淫国志


 菊野真澄(ますみ)、十三歳。菊野愛の息子。菊野家係累の中では珍しい男児である。菊野家は殆ど子供は一人娘なのだが、愛は長女出産後、五年後に男子を出産した。愛は勿論、母の弥生、祖母のかんなも大喜びだった。そして特殊な能力のある弥生と愛は真澄に不思議な能力を感じるのだったが、それがどの様な能力かは分からず、しかも十三歳に成っても発現する様子はなかった。しかし菊野家の夫達の血を見事に受け継ぎ、真澄はまるで女の子の様に可愛らしく、小柄で華奢だった。

 「お姉ちゃん、ボク、イヤだよ。」
 「ダメッ。真澄のクラスの近藤君、私の趣味なんだから。」
 「お姉ちゃんは近藤に悪戯するつもりなんだろ? ボクが呼び出しを手伝ったら、ボクが一生恨まれるよ。」
 「それは大丈夫よ。夏休みになったら、ちょっと声を掛けるだけでいいの。それに私にもママと同じ能力があるのよ。私から離れなくしちゃうから。半年掛けて手なづければ、来年の春から手術をしてしまうつもり。そうすれば来年には私のいい道具に成るわね。それとも真澄が近藤君の代わりに大きなオチンチンに成る? オッパイも大きくしたい?」
 「よしてよっ! ボクはパパやお爺ちゃんみたいには成りたくないよ。ボクはみんなと違ってまともなんだから。」
 「ウフフ・・・。そうね。将来真澄のお嫁さんに成る人が、ママ達の様なスケベだとは思えないわ。だけど、性格的には真澄はパパと同じよ。ある程度、覚悟はしておくのね。」

 「そんな事ないよ。」

 姉の優美はニコニコしていたが、母や祖母と迄はいかないが、ある予感を確信していた。



 「コニチワ。」
 「はあい。」

 片言の日本語の元気な声が飛び込んできた。

 「ママさん、居る?」
 「アッ、麗華さん、ちょっと待ってね。呼んできます。」



 二年前から愛や弥生の仕事をしている中国人の美人だった。そして最初から真澄には親しく優しいのだった。そして真澄の顔を見ては遠くを眺める様な瞳で、悲しそうな表情をするのだった。その事については以前に恥ずかしそうに話してくれた。

 「私、好きな人居た。その人、真澄に似ている。パパさんと同じよ。私の国ではちょっと変わった人、だけど私の愛しい人。」
 「麗華さん、パパと同じで真澄に似てるって?」
 「ウフフ・・・、最初、真澄そっくりだったよ。そして『雲体風身』の術でパパさんと同じ身体に成ったの。」
 「ゲッ、冗談。」

 真澄は眉をしかめた。

 「その方、今は?」
 「分からない・・・。その人、戦の中、私逃がした。ロンシーもすぐに続いたけれど、霧の中で離れてしまった。」
 「戦? 奥地ではまだ内戦が? ロンシーって?」
 「ロンシー、名前違う。俗称。ジェンチョンが名前。私、ジェンチョン追って来た。そして日本来た。私の国と全然違う。誰も知らない、言葉分からない。ママさんに出会った。ママさん、私の友似ている。伝心術使える。私、ママさんに色々教わった。ママさん居ない、私死んでいた。恩人。」
 「伝心・・・術?」
 「私の国、使える人少ない。だけど、この国、殆ど居ない。ママさん、大ママさんだけ。心伝わる。」
 「ママに聞いたけれど、麗華さんは気功が出来るんだよね?」
 「それも不思議ね。私の国、誰でも出来る。勿論、程度差ある。私良く出来る。だけどママさんに似ていると言った友、インユエ、凄い。私の愛しい人、ジェンチョン、氣、使えなかった。だからインユエが教えた。」

 そしてクスッと笑った。

 「だけど下手。氣の力、凄く強くなった。だけど使い方が下手。とんでもない事になったけど、私には嬉しかった。パパさんと真澄に会って嬉しかったよ。ジェンチョン、きっとあなた達の親戚かも知れないって思った。菊野さんに探して貰えると思った。だけど居ない・・・。」

 そして再び悲しそうな顔をした。

 「ダメッ、またつらくなる・・・。」

 真澄は麗華に色々と聞きたがったが、恋する人の話になるとつらそうになるので、それ以上の深入りは出来なかった。



 「麗華さん、いらっしゃい。」

 愛が優美と一緒に下りてきた。

 「今日は。」
 「まだ早いけれど、出掛けます?」
 「出掛けるって、ママ、どこへ?」

 真澄は怪訝そうに尋ねた。

 「麗華さんのお仕事よ。映画の撮影。」
 「アッ、スタントか。」

 麗華はその身軽さから、映画のスタントをしているのだ。弥生の紹介なのだが、それは素晴らしい能力だったのだ。しかも中国古式武術には鬼気迫る迫力があり、中国の映画会社からも注目されているらしい。
 車に乗って出掛ける麗華達を姉弟は見送っていた。



 「麗華さん、少しは慣れました?」
 「まだ・・・。毎日新しい事に目が回る。だけど・・・。」
 「だけど?」
 「戦が無い事がこんなに素晴らしいとは・・・。ロンシーは戦の無い世界から来たと言っていた。そんな世界が在るなんて信じられなかった。そして・・・。」

 麗華は照れ臭そうに微笑んでいた。

 「あら、何ですか?」
 「ロンシーの世界は淫猥な世界だと聞いていた。そしてその通りだったよ。」
 「麗華さん。一般的には違うのよ。私達は特別の環境に居るだけ。あなたもその特別な能力と、特別の経験をした人ですから仲間に成って頂いたのよ。そして・・・、将来は・・・。」
 「将来?」
 「ううん、まだいいわ。もうすぐ分かりますから。」



 「冬休みの準備は?」
 「準備って?」
 「アッ、真澄に言っていなかったっけ?」
 「何をさ・・・。」
 「みんなでスキーに行くのよ。」
 「聞いてないよ。いつ? どこ?」
 「新潟よ。ママ達と麗華さん、大晦日に出掛けるの。」
 「ヘーッ、ホテル?」
 「まさか。心生学園大学女子部のヒュッテよ。」
 「女子部? ママ達って・・・、パパも行くんでしょ? 女だけしかダメなんじゃないの?」
 「そうよ。パパは女で通用するし、真澄だって服を着替えるだけで充分OKよ。」
 「服って・・・、女装? やだよ。」
 「イヤならいいわよ。一人で寂しいお正月を迎えるのね。」
 「だって・・・、よその人に・・・。」
 「よそって・・・、内の家族とお婆ちゃん達、それと麗華さんだけよ。」
 「それだけ? 一般の人は?」
 「居ないわ。貸し切り状態よ。」
 「良かった。それならいいよ・・・。エッ? それなら女装の必要なんかないじゃない。」
 「昼間は管理人さんが居るでしょ? それに、本当は麗華さんの為でもあるのよ。」
 「麗華さんに?」
 「麗華さんの離ればなれの旦那さん、パパみたいなニューハーフで真澄にそっくりって言っていたでしょう。最近麗華さんは環境の違いのストレスで少しまいっているわ。私に分かる位に氣の力が落ちている。ママには良く分かるらしいのだけれど、かなり精神的な疲労があるらしいわ。だから慰めて上げようって。」
 「だけど・・・、逆効果じゃないの? かえってつらくしてしまうんじゃ?」
 「それは大丈夫よ。ママもお婆ちゃまもOKしているのよ。あの二人の予知能力には間違いがないもの。ただ・・・。」
 「ただ?」
 「アッ、何でもないわよ。」
 「まさか・・・。」

