呪いの指輪


 萩野博美、十四歳、心生学園中等部三年生。

 博美は駅の地下道でアクセサリーを売っている女性に声を掛けられた。

 「オ兄サン、コレドウ?」

 美人だが、言葉遣いから、中国人らしい感じがする。そしていかにも安っぽい金色のブローチやピアス、腕輪などを差し出された。

 「要らないです。」

 博美は手を振ってその前を通り過ぎようとした。

 「ジャ、コレ持ッテイキナヨ。」
 「エッ?」
 「タダデイイ。私、明日、国ニ帰ル。」

 その女性はプラスチックケースに入った指輪を渡した。いかにも安っぽい感じがするのだが、ちょっとお辞儀をして受け取るのだった。



 博美はその指輪の事を暫く忘れていた。下宿で洗濯をしようとしてズボンのポケットを真探った時に初めて思い出した。

 「アッ、そうだっけ・・・。」

 箱を開けて指輪を取り出したが、意外に重さを感じた。

 「ヘーッ、まさか本物の金製品?」

 そして内側に不思議な文字が刻み込まれている。それよりも何となく女物の様な感じがする。

 「指輪って・・・、薬指だったよな・・・。」

 左手に填めてみて、やはり女物と感じた。

 「やっぱり女物だな。ボクの指には似合わないな。」

 小柄な博美の大きくない指にはぴったりなのだが・・・。

 「ウッ?」

 なぜか指輪がキュッと伸び縮みをした気がした。薬指の付け根に填まり込んだのだが、なぜか抜き難いのだ。

 「アレッ?」

 別にきつい訳ではないのだが、なぜか抜けない。しかし不思議な事に違和感も感じなかった。

 「まあ、いいや・・・。目立たないし・・・。」

 本当は無理にでも抜いておくべきだったのだ。博美の人生を変えてしまう指輪であったのだ。


 風呂に入った時に再び指輪に気が付いた。

 「アッ、そうだ・・・。抜けなかったんだ・・・。うーん、指がふやけると、ますます抜けないな・・・。アレッ?」

 指輪をしている左手が少し感じが違うのだった。薬指だけではなく、左手の全部の指が少し細くしなやかに、そして少し長めに感じる。

 「何だろうな・・・。マグネットリングかな? 血流が良くなっている気もするし・・・。」

 それでも大した事とは感じないでいた。



 翌朝、土曜日なので、お昼近くなって目を覚ます。寝ぼけ眼のまま朝のトイレに向かい、最初の違和感を感じた。
 パジャマ越しにペニスを引き出した時、ペニスに触れた左手がビクッと震えたのだ。それでも右手での小用だったので、違和感として認識していなかった。手を洗っている時、左右の手の形の違いがハッキリして見えた。

 「アレッ? 随分・・・。左手はまるで女の人の手の様にスラッとしているけど・・・、右手は・・・。アンバランスだなあ・・・。」

 右手に指輪が擦り付けられた時、ちょっと暖かみを感じた。そして手洗いを終えた時、左右の手のアンバランスさが少し減った様に見えた。

 「ん? そうでもないか・・・。だけど、右手もスッキリした様に見えるけど・・・。」



 その晩、博美は淫夢を見た。見覚えのない女性だが、美人の女性が笑いながら、博美の下半身を悪戯するのだった。金縛りにあった様に動けない博美は慌てていた。

 「だ・・・、誰?」
 「ウフフ・・・。」

 その女性は博美のパジャマをずり下ろし、パンツも下げた。

 「ヒーーッ・・・!」

 少し躊躇していた女性だが、ちょんとペニスを摘んだ。

 「ヒヤーーッ!」

 その女性の指にも博美の物と同じ指輪が填められている。その指輪が亀頭に当たり、握り締められ、しごかれ始めると、博美は目を回す程の快感に狂うのだった。いつものマスターベーションとは全然異なる快感で、すぐに達してしまうのだった。
 そして目を覚ました。

 「ワッ・・・、夢?」

 いつの間にかマスターベーションをしていたのだ。女性の手と思えていたのだが、それは博美の左手だった。

 「ボクの手だったんだ・・・。」

 飛び散った精液を掃除しながら、博美は手を見つめた。

 「スラッとしてかっこ良くなったと思うけれど、女みたいな手だなあ・・・。」

 博美はもう一度ペニスを握ってみた。

 「感触はいいんだ・・・。」

 しかし萎んでいるペニスは片手でも覆われる。

 「だけどオチンチンはもっと男らしくないと、かっこ悪いよなあ・・・。両手で掴んでも余りがある程大きく、硬く突き上げていないと・・・。」

 その時、指輪が小さく振動をし、ペニスを振るわせた。

 「それともう少し足が伸びれば、かっこ良くなれるんだろうに・・・。」

 博美はその指輪に不思議な力があるのではないと思い、指輪で足も擦ってみた。信じている訳ではないが、藁を掴む様な思いだった。そしてそれはある意味事実であり、的を射ていたのだ。



 「さてと、食事に行くか・・・。」

 学校が休みでも、学食はお昼からは営業している。博美はジーンズとTシャツを着るのだが、そこで再び違和感を感じた。洗濯した後なので、縮んだのかと思ったが、それ程には気にしないでいた。Tシャツは肩幅が広くなっている割りに、袖が縮んでしまっていた。そしてジーンズはウエストが伸びてしまい、シャツと同様に裾が縮んでしまっていた。・・・と感じたのであるが、実際には手足が伸び、肩幅が狭く、ウエストも細くなっていた。


