリ達の言葉は分かるけれど、スコットと話すには必要だわ。チッチリ、これを持ったままスコットと話しをしてちょうだい。」
 「チッチリ・ワカッタ。ナカマ・ナマエ・『チュコット』?」
 「ええ、それなら通じるわ。早く、お願い。」

 チッチリはリョーから受け取った腕時計型の翻訳器を持って跳ねる様に走って行った。

 「ああ、助けが来たのね・・・。スコット、早く来て・・・。ボクを助けて・・・。」

 リョーは涙を流しながらチッチリの走り去った方向を見つめていた。



 「おーい。リョーッ。どこだーっ!」

 スコットは荒れ果てたコテージの周りをリョーを探し歩き回っていた。コテージ内はかなり以前から使われておらず、埃がいっぱいであった。

 「遭難したか・・・。だからあれ程危険だと言ったのに。」

 潅木帯の中はスコットにはまだ危険が感じられ、レーダー等の準備で宇宙船の機材を下ろし始めた。長期間になりそうな予感があったのでキャンプ道具も下ろし始めていた。そこにチッチリが飛び出して行ったのである。

 「オッ。リッキーか? へーっ、可愛いもんだな。」
 「チュコット。」
 「何? アッ、それはリョーの・・・。」
 「チュコット? リョ・ナカマ?」
 「リョ? お前リョーを知ってるのか?」
 「リョ・チュコット・マツ。タスケ・ホシイ・マツ。」
 「助け? 生きてるのか? どこに居るんだ?」
 「コッチ。リョ・ナイテル。ハヤク・タスケ。」

 スコットは簡易キャンプ機材を背負い、チッチリに案内されて潅木帯に踏み込んで行った。スコットは警戒しながら潅木を分け行った。そして潅木が疎らになった広場に大きな木が何本か見えてきた。木の根元には何頭かのリッキーが横たわっている。そしてその奥の方に確かに人間が殆ど裸で横たわっていたのだ。

 「おーい、リョーッ!!!」

 その人間は呼び声に気付いたらしく、ふと起き上がったが、さっと木の蔭に隠れて顔だけ出していた。スコットにはそれがリョーではない様に思えたのだ。女だったのだ。そしてその女が声を出した。確かに女の声なのだが、

 「先輩・・・。スコット先輩・・・。」
 「やっぱりリョーか?」

 スコットが走り寄るとますますその女は身を隠す。スコットにはどうしてもリョーではなく、裸の女にしか見えなかった。木に近付き、震えながら泣いているのは確かに女なのだが、どこかリョーの面影が有った。

 「スコット先輩・・・。遅い・・・。ボク、ずっと待っていたのよ・・・。」
 「リョーなのか? しかしその身体は・・・。」
 「ボク、この女の木に取り憑かれてしまったの。それでこんな身体に・・・。」
 「取り憑かれた?」

 スコットは身構えたが、

 「今は大丈夫。取り憑く時期は限られているから。」

 スコットは辺りの様子を見回していた。先程からあちらこちらで苦しそうな呻き声が聞こえているのを不安に思っていたのだ。

 「先輩・・・、ウッ・・・、何か布を・・・・。ウク・・・、ボクも始まったみたい・・・。」

 木の蔭に身体を隠していたリョーが苦しみ始めたのでスコットは慌てた。

 「どうした? アッ・・・・・・・・・・!!!??」

 リョーが木の蔭から姿を現し、その姿を見たスコットは絶句した。

 「リョー・・・・、お前・・・。」
 「ウグッ、後で説明します。今は種を産まないと・・・。」
 「種?」

 スコットはおろおろしていた。そこにチッチリが割り込んできたのだ。

 「リョッチチー・タネ・ウム。ミンナ・マツ。」
 「『リョッチチー』? リョーの事か? 種を産む? どういう事だ?」
 「コレ・オンナノキ。リョッチチー・オンナ・ナッタ。オナカ・タネ・ハイル。モウスグ・ウム。」
 「何なんだ。良く分からない。」

 そしてリョーにも種の出産が始まった。膣口から黒い塊が次々に飛び出てくる。スコットは呆然と見つめていた。さすがに三度目となると、比較的スムーズに出産出来た。荒い息をつきながら汗を拭うリョーだが、落ち着いて来るに連れ、自分の身体の羞恥心が起きてきていた。

