母犬



 あと二週間で夏休みになる。大学生としての初めての夏休みで、クラスの連中は旅行や帰省、アルバイトのスケジュールをきちんと立てていた。ボクはどうもトロいのか、まだ決まらない。昔からそうだったのだけれど。授業も既に臨時休講が増えていて、アルバイトや旅行に出掛けて行ってしまう人もいる。今からアルバイトを捜してもなかなかいいのは見つからない。体力を使うバイトは金もいいし、多いのだけど、ボクにはまず無理。背が低くて力も無いし、第一まだ高校生に間違えられるし、この前は中学生と間違えられたもんなあ。顔が童顔だしな。あーあ、給料が高くて仕事が楽で、長期の仕事ってのは無いよなあ。
 ボクは犬伏暮緒(いぬぶし くれお)。大学一年生。田舎に帰っても仕方がないし、アルバイトで過ごそうとしているのだけれど、夏休みのバイトってのはもう殆ど決ってしまっているみたい。学生課の張紙も減ってきて、アルバイトニュースもいいのはない。女だったら身体でも稼げるけどね。

 暮緒が諦めて掲示板から離れようとした時、ちょっとした美人が話し掛けてきた。手に持っている教科書から見ると同じ大学の四年生らしい。暮緒は背が低くて童顔なので、目の前に居る女性には圧倒されてしまう。スラリとしていてもバストは大きい。とても三歳上とは思えない。

 「ねえ、アルバイト捜してるの?」
 「ええ、でもなかなか・・・。」
 「あっと、その前にあなたここの大学の生徒よね?」
 「ええ、何かそんな風には見られなくて・・・。」
 「ごめんなさいね。でも、可愛いっていえば可愛いわ。ウフッ。」

 暮緒は小さく会釈して離れようとした。

 「アッ、待って。あなた、アルバイトしない?」
 「バイトですか?」
 「ええ。いま張り出そうとしてたんだけど、良かったらどう?」

 女はバッグからワープロで打たれている紙を取り出した。



急募 アルバイト

仕事内容  犬の世話
場所 長野県北軽井沢
期間    夏休一杯
条件    住込三食付
  日給五千円
    委細面談の上



 「こんなのはどうかしらね?」
 「へーっ。夏休みいっぱいで日給五千円か。うわあ、凄い。犬の訓練所か何かですか?」
 「いいえ、別荘よ。動物の好きなおばあさんが一人で住んでいるのだけれど、もしOKなら細かい事は喫茶店で話しましょ。」
 「お願いします。」

 二人は連れだって学外へ出た。大学生同士とはいえ、まるで釣合がとれていないおかしなカップルである。ちょっと見には中学生と歳の離れた姉という風な感じだ。近くの喫茶店に入ると奥のボックスに向い合わせで座る。

 「あ、コーヒー二つね。さてと、どう? いい条件でしょ?」
 「ええ、かなりいいですよね。ちょっと良過ぎる様にも思いますけど。」
 「そうよね。ここには書いてないのだけど、バイトする人の条件がきついのよ。たまたまあなたがピッタリだったのだけれど。」
 「何がですか?」
 「別荘のおばあさんがちょっと変わってるの。と言っても極端な人間嫌いなのよ。男性嫌いと言った方がいいかな。仕事は男の人でないといけないんだけれど、大学生で男臭くない人なんてそうざらには・・・。あ、ごめん。別にそう言う訳じゃ・・・。」
 「いいです、慣れてるし、自分でもそう思ってるから。」
 「住み込みで二ヶ月間行ってるとなると、服とか、本類も持って行かないとならないわ。あなたはいつから休講? 私の車で運んで上げるけど。」
 「犬って何頭ぐらい世話するんですか?」
 「あ、そうか。二十頭位居るけれどあなたに任されるのは一頭だけよ。」
 「たった一頭?」
 「セントバーナードっていう大型犬よ。あ、大丈夫。凄く人なつこくて大人しいから。ただ、後で子犬も何頭か見て貰うかも知れない。最初の内は慣れないからね。」
 「はあ。」
 「で、いつからにするの? 今日からでもいいわよ。日給月給だから。」
 「じゃお願いします。どうせもう殆ど休講だし。荷物もあんまりないから。」
 「じゃ、すぐ行きましょうか。下宿迄案内して。」

 二人は喫茶店を出て、再び学内に戻った。学生駐車場に止めてある女の車に乗り込み暮緒の下宿に向かった。



 二人を乗せた車は長野県に向かう。バイトがない場合に備えて荷物は纏めてあり、トランクには余裕を持って積み込めた。
 暮緒は五千円の八十日分というバイト代にウキウキしていた。

 「でも凄く率のいいバイトですね。毎年あるんですか?」
 「そうよ。『専属』になって貰ってもいいわ。『ずっと』続けてもいいわよ。先方もそういう人に来て貰いたいらしいし。」



 少しにぎやいできた軽井沢本通りから更に北に入る。北軽の別荘地を通り過ぎ、更に奥に入った所にしっとりとした家が見えて来た。古くはあるが、しっかりとした造りの大きな建物だった。本当の金持ちの別荘という感じだ。玄関脇に二台の車が止まっていて、その隣に止めた。

 「獣医さんも来ているのね。ついでに紹介しておきましょうね。変人のおばあちゃんだけど、普段は優しいのよ。言葉遣いには注意してね。」

 連れられて中に入る。

 「おばあちゃん、こんにちは。バイト連れて来たわよ。」

 応接室の談笑がフッと途切れた。二人の若い女性に挟まれた品の良い老婦がじっと見つめる。

 「ルミコさん。この家に男の人を寝泊まりさせるなんて私はイヤなんだけど、あなた達がいいと言うからなのよ。で、名前は?」
 「犬伏です。」
 「イヌブシ? どんな字?」
 「犬が伏せると書きます。」

 暮緒は学生証を取り出し手渡した。老婦はそれを受け取り、老眼鏡越しにジッと見つめる。きつい表情が段々消え、

 「名前はクレオとでも読むの?」
 「ええそうです。」

 老婦は口でブツブツ呟いていたがやがて満面の笑みに変わった。

 「おばあちゃん。犬伏君は今度の夏休みだけでなく、『ずっと』続けたいそうよ。『専属』がいいって。」
 「気に入ったわ。いいでしょう。『ずっと』お願いしますわ。『専属』なんてこちらからお願いしてもやって貰えるかどうかと思っていましたのに。カオルさんジュース差し上げて。そう、特別製のジュースよ。」
 「もういいのですか?」
 「私がいいって言うんだから。この方だったら私からお願いしたいわ。」

 カオルは呆れ顔で隣の部屋へ行った。すぐオレンジジュースを持って来て、暮緒の前に勧めた。

 「おばあちゃん。何で急にOKなの?」
 「ウフフ・・・。クレオさん、飲んで下さいな。」

クレオが飲み始め、半分以上飲んだ頃、老婦が話を始めた。

 「名前が気に入ったのよ。とっても。」
 「犬が付いているから?」
 「ほら見てご覧なさい。『犬伏』 犬はまあ犬だけど『伏』の字は人べんに犬ですよ。『人犬』犬に成った人間という意味かしら。『犬』に『人犬』がピッタリ繋がっているの。それに名前が最高。『暮緒』 『暮』の字は、暮らすという意味でしょ。暮れという事なら最後。ずーっと最後迄という意味でもあるのよ。『緒』には繋がるという意味があるから、ずーっと最後迄繋がって暮らすという意味ね。読み方が『クレオ』となればもう分かるでしょ? 相手をして貰う犬の名前は?」
 「アッ、そうか。シーザーだわ。」
 「ね、シーザーのお嫁さんはクレオパトラ。つまりクレオよ。最高の組合せだわ。」

 暮緒はちょっと眠気を催してきて、あくびをかみ殺していた。

 「ねえ、ボクの名前がどうかしたのですか?」
 「私はこの家の専属の獣医でカオル。宜しくね。これからずっとお付き合いする事になる訳ね。私から説明するわ。詳しくは聞いてこなかったと思うけど?」
 「大型犬の世話って聞きましたが。」
 「そうね。世話には違いないわ。あなたに雄のセントバーナードの『シーザー』をお願いするのだけど、ちょっと変わった習性と言うか、病気と言うか・・・。あ、病気と言ってもうつる様な病気じゃないの。すこぶる健康なんだけど、発情しっ放しなのよ。普通なら春先だけなのだけれど、年中なのよね。春なら雌犬も発情するからうまく処理出来るのだけれど、それ以外の季節は喧嘩になってどちらかが傷つくし。処理させなければノイローゼ状態に成っちゃうし、大変なのよ。あなたにその犬の処理をして貰おうという訳。」