 「何だか・・・あんまり食欲がない・・・。」

 いつもだと、学食の場合、少し足りない程度なのだが、なぜか食べきれない。決して不味い訳ではない。半分迄はいつもの通りに食事を出来たのだが、そこで急に満腹になってしまった。

 「おかしいなあ・・・。ひょっとして、これも指輪の・・・?」



 指輪の効果は一週間でハッキリしてきた。学校のある時はベルトでズボンを締めている。だから少しベルト穴が余ってきた事はむしろ好ましかった。それはウエストが細くなったという事、スタイルが良くなるという意味だ。そしてジーンズの時と同じ様に、裾が短く感じるという事は、足が伸びたという事だからだ。そして休みになり、ジーンズを穿いた時に少し不具合が出てきた。ウエストが細くなり、だらしなくずり下がってしまうのだ。ジーンズにベルトは似合わないし、つんつるてんの裾は見栄えも悪い。

 「よし、せっかく背が伸びたのだから、新しいのを買いに行こう。」

 やはり恰好良くなって、もてたいという気もあった。



 「エーと・・・。」

 学校の近くのジーンズショップで色々と試着したが、なかなか満足出来る物がなかった。ベルトをしないで済む様にウエストに合わせようとすると、かなりきつくなってしまうし、裾もギリギリの短さだった。ある程度ゆったりさせると、やはりウエストに余裕が出来過ぎる。
 迷っている様子に女子店員が声を掛けてきた。

 「合わない?」
 「ええ・・・。」
 「ジーンズはあなたみたいにスラッとした子こそ良く似合うのよ。」

 博美は『スラッ』という言葉が嬉しかった。

 「測って上げるわ。」

 店員はメジャーで博美を測り始めた。

 「アラッ?」

 ちょっと不思議そうな顔をしながら、メモを取り始める。そして寸法表と比較し始めた。

 「これでは合うジーンズはないわ。」
 「無い・・・んですか?」
 「ああ、このコーナーにはよ。この寸法だったら・・・。」

 女子店員は離れた所から持ってきた。

 「これを穿いてみてご覧なさい。」
 「だって・・・、これ、女用でしょ?」
 「寸法的にはこれでピッタリなのよ。女の人だって、体形では男子用を穿くのよ。男用との違いは、腰の部分の長さだけよ。」

 ちょっと渋っていた博美だが、女子店員の勧めで試着室に入った。


 「どうかしら?」

 試着室の外から店員が声を掛けてきた。

 「うーん、ピッタリはピッタリなんだけど、腰に引っ掛かっているって感じで・・・。」
 「それでいいのよ。見せてご覧なさい。」

 博美は試着室から出た。

 「あら、いいじゃない。そういうのがお洒落なのよ。だけどTシャツは中に入れてはダメ。ださいわよ。」
 「そうですか?」

 シャツを引き出してみたが、いつもよりかなり長くて、だらしない感じになってしまう。

 「あらあら、ブカブカね。撫で肩で肩幅が狭いのだから、もっとちゃんとしたのを着ないと・・・。折角格好いい体形なのだから。」

 なぜか既に新しいTシャツを持っていて、それを博美に渡すのだった。

 「あのう、これも女物じゃないの?」
 「分かる?」
 「だって・・・、胸の部分が緩くて・・・。他はピッタリだと思うけど・・・。」
 「ヒップだって少し緩い筈よ。だけど全体としてのバランスからは、今のあなたに合う物はないわよ。」
 「そうかなあ・・・。何だか女物だと似合わない感じがするけど・・・。」

 指輪がシュッと振動した。

 「そうでもないわよ。とても格好いいわよ。」

 半信半疑だったが、店員達の好感の眼差しには満足出来ていた。店を出る時、博美と同じTシャツの女性が入ってきた。博美より背が高いので、スラッとした足にはジーンズが良く似合い、同じ柄のシャツとは思えない程フィットしている。それは巨乳とも言えるバストが模様をパッツリと見せていた。

 (ワッ、今の女の人と同じシャツ? 全然違うじゃん。やっぱり女物のシャツは、ああいうオッパイの人じゃないと似合わないんじゃ?)

 博美の無意識の気持ちにも指輪が反応するのだった。



 「ワッ、誰なの?」

 博美は淫夢の中で慌てていた。昼間ジーンズショップで見た女性が金縛りにあっている博美の股間を真探っていたのだ。

 「可愛らしいオチンチンね。あなたには似合った大きさかしら?」
 「バカにするな・・・、ヒーッ、ダメーーッ。」

 射精させられた途端に目が覚めたが、やはり眠っている間のマスターベーションだった。

 「ウッ・・・、また・・・。」

 それでもたとえ夢でもバカにされた事は悔しかった。

 「まだボクは成長中なんだ。だけど今のお姉さん、あの時の・・・? あの人に似合うオチンチンだったら・・・。アハッ、まさか・・・。だけど綺麗でグラマーだったなあ。ボクの夢に出てくるなんて・・・。」

 まだ夢のオスペの快感の余韻が残っていて、萎え掛けたペニスをまだしごいていた。そして二度目の射精のオナペットとしてその女性を思い浮かべていた。自分でも女性っぽいと思っている掌でのマスターベーションは、まるでオスペをされている様な快感だった。