 「せ、先輩。ボク、恥ずかしい。何か布を・・・。」
 「あ、ああ。分かった。」

 スコットはリュックの中からシーツを引き出し、リョーに手渡した。リョーはそれを身体に巻き付けた。

 「な、何から話していいか分からん。」
 「ごめんなさい。心配掛けて。チッチリも有り難う。」
 「チッチリ・ヤク・タッタ・ウレシイ。モウ・ヒトツ・シゴト・アル。」
 「もう一つの仕事?」
 「チュコット・シラナイ。リョッチチー・キノミ・ホシイ・ナル。チュコット・キノミ・シラナイ。チッチリ・キノミ・オシエル。」
 「おい、リョー。このリッキーは何を言ってるんだ?」
 「チッチリはボクが次ぎに必要な食料の事を言っているのです。種出産の身体を早く戻すにも必要なんです。チッチリに着いて行って木の実を集めておいて下さい。その間身体を休めています。」
 「う、うん。良く分からないが言う通りにしよう。チッチリと言うのか? その木の実を教えてくれ。取りに行こう。」

 チッチリは微笑みながらスコットを先導した。リョーは横になり、スコットが助けに来てくれたという安堵感から全身脱力し、眠りに落ちていた。
 スコットの方は潅木帯の中でチッチリに教えて貰い、女の木の実を集めていた。

 「これがそうなのか? リョーはずっとこれを食べていたのか? 毒は無いのか?」
 「ズット・チガウ。リョッチチー・オンナ・ナッタ。コレ・オンナ・キノミ。オンナ・タベル。オトコ・タベル・シナイ。」

 スコットはチッチリの言葉の意味が良く分からず、ただ木の実を探して袋に詰めていた。



 スコットが戻った時、リョーはぐっすり眠っていた。スコットは簡易テントを設営し、リョーを中に引き入れようとした時、始めてリョーの肛門から木の根が伸びているのに気付いたのだ。グンと引っ張られた痛みでリョーは目覚めた。

 「何だ? リョー。これは。レーザーナイフが有る。これで切るか?」
 「アッ、ダメです、先輩。これはある条件が揃えば、勝手に抜けるのですけれど、切ると固化してしまって、内臓破壊してしまうのです。珪素を多く含んでいますから、枯れると石の様に成って、抜く事が出来ないのです。」
 「そうか、分かった。ここでの事は俺には良く分からない。お前の言う通りにしよう。お前も疲れているだろうし、俺も疲れている。特に頭が混乱している。もう少し睡眠を取れ。俺も眠る。」

 テントを少し木の方に寄せ、リョーも身体が入る位置にした。リョーは今迄の、岩の上の枯れ葉の寝床から簡易テントとはいえ、柔らかく暖かい寝床でグッスリと眠る事が出来た。



 翌朝、目覚めたリョーはスコットからの質問責めにあった。折角集めたデータは半年の間にすっかり消えてしまっていた事を聞かされ、記憶を呼び起こしながら説明しなければならなかった。しかも樹液の麻薬効果で朦朧とし、記憶の欠落もあるので大変だったが、一年ぶりのお喋りはリョーにはとても嬉しい事であった。男としての精神を保ちながら、樹液の麻薬に打ち勝ちながらの話しはリョーに疲労をもたらす。時々フッと眠りに落ちてしまう度にスコットに心配を掛けていた。その間にスコットはコテージの撤収作業を始めていた。女の木から抜けられればすぐにでも戻れる様にであった。

 「ところで、リョー。この木から離れないとダメだろう? どうやればいいんだ?」

 リョーは顔を真っ赤にした。

 「どうした?」

 リョーは表から聞こえる、最後迄残った新しい雌リッキーの交尾の声を聞きながら、

 「新しく雌に成ったリッキーが交尾しています。ボクも今迄何度も交尾してしまいました。」
 「リョー、お前が、リッキー達とか?」
 「女の身体というより、雌の身体に成ってしまったんです。」

 涙を流しながらうつ向いていた。

 「しかし、それもこの木の影響だろう。やむを得なかったんだ。生き延びる為にはな。だが、それとこの木とどういう関係だ?」
 「ボクはリッキーと違うのでまだ発情しません。でも多分明日でしょう。」
 「発情? 明日なのか?」
 「ええ、膣の感覚がボクには分かるのです。女としてではなく、雌としての感覚が準備出来た事を知らせています。」
 「準備? 何の準備だ? それにこの木の根が抜ける事とどういう関係なんだ?」
 「妊娠したリッキーからは根が抜けるのです。多分ホルモンの影響だと思いますけれど。」
 「そうか、そういう方法の寄生なのか。船に何かホルモン剤が在るかも知れない。持って来る。」
 「先輩。早目にお願いします。もし発情してしまうと、ボクの意志とは無関係にリッキー達との交尾をしてしまうんです。」
 「分かった。待ってろ。」