 真澄は少し青ざめた。

 「ボクを麗華さんの玩具に? やだよ! パパと同じ身体になんか・・・。」
 「何を言っているのよ。私の家系は確かにスケベよ。だけど愛が最優先なのよ。まして真澄は私の弟。愛情の無い結婚なんか願う筈ないじゃない。そうね、安心させて上げようか。私にもママ達程ではないけれど、変態に関する予知能力はあるわよ。真澄はママ達、或いはそのグループによるニューハーフ化手術は受けないわよ。」
 「本当?」
 「『将来に渡って』、絶対にないわ。」
 「良かった。お姉ちゃんはスケベでも、スケベに関しては嘘は言わないからね。」
 「何よ。だけど、自分から望んでとか、別の原因で成るという事迄は分からないのよ。」
 「望む訳なんかないよ。」



 「これ?」
 「そうよ。私が中学の時の服。」
 「だって、こんな派手な色の・・・。」

 優美が真澄に着せようとしているスキーウエアは、幾分紫掛かった淡いピンクの物だった。フワフワのセーターに同じ色のタイツとスカート、そして同じ色のエナメル質のダウンジャケット。それだけでなく、手袋も帽子も同じ色なのだ。

 「スキー場では当たり前の程度よ。これに合わせて、髪にも同じ色のメッシュと・・・。」
 「化粧迄?」
 「そう。真澄は化粧映えするから。それに麗華さんにも・・・。」
 「麗華さん? 麗華さんの旦那さんって・・・、こんな?」
 「そうよ。ママがちゃんと聞いていたのよ。向こうで会わせて驚かせるって。」

 真澄は仕方なく着替えようとした。

 「ちょっと待って。これもよ。」
 「ゲッ!」

 優美が差し出した物は、やはり同じ色のパンティーだが、ラメ入りのけばけばしい物だった。

 「何で、こんな物迄?」
 「真澄ならそのままでも、ちょっと見には可愛い女の子に成れるわよ。だけどね、どうしても所作に違和感があるのよ。だから女物の下着を着けているという意識で、内面から女っぽく成れるのよ。」
 「だけど・・・、女物のパンティーだと・・・、出ちゃうよ。」
 「何を生意気な。真澄のオチンチンが『まだ』そんなに大きくないのは知ってるわよ。勃ったところでもね。」
 「これもダメなの?」
 「ダメよ。ママもお婆様も言っていたわ。」
 「ママ達が?」

 真澄はなぜ母達がそれ程に女装に固執するのか不思議だった。



 「優美、真澄の支度は?」

 愛が部屋を覗き込んだ。

 「まあっ! 想像以上ね。」
 「ママ・・・、こんなにする必要があるの?」
 「いいわねえ・・・。真澄が私の子供でなかったら、依頼なんか無しでも改造、調教したいところね。」
 「ママッ!」
 「お化粧は? アッ、優美、目元をもっとクッキリと。口紅は小さ目にして。」
 「そう? 真澄、こっち向いて。」

 真澄は我慢して化粧をされていた。麗華を喜ばせる為という目的意識があったからだ。

 「そうね。そんなものね。」
 「終わり? だけど・・・。」
 「だけど、どうしたの?」
 「麗華さんに見せれば終わりでしょ? 何だか、そう思えなくて・・・。」

 愛はニッコリした。

 「そうね。麗華さんに見せる迄の、ほんの少しの・・・、だけど真澄には長い時間かも・・・。頑張るのよ。」
 「何を頑張るのさ。スキーの間だけでしょ?」
 「ううん、麗華さんに見せたらおしまいなのよ。」
 「いいの? やっぱり恥ずかしいよ。早く脱ぎたいよ。」

 愛は少し心配そうな表情で呟いていたが、その言葉は真澄には聞こえなかった。

 「恥ずかしいから脱ぐのではなく、脱がされて恥ずかしくなるのよね。可哀想だけれど、真澄の運命なのよ。頑張ってね。」

 ちょっと涙ぐむ母親であり、それと気付いた優美も寂しさと悲しさを感じるのだった。



 愛達四人の親子は、外見からすると美人のグループだった。そして巨乳の父だけが真澄を心配していた。愛や優美と違い、超能力の無い父は、愛から話は聞いていても心の底からは信じられず、ただオロオロしているのだった。車の中で、不安そうに真澄をチラチラと見ている。それは真澄にも伝わり、何か不安な雰囲気を醸し出していた。

 「ねえ、みんなどうしたの? 変だよ。」
 「そう? そんな事ないわよ。」
 「パパ、何か隠しているの?」
 「う・・・、ううん、別に?」
 「真澄、大丈夫よ。今夜は麗華さんの為の催しなのよ。信じていいわ。真澄は麗華さんを幸せに出来るのよ。ただ・・・、ちょっと時間が掛かるのだけれど、それもすぐ。本当に一瞬なんだけれど、真澄にはとても長い時間に感じるかも知れない。麗華さんを幸せに出来るのは、本当に真澄だけなの。そして真澄も幸せになれるのよ。大丈夫よ。」

 言葉としては何か信じられない雰囲気ではあるのだが、愛の強い念、氣が真澄を覆うのが分かる。氣は本物であり、偽りの氣は発せられない事を何となく分かるのだ。だから愛が本当に真澄の事を元気付けている事は分かる。ただ、何の為に元気付けているのかが分からない不安があるのだった。

 「スキー場に行くのだけれど、大事な用があるの。ちょっと寄っていくわよ。」」
 「用?」
 「ええ。ここで用を済ませ、お婆様達と麗華さんと合流してヒュッテに向かうのよ。」

 車は暗い岩山の麓に止まった。

 「ここは竜門岩と言って、竜の産まれた岩と言い伝えられているわ。」

 ヘッドライトで浮かび上がった岩肌には、言われてみれば竜らしい模様に見えない事もない。しかしそれ以上に、真澄にも何か不思議な力を感じる岩だった。

 「麗華さんと、ママとお婆様が初めて出会った場所がここなのよ。」
 「ヘーッ・・・。だからここで?」
 「そうよ。麗華さんには思い出の場所なの。麗華さんの旦那様もここに来る筈だったの。麗華さんの旦那様、ロンシーさんは最初に出会った時に着ていたのが今の真澄の格好なのよ。聞いていたでしょうけれど、ロンシーさんはパパと同じニューハーフに成ってから麗華さんと結婚したのよ。」
 「ママ、ボクはイヤだよ。パパみたいに成ってロンシーさんの代わりだなんて・・・。」
 「当然よ。真澄は真澄であり、麗華さんの旦那様にはそのままでは成れないわ。麗華さんにとっての愛する人はロンシーさんなのよ。アラッ? あの車・・・? 麗華さん達らしいわね。真澄、その岩の前で待って上げるのよ。」

 真澄は竜門岩の前に立ち、麗華の乗った車に手を振った。車が停止する前に、麗華はドアを開けて飛び出してきた。悲鳴の様な歓喜の声を上げて。

 「ジェンチョン・・・?!」

 駆け寄ってくる麗華もなぜか真澄と全く同じ服装だった。しかし幾分薄汚れていて艶が無く、小柄な真澄の様にダップリとしてはいない。

 「ジェンチョン? じゃないね。真澄ね?」

 少しガッカリしている事は真澄にも分かるのだった。それでも嬉しそうに真澄を見回していた。

 「そっくりね・・・。私が最初にジェンチョンに出会った時と同じよ。」
 「麗華さん。」

 車の中から弥生が声を掛けた。

 「はい?」

 「ガッカリさせて申し訳なかったわ。真澄はジェンチョンではないけれど。麗華さん、真澄っていう字は知っている?」
 「字? マスミの?」
 「そう。あなたの国と同じ文字を使っていても、読み方は違うのよ。『マ』は真実の真。『スミ』はサンズイに登るという文字。」
 「真・・・、澄・・・a@ジェン・・・、チョン・・・a@どういう事? 真澄が・・・? だって・・・、違う・・・。」
 「麗華さんが会う前のジェンチョンが真澄なのよ。」
 「エエーーッ?」