 暮緒は怪訝そうな顔で聞いていた。後ろから別の女性が大きな段ボール箱を持って来て、暮緒のテーブルの前に置いた。

 「私はマユミ。この家の家政婦ね。宜しく。シーザーのお相手して貰う為に着けて頂く道具よ。」

 マユミは箱から革製品を取り出した。鎖の付いた首輪。おかしな形のブーツ。コルセットみたいな胴当て。リングが付いている。どれも硬質の革で出来ていて、まだまだ入っている。暮緒は何か不吉な予感がしていた。

 「わざわざシーザーのお相手を引き受けて頂き本当に有り難う。シーザーは我が子と同じ位に可愛いの。ずーっと居て下さいね。」
 「一体何を・・・」
 「女の人に頼むとどうしても『獣姦』になってしまうけど、男の子なら強制猥褻罪にならないものね。『獣オカマ』は性器を使わないからね。」
 「・・・・! まさか・・・。」
 「そう。シーザーと交尾して貰うのが仕事なの。」

 暮緒は慌てて立ち上がろうとした。しかしフラッとよろめき、しゃがみ込んでしまった。

 「このジュースに何か薬・・・。」

 ろれつも回らなくなってきた。

 「アウアアワ・・・。」
 「効いてきた様ね。それではまず書類作りから始めましょう。カオルさん、クレオさんの『婚姻届』下さいな。」
 「『婚姻届』?」
 「ウフフ、保健所への犬の登録書よ。」
 「あ、なーんだ。はい、これね。」
 「えーと、届け出人は私でいいわね。住所はここで・・・。さて、名前は『クレオ』。雌雄は『雌』。『雌』でいいのよね。大型犬に○と。体重五十キロ位ね。体高は七十センチかな。毛の色は黒。年齢はどうしよう。十八は無理だし。」
 「犬は一年に人間でいうと六、七歳程度の歳をとるわ。」
 「じゃ三歳。種類は雑種でいいわね。カオルさん、後で予防注射の証明書用意しておいてね。これでよしと。おばあちゃん、これをカオルさんに届けて貰うわ。そうすればおばあちゃんのペットがもう一匹正式に増える事になるわよ。」
 「ご苦労さん。有難う。」
 「じゃあ始めましょうか。おばあちゃん、地下に連れて行って準備するわね。シーザーとの結婚式迄は待っててね。」
 「お願いするわね。クレオ、シーザーと仲良くね。」

 三人の若い女性に抱きかかえられ、暮緒は地下室に連れて行かれる。涙を流し、もがいても何もならなかった。


 地下室は窓の無い部屋だが、照明は明るい。部屋の隅にベッドが一つ在り、その上に暮緒は乗せられ、仰向けにされた。

 「さあ、色々と取り付けなくてはね。」

 三人の女性は暮緒の衣服を脱がせ始めた。抵抗しようとしても殆ど身体が動かせない。すぐ裸にされてしまった。

 「大学生とは思えない小さいオチンチンね。」
 「ねえ、この子は雌犬にするんでしょう?」
 「そうよ。」
 「オチンチンはともかく、胸も大きくしたいわ。」
 「そうね。あまり男として成長されては困るし、女性ホルモンの大量注射で胸は大きく出来る筈よ。うまくいけばお乳が出る様に成るかもね。そうなれば母親としての雌犬に成れるわ。一応ホルモンは用意してあるのだけど、まさか本当に使うとは思っていなかったの。だから量は少ないのよ。明日急いで追加を作るわ。」

 そして小声で聶く。

 「まだ巧くいくかどうか分からないでしょ? 医師法の絡みもあるから、この子が絶対に訴えない状況になってから使うわね。」

 まず犬としての証の首輪が着けられた。手には小さなリングが脇に付いた、剣道の小手の様な手袋が着けられ、革紐で縛り上げられる。手の先は丸くなっていて、掴む事は出来ない。足も同じ様なブーツで、膝宛てがあり、爪先はトウシューズの様に真っ直ぐになっている。そして手と同じ様に小さなリングが付いている。腹にはコルセットを巻き付けられ、これも革紐で編み上げられていく。これにも小さなリングが両脇に付いている。

 暮緒はただ為すがままにされ、涙を流しているだけだった。

 「さあ、これは面倒よ。注意深く取り付けなきゃ。」
 「それが例の・・・何て名前だっけ、犬の声にするやつね。」

 カオルは軟プラスチックで包まれている、魚の口の部分の骨の様な物を取り出した。

 「これが『ハウラー・ギャグ』。日本語に訳すと『吠える猿轡』とでも言うのかな。」

 暮緒はカオルの手に在る不思議な物体を見つめていたが、涙で霞んで良く見えなかった。

 「これを口の中に入れて接着するのだけれど、この両側にバネとカムが付いているの。左右で逆の動きをさせるのだけど、閉じようとすると一気に閉じちゃうのよ。そして閉じたら、今度は開けようとすると一気に開くの。途中では止まらないわ。」

 カオルはカチャカチャさせて『ハウラー・ギャグ』の動きを皆に見せた。

 「そして口の奥に薄い膜みたいな物が付いているでしょ。これは動きの良い弁になっていて、前からは殆ど抵抗無く開くの。後ろからだと少し抵抗があるわ。」
 「何の為?」
 「口から息を吸ったり、何か飲み込む時には何も問題はないわ。でも逆に息を吐き出す時には少し余分に息を吐き出さないと開かないのよ。声を出そうとするなら、いきなり怒鳴る様にしないと息が口の中へ押し出されて来ないのよ。それに一番奥の部分が舌の付け根を押さえ付ける形になるから、まともな声にはならないわね。」
 「あ、そうか。いきなりの大声で、舌が良く動かず、口の形がいっぱいに開くとすると・・・吠える声にしかならないわ。良く出来てるわねえ。」
 「では装着しましょう。口を開かせて。薬が効いているから簡単な筈よ。」

 マユミ達は暮緒の横に立ち、グイッと口をこじ開けた。

 「アガッ・・ハッ!」

 カオルは『ハウラー・ギャグ』を閉じた状態にして暮緒の口の中に押し込んだ。

 「そのまま押さえていて。接着剤を付けるから。」

 細長いスポイトを取り出し、丁寧に『ギャグ』に塗り付け、暮緒の上顎に押し付ける。そのまま『ギャグ』の下部にも塗り付けると、ちょっと開かせる。途端に『ギャグ』はパチンと開いて暮緒の口の中で完全に拡がってしまった。

 「・・・・・・。」

 暮緒は呻き声を上げたが空気は鼻に抜けてしまい、声にならない。

 「アッ!・・・アッ!!」

 勢い良く出す声なら出て行く。

 「外科用接着剤だからまず剥がれないわ。でも完全に着く迄は口の中に球状猿轡を入れておきましょう。」

 最後にこれも皮製の球状猿轡で口を封じられた。

 部屋の中央部に二つの穴が在り、そこに駐車場のガードポールの様な物を挿し込み、立てた。少し細目で、高さも低い。幅は四十p位である。暮緒はそのポールの所に引き立てられた。ポールに付いているリングはちょうど暮緒の腰の部分のリングにピッタリ填まり込む様になっていて、中腰の状態に固定されるのであった。

 「犬の精液は人体に入ると下痢させてしまうから、先におなかの中を空っぽにしておく方がいいのよ。浣腸するからね。」
 (浣腸?)
 「ファガガッ!!」

 獣医のカオルが大きなガラスの浣腸器を持って来た。

 「大型犬用なのよ。マユミさん、オマル持って来てね。」

 マユミが桶の様な物を持って来て、暮緒の尻の所に宛てがった。浣腸器の太い嘴が暮緒の肛門に突き立てられ、グッと押し込まれた。

 「アガーーー・・・・!」

 冷たい液体が暮緒の意志とは逆に直腸内へ流れ込む。大腸の方へも侵入して行くのだが、暮緒は既に強烈な便意に襲われていた。

 「ウァマッ! アガワ! ワーーッ・・・。」

 脂汗が滴り始め、下半身が痙攣をする。

 (浣腸イヤッ! 出ちゃう、トイレ行かせて。外してっ。助けてーーーーっ!!!)