 スコットはテントを飛び出し、船へ戻って行った。

 「えーと、薬、薬。」

 医療器具箱の中から薬箱を取り出し、船を飛び出そうとした時、

 「おっと。宝箱も開けるか。」

 スコットは船倉の奥に入れてある箱の中からも色々取り出してリュックの奥に詰め込んだ。

 テントに戻った時には最後のリッキーも居なくなっており、リョーも眠って静かであった。スコットは薬のカプセルを一つずつ取り出して、中身を調べ始めた。

 「ウーム。ホルモン剤は少ないなあ。避妊させる薬は在っても、妊娠関係のは無いなあ。」

 スコットはリュックの中を覗き込み、宝箱から出してきた『宝物』を取り出して見つめていた。それはブラジャーだったのである。

 「色々集めた宝物だけれど、始めて本来の目的に使われる訳か。もっとも本来と言っても、まさかそれがリョーだったとは・・・。」

 スコットはそのブラの大きさを眺めていたが、

 「フム・・・。果たしてこれが合うかどうか分からない。どう見ても小さ過ぎるなあ。リョーの身体に合う宇宙服が無い以上、これを着けて貰わなくてはならない。あくまでもリョーの身体を心配しての事だぞ。」

 スコットはニヤニヤしながら眠っているリョーが纏っているシーツを静かにめくっていった。

 「顔は凄く可愛いんだよなあ。元々女っぽいところがあったけれど、ここ迄可愛いく成るとは。」

 シーツから現れた乳房はスコットにとっても驚きだった。起きている間はリョーは身体を縮め、手で隠していた。隠し切れずにはみ出た部分からもその大きさの見当は付いていたのだが、あらわな乳房はスコットの想像以上だったのだ。

 「ウホーッ、凄い。いいオッパイだなあ。まさかこれ程とは・・・。」

 それ程数多くはないが、スコットの経験したどの女性よりも大きく、形良く、見事なバストであった。更に今迄に見たAVビジュアルでさえも、これ程のバストは無かった。確かに大きく形の良いバストが無かった訳ではない。しかしそれはそのバストに対応した大きな身体の女性であった。どちらかと言うとロリコン、少女趣味のスコットには趣味が合わなかった。その点、今のリョーの身体はスコットの趣味に合う身体付き、顔付きであった。黒く輝く流れる様な長い髪、あどけなさを残している愛らしい顔、小柄で華奢な身体、それに反して極めてボリュームのあるバスト、どれもスコットにとっては理想的であった。大きさだけならJカップ程度だが、(Jカップであるだけでも極めて大きいのだが)小柄なのでそれ以上に大きさを感じさせるのであった。
 生唾を飲み込みながらスコットは更にシーツをめくった。いきなりキュッとすぼまったウエスト、まるで極端なキャラクター人形の様であった。そして丸みのあるヒップ。最近の女性には無い、か細いスラッとした足。そして少しこんもりとした下腹部は、

 「オホッ、こりゃ益々いい。」

 陰毛が全く無い。股間の割れ目がクッキリとしていた。勿論極めてセクシーなのだが、茂みに伴う大人の女の猥雑さを感じないのだ。

 「これがあのリョーなのか? まいったね。」

 スコットは下腹部に高まりを感じながら、そっとリョーの乳房に手を伸ばすのであった。プルンと細かく揺れた。

 「ウワーッ、いい感触だ。こんなに弾力性があるなんて・・・。」

 掌に吸い付く様な乳房の張りである。擦り上げる様にスコットはリョーの乳房の感触に夢中になっていた。

 「ンフッ・・・・。」

 熟睡しているリョーであるが、乳房への刺激に身体が反応をし始めた。小さ目の乳首、大きなバストなので余計に小さく見えるのだが、薄いピンクの乳首が充血し、ピョコンと突き立ってきたのだ。呼吸が大きくなり、バストの揺れが大きくなってきた。