 「アフッ・・・。あんなお姉さんと・・・。」

 指輪がペニスを擦っていた。そして思い描いている女生徒のセックスを夢見ているのだった。



 「萩野君・・・。」
 「ん? 何?」

 博美は教室で同級の女生徒に声を掛けられた。

 「何だか、ここのところ、急に顔が変わった?」
 「顔? どっか変?」
 「変・・・って言うより、前からも可愛い顔だったけど、ますます可愛くなってない?」
 「やめてよ。ボクの劣等感なんだから。」
 「ううん、少し違うのよ。髪の毛だって凄くサラサラしていて綺麗だし、女っぽい男の子だったのが、男っぽい女の子って風に見えるのよ。」

 博美はドキッとした。自分自身でもそう感じていたのだが、他人に指摘されると精神的ショックが強かった。

 「冗談! ボクはオカマじゃないよ。」
 「ウフフ・・・、確かにオカマじゃないわよ。オカマって、どっちかというと男を感じるけれど、萩野君はニューハーフ。化粧映えするわね。」

 博美がふてくされた顔をすると、更にひやかされる。

 「そうそう、そういう表情と仕草は女そのものよ。」

 博美は外見的には無視をしていたが、心の中の動揺は激しかった。

 (自分で思っている程度じゃなかったんだ。やっぱり指輪のせいかな? まさかこのまま女に成ってしまうなんて・・・。)

 授業中も机の中で指輪をいじっていた。回転はするし、きつくはないのに抜ける事はなかった。

 (だけどオチンチンは大丈夫だよな。女っぽい顔になっても、オチンチンさえしっかりしていれば、ボクは男なんだから。)

 そう思った途端、ペニスがムクムクと勃起し、頭の中には淫夢の女性が思い描かれるのだった。

 (アハッ。 大丈夫だ。これは男の証拠だものな。)

 自分では鏡を見ない限り女っぽさは感じない。そして手足が女っぽくても、それは足がスラッと伸びているという事だし、手はマスターベーションに良い感触を与える。まだそれ程深刻な事とは思っていなかった。



 下宿に戻る途中、百円ショップに寄った。文房具を買う為だったが、ふと、ティッシュも買うのだった。それはマスターベーションの為であった。
 レジに向かう時、ふと目に付いた物があった。それは女の子用の小間物なのだが、玩具の様な付け爪だった。それは自分の手が女っぽい事を更に高め、マスターベーションに味付けをするのではないかと思うのだった。

 「ウフッ。 ククッ・・・。」

 予想通りに付け爪は効果的だった。細くて長い指はいかにも女性的だが、そこに付け爪が付いている事で、視覚的には女性にオスペをして貰っている感覚を得られるのだった。

 「アハーッ・・・!」

 射精の瞬間、机の上の鏡が目に入った。そこには絶頂の博美自身の顔が映っていたのだが、その表情は少年の顔ではなかった。ショートカット気味の可愛らしい少女の喘いだ顔だった。それはその瞬間を更に高まらせるものだった。



 「まずいな・・・。ますます女顔になってる。だけどオチンチンも成長しているし、背も高くなっている筈だし・・・。」

 博美は足が伸びた実感があるので、背も高くなっていると思っていたが、実際に身長に変化はないのだ。足が伸びた分、胴が短くなっているのだ。つまり、より女性体形に近付いていたのだ。


 「ねえ、萩原。」
 「エッ?」
 「あなた、どういうの使ってるの?」
 「どういうの・・・って?」
 「やせる薬とか、化粧品とか、シャンプー。」
 「そんなの使ってないよ。シャンプーは学校の売店のやつだ。だけど、どうして?」
 「だってさあ、萩野、ここのところ、急に綺麗に成ったじゃない。女の私が見ても羨ましい位よ。」
 「やだよ。それでなくたって、ボクは元々・・・。」
 「あら、今のはやりでいいじゃない。もっと背が高かったら、ビジュアル系でいけるよ。」
 「ああ、背は高くなったけど・・・。」
 「エッ? そう? 萩野は私より少し背が低い程度だったよね? 今も同じだよ。」
 「エッ? ボクはグッと伸びたと思ってたけど・・・。ズボンが急に短くなったし・・・。」
 「それだっていいよ。足がスラッとしていてさ。手だって細くて綺麗。産毛も無いのよね。脱毛してるの?」
 「全然・・・。」
 「いいわよねえ・・・。全然手入れしないでそんなに綺麗になれるなんて・・・。」

 周りの女生徒も頷いていた。それは少し気恥ずかしいが、博美の自尊心を満足させる言葉だった。


 「そうか・・・、今の流行りか・・・。やっぱりかっこ良くするマジックリングなのかな? オカマに成る心配をしてたけど、毎日してるし・・・、夢でのあのお姉さんが好きなんだから、ボクは正常なんだ。だったら・・・。」

 博美は再び百円ショップに向かうのだが、少し準備していた。手帳を破り取り、そこに

オレ 定規 消しゴム
母 ティッシュ
妹 口紅 まゆずみ  靴下

 と、書き込んだ。本当は『妹』の部分だけが目的なのだが、いかにも頼まれたという風を装う為だった。
 恥ずかしかったのだが、むしろ堂々と買う事で、店員は不審を抱かない。その必要もない程の客の流れだった。