 動物用の浣腸液は効果が強く、浣腸器を引き抜かれると同時に大きな破裂音とともに大便が噴き出して来た。尻の下に置いてある桶に音を立てて積み上がっていった。

 「ウワー臭い。犬のよりひどいわね。」
 「しょうがないわよ。雑食だもの。でもこれからは無臭便ドッグフードを食べさせるから、臭さは減ってくるわよ。」
 「あら、クレオさん用の食事は別に作らなくてもいいんですか?」
 「だって今日から雌犬に成るのよ。シーザーと一緒に食事しないとね。シーザーはおばあちゃんや私達を飼い主だと思って従うけど、クレオはお嫁さんの犬なのよ。その犬が私達と同じ食事をしていたら自分とクレオの上下関係がまずくなるもの。」
 「ヘエー。なる程ね。」

 女性達が笑いながら話をしているが、暮緒の耳には入らなかった。


 やがて体内の大便が殆ど出切ってしまい、便意も薄らいで来た頃、

 「終わった様ね。綺麗にしましょう。」

 汚れた尻を紙と濡れた布で拭われる。マユミが顔をそむけながら排泄物桶の処理に捨てに行った。エアコンが良く効いていて、悪臭もすぐに消え始める。グッタリしている暮緒から手が離されると、腰の所で固定されているので前のめりの格好でうつ伏せになる。ただ、尻が突き上げてはいるが。
 二人の女性は暮緒のブーツに付いているリングをポールの少し後ろに、床に固定されているリングに引っ掛けた。やや開いた格好で開脚させられたのである。そして両手も同じ様に床のリングに引っ掛けた。暮緒が起き上がろうとしても腰の高さより高くなれない様にする為である。
 マユミが戻って来たので、

 「もう殆ど準備完了よ。おばあちゃん呼んで来て。『結婚式を始めます。』ってね。」

 マユミはニッコリして再び出て行った。その間も剥き出しの格好になっている暮緒の肛門を綿棒で綺麗に掃除されている。暮緒の意識は朦朧としたものであった。



 暫くして老婦がマユミと一緒に現われた。その後ろから大きなセントバーナードが着いて来た。息を荒げているが、大人しくしている。

 「これが新しい雌犬ね。さあ、シーザー、行って上げなさい。」

 シーザーは行けと言われたので前に進み出るが、不可解な様子をしている。暮緒の前に来て「クーン」と鼻を鳴らして顔を覗き込んだ。
 暮緒は慌てて身体を起こそうとしたが鎖の為四つん這いの格好にしかなれない。シーザーは不思議そうに暮緒の臭いを嗅ぎながら回り込み様子を見ていた。
 後ろに回る時、暮緒にシーザーの股間が見えた。それは確かに発情していて、長さが十五pはあろうかという逸物であった。人と違い、毛の中から皮膚で覆われていない深紅色の棒が突き出ている。
 
「ファーーーッ!!」

 暮緒が猿轡をされたこもった悲鳴を上げたので、シーザーはビクッとした。暮緒の周りを臭いを嗅ぎながら回っているだけである。犬の習性として下腹部の臭いを念入りに嗅いでいるが、その間の暮緒の心境は心臓が破裂しそうな程であった。ただ嗅ぎ回っているだけなので老婦が口を開いた。

 「カオルさん。やはり無理ではないでしょうか? いくら四つん這いにしていても男の子は男の子ですもの。いくら発情しているシーザーとはいえ、雌犬でなければ無理ですわよ。」
 「まあまあおばあちゃん、慌てない、慌てない。今はまだ『お見合い』。クレオさんにシーザーを良く見て貰わなくちゃ。シーザーにもクレオさんの臭いを知って貰うのよ。ちゃんと『雌犬の素』が在るの。ねえ、マユミさん。五分程シーザーを外に連れて行って下さいな。」
 「いいわ。さあシーザー、おいで。」

 シーザーは老婦の顔を見てからマユミに着いて出て行った。

 「クレオさん。言う事を良く聞くいい犬でしょう。」

 暮緒の方は取り合えずホッとしていた。いくらこの女達がシーザーに交尾させようとしても、自分が人間である以上、シーザーがその気になる筈がないのだ。しかしカオルの言っていた『雌犬の素』というのは気になった。

 「はい、ここに取りい出しましたる可愛い小瓶。これが『雌犬の素』でござい。」
 「何ですの?」
 「今年の春の発情期の時に集めておいたのですけど、雌犬のフェロモンです。膣から出る、雄犬を引き寄せ、興奮させるものです。人間には殆ど臭いませんけどね、犬には凄い効果がありますよ。」

 カオルは注射器で瓶の僅かな内容物を吸い上げた。そして注射器の針を外し、いきなり暮緒の肛門に突き立てた。

 「ガッ!」

 浣腸された様には何も入って来た感触は無かった。しかし続いて大型の浣腸器で空気を送り込まれ、暮緒の腹がゴロゴロ鳴った。何をされているのかは分からなかったが、浣腸液を送り込まれた訳ではないので、排泄させられるのではないという事だけは救いだった。確かに便意は出て来ない。しかし空気で苦しさが増した事は確かであった。

 「マユミさん。いいわよ。シーザーを連れて来て。」

 マユミが犬を連れて入って来た。

 「シーザー。そこにお座り!」

 カオルが言うと、暮緒達の方を向いてお座りをした。相変わらずペニスが飛び出している。ヌメヌメしていてピクピク動いている。シーザーは僅かに漏れているフェロモンに気付いたのか、鼻を突き上げクンクンしながらキョロキョロしている。
 その時暮緒は先程の空気浣腸の影響でガスがプッと漏れた。人には分からないが、かなりの量のフェロモンが暮緒の尻の付近に漂った。シーザーの息が荒くなってくる。落ち着きを失って来ているのだ。立ち上がろうとするとカオルが「お座り!」と命令するので渋々座り直す。しかしペニスは更に延び始め、湯気が立ってきていた。暮緒は自分の体内に入れられた僅かな液体の影響である事を知り、慌て、焦った。
 シーザーは益々落ち着きを失い、息使いを荒くしていった。

 「ねえ、カオルさん。シーザーは限界ではないの?」
 「そうですね。カウパー腺液も出てきた様ですし、おばあちゃん、許して上げて下さいな。」

 老婦はニッコリ微笑み、シーザーに向かって、

 「シーザー。いいわよ。クレオと『結婚』なさい。」

 ニュアンスを読みとったシーザーはさっと立ち上がり暮緒の方へ走り寄って来た。

 「ハゴァッ、ハガッーーッ!!」

 悲鳴を上げた途端、更にガスが漏れた。シーザーは暮緒の肛門の臭いを、鼻を押し付けて嗅ぎ、大きな舌で嘗め上げた。鼻を押し付け、まるで肛門にめり込ませようとするかの様に突き立てた。尻尾はちぎれるかと思える程激しく振られ、シーザーの喜びを示していた。

 「まあ、このお嫁さんが気に入った様ね。」

 シーザーは舌の先を暮緒の肛門に挿し入れ、ひたすら嘗め尽くそうとしている様であった。しかしムックリと顔を上げ、前足を暮緒の腰の上に当てた。

 「ワッ! ワムァガーーッ!!!」

 大きく伸びたシーザーのペニスが暮緒の尻に当たる。ビクッとして尻を動かそうとするのだが、四つん這いに固定されていて動かせないのだ。それどころか、尻の動きにより、シーザーのペニスが暮緒の尻の深い部分、つまり肛門の方に寄って来てしまうのだった。そしてついに肛門にペニスの先がピッタリ合った時、先が尖っているペニスはズルッという感触で暮緒の肛門を貫いたのだった。


 この瞬間、『暮緒』は完全に『クレオ』に成ったのだった。

 「むんーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・。」

 大きな呻き声ともつかぬ悲鳴が響き渡った。
 シーザーは激しくピストン運動を繰り返す。長いペニスは段々と奥深く入って行く。直腸を通り過ぎ大腸迄届いて行くのだ。
 カオルがクレオ達の側にやって来て、

 「シーザーだけがいい気持ちでは可哀想よね。クレオにも交尾がいい気持ちになる様意識付けしておいて上げるわ。」

 そう言って、クレオのペニスを掴み、揉み始めた。肛門からの刺激で、生理的にある程度は勃起していたのだが、一気に興奮が高まっていった。その為肛門に力が入り、シーザーのペニスを更に強く締め付ける事となった。
 犬は射精する時、ペニスの付け根の部分が大きく膨れるのだ。カウパー腺液で膣内の出口の部分を大きくし、抜け難くして確実な受精をさせる為である。その状態から本当の射精を行うのだが、大型犬では三十分から一時間も続くのだ。その間は後ろ向きで繋がったまま外れないのだ。犬の膣であってそうなのだから、それより口の狭い肛門では・・・。