 麗華は涙を拭いながら真澄に手を伸ばした。真澄も意味が分からず、麗華の手を握った。



 ピシーッという音とともに雷が落ちた・・・、と思える強い光に包まれた。強いショックで真澄は意識を失い掛けるのだった。



 「キャーッ!」

 大勢の女達の悲鳴に真澄は失神を免れた。しかしハッと気が付くと、明るい青空であり、広い砂地に倒れていた。

 「エッ、ここは?」

 真澄は驚きで辺りを見回した。大勢の中国の時代劇風の女性達が遠回りに囲んでいた。

 「撮影所? ママは?」

 聞き慣れない言葉にオロオロしていると、やはり時代劇風の女の兵士達が飛び込んできて、両刃の刀を抜いて真澄を取り囲んだ。

 「ヒーッ、何? 何なの?」
 「*****!」
 「***、*****?」
 「エッ、何? 何言ってるの?」

 女達の言葉は真澄には理解出来なかった。それが中国語らしいという事は分かるのだが。しかしまだ現実感が無く、向けられている刀が本物には思えなかったのだ。

 「*****?」

 そこに老人と女性が輪の中に入ってきた。健康そうな元気な老人と、弥生と同じ程度の中年の女性だが、周りの女達とは少し違い、色が黒く、どちらかというと、インド人の様な容貌を感じる。老人は笑みをたたえて暫く真澄を見つめていたが、やがて驚き、感心した様な顔で見つめていた。そして連れの女性に話し掛けるのだが、その女性は頷き、目を伏せた。

 《おまえは誰? どこから来ました?》
 「エッ、何?」
 
いきなり頭の中に声がした。声とは違う、何か意思だけが響いたという感覚だった。

 「誰? あなた? ここはどこ?」

 女性は目を開いて真澄を見つめているが、何か困惑の表情だった。

 《私の心は届いていますね? あなたの言葉は分かりません。心で返して下さい。》
 「心で? 分からないよ。それより、ここは?」

 女性は隣の老人に何か話していた。老人の意識は女性の様には伝わってこないが、それでも女性がその老人の言葉を意識すると、僅かに漏れてくるのだった。

 《老師、この子は伝心術が出来ない様ですが・・・。ええ。異様な氣を感じますので、当然と思っていました。》

 老師と呼ばれる老人もしげしげと真澄を見つめていた。そこにやはり刀を携えた少女が割り込んできた。真澄より少し歳上なのだが、かなり大人っぽく見える。そして麗華に良く似ていた。

 「麗華さん? じゃないよね・・・。麗華さんはもっと大人だった・・・。」

 その少女は話し掛けられ、怪訝そうに真澄を見つめた。

 「****、****?」

 《インユエさん、この怪しい風体の者、敵の間者では?》
 《それが・・・、分からないのです。これ程無警戒に氣を放出しているのに、本人がそれを分からないらしくて・・・。》
 《氣と言うが・・・、闘気の類ではないのお・・・。どちらかと言うと、インユエの分野じゃのう。》
 《淫の氣か? しかし、突如として現れたからには、何らかの術でこの後宮奥深くに忍び込んだ筈だ。》
 《私に心を送らぬのか? それとも送れぬのか? 名前は?》
 「アッ、マスミです。菊野真澄・・・。」

 インユエと呼ばれる女性はハッとして老師と顔を見合わせた。

 《マスミ? まさか・・・。老師!》
 《フム・・・。あの龍娘々と同じか? しかし・・・。》
 《インユエさん、ロンニャンニャンとは、あの?》

 そう言いながら麗華に似た少女は刀をマスミの目の前に突き出した。目の前の刃は刃引きではなかった。本物の剣だった。

 「ワッ、本物? ダメーッ・・・!」

 マスミの悲鳴はむしろその少女を驚かせた。

 《リィホワ、おやめなさい。》

 インユエがリィホワを留めようとした時、老師が口を挟んだ。

 《不思議な子じゃ。恐怖の氣をまともに発しておる。これ程に強い氣を発せる者が伝心の術を使えぬ筈はないのじゃが、どうも本当に氣の使い方を知らぬ様じゃ。心に大きな壁が在る様じゃ。どうも大きな恐怖でないと、その壁は壊れぬ様じゃのう。》

 リィホワは少しイライラしていた。

 《老師、どちらにしてもこの娘は敵に違いない。即刻首をはねるべきだ。》
 《リィホワ、この子は龍の子かも知れないのですよ。それに娘ではありません。》
 《娘ではない? こんな子供が? おい、紫の子、そうなのか?》
 《ほう、儂も気付かなんだ。男であったか。》
 《男? 男がこの後宮に? 老師、インユエさん、それではたとえ敵でなくても殺さねばならぬ。》
 「ヒーッ!」

 マスミの恐怖の念が一杯に迸る。老師はその氣をジッと感じ、ニヤッとしていた。

 《リィホワよ、必ずしも殺す必要はない。確かに許されぬ男が後宮に入り込んだのじゃ。腐刑、宮刑でも良い筈じゃ。それに娘ではないにしても龍の子かも知れぬ。》
 《宮刑? この子にか? しかし・・・。》
 《この紫の子の氣が分からぬか? 恐怖の中にもリィホワには好意を感じている様じゃ。宮刑に処するのに、好意を持っている女にされるのは一番つらい事じゃ。インユエ、地下牢に運び込ませよ。》

 真澄は腐刑、宮刑の意味が分からないで不安そうにしていた。

 《紫の子よ、宮刑を知らぬのか?》

 真澄は不安そうに頷いた。

 《そうか。そうじゃのう。男として宮刑に処せられるのに、それ程平然としてはおられぬ。インユエ。》

 インユエは恥ずかしそうに、そして真澄を哀れむかの様な顔で真澄を見据えた。

 《申し訳ないとは存じますが、龍紫子(ロンシーズ)と言えども、許可なく後宮に入り込んだ者は死罪か宮刑に処せられます。宮刑とはつまり・・・、男の証を切り取るのです。》
 「男の証・・・? まさか・・・。」

 震える手で真澄は自分の股間を指差し、尋ねた。インユエは俯きながら大きく頷いた。

 「ウソ・・・。オチンチンを切る? イヤーーーッ!」

 真澄は目の前のリィホワの刀を払いのけ、逃げようとした。リィホワはすぐに後ろから羽交い締めにする。

 「ヤダーッ、オチンチン、切らないでーーっ!」
 《老師、これはどういう事? こんな臆病者が?》
 《仕方ない。リィホワ、大人しくさせなさい。》

 リィホワは後ろから真澄の首筋に指を当てた。そして一瞬の氣が爆発する。

 「グハッ・・・!」

 真澄の感覚が消えた。地に倒れ落ちたのだが、手足の感覚が無い。

 《雲体風身の術の氣断絡の法。》
 「動けない? イヤーッ、オチンチン、切られるーーっ!!」
 《うるさいのう。》
 《老師、全身の氣断絡にしますか?》
 《いや、今は無理じゃ。氣の何たるかを知らぬ者に全ての氣脈を遮る事は即、死を意味する。身体は動かせぬが、意味の分からぬ叫び声はうるさい。暫くは猿轡をしておこう。》
 「ヒーッ、イヤダーーーッ!」

 首から下の感覚は無い。真澄の意思の表現法である口に猿轡を喰わえさせられてしまうと、ただ涙を流し、嗚咽を漏らす事しか出来なかった。数人の女性兵士に抱え上げられ、暴れる事も出来ずに地下牢へと連れて行かれるのだった。

 《老師、いくら何でもこんな子供に宮刑だなんて・・・。》
 《リィホワ、子供でも後宮に侵入した男だ。それにこの衣服のせいか、男らしく見えないからな。》
 《そう。まだ女かと思っているけれど。この衣服は何? どこの国の者だ? インユエさん、この子は本当に男なの? 大体、こんな色の服を着ているなんて事が・・・。》
 《そうですね。紫は大体が高貴な色。桃色は女性の色。そしてこれ程の鮮やかさは遊女の色。》
 《そうでしょう? 子供だから男とは・・・。》
 《リィホワ、そうもいかない。リィホワ、インユエと一緒に脱せなさい。》
 《私も?》