 夜になって、博美はマスターベーションに色付けを始めた。慣れない手付きで口紅を塗る。

 「ウフフ・・・、女の人にして貰うマスターベーションっていいもんな・・・。こういう時は女っぽい顔って得。うーん、だけど難しい。いくら女っぽい顔でも、ボクには似合わないか・・・。」

 左手で持ったティッシュで、少し唇を拭うと、鏡の顔には驚くべき変化があった。はみ出ていた部分は綺麗に拭われ、見事な唇が映っていた。

 「ワーッ、すげーーっ・・・。ボクにはこんな才能も?」

 そして黛も同様に塗るのだったが、結果は同じだった。

 「これ・・・ボク? こんな程度で・・・、完全に女の顔だ・・・。おっと・・・。」

 自分自身の顔に欲情してしまったのか、ペニスがいきなり盛り上がる。博美は慌ててズボンを脱ぎ、買ってきた女子用の靴下を穿いた。そしておもむろに始めるのだが、それは今迄のマスターベーションを遥かに越える快感を伴うのだった。

 「ウワッ・・・ヒッ・・・、何・・・? アフーーーッ!」



 気怠さの中で意識を取り戻した博美は撒き散らした精液を掃除しなくてはならなかった。

 「フーッ、癖になりそう・・・。だけど、これって変態じゃんか・・・。まずいなあ・・・。」

 鏡を覗き込むと、そこには笑顔の少女が微笑んでいた。

 「ボクだよなあ・・・。こんなに変わるものかなあ・・・。だけどいかにもスケベそうな口・・・。口か・・・。セックス以前にフェラチオとかパイ擦りとかもして貰いたいよなあ・・・。あのお姉さんの口、フェラチオには気持ち良さそうな口だった。ボクの唇も綺麗だけど、ああいう唇は別だよな。アハハ・・・、ボクの口にフェラチオは似合わない。 」

 とうとう博美は自分自身に呪縛を掛けてしまったが、それには気が付かなかった。



 夢の中にあの女性が現れた。

 「ボクちゃん、フェラチオして欲しいの?」
 「ワッ、お姉さん? これ夢?」

 金縛り状態の博美は女性のするがままに下半身を脱がされた。そしてその女性はペニスを掴んで、パクッと喰わえ込むのだった。

 「ハヒッ!」

 夢だとは分かっていた。しかし手でされるオスペ、実際には夢の中でのマスターベーションだったが、それよりもずっと刺激が強かった。

 「ハウーン・・・。」

 快感の迸りを発し、博美の金縛りが解けた。そして目を覚ますのも分かったのだが、

 「ゲバッ・・・av

 不自然な体勢と、口の中の強い嫌悪感にいきなり目覚めた。

 「ギエーーーッ・・・!」

 博美は屈んだ格好で自分のペニスを喰わえ込んでいたのだ。そして口の中にはその証である汚物がたっぷりと入っていた。

 「ガハーーーッ!」

 慌てて博美は流しでうがいをしたのだが、その時には大部分の精液は喉を通り過ぎていた。

 「ウーッ、気持ち悪い・・・。折角いい夢だったのに・・・。」

 何度も吐き出そうとしたがダメで、いつ迄も続く嫌悪感に苛まされていた。



 「どうしたの? 萩野君?」
 「何が?」
 「元気ないわねえ。だけど憂いの美少年ていう風景もいいわね。うーん、美少女かな?」
 「そんな事ないよ!」

 博美は空元気で、明るく振る舞って見せたが、セルフフェラチオをしてしまったショックをずっと引きずっていた。


 しかしそのショックを解消するには、博美にはマスターベーションでしかなかった。それに夢精でセルフ尺八などというのは、充分にマスターベーションをしていなかったからだと思っていた。夕方になり、いきなり始めようとするのだが、勃起はするものの快感が極めて薄く、達する迄にはいかない。それよりも高まりを感じないのだ。

 「やっぱり昨日の様にしないと楽しくないや・・・。いっぱい出さないと・・・、ウーッ、思い出したくもない・・・。」

 博美は勃起したままのペニスで化粧をした。そして全裸になり、靴下だけを穿く。

 「ハーッ・・・、どうしてこんなに・・・違うんだろう・・・。鏡の中のボク・・・、自分でも・・・可愛い・・・。」

 右手でペニスをしごき、左手は無意識に胸を真探る。それはあの女性を思い浮かべる為でもあった。

 「ああ、あのお姉さん・・・。大きなオッパイに顔を埋めてみたい。パイ擦りというのもしてみたいなあ・・・。」

 喘ぎながら覗き込む自分自身の顔はいかにも女の子の様な顔だった。そして無意識ながら、

 「本当に女の子みたいな顔・・・。こういう顔の子なら、あのお姉さんみたいなオッパイが似合うだろうなあ・・・。アフッ!」



 気怠さの中でシャワーを浴びようとし、靴下を脱ぐ為に屈んだ。まだ勃起したままのペニスは以前よりずっと大きくなっていて、脱茎である事は自尊心を満足させる。しかしその動作が途中で止まった。