 「ヒグッ・・・?!」

 シーザーの下腹部が押し付けられ、直腸の仲の熱い異物がいきなり膨らみを増した。射精の為の第一段階、ペニスの付け根がボールの様に膨らみ、クレオの直腸を大きく押し拡げたのだ。それはまるで、いきなりの排泄感を生んだ。

 「ビムッ・・・?!」

 そのボールの様に成った部分が肛門を押し拡げる。

 「カオルさん?」
 「もう大丈夫よ。マユミさんだって、何度もシーザーの交尾を見ているでしょう? シーザーのペニスの膨張度は並みの犬以上よ。途中で抜けた事は一度も無かったでしょ?」

 クレオはペニスの膨らみがシーザーの射精の終了と勘違いしていた。犬にオカマを掘られてしまったショックで呆然としていたが、それでもその辱めが終えたものだと思っていた。その恥辱に激しく嗚咽をしていると、シーザーがクレオから離れるのを感じた。ペニスは填まったままであったが、後ろ向きになった時、カオルが笑いながらクレオに話し掛けた。

 「ホッとしているの? 犬の交尾は、今始まったばかりよ。普通の大型犬の場合は長くても一時間だけれど、シーザーは特別よ。まあ、暫く交尾していないから、少しは早まるとは思うけれど、それでも二時間は掛かるわよ。」
 「ビギッ・・・・?」

 シーザーが身体を前後させだしたのだ。ボール状に膨らんだペニスがクレオの肛門を押し拡げるが、それでも抜け出す事がない。それどころか、その膨らんだ部分が直腸内を前後に動き、直腸内でピストンをされている様だった。そして大腸に迄填まり込んでいるペニスが更に膨れ上がるのだった。

 (ワーッ、犬のオチンチンが大きく成る。ヒーッ、引っ張られても抜けない!! イヤだーーーっ!!!)

 シーザーの動きがクレオの直腸内のピストンを更に激しくし、ピッチが高まってきた。それは初めての『獣オカマ』であっても何を意味するのかは分かる。ペニスの硬度が増し、大腸に填まり込んでいる部分が痛む。そしてそれに合わせる様にカオルのクレオへのオスペも早まってきた。

 「おっと、シーザーの射精、思ったより早そうね。」

 そして肛門の激しい刺激と直腸の中の異物の振動が一瞬硬直した。

 (イヤーーーッ・・・!)

 いきなりの大量の精液がクレオの大腸を破裂させるかと思える程の勢いで爆発した。そしてその瞬間、クレオも放精をした。けっして快感ではなかった。しかし大量の精液注入のショックとカオルのオスペの結果であるが、クレオはそれをオカマを掘られた快感だと錯覚してしまったのだ。クレオの射精は直腸を収縮させる。そして犬の精液の大量注入は激しい下痢症状を呈し、激しい便意となって更に大腸、直腸を収縮させる。そしてそれはシーザーのペニスを強く圧迫し、クレオにも強い刺激となるのだ。収縮した大腸の中の精液は行き所を失い、大腸を満たして更に小腸へと流入するのだった。

 クレオに時間の感覚はなかった。シーザーはいつ迄も腰を前後してピストンをさせている。

 「犬の射精はまだまだ続くのよ。思ったよりも早かったのは、シーザーがクレオを気に入ったからね。ほらシーザーが二度目の射精をしそうよ。」
 (ヒーッ、太く、硬くなってる。お尻が痛い。ダメーッ!)

 カオルはシーザーの様子とクレオのペニスの状態を観察しながらオスペの激しさを増した。そして再びの大量射精はクレオの腹部を一気に膨らませる。それと同時にクレオも射精したのだ。カオルのオスペのタイミングは少しずれたかと思ったのだが、それでも同時であった。そしてクレオはつらい失神をしてしまっていた。



 暮緒は呆然としていて、時間の経過が分からない。実際にはそれ程の時間ではないのだが、意識が戻った時、目の前に老婦の笑顔が有った。肛門の痛みと後ろから聞こえてくる犬の息遣い、直腸の圧迫感と肛門の痛みで、まだ交尾中である事を知った。『獣姦』いや『獣オカマ』された悔しさと、たとえされたとはいえ射精してしまい、その瞬間が素晴らしい絶頂であったとの錯覚の矛盾に精神がバラバラになってしまっている。悔し涙ではなく自己嫌悪の涙が溢れていた。

 「シーザー、良かったわね。いいお嫁さんが出来て。クレオもシーザーに尽くしてね。」

 老婦のクレオへの呼び名も『さん』が無くなっている。クレオは自分もペットの内の一匹として数えられる事を知った。

 「クレオ、シーザーとの『結婚式』の次は当然『披露宴』よ。外して上げるわね。」
 「ねえ、カオルさん。多分うまくいってるわね。」
 「まず大丈夫よ。」

 女性達がクレオを固定している手足と腰のリングを外そうとしている時、老婦が尋ねた。

 「何が大丈夫なのですか?」

 カオル達は笑ったまま答えない。

 「さあ、クレオ。外して上げたわよ。」

 クレオは立ち上がろうとしたが、その途端、肛門を引っ張られて後ずさりしながらふらついた。

 「ファガッ?」

 クレオの肛門にはまだシーザーのペニスが入ったままになっていて、シーザーが歩いても抜けないのだった。

 「アハハハハ・・・。なってる。なってる。」
 「まあ・・・。」

 老婦もクレオ達の姿に笑いを誘われた。

 「ホホホ、そうですよね。犬の交尾後にはこれがあるんだったわ。特にシーザーはいつもそうでしたね。」

 シーザーは尻尾を振りながら老婦の方へ寄って来る。クレオは後ずさりしながら、転びそうになりながら四つん這いの姿勢を必死に保っていた。

 「ファガッ!! ワムァグァ・・・!」

 シーザーが老婦の前で止まったので、クレオは立ち上がろうとしたが、肛門が幾分釣り上がった状態なのと、ブーツの先が逆方向にカットされているので四つん這い状態を代える事が出来ない。

 「シーザー。嬉しそうね。久しぶりの交尾が出来て。ここ暫く本当に落ち着きが無かったけど、満足そうな顔に成ってるわ。」
 「おばあちゃん。これから『披露宴』よ。他の犬達にもシーザーの新しいお嫁さんを見せて上げなくちゃね。」

 シーザーは尻を揺すって引き抜こうとするが、体重の差と安定感の差で全く抜けない。後ろのクレオをチラチラ見ながら、女性達の後に着いて行った。

 地下室から階段を登るのはクレオにはかなりきつかった。シーザーは腰を下げ、出来るだけクレオに負担が掛からぬ様な体勢を取るのだが、それでも何回も階段を踏み外し、肛門の激痛に悲鳴を上げた。

 広い中庭に出て、シーザーは最初に水飲み場で水を飲む。久しぶりの交尾の緊張が取れたからなのだ。
 庭には何匹かの犬が居て、老婦達を見て集まって来た。しかし、シーザーの後ろに繋がっているクレオに気付き、警戒しながら寄って来る。シーザーはボス格なのでシーザーの顔とクレオを交互に見ながらクレオの臭いを嗅いでいる。

 (ああ、こんな格好は犬にも見られたくない。)
 「ねえ、カオルさん。シーザーはクレオをお嫁さんにしたけど、他の犬達は犬とは認めないでしょうね。」
 「ええ、今はね。クレオはまだ人間の臭いがするから。でも後二、三日よ。」
 「と言うと?」
 「シーザーにはたくさん水を飲ませておいて下さいね。後で利尿剤も上げますから。」
 「アッ、分かった。」

 マユミが大きな声を出す。老婦が「何故?」と言う様な顔で振り向く。

 「シーザーがこんな繋がったままでオシッコしたくなったらどうなると思う?」
 「なる程ね。良く考えてありますね。」
 「そうです。犬の尿は臭いがきついですから、それをそっくりクレオに吸収して貰って、それがクレオの体臭に成るんです。」

 クレオはその話を聞き、慌てて引き抜こうとしたが、足が踏んばれないので、いきばって出そうとした。シーザーのペニスは既に細く短く成ってはいるのだが、ペニスの付け根はまだ大きく膨らんだままで、肛門を内側から塞いでいる。肛門は裂けそうな程痛むのだが、どうしても出ない。

 「ウォン!」

 強くいきばったのでペニスを強く締め付けられたシーザーは唸る様な吠え声を上げた。クレオは構わずひたすらいきばり続ける。シーザーの精液の影響で下痢を起こしているので、浣腸でおなかは空っぽにはなっているが、早く排泄をしたい事もある。

 (ああ、ダメだ。抜けない。ボクの足では力が入らないし、シーザーがボクと同じ方向を向いて、ボクを押さえて後ろに身体をずらせばいいのかも知れない。でも、意志を通じさせる事は出来ないし。)

 その時、シーザーは腰を大きく揺すり始めた。いかにもペニスを引き抜こうとしている様に感じた。

 (もっと引っ張って。ボクもいきばる。)

 しかし少し緩みの出ていたペニスが再び大きく成ってくるのを感じた。シーザーは抜こうとしていたのではなく、再び腰を前後に揺すり始めたのだった。

 (ウワッ! 違う。イヤダ! ヤメテッ!)