 真澄は心の中ではもがきにもがいていた。しかし目以外に動かす事が出来ない。そして感覚として感じられないのだが、自分の服が脱がされていくのが分かる。

 (イヤーッ、脱がさないでーーっ!)
 《ホーッ、暖かそうな衣服じゃのう。》

 老師は衣服に興味を示していたが、リィホワは真澄の肉体に興味を示していた。若い娘にとり、仕事とはいえ少年を裸にするという事は興奮を呼び起こす。しかも最初は女の子と思っていた程の可愛い少年なのだ。

 《本当に男の子? 確かに胸は無いわ。だけど肌の肌理が細かいし、筋肉は無いわね。ワーッ、何、この下穿き?》
 (イヤーッ、アッ、パンティー穿いていたんだ。ダメーッ、脱がさないで!)
 《アハッ。本当だ、男の子・・・。》

 真澄はペニスを見られた事に歯を食いしばって涙を流すだけだった。

 《その枷に。》

 女兵士達は嬉しそうにすっ裸の真澄を引き上げ、木製の拘束具に立たせた。首と両手を三穴の板に挟み、足は広げて二つ穴の板に填める。地下牢の真ん中に立たせ、上からの鎖で手と首の板を引き上げた。

 《どうじゃ、これなら男根は晒けたままじゃから、宮刑は楽じゃろう。》
 《老師、やはり惨い・・・。》
 《確かにのう。一度もその良さも知らずに切り取るのはのう。リィホワ、すぐに処刑する訳ではない。色々と調べねばならぬからのう。それ迄の間、このシーズに良さを教えて上げても良いぞ。》
 《良さ? まさか、交合いを? それは無理よ。こんな子供では・・・。》
 《いや、手でしてやるのじゃ。リィホワは兵士とはいえ、後宮の直属近衛兵に成る身じゃ。淫道師の仕事を知っていても良い筈じゃからのう。》
 《インユエさんの仕事をか?》
 《そうですよ。これが普通の男子であればお勧めはしません。この紫子の場合はどうも違うのです。何と言うか・・・、この子に気持ち良さを与える事が私にも悦びと感じられるのです。》
 《ほう、そうか、やっと分かったぞ。》
 《老師、何が?》
 《わしも最初は娘じゃと騙されたが、この紫子の氣を良く見てみよ。》
 《エッ?》
 《リィホワは氣脈を絶った。しかしまだ氣が漏れ出ている。体内から流れ出ているのじゃ。》
 《アッ、これは? 私の雲体風身は老師の様に完璧と迄はいかないが、それでもこの様な武技の全く無い子供の場合なら・・・。》
 《完璧じゃよ。紫子の氣は絶たれている。肉体から勝手に溢れ出ているのじゃ。しかも男根その物からじゃが、なぜかのう・・・、胸からも流れ出ている。》
 《老師、後ろも・・・、尻からも出ている。》
 《不思議な子じゃ。その氣を留める術を知らぬ様じゃが、精力の強い男子であればそのいう事もある。性技に長けた場合じゃ。しかし胸は心の蔵からではないのう。女子であれば乳房の位置じゃ。その場合は妊産婦か特に乳房の大きな遊女か・・・。》
 《それでは尻は? 淫氣でございますよ。鶏姦に長けているとでも?》
 《この子はまだ子供じゃ。肌を重ねてはおらぬ筈。という事はその素質、能力が高いという事になるが・・・。それだけではないぞ。淫氣の質その物が違うのじゃ。この淫氣は女子の物じゃ。男の淫氣ではない。だからわしも騙されたのじゃ。》
 《女の淫氣? この子は男ですよ。》
 《フム、この淫氣がもし女子の体内に入ると・・・。》

 インユエはクスッと笑った。

 《やはり龍の子でしょうか・・・。これで雲体風身を会得すれば、天下の性豪と成りましょう。》

 リィホワは悲しそうな顔でインユエ達を見た。

 《しかし宮刑に処すのでしょう? それ程の素質を・・・。》
 《やはり罪は罪じゃ。インユエ、準備を始めよう。リィホワ、氣断絡を解き、精を導いてやりなさい。》
 《私一人で?》
 《そうじゃ。技は不要じゃよ。なぜか紫子はおまえに好意を抱いている。男は技による導きよりも心じゃから。》

 老師とインユエは他の女兵士と一緒に地下牢を出て行ってしまった。リィホワは泣き続けている真澄の後ろに回り、首に指を宛てがった。そして一瞬の煌めきを感じると、真澄に手足の感覚が戻った。

 「ムムグーーーッ!」
 (お願い、助けてーっ!)
 《何を言おうとしているかは分かるけれどね・・・。》

 インユエが居なくなってしまった為、リィホワの心も伝わらなくなってしまった。

 (お願い、外して。)

 真澄は身を捩って晒け出させられているペニスを隠そうとするのだが。両足が開いて拘束されていて、ブラブラ揺れるだけだった。

 《仕方ないのか・・・。後宮に忍び込んだ男は死罪か宮刑。恨むなよ。刑迄の間は気持ち良くさせてやる。》

 リィホワの心は伝わってこないが、リィホワが何をしようとしているのかは分かる。顔を赤らめながら、真澄の晒されている局部を見つめていた。

 (ワッ、ダメッ! オチンチンをいじる気?)
 「ムフーーッ・・・!」

 真澄の恐れていた通り、リィホワが照れ臭そうにしながらも両手でペニスを握るのだった。腰を揺すって逃れようとしても、枷で全身が引っ張られていて、握られたペニスを振り解く事は出来ない。今迄に女性にペニスを弄ばれた事はある。母や優美の悪戯をされた事もあり、特に優美には射精させられてしまった事もある。しかしそれは悪戯であり、優美の姉弟愛の発露でもあった。しかし今回は陵辱であり、ペニス切断迄の哀れみでもあるのだ。ぎこちないオスペであり、決して快感の起きる様な状況ではないが、それでも肉体は素直に反応してしまうのだった。真澄の焦りとは無関係にリィホワも少し驚きの念でオスペを続けていた。

 (何? このオチンチン・・・。また交合い迄の経験は無いけれど、インユエさんに教わって、男の物を触った事はある。しかし全然違う。あの時の様な嫌悪感が無い・・・。それどころか、なぜか楽しい・・・。そうだ、氣が・・・。淫氣なのか? 凄く強い氣が溢れている。切なそうな顔・・・。まるで少女の様な・・・。この男根を切り取ってしまうのかと思うと、私もつらくなる・・・。アハッ、もうすぐだな?)

 真澄の呼吸が荒くなり、ペニスの脈動も強くなってきた。そして先走りで濡れたリィホワの掌の中で激しく擦られ、悲鳴にも似た良がり声とともに恥ずかしい白い粘液が迸り出るのだった。



 《どうですか?》

 インユエが戻ってきたので、真澄には女達の会話の意味が分かる様になった。
 リィホワは手を拭いながら恥ずかしそうにしていた。

 《出させられたのですか?》
 《ええ・・・、一応。》

 インユエは少し驚きの表情で真澄を見つめた。

 《どうもこの紫子には驚かされますね。》
 《と言うと?》
 《考えてもご覧なさい。普通の男の子で、この様な辱めを受けていて、しかも間もなく宮刑を施されてしまう状況で、氣を沢山放出しながら精を出してしまうなんて・・・。それ以前に勃起をする事など及びもつきません。やはり龍紫子なのでしょうね。》
 《インユエさん、どうしても宮刑に?》
 《ええ、やむを得ません。》

 真澄は悲鳴を上げて暴れるのだった。射精した後にも関わらず、勃起したままのペニスを揺すっての悲鳴に、インユエは苦笑いをしていた。

 《リィホワ、沢山搾り出して上げなさい。男だったという事への思い出と、後宮では天子様以外には睦み事は禁止されていますから、その様な事のない様に。》
 《しかし・・・。》
 《リィホワ。私に従いなさい。直属の近衛兵見習いとはいえ、淫事に関わる以上、それは私の責任です。》

 リィホワは何かを言いたそうにしていたが、インユエの珍しい怒りの顔に口をつぐまざるを得なかった。そして再びオスペを始めるのだった。

 (イヤダーッ、オチンチンの思い出なんて・・・。ママ、パパ、助けてーっ!)