 「あはん・・・、・・・・・・? エッ? キャ・・・ン。」

 さすがにリョーは目を覚ましてしまった。スコットが自分のシーツを剥して身体をいじっていた事に気付いて、慌ててシーツにくるまり、顔を真っ赤にしたのだ。

 「先輩! 悪戯したでしょ。」

 スコットは照れ笑いで頭を掻いていた。

 「ごめん。暫く女の身体に触っていなかったし、リョーの下着が合うかどうかを調べるつもりで・・・。」
 「下着? アッ、ブラジャー?」
 「やっぱり合わないわ。お前の・・・、その・・・オッパイはかなり大きいし・・・。」
 「先輩。ボクはこんな身体に成ってしまっていますけれど、一応は男ですからね。ホルモン異常でこんな風に成っていますけれど。」

 リョーは顔をしかめて見せた。しかしすぐに笑い出してしまう。

 「俺にはそのままの身体の方がいいけどな。」
 「それより先輩。薬は?」
 「アッ、そうだ。どうもそれらしいのが無くて。船のコンピュータで細かく検索しないとならないぞ。」
 「お願いします。このままだと、・・・・・・・・?」
 「ん? どうした?」
 「アッ、ア・・・。先輩・・・。来ちゃった・・・。」
 「何?」

 リョーは身体を固くし、細かく震えていた。

 「やっぱり、リッキーとなんか、交尾したくない。先輩・・・。」

 リョーは切なさそうにスコットを見上げた。スコットにもリョーの発散するフェロモンが急に強く成ったのが分かった。

 「リョー・・・。いいのか?」

 リョーはコクンと頷き、顔を手で覆ったまま仰向けに横たわった。リッキーの時には生理的な欲求で身を任せたのだが、さすがに長年先輩後輩であった間の二人にはこんな形の繋がりが始まるとは予想もしていなかった。スコットはズボンを脱ぎ、リョーの被っているシーツをめくった。涙を堪え、身体を震わせている姿は処女そのものであった。ぴったり合わさっている足の隙間から愛液が溢れ出ていた。その足も小刻みに震えていた。スコットの手がリョーの大きな乳房に宛てがわれる。

 「ウッ・・・。」

 リョーはピクッと震えた。両手でも持て余す程の大きさの乳房は手に吸い着く様な、柔らかいが強い弾力があった。スコットは膝でリョーの足を左右に分けた。ビクッとするリョーであったが、抵抗する事なく足は広げられていく。その間に入ったスコットはリョーの細く絞まった腰に手を当て、軽く持ち上げる様にして自分の怒張を宛てがうのだった。

 「・・・クッ・・・。」

 リョーは息を飲み込み、呼吸を止める。

 「ハッ・・・、ハウッ・・・!!」

 ムリムリムリ・・・・ヌプッ・・・

 リッキーのペニスとは違う、少し弾力性は強いが、太く暖かい物がリョーの身体の中に押し入ってきた。

 「ウッ・・・・、ウウッ・・・。」

 恥ずかしさと快感の予感の精神の軋轢がリョーを襲う。


 スコットは不思議な感動に包まれていた。今迄の何回かの経験と、全く違う新しい快感であった。処女ではないが、まるで処女を相手にしている様な感覚であった。勿論元々は男である事は頭では分かっているつもりなのだが、どうしてもそうは感じられないのだ。処女性はその初々しさだけでなく、膣その物も狭い事にある。ただ狭いのではなく、弾力性に富んだ、強い筋肉にもよる。

 (ウォッ、何だ? きついのにまるで吸い込まれるみたいだ。)

 事実、リョーの膣はリッキーとの交尾に適合し始めていた為、普通の女性器との構造が僅かに違っていたのだ。膣口は狭く、奥の方が幾分広い。その為、亀頭が中に滑り込み易いのだ。リッキーのペニスのかえしに鍛えられた為、ちょうど雁首を押さえ付ける様に膣括約筋が締め上げるのである。そして亀頭の先端に、すぐに子宮が下りて来て、強く押し付ける。いわゆる三段締めなのであるが、リョーの場合、本当に物理的に締めるのであった。

 (ウウッ、凄い! こんなのは初めてだ。)

 リョーにしても同様であった。膣に力を入れなくとも、ペニスをしっかりと喰わえ込むのである。スコットのペニスの脈動がそのまま伝わってくるのであった。

 「アッ・・・、スコット・・・。凄い・・・。何なの? ボク、こんなの始めて・・・。アーーーーッ!!!」

 子宮口がスコットのペニスの先端をえぐる。スコットはそれ程のピストンをしていない内に到達してしまった。

 「アッ・・・、クーーーッ!!」

 熱い粘液がリョーの子宮へと圧入される。ドクッドクッと音を立てて押し込まれていく。リョーにも子宮内にパッと広がっていくのが良く分かるのであった。
 スコットがガックリとリョーに伸し掛かっていく。リョーにはバストに掛かる圧力が心地良いものであった。