 シーザーはクレオが余りにも肛門で締め付けた為、再び催してきていたのだった。

 「アラアラ。また始まった。よっぽどクレオが気に入ってるのね。」
 「ファワーーーッ!!」

 ペニスが再び太く長く成ってくるのをクレオは感じている。そして先端が大腸の中へ押し込まれる。

 (アウッ! 痛い。イヤダ。ヤメテーーーッ!!)

 既に二回射精しているのでなかなか達しない。

 「ねえ、見て見て。クレオのオチンチンが勃ってるわよ。」
 「あら本当。さっき抜いて上げたのにもうなのね。」
 「ひょっとして本当に気持ちがいいんじゃないのかしら。」
 「クレオ。気持ちいいの?」

 ハッとしたクレオは自分の股間を覗き込んだ。言われた通り勃起している。

 (違う! 気持ちいいんじゃないよ。ウンチしたくても出せないからだ。)
 そう思ってはみたが、確かに肛門のウズ痒さが、シーザーのペニスに擦られ、一種の快感である事には違いなかった。

 (ウッ、ウッ、犬にオカマ掘られていい気持ちになる訳がない。)

 シーザーの長い時間を掛けたピストン運動が終わりにきて、強く押し付け硬直した瞬間、クレオの大腸内に熱い液体が広がった。そしてクレオも同時に射精してしまった。

 「ウワア、ピッタリ! シーザーもクレオも同時にいったみたいね。やっぱりクレオは気持ち良かったんだわ。」

 クレオは戸惑っていた。気持ち良いから射精してしまったのだ。今度は揉まれて出されたのではない。完全に生理現象として自分の身体が快感を感じて射精したのだ。

 (違う。こんな筈ない。ボクはそんな雌犬みたく・・・。雌犬だったら交尾で気持ちいいかも知れないけど・・・。ボクは気持ち良くなんかなっては・・・。射精は気持ち良くなくたって・・・。たとえ気持ち良くなったとしても、・・・。雌犬じゃないといい気持ちにはなれない筈で・・・。)

 クレオは何とか否定しようとしているのだが、女性達の言葉がまるで催眠術の様にクレオの思考を逆へ逆へと引っ張って行ってしまうのだった。

 (アアーーン。ボクの身体は雌犬に成っちゃったーーー。)

 クレオが泣きじゃくっているのをよそに、シーザーは大きく息をついて、そのままの体勢で水を飲みに行った。クレオは伏せたままズルズル引っ張られる。かなりの量の水を飲み、伸びをする。

 「三度も続けちゃ疲れたでしょうね。今日はドッグフードの量を少し多目にして、体力回復しないとね。」
 「精力も回復しないとね。ウフッ。」

 シーザーはクレオを引きずってすぐ脇の木の根元の臭いを嗅ぎ始める。木に向かって片足を上げ掛けたが、クレオと繋がっている事に気付き一旦は足を下ろした。

 (ワッ、オシッコする気だったんだ。大変だ。随分水を飲んでいるし、早く抜かなくちゃ。)

 しかしシーザーはやはり足を持ち上げ直した。

 「ファガガッ!!」

 幾分短く成ってきていた直腸内のペニスから、温い液体がクレオの体内に逆流し始めた。
 クレオがもがいてシーザーの体内放尿をやめさせようとしているのを見て、女性達が急いでやって来た。三人掛かりでクレオを押え付け、尻を持ち上げ、シーザーのペニスが真っ直ぐに成る様にして、

 「シーザーいいのよ。オシッコ続けなさい。」

 シーザーは繋がっているクレオと女性達を見比べ、それぞれの顔色を伺っている。そこに老婦が来て、頭を撫でながら優しい声でシーザーに話し掛けた。

 「シーザー、いいのよ。クレオにはあなたのオシッコが必要なんですって。普段なら散歩しながらあちこちでするのでしょうけど、今日は続けざまに交尾したから疲れているでしょう? だから全部出してしまってゆっくり休まないとね。」

 シーザーは答える様に「ワン」と吠え、下がり掛かっていた足を大きく持ち上げた。老婦の言葉が分かったかの様に体内放尿を再開した。

 「アグァ、ウァガ・・・!!」

 クレオの腹部はコルセットで締め上げられている。その為、腹が膨れる事なく、尿は大腸から小腸へと送り込まれて行った。大型犬が膀胱に在るだけの排泄の量は人間とは比較にならない程多い。ゆうに一リットルは越える量の犬の尿を体内に入れられてしまったのである。
 浣腸で体内残滓の殆ど残っていない腸は大量の液体の処理をせざるを得ない。下痢症状が強くなっても肛門が塞がっている以上排出は出来ない。水分吸収は大腸の仕事であるが、吸収能力には限度があり、送り出せない為、小腸での吸収も始まった。一気に吸収された尿は血液の水分濃度を上げる。尿中の老廃物は肝臓で分解されるのだが、とても間に合わない。腎臓の作用もいっぱいになる。体温が上がり、汗となってドッと噴き出した。

 「ウワア、クレオ犬臭い。」
 「当り前でしょ。雌犬なんだもの。」

 言われる通り、クレオの汗の臭いはシーザーの体臭そのままだった。特に顔から流れ出る汗が鼻と球状猿轡の間に溜り、その犬臭さには驚かされた。

 「ヘーッ。普通の犬より犬臭いわね。」
 「これは汗の臭いなんだけど、その内身体中の細胞にこの臭いが染み込むわ。そうなれば汗をかいていなくても犬の臭いがするからね。小犬も慣れてくれるわ。オッパイ飲ませる仕事もして貰うんだから。」

 クレオは腹痛もあってグッタリとしていた。しかしシーザーは女性達の後を着いて自分の犬小屋へと向かって歩き出す。引っ張られるクレオは既に無意識に後向きの四つ足で歩調を合わせていた。