 「エッ・・・?」

 博美は恐る恐る胸に触った。屈んでいる為にそう感じるのかと起き上がり、胸を反らす様にして触れなおした。

 「ヒッ・・・?」

 そこにはまだ小さいが、乳房としての確かな膨らみがあった。

 「ワーッ、まさか・・・。」

 オロオロしながら全身を見回す。

 「女みたいな体形・・・。だったら胸も? まさか女に成ってしまう? いや、オチンチンだって随分大きく成ってる。だったら、どうして・・・。」

 胸に触れると、博美には分からない事なのだが、乳房が出来始める女性の第二次性徴として、乳房はかなり敏感なのだ。特に乳首に触れると痛みを感じるのだ。

 「どうしよう・・・。まさかこのまま・・・? いや、ボクは心は男だし、オチンチンは気持ちいい・・・。ひょっとすると、オチンチンを搾り足りないのか? ううん、きっとすぐに戻る。考え過ぎだよ。」

 不安ながらも、博美にはどうしようもない。ただマスターベーションで不安を噴き飛ばすしかなかった。


 二度目の射精ですっかり疲労した博美のペニスは相変わらず突き勃っていた。

 「アハッ・・・、オチンチンは元気だよ。これが男の証拠・・・。ボクはあのお姉さんとのセックスをしてみたい。だから精神的にも絶対に男だ。男なら、もっと大きくて硬く何度でも出せる丈夫な出せるオチンチンでないとあのお姉さんには似合わない。夢でもいいから、あのお姉さんにして貰いたい。」

 快感の余韻は女性化の不安を減らしていた。鏡の中の可愛い女の子の顔はにこやかに微笑んでいる。

 「髪も急に伸びたみたい。オチンチンも随分大きく成っているのに、どうしてそこ以外は女みたいに成ってしまうのだろう。胸だって、どう見てもオッパイだ・・・。」

 まだまだ小さな乳首に触れた途端、かなりの痛みを感じた。

 「イテッ・・・?」

 驚いてまだ僅かな膨らみも触れてみたが、乳首程ではないが、かなりの痛みがある。

 「ウワッ、どうして? そうだ・・・、女の子達が話していたけれど、オッパイが大きく成り始める時はかなり痛くなるって言ってた・・・。だとすると・・・?」

 慌てて博美はマスターベーションをするしかなかった。しかし三発目となると、なかなか高まらない。ペニス自身はかなり激しい勃起をしているのだが、達するところ迄はいかないのだった。

 「フーッ、あと少しだけど・・・。中途半端・・・。」

 ヌメヌメと光っている亀頭を見つめていたが、なぜか口の中に唾液が溜まってきた。

 「ウーッ、出ない・・・。これって・・・つらい・・・。」

 陰嚢ははちきれそうな程に精液が溜まっているのに、なぜか達するところ迄いかない。そして博美の頭に恐ろしい予感が走った。

 「グッ・・・、ボク・・・、自分で・・・? そんな・・・。」

 その考えを振り払おうとすればする程想念が渦巻く。ふと鏡を見ると、切なそうな女の子が口をパクパクさせていた。

 「ヒッ・・・、フェラしたい? ワーッ、鏡の女の子はボクだよ。どうして自分で・・・?」

 ペニスはますます激しく高まるのだが、一向に射精の気配はない。両手の激しい動きはいつの間にか治まってしまっていた。

 「なぜ? 出せない? つらい・・・、オチンチンが破裂しそうなのに・・・。」

 涙のせいか、鏡も見えなくなっていた。全身から冷たい汗が噴き出していた。そして激しい欲情の中で、理性を失いながらも、フェラチオでしか絶頂を迎えられない事だけは分かっていた。そしてペニスを見つめたまま、フェラチオという意識だけしか残らなかった。


 「グオーーーッ!?」

 ハッと気が付いた時、口の中には精液で満たされていた。吐き出そうと思った時、既に大部分が喉を通り過ぎていた。

 「グエッ・・・!」

 生臭く、苦い粘液を吐き出そうとしたのだが、うがいをする前に全く残っていない。そして精液の栗の花の匂いがいつ迄も残るのだった。確かに激しい嫌悪感を伴うのだが、やっと射精出来た壮快感にホッとするのだった。

 「どうしよう・・・。とんでもない事が癖になっちゃって・・・。女の格好をして、自分でフェラチオしないとならないなんて・・・。ワーッ、これって、もの凄い変態だ。アッ、それでこんな事に? 違う、逆だ・・・。身体が女に成っていくから、女みたいな事をしないと出来なくなってるんだ・・・。女みたいな? それも違う。だってオチンチンはもの凄く男だよ。三回連続なんて初めてだけど、まだ勃ったままだ。」

 さすがに疲労で横たわっていたが、いつ迄経ってもペニスは萎縮しない。

 「おかしい・・・。オチンチンが萎まない。さすがにフェラチオしようとも思わないのに、突き勃ったまま・・・。エッ?」

 博美は震え上がった。その理由は二つあった。射精するのにフェラチオでする事が当たり前だと思ってしまっている自分に。そしてペニスが全く萎む気配のない事に。

 「ワーッ、ボク、本当に変態の病気に?」

 そして不安の解消にはもう自分でペニスを喰わえ込むしかなかったのだった。たとえ射精を目的とはしなくても、顔を前後させ、口の中をペニスが動いていると不安が減るのだった。ハッと理性が戻っても、ますますペニスを吸い上げる事でしか不安を解消出来ないのだった。