 精神的には快感を快感と感じられずに再び絶頂へと導かれてしまう。むしろ拷問と言っても良いものだった。



 《どうじゃな?》
 《アッ、老師。やはり龍紫子ですわ。こういう状況でも、既に何度も精を出しています。精の力や量の減るのは当然ですが、氣の力は相変わらずです。》
 《ほう、それは・・・。惜しいのう・・・。これで雲体風身を身に付ければ、素晴らしい性豪に成っておるものを・・・。》

 老師は引き連れた女兵士達を牢内に呼んだ。兵士は机と何かの器具を運び込み、お辞儀をして出ていった。

 《老師、これが?》

 インユエがその器具を覗き込んだ。

 《暫く使われておらなんだからのう。すっかり錆びてしまっておる。リィホワ、おまえなら刃の扱いには慣れておるじゃろう。これを研いでおきなさい。》

 リィホワはオスペを中断して老師の元へ進んだ。

 《これは? 厚手のなたの様ですが・・・、随分と錆びて・・・。》
 《これが男根を切り取る刃じゃ。》

 真澄はハッとして老師達の方を見た。机の上の道具の意味は分からないが、それでもペニスを切り取るという刀が現実に持ち込まれたという事に悲鳴を上げた。

 《あくまでも男根を切り取るのじゃが、鋭い刃でスパッと切り落とさねば、後の回復が大変じゃ。リィホワ、切れ味良く研ぐのじゃぞ。》

 リィホワは少し青ざめて震えていた。

 《慈照老師、本当に切るの? いくら何でもそれは・・・。》
 《何を言っておる。おまえは敵の間者かも知れぬから殺すと言っていたのじゃぞ。殺す事からみれば宦官にする事など、大した事ではないではないか。》
 《しかし・・・。こんな子供で・・・。まだ肌を会わせた事もない子供に・・・。》

 リィホワは顔色の悪いまま、なたの刃を砥石で研ぎ始めた。

 《リィホワ、あなたはこれからも私の淫道の仕事を手伝う必要があるのですよ。まだ天子様はご幼少ですから、暫く先ではありますが、男女の性についての知識を充分に得ておいて貰います。》
 《私は・・・、私は兵士ですから、別に・・・。》
 《兵士とはいえ、将来は天子様の側でお勤めをなさいます。睦みのお相手が敵の回し者という事だって、無いとは言えません。今の天子様のご趣味は分かりませんが、奴隷女を相手にするかも知れません。子を孕まぬ様にし、それでいて天子様を満足させる様に準備をする必要だってあります。》

 リィホワが嫌々刃を研いでいる間、インユエが真澄のオスペを続けていた。さすがに淫道師というだけあり、リィホワよりも素早く真澄を導き上げ、連続射精で疲れていても再び放精させられてしまった。

(違う! 何かの間違いでここに来てしまったんだよ。助けてっ! オチンチン、切らないでーーっ!!)

 さすがに連続射精で勃起の力は弱くなってきた。しかしインユエはオスペを続けていて、萎えてしまう事はなかった。

 《リィホワ、どうじゃ?》
 《アッ・・・、はい・・・。一応・・・。》
 《これは元々が良い刃じゃからのう。切れ味が良ければ、切り口の回復も早いし、それ以前に切り取られる時の痛みも少ないのじゃ。リィホワ、そこに骨が在るじゃろう。豚の骨じゃ。それを切ってみなさい。》
 《この骨ですか?》

 リィホワは机の上に在る、生の骨を取り上げた。

 《骨は切り難い。まして生の骨はなおさらじゃ。》
 《ええ。硬い上に湿気を持っていて、刀の速さと当たる角度が難しいです。》
 《そうじゃ。だからその骨が切れれば、男根を切るのは訳もない。硬くなっていても、骨が在る訳ではないからのう。》
 《でも、この刃には束が無い。これでは無理です。》
 《リィホワ。それは刀として使うのではないのですよ。こうやって・・・。》

 インユエは机の縁に半円の金具を取り付けた。そしてそこに別の器具を取り付ける。ちょうど、小型のギロチンの様な形の物だった。そして金具の部分に合わせて穴が在り、そこに豚の骨を通すのだった。

 《これで上から刃を押し下げれば良いのです。》

 リィホワはインユエの指示の通り、刃の背の部分を押し込んだ。

 ペシーッメE・・・・。

 骨の半分が床に転がり落ちる。リィホワはその切れ味に驚いていたが、真澄の驚きは凄さまじかった。当然骨の代わりに自分のペニスを填め込まれてしまう事は想像が出来る。そして切れ落ちる骨が何を意味するのか・・・。

 「ビギーーッ・・、ギュギーーーッ!」

 真澄は狂った様に泣き喚き続けた。

 《さすがに騒がしいのう。インユエ、そのままで填め込めるか?》
 《そうですねえ・・・。暴れると、切り難いですし、切り口も乱れましょう。リィホワ、もう一度氣断絡で大人しくさせなさい。そうすれば痛みも感じないで済む。》

 リィホワは暴れている真澄の後ろに回り込んだ。真澄にはそれが処刑のスタートである事が分かり、更に泣き叫ぶ。

 《許せ、紫子。》

 躊躇気味にリィホワの掌が真澄の首に押し当てられた。ガクンと腰が落ち込む。しかし前回程の衝撃はなかった。

 《リィホワ、情に流されておるのう。それ程心を乱されていては、雲体風身の力も乱れてしまうのう。》
 《リィホワ! あなたはなぜ私に従わないのです?》

 インユエはリィホワを叱責する。

 《良いわ。弱いが氣は遮断されている。枷に繋がれておるのじゃから、その程度でも良いじゃろ。》

 怒った顔のインユエは宮刑の為の机を真澄の前に動かしてきた。

 「ムヒギッ・・・。」
 (イヤッ・・・、それでボクのオチンチンを・・・a@助けてーーーっ!)

 声が裏返る。全身から冷たい脂汗が噴き出る。

 「ヘヒッ、ギギ・・・。」

 インユエは真澄のペニスを掴み上げ、厚手の布のベルトを包帯の様に巻き付け始めた。真澄はただ逃れようとするのだが、弱いながらも氣断絡で思う様には動けない。

 《リィホワ、見ていなさい。》

 リィホワが目を背けようとするのを強く叱りつける。

 《宮刑は腐刑とも言います。それは、昔は切り落とすのではなく、男根を強く縛り付け、血が通わぬ様にして腐り落としたからなのです。ですからしきたりとして縛り付けるのですが、今は切る部分を伸ばし、切り易くする事と、切り落とした後の止血の為です。》

 真澄にはもうインユエの意思が途切れ途切れにしか感じられない。ペニスの付け根を強く縛り付けられ、睾丸を竿の方に押し付けて巻き付けられる。強く縛り付けられ、不完全な氣断絡で痛みは感じるが、それでも心の痛み程ではなかった。

 《リィホワ、その台を・・・。》

 リィホワは真っ青で震えたままだった。

 《どうしたの? 仕方ないわね。》

 インユエは宮刑用の机を真澄の前に引いてきた。ちょうどペニスが台の端の金属具と同じ高さだった。

 (アッ・・・、アッ・・・。これに填められ・・・。)