 犬小屋と言っても三畳の広さはある大きな物で、ガラス窓が在り、ドアが付いている。

 「シーザー。今日は疲れているでしょうし、クレオの具合いも今一つだから休んでいなさいね。」

 ワンと返事をしてシーザーは犬小屋へ入った。老婦と女性達は笑い合いながら邸内に戻って行った。



 マユミがクッキーと紅茶を準備して皆に配り、自分もソファーに腰を下ろす。

 「何か嘘みたい。こんなにうまくいくなんて。」
 「何よりも条件にピッタリする・・・と言うよりあまりにも理想に近いクレオが現われた方が驚きだわ。」
 「私もバイトの募集に行って、ひょっとして見つかるかなあ、なんて、希望ははっきり言って無かったのよ。そしたらちょうどいい子がいたでしょ。びっくりして、何としても物にしようと、内心では必死だったわ。条件提示にしたって嘘は言わなかったわよ。ただ勝手に勘違いしていただけで・・・、もっとも勘違いさせる言い方をしてたんだけど。」
 「で、カオルさん。この先はどうなさいますの?」
 「ええとですね、クレオがシーザーから抜けても逃げ出せません。歩けないですからね。逃げたってシーザーに追わせりゃすぐですし。」
 「そうじゃなく、クレオの『調教』の事でしょ? おばあちゃん。」
 「ええ。」
 「後は大した事はしませんよ。女性ホルモンを大量に注射して、特に乳腺ホルモンを多く使いますけど、胸を大きくする程度です。」
 「どれ位の大きさに?」
 「子犬を育てる為のお乳が出ればいいのですけど、ある程度の量は必要ですから、せいぜいGかHカップ位にしかしません。」
 「大した事じゃないのよ。」
 「エヘヘ・・・。それとちょっと残念だけど、どうしてもオチンチンは退化してしまうわね。それ迄にアナルにGスポットの様な物が発生するでしょうから、性感は残るわ。」
 「それとね、もし万が一、クレオが逃げ出したり、あるいは他人に私達のした事がばれたら、法律的にはどうなるのでしょう。私はこんなおばあちゃんだから先はそれ程長くないからいいけど、あなた達はまだまだ若いんだから。」
 「何言ってんのよ、おばあちゃん。まだまだ頑張って貰わなくちゃ。法律面も充分に検討済みよ。」
 「私はバイトの募集条件を言う時、嘘は言わなかったわ。それと一番問題になるのは『強制猥褻罪』だけど、肛門は性器と見なされないの。最初にクレオのオチンチンをしごいたけど、ソープランドと同じで、『性行為』ではないわね。可能性としては『監禁罪』があるけど、これだけは何とか早くシーザーに対する愛情を持って貰わないと解消出来ないわね。その為にも皆さん、クレオを完全に雌犬として扱う事が大切ですよ。少しでも人間として扱う事はクレオに希望を持たせる事になりますからね。シーザーだってプライドがあります。クレオが自分より上位に扱われる事を望みません。弱い雌犬のクレオを守っていこうと思う様にしなくてはね。」

 女性達は頷き、皆、賛意を表わした。



 シーザーとクレオは犬小屋の藁の上に横たわっていた。シーザーが伏せているので繋がったクレオもうつ伏せになっている。汗が引いてきて、体温が下がり、縮込まって震えている。相変わらず腹痛がする。腹が冷えるのが一番つらかった。
 シーザーがクレオの様子を心配そうに見つめていた。クーンと鼻を鳴らし、クレオの身体の様子を見ている。震えていて寒がっている事が分かると、シーザーは立ち上がり、身体の位置を変え、交尾の時の体勢になった。クレオは尻だけ上げた格好で伏せている。

 (ああ、また交尾したいのか。寒くて抵抗する気もないよ。どうせやられちゃうんだ。少しでも早く終わしてしまってよ。)

 開き直って交尾されるのを待っていた。しかしペニスが伸びていない。柔らかいままなのだ。シーザーはその形のまま再びしゃがみ込んで、クレオを抱きかかえる様にして横になった。

 (ボクが震えていて、寒そうだったから暖かくしてくれるのか。人間達はボクをこんな惨めな仕打ちをするのに、犬がボクを心配していてくれる。有り難う。)

 クレオが幾分かの笑顔を浮かべてシーザーを見ると、シーザーも安心した様な、嬉しそうな様子を見せた。

 (でもこの犬はボクを雌犬として心配しているのかな? でもいいや、取り合えず暖かくなってきたし、疲れた。)

 クレオは疲労の為、すぐ眠りに落ちた。シーザーは優しい表情でクレオの頭を前足で撫でていた。但し、いとしい妻を愛撫する様になのだが。



 どの位の時間が経ったかクレオには分からなかった。不快な目覚めであった。空が白んでいるので夕方からずっと眠ったまま朝になった事が分かる。外気はだいぶ寒そうなのだが、シーザーの体温で温まっている。シーザーは眠っている様なので、静かに横になっていた。肛門は相変わらず鈍痛がある。しかしペニスがかなり小さく成っていて、付け根の膨らみも無くなっている。

 (ひょっとしたら抜けるかも。)

 直腸に意識を集め、そしていきばると、ヒリ出す事が出来たのだ。

 (しめた! 離れた。)

 その途端、クレオには羞恥心が戻ってきた。そして便意が覆い被さる様に出て来た。

 (ウンチがしたい。それより犬の精液と小便を出してしまいたい。)

 ふらつきながらシーザーから離れようとしたが、シーザーはその気配で目を覚ましてしまった。慌てて逃げようとするのだが、思う様に立てない。四つん這いのまま犬小屋を出るとシーザーも後を着いて来る。そのまま茂みに這い込み、中腰で排泄をしようとした。しかし中腰では立てないので両手を前に付いた形となってしまった。溜っていた小便が迸り、ブリブリという音で肛門が破裂した。何とも犬臭い小便に、クレオは涙を流す。その様子を見ていたシーザーも別の木の陰で排泄をする為、離れて行った。

 (よし、この間にウンチを済ませて何とか逃げ出そう。)

 便意は強い。十時間以上肛門に犬のペニスを挿れられていたので、ヒリヒリしている。しかしガス以外出てこないのだ。

 (まさかオシッコも精液もボクの身体に全部吸収されちゃったのでは。ウーン、出そうなのに、出ない。)

 諦めて逃げ出そうとして立ち上がろうとした。しかしその時既にシーザーがクレオの後ろに居て、クレオの尻の臭いを嗅いでいたのだ。

 (ウワッ! しまった。何とかごまかしてでも逃げないと。)

 四つん這いのままシーザーの脇をすり抜けようとすると、シーザーも後を着いて来る。低いクレオの視線はシーザーの股間をさした。

 (アアッ! ペニスが伸びてる!)

 ペロリとクレオの尻を嘗め上げて来た。
 そして間の悪い事にカオルとマユミが出て来たのだった。

 「お早よう。あらっ? クレオ達離れられたの?」
 「ねえ、見て見て。クレオ、また迫られているみたいね。」

 クレオは哀願を求める目付きで女性達の方へ這って行った。

 「もう『ハウラー・ギャグ』は着いた筈よ。口の猿轡を取って上げるわね。」

 マユミがクレオの後頭部の鍵を外して球状猿轡を取り外した。

 (お願い。もうやめさせて)と喋ったつもりだったが、クレオの口から出たのは

 「ワン! ワンワン!!」

 犬の吠え声だったのだ。
 口の中の金具が、クレオの口を自由にはさせない。息遣いも制御されてしまっている。

 「アハハハ・・・。やった、やった。これでクレオは完全に犬に成ったんだわ。」

 クレオは慌てた。口を動かそうとするのだが、『ギャグ』に少しでも力を掛けると、一気に開いてしまい、一気に閉じてしまう。声を出すと、何としても「ワンワン」としか成らないのだ。シーザーは尻尾を振って喜んでいる。クレオがより犬に近く成って来たからなのだ。女性達がクレオを相手にしているので、ジッと待っているのだが、その間にペニスが段々と大きく突き出てきていた。カオルがシーザーへの表情を伺うと、シーザーはじれったさそうにしている。ペニスの勃起に気付いたカオルはマユミにも目配せで合図をした。

 「クレオ。さっきここから逃げ出そうとしていたでしょう。逃げられる訳はないのだけれどその精神が問題なのよ。その格好でも充分恥ずかしいでしょうけど、もっと恥ずかしい姿にしてしまえば逃げ出せなくなるわね。それに子犬にお乳を与える仕事の為にも大きなオッパイにする注射をして上げるからね。シーザーと繋がっている時にしますから。シーザー。お待たせ。いいわよ。」

 クレオがハッとして後ろを振り向こうとした時、既に前足で両脇を押え込まれていた。

 「ワン! ワンワン・・・!」
 (ウワーッ! ヤダーッ!)

 昨日と違い、アッと言う間に肛門をペニスが貫いた。クレオは尻を振って逃れようとするのだが、シーザーはピストン運動ではなくピッタリ腰を押し付け、クレオの直腸内でペニスを太く大きくしていくのだった。肛門の幽門を突き抜け、大腸迄ペニスが届いてから初めて腰を動かし始める。

 「ねえ、カオルさん。クレオはもう勃起しているみたいわね。」
 「あ、本当。」

 カオルはクレオの股間を覗き込み、勃起を確認すると、

 「クレオ。ほらオチンチン勃ってるわよ。いくらイヤそうなふりしていても身体は正直なのよ。素直になれば気持ちの良い交尾が出来るわよ。」
 「ワン!ワワーン!・・ワン・・・。」
 (違うーーっ! イヤダーッ!)

 クレオは快感を認めたくなかった。快感を感じる事は人間でなくなってしまう決定的な証拠になってしまうと思ったからなのだ。しかし激しいピストン運動の後、カウパー腺液によるペニスの肥大を感じた。その瞬間、クレオは女性的な絶頂感を認めざるを得なかった。肛門への刺激で危うく射精しそうになるのを必死に堪えるのだった。それでもシーザーが後ろ向きになり、腰を振って引っ張られると、クレオも無意識に腰を動かしてしまう。ペニスのボールの部分が肛門を出入りすると、強い便意がますます勃起を促し、激しい催しを起こさせる。慌ててシーザーの腰の動きを減殺しようとした時、一段と大きく成ったシーザーのペニスが寸前になるのが分かる。

 (ダメーッ、もうイヤーーーッ・・・!)