 (ああ・・・、本物のオチンチンの方がずっといい・・・。)

 上気した顔にうっすらと涙が流れるのであった。

 「リョー。お前の身体凄いな。こんなの初めてだ。」

 スコットはリョーに体重を預け切っているのに気付き、少し身体を浮かせようとした。

 「ああ、先輩。そのままで居て。」

 リョーは初めてのセックスに余韻を楽しんでいた。今迄のは交尾であってセックスではない。女に成っているリョーの精神が初めて満足したのであった。そのままの形で暫くじっとしていたのであった。
 スコットの方は醒めてくるに従い、不思議な気分を味わっていた。身体は完璧以上の女だが、その中に宿っているのは良く知っている後輩の男なのだ。気分的にはオカマと事を為した様にも感じるのであった。しかし感触は極めて良い。萎えてくるペニスを相変わらずしっかりと握り締めているのである。

 「どうだ? 根は抜けそうか?」
 「ううん、良く分からない。妊娠すれば離れられるのだけれど、ボクに子宮が出来てしまった感じはあるけれど、果たして卵子迄出来ているか・・・。先輩、妊娠チェック紙有ります?」
 「ああ、有るよ。でも、今妊娠したとしてももう少し掛かるぞ。」

 スコットは起き上がり、バッグを取ろうとした。

 「うん・・・?」

 ペニスがグッと握り締められていた。いわゆる膣痙攣ではないのだが、膣口がグッとすぼまったのだ。まるで指で引き入れる様にクイクイッとペニスを吸い込むのである。

 「おい、何だ? 抜けないぞ。」
 「アフッ・・・! 身体が言う事を利かないの。ああ・・・、ダメ。先輩、ごめんなさい。ウク・・・。 ボクじゃないの。身体が、・・・。」

 膣が再び活発な運動を始めた。グッと引き込んで、激しくペニスを揉みしだくのであった。一度射精して萎み始めていたペニスは、その刺激で再びムクムクとし始めてきた。

 「アハッ、まだ不十分なのか。して上げるよ。」

 スコットは向き直って、リョーの足を両脇に抱え上げた。元が男性である為か、リョーの膣は少し上付きに成っている。足を上げられた事により、リョーとスコットの下腹部はピッタリと結合したのである。

 (オオッ、この体位はいい。俺に合わせた様な身体だな。)

 リョーの足が上になればなる程、膣圧が心地良く高く成るのである。そのままでピストンを始めると、強い締め付けが始まる。スコットが身体を大きく曳いてもペニスは膣から抜けないのだ。膣口に雁首が引っ掛かる感じなのである。
 愛液が溢れ出てくるので、ピストンに合わせてジュブッジュブッと音を立て、まるで汲み上げ井戸ポンプの様に膣口から噴き出してくる。

 「アッ、アッ・・・、いいの。先輩・・・、いい・・・、もっと・・・。」

 スコットは二回目なので、落ち着いてリョーの様子を観察しながら行える。クリトリスを下腹部で擦り上げる様にしながら、リョーにより高い快感を与えようとしていた。足を抱えながらスコットは身体をどんどん密着させていく。

 (随分柔らかい身体だな。こんなに足が高く上がって。)
 「アフッ、アクーーーッ。アアーーーーッ!!」

 子宮がグッと下りてきて、ペニスの先端にえぐり込んできた。

 「ウムッ!!!」

 スコットは腰を突き込む様にしてペニスの先端を子宮口に合わせた。そしてドビュッと発射したのであった。

 「アアーーーーーッ!!!・・・・・・」

 リョーは硬直し、腕でスコットにしがみ付いた。リョーに密着したスコットはリョーの足を抱えたままであるので、太股は完全に体側にくっ付いた形になる。
 リョーは夢の中に居た。色々な思い出、しかしそれは過去だけではなかった。未来のリョーの姿、それも男としてのリョーであったが、それが次々に現れては消えていく。弾ける様に消えていくのであった。リョーの男としての精神はそれを悲しみを持って取り戻そうとしているのだが、女の心が邪魔をしている。
 長い沈黙と静止の後、リョーは少しずつ意識を取り戻してきた。しかし意識の中心は子宮内に在った。スコットの二回分の精液が子宮内を泳ぎ回っていた。