 どんなに腰を引こうとしても、思った程に動かない。そしてペニスが台の上に置かれ、金属具で留められる。

 「ビミミーーーッ・・・。」

 精神的には真澄は大きく暴れているのだが、ペニスはしっかりと留められていた。そしてさすがに恐怖に萎えてしまったペニスの先から、チョロチョロと小便が流れ出している。

 《さあ、紫子、始めますよ。》
 「フギギーーーッ!」

 小型のギロチンがセットされ、机を引っ張られる。真澄はペニスを引っ張られ、『く』の字の様に反り上がる。

 《準備終わり。リィホワ!》
 《アッ、はい・・・?》
 《何をぼさっとしているの。早くしなさい。》
 《早く・・・って?》
 《あなたが切り落とすのですよ。見習いとはいえ近衛兵。処刑をするのですから。》
 《わ・・・、私が?》

 リィホワは涙で顔がクシャクシャだった。宮刑の処刑具をジッと見つめたままで、足が動かないでいた。

 《どうしたの? そんな事で近衛兵が勤まるのですか? ほらっ!》

 インユエは震えているリィホワの腕をとり、ギロチンの刃に手を掛けさせた。

 (イヤーーッ、助けてーーーっ!)
 《インユエさん、私、ダメ・・・。》
 《何がダメなのですか? あなたは近衛兵よ。それとも近衛兵を辞めるつもり? そうではないわ。近衛兵として、淫道師の私の命に従わないのですから、軍律違反として処罰します。》
 《それでもダメッ・・・、私には出来ない。》

 側でニコニコしていた慈照老師がおもむろに口を開いた。

 《インユエ、やはりリィホワは従わぬか。兵を辞するにせよ、軍法会議に掛けるにせよ、処刑を済ませてからじゃ。近衛兵としての最後の仕事だけは全うして貰おうか。》

 老師はニコニコしながらリィホワの肩を叩いた。

 《ヒッ、老師? 何を?》
 《だから処刑をさせてしまわぬとな。》
 《ワーッ、手が・・・。》

 リィホワは必死で刃を持ち上げようとしていた。しかし腕が勝手に刃を押し下げようとしている様だった。

 「ヒミーーーッ!」
 (助けてーーーっ、オチンチンを切らないでーーーっ!)
 《ワーッ、ダメーーーッ!》

 リィホワの腕が引っ張られる様に下がった。ビシッという鈍い音とともに机と真澄の接点が離れた。

 「ギーーーッ・・・。」
 《アアッ・・・。》

 真澄は既に意識を失った。下利便を流している。そしてリィホワも机の器具から真っ赤な血の流れている物体に、失禁しながらやはり倒れ込むのだった。

 「インユエ!」
 「はい。」

 インユエはすぐに両手を真澄の額に当てた。そして何かを念じた。暫くそのままにしていたが、やがてホッと息を付いた。

 「どうじゃ?」
 「終わりました。やはり伝心の法を知らなかった様です。意思そのものは弱いので、すぐに壁は消し去れました。」
 「そうか・・・。だとすると、雲体風身の法は無理かのう。」
 「氣そのものは・・・、強い淫氣ではありますが、その部分だけなら。」
 「そうなのじゃ。こんなに強い淫氣を出すとはのう。まだ子供じゃぞ。氣だけで言えば、インユエよりも遥かに強い。」
 「そうですね。不思議な事です。ひょっとして淫技についてはどうでしょう。」
 「この様な子供では・・・。」
 「左様ですね。しかし一応読心の法で覗いてみましょう。他国の人間の様ですから、或いは新しい淫技を心得ているかも。」
 「智非即可為也。」
 「そうですが、不智即不可為也ですわ。」
 「まあそうじゃが。」

 インユエは再び目を閉じ、自分の精神を真澄に送り込むのだった。しかしカッと目を見開き、ドッと汗を流す。

 「インユエ?」

 慈照老師が怪訝そうにインユエを見つめる。

 「ヒーーーッ!」

 インユエはペタッとしゃがみ込んでしまい、まるで惚けた様に口を開いていた。そしてやはり失禁してしまっていた。

 「インユエ! どうした?」

 インユエは暫く呆然としていたが、老師が肩を揺すっているのに気が付いた。

 「老師・・・。」
 「どうした、インユエ・・・?」
 「アッ、私・・・。」

 立ち上がろうとするのだが、腰がふらついている。

 「どうしたのじゃ?」
 「老師・・・、この子は・・・、一体?」
 「心を読んだのじゃろう? どうじゃった?」
 「信じられない・・・。こんな子供なのに、とんでもない淫道を・・・。」
 「淫道? この龍紫子が?」
 「しかし男根の大きさからしても、それ程とは・・・。」
 「知識でしょうが、それにしても・・・。凄さまじいばかりの淫智です。そして素晴らしい・・・。」

 インユエはやっと立ち上がったが、失禁に気付き、慌てて衝立の陰に走り込んで始末をするのだった。

 「役に立ちそうな淫智なのか?」
 「分かりません。あまりにも懸け離れていて・・・。私の淫道の秘伝すら悟っているのです。あくまでも智としてらしいのですが、それにしても・・・。そして私の知らない技法を・・・。ただ、楽しそうだという事は分かるのですが。そして男根だけでなく、淫氣が胸や尻からも発している理由が分かりました。」
 「ほう。」
 「龍紫子は代々、と言うより少なくとも龍紫子の血筋の男子は殆どが・・・、ウフフ・・・。」

 笑いを堪えるインユエに老師は焦れったそうにしていた。

 「紫子の国では女性は胸と尻が大きく、腰の細い事が好まれている様ですね。」
 「別に紫子の国とは限るまい。どこでもそうじゃと思うがのう・・・。」
 「程度が違うのです。私の乳の大きさでは無駄に大きいと思いますが・・・。」
 「わしには好みじゃが・・・。」
 「老師! オホン。私程度は標準以下の様ですわよ。」
 「何?」
 「そして紫子の父達は何やらの技法で胸を大きくし、同時に男根も大きく丈夫にしている様です。」
 「男で胸を? どういう意味じゃ?」

 インユエは読心の法で真澄から得た知識をいかにも嬉しそうに老師に話し続けるのだった。



 「私は・・・?」

 リィホワは気分の悪い目覚めを向かえた。地下牢の石の床の上で寝ていた為、節々が痛むのだった。目の前に真澄が吊り下げられたままでいるのに気付き、慌てて立ち上がった。

 「シーズ!」

 その途端、リィホワの足に鎖枷が填められていて、引っ張られて転んでしまった。

 「何? なぜ? アッ、刀が・・・。」

 刀だけではなかった。防御用の手足の甲も取り去られ、衣服は粗末な囚人の物であった。

 「私が? 私も?」

 自分が囚人の取扱を受けている事に不審を感じながらも、立ち上がって真澄を見た。

 「エッ?」

 すっ裸で吊り下げられている真澄の股間には、自分で切り落とした筈のペニスがぶら下がっていた。気を失っているので力無く萎えてはいるが、確かに無事なペニスだった。

 「シーズ、シーズ!」

 リィホワは真澄を揺り動かした。

 「ん・・・。」
 「気が付いた? しっかりして。」

 真澄は虚ろな目を開いたが、ハッとして悲鳴を上げた。

 「ワーーーッ、オチンチンがーーっ!」
 「大丈夫よ。付いてる。」
 「エッ?」

 リィホワは真澄のペニスを引っ張って伸ばし、真澄も下を覗き込んだ。

 「エッ? 切られた筈じゃ?」

 真澄はドッと汗を流す。そして自分でも腰を揺すってリィホワの握っているペニスの感触を確かめた。

 「良かったーーーっ・・・。」

 ホッとして涙を流すのだった。

 「レイカさん、ボクのオチンチン、切れてない。」
 「レイカ? 私はリィホワ。」
 「アッ、そうか。リィホワさん、ボクの知ってる人とそっくりだったから・・・。」
 「シーズの国の? だとするときっと美人ね?」
 「美人だし、リィホワさんの様に凄く武術が巧い。だけど、麗華さんの方がもう少し大人で、スタイルが良かったけど・・・。」
 「チェッ・・・。ん? シーズ、おまえの言葉が?」
 「言葉? アッ?」