 クレオの拒絶は拒絶になっていない。強い直腸の締め付けはシーザーには申し分ない刺激なのだ。

 「ワォーーーン!」

 シーザーではない。クレオの遠吠えの様なアクメの声だ。シーザーの射精で大量の精液が腹部を駆け巡った時、クレオも同時に射精したのだった。そしてその白い液はクレオの精子だけでなく、人間としての自尊心と、犬と交尾させられる事の嫌悪感、そして女性達への抵抗も一緒になって飛び出してしまったのだった。
 クレオはシーザーと繋がったまま涙を流していた。悔しくて出ていた筈の涙だったのが、いつの間にか身体の歓喜により溢れてくる涙になってしまっている様な気がして、精神状態は完全に分裂している。
 暫くしてシーザーが落ち着いてきても、クレオは心ここに在らずの状態で、呆然としている。目は開いているのだが失神している様なものである。シーザーは幾らか心配なのか、クレオを嘗め上げていた。

 「シーザー。大丈夫よ。クレオは疲れちゃっているの。暫く休めば元気に成るわ。」
 「昨日から何も食べていないし、シーザーの精液とオシッコで元気が無くなるのはしょうがないものね。そうだ。今の内に注射しておきましょうね。」

 カオルは自分の車へ駈けて行った。

 すぐ医薬品箱を下げて来た。

 「これを使うのは妄想に近い程の夢だったのよ。」

 動物用の大型の注射器を取り出し、大きな注射液の瓶に針を刺す。

 「まさかこんなに早く使えるとは思っていなかったわ。ほんのお遊びで作っておいたのだけど、女性ホルモン、特に乳腺刺激ホルモンなの。粘着剤を混ぜてあるから少し固いのよ。」
 注射器に一杯に液を満たし、
 「シーザー。クレオに注射するからね。」

 シーザーは太い注射器に目をそむけたが、しゃがみ込んでクレオを正面を向かせる様にした。マユミがクレオを抱き起こし、両手をシーザーの後ろに回して押さえていた。注射針がブスッとクレオの胸に刺し込まれる。ビクッとして小さな鳴咽が漏れる。注射器の半分程入れられると針を抜かれたが、注射液は胸の皮とその下の筋肉組織の間に留まっている。プックリと可愛らしい子供の乳房の様だ。反対側に針を刺し、同じ様に注射をされる。

 「これでも暫くすれば乳房は大きく成ってくるのだけど、GかHカップにするのに早く仕上げてしまいたいから、もっと注射液を作ってくるわ。しかもうんと、限界の濃さのやつをね。マユミさん。ちょっと行ってくるわ。」

 カオルは薬品箱を下げ、車に向かって行った。クレオはまだ朦朧としている。

 老婦が出て来た。

 「マユミさんお早よう。他の方は?」

 ルミコも出て来た。

 「お二人ともお早ようございます。カオルさんは今薬を取りに行きました。持って来ているホルモン剤はつい今し方クレオに注射してしまいましたので。それと、今朝方シーザーとクレオは離れたのですけれど、二頭とも排便の後すぐ繋がりました。私とカオルさんは何も手助けせずに、繋がったのですよ。」
 「あ、本当ね。惜しかったな。もう少し早起きすれば見られたのに。」
 「で、具合いは? クレオは暴れなかった?」
 「それは少しは嫌がりましたけど、シーザーが上手に押さえて、スンナリ入りました。」
 「何かクレオの様子がおかしいわね。」
 「精神的ショックが続きましたから。猿轡を外して上げたのですが、『ワンワン』としか声が出せないでしょう。それと、シーザーとの交尾で、また射精してしまったのです。」
 「ヘーッ。交尾で射精出来るなら、もう完全にオカマに成ったって言っていい訳ね。」
 「多分シーザーを受け入れて気持ち良くなってしまった事にショックを受けているのだと思いますよ。」

 その時、シーザーが「ウォン」と吠えた。

 「あら、そうそう。食事よね。ねえおばあちゃん。シーザーはいつものドッグフードでいいと思うけど、クレオはどうしましょう。昨夜は猿轡で食べていないですけど。」
 「そうねえ。カオルさんに聞いてみないと分からないけど、シーザーと同じでいいでしょうね。食器もクレオ用のを用意して下さいね。」
 「さ、シーザーおいで。餌上げるわ。」

 シーザーは尻尾を振りながら小屋に戻る。クレオは四つ足で引きずられる様に着いて行く。
 小屋の前の大きなボールにドッグフードが入れられ、シーザーが顔を突っ込み食べ始めた。そしてクレオの前にも小さなボールが置かれ、同じドッグフードが入れられた。
 シーザーが半分程食べた頃、クレオが全然食事をしていない事に気付き、後ろを向いて「ウォン」と吠える。クレオは茫然自失の状態で、何の反応も示さない。シーザーは回り込んでクレオの方に寄ろうとするのだが、繋がっているのでクレオも回されてしまう。二、三回グルグル回って、シーザーは足を上げ向きを替えた。クレオの顔の上にシーザーの顔が寄って来る。そして一段と大きな声で「ウォン!!」と吠え掛けた。
 その声でクレオは意識を取り戻した様だ。口をピクピク震わせ、身体も小刻みに揺れて、

 「ワッ、ワーン・・・。」

 犬の吠え声を上げ、泣き伏してしまった。シーザーは心配そうにクレオを覗いている。クレオ用に用意されたドッグフードに顔を近付けさせ、「クーン」と鳴いて食事を促した。
 小手状の拘束具で涙を拭いたクレオは、シーザーの心配している心が分かった。自分が雌犬であると考えるとその心が良く分かるのである。昨日から食事をしていない上に、浣腸で全部排泄させられているので、クレオの腹には何も入っていない。

 (アハハ・・・。入ったのは精液とオシッコだけだった。)

 あっさりシーザーに肛門を貫かれたのもお腹が空いていて力が出ないせいであると思った。

 (さっき逃げ損なったのもきっとそのせいだ。このままでは本当に雌犬に成ってしまう。大人しくしている振りをしてチャンスを見つけなきゃ。ウッ。胸が痛い。アレ、少し腫れている。アッ、そうだ。さっきホルモン注射をされたんだ。このままではうまく逃げてもオッパイを大きくされてしまう。逃げようとすると注射するって言ってたっけ。ヨーシ、暫く我慢して油断を見付けて一気に逃げるぞ。)

 そう考えた時、たとえドッグフードでも栄養を付けておこうと考えた。

 (ウンチさせて貰える時は離れている筈だ。うんと大便するにも食べておかなくては。)

 クレオはボールを取って食べようとしたが手が全然用を為さない。仕方なく顔をつっ込んで食べ始めた。口も一気の開け締めなので、まるでガツガツ食べている様だ。その様子を見てシーザーは安心したのか、向きを替え直して自分も食事の続きを始めた。

 (味が殆ど無いなあ。まずいと言う程ではないのだけど、肉の生臭さが強い。これを食べないで済む時の事を考えて我慢するぞ。)



 午後になってカオルが戻って来た。

 「ただ今、おばあちゃん。クレオのオッパイの薬用意して来たわ。」
 「カオルさん、紅茶にしますか?」
 「お願いします。」
 「ではちょっと早いけどおやつにしましょう。マユミさん、用意してね。」

 カオルはルミコの隣に座り込む。

 「ごめんね。みんな準備は完全だったのに私の分だけ足りなくて。ホルモン剤は高いし、なかなか手に入り難いので必要な程用意しなかったからね。」
 「いいのよ。私だって昨日迄は夢だと思っていたのだから。」
 「そのお詫びに完全な準備をしてきたわ。但し医師法違反を犯すのだから、クレオを完全に逃走不可能にしてしまうわ。」
 「でもね、今日一日でクレオはだいぶ素直になったのよ。」
 「シーザーと同じドッグフードを少し上げたのだけど、ちゃんと食べたわ。」
 「ドッグフードを・・・。」
 「その後も大人しくしているわ。きっと諦めたのよ。」
 「ウーン・・・。違うわね。きっと逃走の為、ジッと我慢しているのよ。食事にしたって、ドッグフードは人間には不味い物よ。お腹がすいてきたとはいえ、そう簡単には食べられないわ。体力を付ける為に無理して食べたのよ。」
 「そうかしらね。」
 「どっちにしても充分気を付けないとね。早いとこ逃げられない身体にしておかないとね。」