 「アッ、・・・・・・今・・・・。」

 スコットはリョーの乳房を真探りながら、

 「エッ? どうした?」

 リョーは上気している顔を更に赤くし、照れくさそうに目を瞑った。

 「うん・・・・。今、受精したわ。」

 スコットは驚きの表情でリョーを見つめていた。

 「受精した? 分かるのか?」
 「不思議ね。どういう具合に分かるのかは言い難いけれど、とにかく受精したのは分かるの。」
 「妊娠チェック紙を出そうか?」

 リョーはモソモソしながら、

 「必要ないわ。おなかの中で根が動き出したわ。ウフッ、ウンチが出そうな感じ。久しぶりだわ。」

 スコットも根が動き出した振動を感じた。そして膣圧が減ってきた事で、リョーの身体が妊娠し、セックスの必要性がなくなった事を知ったのである。リョーの身体から離れ、ティッシュで拭う。ズボンを穿いてからリョーの方に話し掛ける。

 「どうだい? 離れられるか?」
 「ええ、後少し。ああ、肛門をすり抜けていく感じ、いい気持ちだわ。」

 ほんの数分で根が抜けた。

 「やったーっ!! スコット先輩、有り難う。」

 スコットは頭を掻きながら、

 「妊娠させて有り難うなんて言われると・・・。」

 リョーは立ち上がり忌まわしい木から離れようとした。立つ事は出来ても、暫く歩かなかったせいで、フラフラして、思う様に歩けない。

 「先輩、早くここから離れましょう。何か着る物は無いですか?」

 スコットは備品をリュックに詰めていた。簡易テントをも仕舞おうとしたのだが、リョーの出産した種や女の木の実をこっそり詰めてあったので詰め込む事が出来ないでいた。

 「着る物か。お前の身体に合うのは無いな。船に何か大き目の物が在るかも知れない。悪いがそのシーツでも纏っていろよ。」
 「はい。」

 リョーはシーツで身体をくるみ、フラフラ歩き出した。

 「俺が背負ってやるよ。随分歩いていないから筋肉が鈍ってしまっているのだろう。」
 「ええ、しっかり働かした筋肉はここだけですものね。」

 リョーは悪戯っぽく笑って、自分の下腹部を指差した。
 スコットはリュックを前にし、リョーを背負う。

 「先輩、テントは?」
 「いい。捨てる。あれを詰めては背負えない。取り合えず必要ないからな。」

 リョーはスコットの背中で幸せを感じていた。逞しく広い背中は暖かく、頼りがいがある。自分の乳房が押し潰される、心地良い感触でうっとりしていた。僅かな坂を下り、潅木帯の中を背負われていく二人を木の間から数匹のリッキーが眺めていた。女の木から解放された事を残念そうに見つめていた。



 コテージにたどり着いたが長期間放置されていた為か、荒れ果てた状態であった。資料は勿論、測定機械類も植物の蔦などに絡まれている。

 「ああ・・・。ダメですね。めちゃめちゃだ。」
 「どうする、リョー。何か持って帰るか?」
 「役に立つ物が無いです・・・。それより・・・。」
 「それより?」
 「ボク、このままの格好では・・・。」
 「そうか・・・。それに・・・。」
 「・・・・・。」
 「リョー、お前妊娠しているんだぞ。下ろすのか?」
 「ああ、そうでした。着床する前に薬を飲んでしまわないと。」

 スコットは薬箱を開けて事後避妊薬を探して取り出した。暫く掴んだままその薬を見ていた。

 「いいのか? 俺としては初めての子供に成る可能性のある受精卵だ。複雑な心境だよ。」
 「変な事言わないで下さい。ボクが父親でも、まだ早いですよ。」

 スコットは少し照れくさそうに、

 「女としてのお前の子供なら産んで貰いたい気もするが。」
 「女ならね。でもホルモン剤で戻れるでしょ?」

 リョーはその薬を飲み下した。

 「先輩、ボクの身体が元に戻る迄、どこか身を隠せる所無いでしょうか?」

 スコットはある決断をしていた。しかし、少し考える振りをしてから、

 「今の俺の研究所はどうだ? 一人だし、誰も来ない。部屋に余裕も有るしな。」

 リョーは顔を明るくした。

 「先輩の所なら。お願いします。」
 「それなら行こうか。船を出すぞ。」

 船の近くの灌木の陰で、チッチリが新たな子供を抱いて出発を見送っていた。寂しそうに首を傾けていた。そしてリョーから渡された翻訳機が握られている。

 「サヨナラ・リョッチチー。サヨナラ・・・。」


・・・・第1部 リッキーの星  終り




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