 真澄はインユエが居ないにも関わらずリィホワの言葉が分かったのだ。言葉が分かると言うよりも意志が通じると言った方が良い。相変わらず真澄は日本語を話していて、リィホワは中国語を話しているのだ。しかも真澄の意志もリィホワに通じている。



 「やっと気が付きましたか?」

 インユエが戻ってきた。

 「インユエさん、これは? 確かに私はシーズのあれを切り落とした筈だし、私が繋がれているのは?」
 「インユエさん。お願いです。ボクを・・・。」

 二人はインユエに哀願するのだった。

 「まず、シーズの宮刑は終わりました。」
 「終わった?」
 「ええ。律法では死刑と宮刑は『一事不再理』と言い、一度行われたら二度と行われません。当然ですね。死刑も宮刑も一度処すれば、二度と行えるものではありません。」
 「だけど、シーズのあれはまだ・・・。」
 「法的には一度行われたという事です。法は厳正です。再度宮刑に処するという事は、前回の宮刑が不完全であった、或いはその刑をないがしろにする事に他なりません。法とはその様な不完全なものでも、無視されるべきものでもありません。宮刑や死刑に処されてもそれを免れ得たものはその法の尊厳を越えるべき存在だったという事に他なりません。これは神の領域の問題です。さて、シーズの刑を執行したのはリィホワです。リィホワは処刑を失敗した事になります。当然罰せられねばなりません。そればかりか、指示された処刑の義務を放棄しようとしたのですから、二重の罪です。」
 「その罪で私が?」

 リィホワは足に繋がれている鎖を見つめた。

 「そうですが、それだけではありません。」
 「インユエさん、ボクはどうなるの?」
 「シーズ、宮刑に処されなくなったとしても、あなたを自由にする訳にはいきません。まだ死刑という道も残されているのですよ。」
 「ヒッ・・・。」
 「シーズは子供とはいえ男です。ここ後宮には限られた男しか許されません。しかし失敗とはいえ宮刑に処せられた男子です。ですから宦官と同じ扱いなのですが、当然子種はあるのですから、自由に出来ないのは分かりますね?」
 「子種? まさかボクが女の人と? そんな事しないよ。だから・・・。」

 インユエは微笑んでいた。

 「分かりますよ。ですがその危険性はありますし、私ならとにかく、事情を知らない人達には分かって貰えないでしょう。ですからますます死刑に処せられる可能性が高いのです。しかしシーズが私の淫道の弟子になるのであればある程度は・・・。」
 「インユエさん、こんな子供に・・・。それに淫道師というのは・・・。」
 「リィホワ、外見だけでは分からないものですよ。シーズの淫智の素晴らしい事・・・。あくまでも智だけであり、実は伴っていない様ですが。そしてリィホワ、あなたにも責任をとって貰う事があります。私は淫道を、老師が雲体風身の法を施します。シーズの精は高まるでしょう。精の高まった男子をそのままにはしておけません。ですからリィホワにはシーズの精を抜いて貰います。」
 「精を? 私が?」
 「そうです。まだ当分は手で搾るしかないでしょうが、気に入ったら交合いで抜いても宜しい。」
 「そんな・・・。それにこんな枷迄・・・。」
 「リィホワ、既にあなたは近衛兵ではありません。身分的には奴隷なのです。ただ、あなたは老師の弟子ですので、この程度の罰で済んでいるのですよ。」

 インユエは真澄の前に立ち、小さな丸薬を放り込んだ。

 「ウペッ? 何?」
 「慣れる迄は苦しいわ。リィホワ、頑張りなさいね。」
 「頑張る? 何を?」
 「今、シーズに催淫薬を飲ませました。精を出し切る程に出し、男根を疲労させねばなりません。何分にもシーズは強い氣を発していますから、氣断絡では無理の様です。疲労の極から回復させる修行をして貰います。それが雲体風身となるのです。それに・・・、まあそれはすぐにも分かるでしょう。それでは。」

 インユエは微笑みながら出て行ってしまった。

 「シーズ、大丈夫か?」
 「大丈夫・・・だと思うけど・・・、その・・・。」

 真澄は顔を赤らめ、下半身をモゾモゾしていた。ペニスが勃起していたのだ。切り取られるという恐怖がなくなり、安心した為か、治まるどころか、ますます強い勃起になってしまう。それを見て、リィホワはクスッと笑った。

 「確かにシーズ。お前の氣が激しく溢れている。」
 「氣・・・って? インユエさんもお爺さんもそう言う事を言っていたけど・・・。」
 「本当に知らない様だね? これ程の氣を出す者が、それを全然知らないと言うのだから・・・。氣は命の根元。と言っても口で説明するのは難しい。修行で修得するしかないが・・・。それにしてもそんな小さなオチンチンにどうしてそれ程の氣が・・・。」
 「さっき薬を飲まされた。フーッ・・・。」

 もし手足が自由になるのなら、自分で処理してしまいたい程の高まりであった。何とか足を閉じようとするのだが、全く利かず、ただ苦悩するばかりだった。さすがにその激しさにはリィホワも少し不憫に感じるのだった。

 「シーズ、私が搾ってやろうか?」
 「リィホワさんが? いいです。だってそんな事を・・・。」
 「いいではないか。もう既に私はお前の精を何度も搾った。実際には宮刑の為の準備であり、つらい思いをさせてしまった。その詫びでもあるし・・・。」

 リィホワは鎖を引きずり、真澄の前に移動する。そして両手で怒張したペニスを挟み込むのだった。

 「ハフッ・・・пv

 真澄の嬉しさの氣がリィホワの掌に伝わってくる。

 (不思議だ・・・。シーズの悦びが私の悦びとして感じられる。今迄の男子の男根とはまるで違う・・・。何ともいとおしい。)

 激しい勃起にはそれ程のオスペを必要とせず、すぐに絶頂が近付いている事が分かるのだった。先走りで濡れた亀頭を優しく包んでいたリィホワだった。そして・・・。

 (アハッ、間もなくだ。脈が激しくなってきたし、氣も充実している。)

 リィホワとしては優しく放精させようとしていたのだが、射精の寸前、ハッとした時にはいつの間にかそのペニスを口に含んでいた。

 「ハブッ?!」
 (何? 私は・・・? エッ、シーズのチンチンを喰わえている? ヒーッ、精が出る!)

 自分が何をしているのか分からず、パニック状態になっていたが、それでも何とかペニスを吐き出そうと試みる。しかしまるで口は自分に意志に沿わず、むしろ舌迄が亀頭を強く嘗め上げるのだった。

 「ハーッ、麗華さん。フェラしてくれるの?」
 (ダメッ、どうした? ワーッ、出るーーーっ!)

 真澄の細かい震えが一気に激しくなり、そして硬直した瞬間、リィホワの口の中に生暖かくて苦く、粘りのある臭い粘液が突き刺さってきた。

 「ビムーーッ・・・!」


 リィホワはむせながら、飲み込んでしまった精液を吐き出そうとしていた。いかにもつらく、苦しそうにしているリィホワに真澄は心配そうに声を掛けた。

 「リィホワさん、どうしたの? 大丈夫?」

 そしてリィホワは真澄を睨み上げていた。

 「どうした・・・だと? 私に男の精を飲ませておいて・・・。その言い草は・・・。」
 「だって、フェラチオしてくれたんでしょ? ボクとしては嬉しかったけれど・・・。」

 真澄にしては、なぜかフェラをしてくれたリィホワが、それを恨んでいるかの様子が怪訝だった。そしてリィホワもまた、自分に精を飲ませてしまった事に真澄が感謝こそすれ、異常な行為ではないと思い込んでいる事が不思議だった。

 「シーズ・・・、ちょっと聞くが、お前の国ではこういう事は当たり前なのか? まさか女人に精を飲ませるなどという事が。」
 「当たり前かどうか・・・。だけど、そんなに変な事では・・。」
 「何?」
 「ダメなの? だったらごめんなさい・・・。」