 シーザーもクレオも何とか繋がった状態でうまく動ける様になってきた。クレオが逃げる時にシーザーに抵抗されない様、敵意を持たれない様懐柔しておこうと思い、クレオの方から努力していたのだ。それに動きを合わせる事により、肛門の痛みを少なく出来るし、拘束衣での歩行の練習にもなるのだった。
 しかし散歩しながらのシーザーの放尿には我慢しているとはいえクレオに精神的、生理的苦痛を与える。

 (ウッ。シーザーがまた足を上げた。オシッコ始めたな。お腹がゴボゴボする。ああ、便所に行きたい。ウンチしたくていきばってもお尻が塞がっていてつらい。)

 クレオはシーザーの放尿中は、いきみが来ても我慢している。いきばるとペニスを締め付け、止めてしまうのだが、それはシーザーへの抵抗を意味する恐れがあるからだ。

 「シーザー。」

 マユミが庭に出て来て呼んだ。

 「ウォン」と一声返事して、クレオを引っ張ってマユミの方へ歩いて行く。マユミは応接室へ『二匹』を連れて行った。

 「あ、来たわね。今日は曇っているからシーザーはとにかく、クレオはまだ慣れていないし、寒くなるから夜迄はここに居てもいいわよ。もちろん眠るのは犬小屋だけどね。」

 ルミコはちょっと意地悪く言った。そしてその時のクレオの表情を見ていた。そしてカオルに聶く。

 「どう? どう見る?」
 「そうね、我慢している様だけど、まだ分からない。」

 クレオは確かに我慢してはいた。シーザーの小便がお腹の中で下痢を起こさせていたのだ。しかし我慢し切れずにいきばってしまった。出ない事は分かっているのだが、生理的にいきんでしまった。そしてそれはシーザーのペニスを締め付け、刺激を与える事になる。

 (アッ、いけない。いきばっちゃだめだ。ウッ、シーザーのオチンチンが伸び始めた。)

 クレオの意志に反し直腸はシーザーのペニスを断続的に締め付けていった。シーザーの息が荒くなり、腰を揺すり始めた。

 「アラ? また始めるのかしら?」
 (ウウッ、みんなの見ている前ではされたくない。でも大人しくしていないと、諦めたと思わせておかないと・・・。)

 シーザーは腰を押し付け、再びピストン運動を開始した。クレオはじっと我慢をしている。とにかく早く終わらせてしまいたい。どうせ射精される事には違いないのだから、この屈辱的なポーズを早く解消したいのだ。そして、諦めていると言う振りをするにもクレオは腰の動きをシーザーに合わせた。シーザーのペニスは長く太く成ってきて、クレオの大腸に届く。

 (アッ、ウッ、太く成ってきた。もう少しだな。アウッ、ボクも感じているのかな? アアッ!? 何だこの感じは。アッ、アッ、いい・・・。シーザー、もっと・・・。)

 クレオは振りの為の腰の動きが、かえって自分を高めてしまった事に気付かない。周りでみんなが見ている事など忘れてしまって、夢中になってシーザーを求めてしまっていた。
 クレオの体内に熱い迸りが溢れた時、クレオも射精してしまった。そして気だるい満足感がクレオを覆った。カオルが喋り出す迄陶然と
していたのだ。

 「ウーン、分からない。クレオ。あなた、逃げ出す迄の準備にシーザーや私達を騙して、いかにも諦めたと言う振りをして皆を油断させようとしていたでしょう。」

 クレオは図星を突かれドキッとした。

 (しまった。バレてる。)
 「どうやらそうみたいね。でもあなたが考えている程うまくいかないわよ。バレたっていう事じゃないわ。今の交尾にしても、最初は早く終わらせてしまおうとして、シーザーに合わせたでしょう。」
 (アア、そこ迄見透かされているなんて。)
 「でも、その後どうだった? あなたからシーザーを求めていってしまっていたわね。演技ではなく、本当にシーザーを愛していたわ。凄い幸福感があったでしょう。論理的には人と犬という壁があるけれど、既にあなたの身体は、シーザーを受け入れ、歓ぶ身体に成ってしまっているのよ。まだ一部かも知れないけど、少なくともあなたの身体はシーザーを愛しているわ。」
 「グッ・・・・・。」

 クレオは反駁出来なかった。確かに身体には歓喜の余韻が残っている。

 「油断させる為にシーザーに従って、素直に我慢しようと思ったのだろうけれど、それは身体がシーザーを愛してしまっている事に気付きたくないという精神の反発なのよ。愛している事を認めたくないという気持ちが自分自身を偽ろうとしているのだわ。」

 カオルに強く言われ、クレオは泣き伏してしまった。確かにそうなのかも知れないと思ったからだった。
 シーザーはクレオが泣き出したのでカオルに向かって小さく唸った。

 「あ、シーザー、ごめん。虐めた訳じゃないのよ。ほら、シーザーだってあなたを愛しているから怒っちゃった。」
 カオルは肩をすくめて引き下がった。マユミが感心した様にカオルに話し掛けた。

 「カオルさん、スゴイ。心が読めるの?」
 「アラ、何感心してるのよ。あなたも騙されたの?」
 「エッ? 騙したの?」
 「シッ、静かに。聞こえちゃったら、何の効果も無くなっちゃうから。」
 「どういう事?」
 「事実の積み重ねが真実とは限らないという事よ。」
 「良く分からない。」

 老婦もルミコもカオルの話を聞きに集まって来た。

 「クレオがみんなを油断させる為に大人しくしていたのは本当らしいわ。さっきの交尾も早く済ませてしまいたいのと、シーザーに従っている振りをして心を許させる為、自分から合わせていったのも事実ね。ただ、それが自分自身の刺激になって気持ち良くなっちゃったのよ。クレオは童貞ね。でなきゃあんな話に騙されないわよ。肉欲と愛が同一の物であるなんて、乙女チックな考えは童貞そのものよ。だから射精したからシーザーを愛してるって強引に結論付けちゃったのよ。でもそう思い込んだら、そう成ってしまうものなのよ。少なくとも疑問を持ちつつ、逃亡の予防にはなるわ。」
 「やっぱりスゴイ。頭いいわ。」
 「錯話による暗示なの。催眠術の初歩よ。」
 「心理的な逃亡防止は、カオルさんにお任せするわ。」
 「これから先は割りと簡単なの。みんな、覚えてないかな? 小学校から中学校に掛けての頃だと、ある男の子が自分を好きだと言われて、最初はそんな気が無かったのに、囃し立てられている内に、何となく好きになっていくって事。」
 「アア、あるある。」
 「それと同じよ。周りで、シーザーはクレオを愛してる。クレオは態度では示さなくても、心の内ではシーザーを愛してるって言い続ける事なのよ。」
 「分かったわ。周りで囃し立てて、火の無い所に煙を立ててしまうのね。」
 「そういう事。」

 女性達のヒソヒソ話はクレオの耳には届いていない。相当大きな声で話したとしても、今のクレオの精神状態では聞こえなかったろう。
 シーザーは交尾したままの繋がった状態でしゃがみ込み、泣いているクレオを心配そうに見つめていた。その姿は、いかにもいとおしんでいる様に見え、女性達に微笑みをもたらした。

 暫くして、シーザーが何となくソワソワし始めた。立つか座るか戸惑っている。クンクンと鼻を鳴らしているのにクレオが気付いた時、老婦もシーザーの要求に気が付いた。

 「ああ、シーザーがオシッコしたいらしいわ。ねえカオルさん、どうしましょう。」
 「室内では出ないでしょう。おばあちゃん、表でする様に言って上げて下さいな。」
 「あ、クレオの身体の中にするのでしたっけね。シーザー。表に出ていいわよ。オシッコしてらっしゃい。」

 シーザーは軽く吠え、クレオを引っ張って表へ出て行く。クレオはいやがったが、「ワウン」と言う声しか出ず、ただ引きずられて出て行かざるを得なかった。
 表に出てすぐの所の大きな木の根本で、シーザーは足を上げる。そしてすぐに暖かい液体がクレオの直腸から大腸へと送り込まれていった。クレオは思わず肛門を締め付けてしまうのだが、それはシーザーの排尿を促進してしまうのだった。まるでシーザーの尿がすぐにクレオの目から流れ出る様に、涙が溢れ出た。





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