 休みなので博美は病院へ行く決心をした。とは言え、どこの病院へ行くのかが分からない。かといって相談する事も出来ないが、とにかく出掛けないと不安だった。

 「グッ・・・?」

 出掛けようとする博美に新たな問題が起きた。まずパンツが穿けない。パンツを一杯に引っ張って隠そうとしても、ゴムがちょうど亀頭の位置に来てしまい、被せる事が出来ない。やむを得ず、前開きの部分から出しておこうとしても、一度ペニスが治まってからでないと無理なのだ。

 「ワッ、パンツが穿けない? 大変だ・・・。もっと大きい奴を買ってこないと・・・。」

 そして女物のジーンズは腰の部分が短いので、勃起したままのペニスを押さえ込めないのだ。ある程度、腹に押し付ける事は出来るのだが、左右に向きを変える事が出来ない。しかし押し付けても、亀頭はジーンズの上に出てしまう。そしてジーンズのウエストに押し付けられ、留め具のフックと飾りボタンに当たるので、亀頭にはかなりの圧迫と痛みが起きるのだ。それでも我慢して穿くのだが、上の方も問題だった。ワイシャツの少しゴワゴワした感触の服は、乳首に触れると激しい痛みを伴う。それを我慢しても、更に大きく成っている乳房の為、ボタンを留めるとはちきれそうになり、強い圧迫を受ける。

 「どうしよう・・・。」

 Tシャツならゆったりとしていて圧迫はないが、明らかに乳房がそのシルエットを浮き立たせてしまう。しかしそれ以外に着る物は無かった。

 「オチンチンはシャツで隠せるけど、この胸だと絶対に女だと思われる。」

 困っていた博美だが、ハッと思い当たった。

 「そうだ! ボクの顔は女みたくなってる。髪の毛をフワッとさせれば、女としてみられるから、それで服を買ってこよう。明後日から学校に行けなくなってしまう・・・。」

 博美は鏡に向かい、化粧をするのだが、そこでもハッとする。自分でも気付かない程すんなりと、手慣れた作業だった。そして口紅の具合を確かめる為に鏡を覗き込み、パクパクさせた時、亀頭に激しい痛みが走る。

 「ヒッ! 口を見たら催しちゃった・・・。イテテ・・・。」

 慌ててジーンズのフックを外し、意識としてはマスターベーションを始めようとしていたのだが、気付いた時にはしゃがみ込んでペニスを喰わえ込んでいるのだった。

 「アブーーーッ!」
 (ワーッ、また・・・? 身体がいう事を利かない。ヒーッ、出ちゃう!)

 うがいは単なる儀式にしかすぎない。意識とは裏腹に、射精された精液はすぐに飲み下されてしまっているのだ。栗の花の匂いもそれ程の嫌悪感は少なくなってきているし、すぐに飲んでしまう事で味による不快感も少ない。そして何よりも手淫よりも素早く激しい快感を得られる事に悦びすら感じるのだった。

 「ズボンもどうにかしないと・・・。ジーンズだとオチンチンが痛いし、通学用だと、ちょうどベルトに当たるか? ボンタンみたいなズボンか、吊りズボンじゃないと・・・。」

 病院の前にまず衣服だった。



 ジーンズショップは午前中なので客は少ない。たとえ博美の女装はバレないにしても、人目が少ないのは救いだった。男で女物を探すのは恥ずかしい事に思うが、女姿で男物の中に居るのも結構恥ずかしさを感じた。パッと済ませたいのだが、必要な物は簡単には見つからない。Yシャツは大きい物は肩幅が広過ぎるだろうし、完全な制服としてのYシャツでは、自分の体に合わせたり、まして試着は出来ない。そしてそれを見付けてからでないとパンツを選ぶのはなおおかしい。

 売場をウロウロしていると、

 「アッ、菊沢さん、出来ていますよ。」

 店員の声に何気なく入り口を見ると、そこにはニコニコした以前に見た美人だった。

 「ワッ、あの人・・・。」

 博美の夜のオカズであり、下半身に刺激が走る。ジーンズが強い圧迫となり、慌ててTシャツの中に手を入れ、ウエストに余裕を作るのだが、それではかなり強い圧迫となってしまう。やや前屈みになりながら、どうしてもチラチラとその美人を見てしまうのだ。

 「はい、だけど菊沢さん、最近数が多いわよ。」
 「仕方ないわよ。サポーターは丈夫さだけじゃねえ・・・。」
 「別に誰に見せる訳でもないのだから、丈夫な物にしたら?」
 「気分の問題よ。私の『お友達』には見せているのだから。」
 「『お友達』ねえ・・・。本当の友達を早く捜しなさいよ。」
 「分かってるでしょ? 今は『お友達』で充分。だけど、いつ本当の友達が出来てもいい様には準備しているわよ。」
 「全く・・・。ちょっと待って!」

 店員が鋭い視線を博美に向けた。ハッと目を反らし、奥の方へ進もうとした時、店員が素早く博美の側に走り寄る。その後ろからもう一人のグラマー美人も着いてきた。

 「ちょっとあなた!」
 「エッ、何ですか?」
 「奥の部屋迄来て下さいな。」
 「何で?」

 女店員は声を落として博美の耳元で囁いたが、威厳と怒りが篭っていた。

 (まさか・・・、ボクの女装がバレて?)
 「恥ずかしい事よ。大人しく着いてこないなら・・・。」
 (ワーッ、バレてる!)