 互いにセックス感の違いを知らされる思いだった。

 「しかし、なぜ? 身体がいう事を利かなかった。」
 「あのう・・・、催眠術じゃないの? インユエさんなら・・。」
 「何? どうしてそれを?」

 リィホワはビックリして真澄を見つめた。

 「知っているのか? 催眠術は淫道師としてのインユエさんの秘術。私も話には聞いているけれど、その実は知らない。アッ、まさか・・・。シーズ、お前が私に催眠術を掛けたのではないのか?」
 「そんな・・・。知ってはいるけれど、ボクには出来ないよ。」
 「知ってる?」

 驚きの表情で真澄を見ていた。

 「そうか・・・。氣を知らない子供だから、催眠術を知っていても使えぬか。『智非即可為也。想非即可成也』だからな。」
 「何、それ?」
 「ん? 知っているという事が出来るという事にはならない、思っていても、その通りにはならないという事だ。もっとも、『不智即不可為也。不想即不成也』だけどね。」
 「それは?」
 「知らない事は出来ない、思わない事はならないという事さ。ただ、雲体風身を会得出来れば、『智即可為也。想即可成也』。だけど自分の氣の強さも分からぬシーズにはどうかな? それに分かったとしても、お前の氣は淫氣だから。」
 「それも分からないよ。確かにママも大ママも凄い力を持ってる。パパだって身体の方は・・・。あ、何でもない・・・。」

 一度フェラチオで射精した真澄だったが、再び強い催しを始めた。リィホワも気付いていたが、知らんぷりをしていた。真澄から再びオスペを求める事は出来ないでいた。ただ大きな溜息でつらそうに震えているのだった。

 「シーズ、ダメなのか?」
 「ううん、我慢する・・・。つらいのはボクだけじゃないのだから・・・。」

 リィホワは真澄の切ない姿に心を動かされた。まるで少女の様な顔の少年がすっ裸でペニスを屹立させている。そして激しい高まりにも関わらず、リィホワに求めてこないのだ。

 「シーズ、搾ってやろう。」
 「だけど・・・、リィホワさん、催眠術でボクのオチンチンを喰わえる様に・・・。」
 「大丈夫。さっきは予想していなかったから。今度は意思をしっかり持てば、術は働かない。」
 「じゃあ、お願いします・・・。つらい。」

 リィホワは微笑んでオスペを始めた。その悶える姿をリィホワも嬉しく感じるのだった。

 「ウフッ。早いな。間もなくね。おっと、氣をしっかり保たねば・・・。」

 今度はしっかりと意識してオスペを続ける。

 「フム、術は知られれば効果は無くなる。オッ、出そうね。シーズ・・・、ムゴモゴ・・・?!」

 意識ではリィホワはオスペを手だけで続けている。しかし既にペニスを喰わえ込んでいたのだ。

 (エッ? 術には? アッ、私はオチンチンを喰わえている? ワッ、ダメッ! アーッ、精が出たーーーっ!)

 「エホッ、どうして・・・?」

 リィホワがむせているところにインユエが戻ってきた。

 「リィホワさん、私に術を掛けたな?」

 インユエは微笑んだままだった。

 「シーズ、あなたの淫道を試させて貰いました。この様な技は私も初めて知りました。これはシーズだからかもしれませんが、男根を女子に含ませ、精を飲ませるという事が、見ていても愉しい技だとは思いもよりませんでした。」

 リィホワは真澄を睨み付けた。

 「シーズ、この術をインユエさんに教え、私に術を掛けさせたのか?」
 「ち、違う・・・。」
 「リィホワ、この技は私がシーズから読み取って、試したのですよ。」
 「それなら・・・、早く術を解いて下さい。」
 「これは・・・。リィホワなら知っておりましょう。催眠の術は掛けられたという事を知れば防げるという事を。」
 「だけど・・・まだ掛かっている。」

 リィホワは口を拭って吐き捨てた。

 「私は教えましたね? 催眠の術の最も効果的な掛け方。解けない術の法を。」
 「それは・・・、本人が望む方向に術を掛けるという・・・? ウソだっ、私が望んでなど・・・。」
 「拒絶の心が強くない限り、術から醒める事はありません。」
 「違います! 私はこの様に男根を喰わえさせられる事を望んでなど・・・、第一、この様な技を知らなかったのだから。」
 「そうですね。リィホワは男根からの精を欲している訳ではありません。あなたはシーズの悦びを感じ、その悦びを増して上げようとしているのでしょう。シーズの淫氣は極めて強い。その氣がシーズが何を望んでいるかリィホワに伝わっているのです。」
 「インユエさん、さっき飲まされた薬、強過ぎます。何とかして下さい。」
 「シーズ、本当に智のみで実が伴わないのですね。さっきのはただの胃薬。淫薬を用いずとも、あなたの男根はその気になってしまうのですよ。リィホワ、まだシーズの物は勃ったままです。早く萎えさせなさい。このままでは、シーズは腎虚になる前に死に至りますよ。」
 「死?」
 「そうです。この紫子が淫道の技を発揮するには雲体風身の技の修得が必要です。そうでなければ無意味な侵入者としての死罪が待っています。そしてシーズの場合、雲体風身を授ける前には食事を与えられないのです。」
 「食事を? その様な事は・・・、私の時と違うの?」
 「違いますよ。雲体風身はその者の最も強い氣を鍛えるのです。シーズの場合は男根、胸、尻と、今迄に無い氣ですから、方法は全然違うのです。ひたすら精を搾らねば、萎える前に死に至るという事です。分かりましたね。」
 「アッ、待って下さい!」

 インユエは相変わらず優しい微笑みのまま出て行ってしまった。

 「どうしよう、シーズ・・・。しかしお前も分かっているのか? こんなに突き勃てたままで。」
 「分かってるけど・・・、ダメなんだよ。ボクのママが男の子を改造するのに、大体はいつでもオチンチンを勃てっ放しにさせるの。ちょうど今のボクみたいに動けなくして。だからこんな風にさせられると、身体が勝手に・・・。」
 「何? シーズの母親は淫道師なのか?」
 「淫道師というのがどういうものか良く分からないけれど、性欲に関するものだとしたらそう。ボクのパパもママに改造され、女みたいな顔、身体なのに、オチンチンは大きく、いつでも勃ったままにされているの。」
 「まことか? だとするとインユエさんはお前から新たな淫技を知りたいと思うのはやむを得ないか・・・。しかし父親が? まあ、それはお前の顔を見れば分からないでもないけれど・・・。」
 「あまり話したくないけれど、パパは今でもお乳が出るの。大きなオッパイだよ。ボクより少し背が高い程度で、かなり小柄だけれど、オッパイはインユエさんよりも遥かに大きい。」

 その言葉にリィホワは笑い出した。

 「まさか・・・、そこ迄はないだろう。私がお前の国の事を何も知らないからと言って、大嘘はつくな。」
 「嘘じゃないよ。リィホワさん、氣が分かるって言ってたよね? それはボクが嘘をついているかどうかは分からないの?」
 「まあ・・・、確かに嘘ではない様だが・・・。そうか・・・、そんな淫技を持つ国があるのか・・・。それ程楽しい事とは思えなかったが、案外面白いかも知れないな。それでは精を搾ろう。インユエさんは、怒ると信じられない程に惨い事をするから、逆らわない方が良い。」

 リィホワはオスペを続けようとして真澄に近付いたが、無意識に突き勃てているペニスを喰わえてしまった。

 「ヒムッ?!」
 (ワッ、最初から? これを私が望んでいるとでも?)

 慌てて口を戻そうとするのだが、意思とは逆に口蓋でペニスを強く擦り上げてしまうのだった。

 (ヒーッ、出せない! ワッ、私の口は・・・。シーズのチンチンを吸い出そうとしている。どうして悦んでいるの? シーズの悦びが伝わるからか? クッ、ダメだ。精が出る・・・。グッ・・・。)






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