 後ろからは美人が押し出す様に着いてくる。そして奥の休憩室に連れ込まれた。

 「万引きか・・・。」

 美人の声に博美は驚いた。女装がバレたのかと思ったが、万引きと間違えられたらしい。

 「分かっているわね? 万引きは窃盗罪という罪よ。まず、出しなさい。」
 「さすが店員としてのプロね。」
 「初めてなんでしょう? オドオドしていたし、チラチラ私の方を見ていたわ。そしてジーンズの中に隠したのね。」
 「万引きなんかしてないです・・・。」
 「いい加減にしなさい! 警察に連絡するわよ! あなた、心生学園の生徒でしょ? 警察に連絡したら、学校も退学になるのよ!」
 「本当です! 万引きなんかしてません!」
 「どこ迄しらを切るのよ! 京香さん、証拠を取り出して!」

 店員は博美の後ろから羽交い締めにした。そして京香は博美のTシャツを持ち上げ、ジーンズの中に手を入れるのだった。

 「やっぱり・・・。」
 「ヒギッ! イヤーーーッ!」

 京香は博美のジーンズの中の『物』を掴み、引っ張り出そうとしたのだが、引っ掛かっているのでジーンズのフックを外した。

 「何を盗もうとしたの?」

 何度かその『物』を取り出そうとして引っ張った時、予想とは違うが、結果的には博美の望んでいた京香によるオスペを受ける事となってしまっていた。恥ずかしさの中でペニス自身の意思には気付かなかったが、ペニスは充分に京香の掌に反応し、既に溜まりきっていた粘液を放出するのだった。

 「イヤッ、何これ?」
 「エッ、ワーッ、痴漢?」
 「ヒーッ、痴漢じゃないよ! お姉さん達が・・・。」
 「でも変態よ! 女装して、何をしようとしていたのよ!」

 京香は掌に着いてしまった汚物を汚らわしそうに拭いながら、博美の胸を突いた。

 「ガフッ!」

 小さな乳房に痛みが走る。そしてペニスと胸を押さえながらしゃがみ込んでしまった。

 「エッ? 今・・・。」
 「どうしたの、京香さん?」
 「この子、胸が在る・・・。ニューハーフ?」
 「胸? そう言えば、見た目は本当に女の子よね? 男の子が女装した様子でもないわよね。」
 「あなた・・・、一体、何なの?」



 泣きながらも博美は今迄のいきさつを話した。

 「フーン、ホルモン分化かしら? 結構そういう症例は聞いた事があるわ。」
 「確かにこの体形ではなかなか合う服はないわね。」
 「ヒロミ君、まずは胸よ。敏感になっているんでしょう? だから姿勢が悪くなるから、オドオドしている様に見えるのよ。ちゃんとブラをしないと。」
 「ブラ? ブラジャーの事?」
 「そうよ。特に最初の内は乳首が擦れて、とても痛いわ。ブラはそれを保護する為にもする物なのよ。」
 「イヤだよ! ボクは男だよ。いくら何でも・・・。」
 「確かにそうね。だけど治る迄は必要よ。佐川さん、目立たないブラないかしら?」
 「ちょっと待ってね。」

 佐川は部屋を出て、すぐ戻った。

 「スポーツブラならいいでしょう。どうかしら?」

 京香は博美のTシャツを引き脱がした。

 「イヤーッ、ダメーーッ!!」
 「言う事を聞きなさい! このままでは、この部屋からさえ出られないわよ。『男の子』は凄く元気だから、ジーンズだってそれでは無理よ。」

 上半身裸にされ、胸を隠していたヒロミはジッパーを上げようとしたが、京香が居る事でより激しい突き上げをしていて、しまい込めないでいた。京香はブラを博美に宛てがい、後ろでフックを留める。

 「ちょっとカップが大きいわね。だけどこれなら痛まない筈よ。」
 「だって・・・、ボクは男だよ。男なのにブラジャーなんて・・・似合わないよ・・・。」

 その時左手の指輪が振動し、暖かみが走った。

 「アッ・・・!」

 何となくだった疑問がやっと分かった気がした。ジッと指輪を見つめている博美に佐川が声を掛ける。

 「どうしたの? その指輪がどうかした?」
 「この指輪が・・・。お姉さん、この指輪、外して下さい!」
 「なぜ? 抜けないの?」
 「アワワッ・・・?」

 胸の痛みが大きくなり、博美は屈み込んだ。痛みと言っても、敏感な乳首の痛みではなく、乳房の奥からの痛みだった。そしてやっとその痛みが治まった時、女性達にも驚きの声を上げた。

 「オッパイが・・・。」
 「さっき迄はブカブカだった筈よ。」

 博美は慌てて指輪を外そうとするのだが、回りはするが、抜き取る事は出来ない。」

 「どうしたの? 外せないの? だけどどうしてオッパイがいきなり・・・。」

 博美は泣きながら無駄な努力をしていた。

 「この指輪のせいらしいんです。『似合わない』という言葉がキーワードらしくて、そう言うとその似合わないのが似合う様に身体が変化してしまうの。呪いの指輪らしい・・・。」
 「呪い・・・?」

 女性達はちょっと腰が引けていた。

 「あなた・・・、女に成りたかったの?」
 「違うよ! それならこんな・・・勃ったままになんか成らないでしょ?」
 「アッ、そうか・・・。だったら、勃ったままに成りたかったの? それって、結構不便じゃないの? ジーンズだってそうだけれど、普通のズボンだって・・・。」
 「それは・・・。」

 チラチラと京香を見ながら恥ずかしそうに顔を赤らめた。

 「菊沢さんが何か関係してるの? ここ迄話したのよ。恥ずかしいかも知れないけれど、私達に何かアドバイス出来るか知れないわよ。」
 「あのう・・・、前に菊沢さんを見た時、凄く綺麗だった思って・・・。」
 「私? だけどそれと?」
 「夢だとは分かってます。現実にはあり得ないとも。だけど、確かあの時、まだ随分小さかったんで、『こんなオチンチンじゃ、あのお姉さんには似合わない。』って思ったんです。そしたら、急に大きく成り始めて、そして萎まなく成っちゃったの・・・。」
 「ああ・・・。」

 二人の女性は顔を見合わせていた。驚愕の表情は、むしろ博美を訝しがらせた。

 「確かにそうなのだとしたら、その指輪は本物ね。」
 「エッ? どういう事? ボクがお姉さんに似合う恋人になるとしたら、勃ったままのオチンチンでなければならないの?」

 女性達は噴き出したが、特に京香は照れ臭そうにしていた。

 「そうね。確かにそうだわ。私の『お友達』は確かにそうなのよね。不思議? いいわ。あなたの恥ずかしい事を聞いたのだから、私の恥ずかしい事も教えて上げる。そうしないと不安で仕方がないでしょうからね。だけど、その指輪、良く私の事迄分かるものなのね。ただ、少し中途半端だったわね。」

 京香はバッグから何かを取り出した。最初は黒いショーツの様だが、女物にしては分厚い。そして広げて見せるのだが、肝心な部分に大きく穴が開いている。更にその下から取り出した物は博美には一瞬意味が分からなかった。

 「ヘッ?」

 それは巨大な張り型、バイブだった。そして幅広のゴムテープが幾つも着いている。

 「京香さん! そんな物迄見せていいの?」
 「いいわよ。これからの話には必要な事なのだから。ところでヒロミ君、これが何かは分かる?」
 「アッ・・・あの・・・、バイブ?」
 「知っているのね? 勿論使い道も知っているわよね?」
 「まあ・・・。」

 ショックのまま頷くしかなかった。

 「私は凄いスケベなのよ。今だって、これと同じ物を使っているのよ。」
 「ヒッ?」
 「ああ、音はしないから分からないわよ。高級品で、そこらの大人の玩具のお店で扱っている物の様な、ただ振動するだけの物ではないわ。」
 「だけど・・・、随分・・・。」
 「そうね。それが中途半端って言った意味よ。」

 バイブは太さで五p以上。長さは三十pをゆうに越えている。

 「私は、これを使っていないと精神的におかしくなってしまうのよ。そういうスケベなのよ。」

 博美はなぜそんな物を京香が見せるのかが分からなかった。そしてひたすら汗を拭っていた。

 「あら、まだ分からないの?」
 「エッ? 何が?」

 その時博美はペニスにも激しい痛みを感じた。

 「ガヒッ?!」

 ペニスが激しい脈動を起こし、それに伴う痛みだった。

 「イテーーーッ!!」

 ペニスを押さえてのたうち回る博美にはまだ意味が分からないでいた。

 「ヒーッ、今度はオチンチンが・・・?」
 「分からないの? 指輪には分かったみたいだわよ。」
 「イテテーーーッ、アアッ? 伸びる?」

 手で押さえていたペニスが、もうジーンズのジッパーを上げる事も出来なくなる程硬く、突き出してきたのだ。

 「私のバイブは見たわね? という事は、私のここはそれが楽に納まる程に大きく広いのよ。ヒロミ君は私に似合う様なオチンチンに成りたかった筈。そうなのよ。だからこれ以上に大きく成らない限り、私には似合わないのよ。」
 「ワーッ、まさか・・・。」
 「京香、そんな事は無理よ。こんな小柄な子なのよ。それにどんなに早く成長するにしたって・・・。」
 「ねえ、佐川さん。私、この子を『お友達』にしたいと思うの。手伝ってくれる?」
 「あなた・・・、こんな歳下の子を? それに『友達』じゃなくて『お友達』? 意味が分かっているの?」
 「分かっているわ。この子は私に似合う様に成りたいと願ったのよ。確かに魔法の指輪らしいわ。私に似合うなら、きっと・・・。運命なのよ。」

 佐川はまだ慌てていた。控え室とはいえ、ペニスを突き上げた少女の顔の少年を置いておく訳にはいかない。

 「ヒロミ君、まだ暫くはオチンチンは痛むわよ。一人で不安なままで居るよりは、あなたが好きな私と一緒に居た方がいいわね?」

 そして振り返り、

 「佐川さん、そういう訳だから、私達をマンションへ送ってくれない?」
 「それはいいけど・・・、本当に本気なの?」
 「本気よ。それにこの子は私の為に苦しんでいるのよ。お世話するのが当然じゃない。アッ、大きめのバスタオル、スポーツタオルがいいわ。それを腰に巻いていくわ。」

 佐川はドアを開けて駐車場に向かう。すぐに京香が博美の腰にタオルを巻いて抱き抱えた。博美としては何も出来ず、ただ股間と胸の痛みに必死に耐えているだけだった。

 「いいわよ。」

 佐川が出口前にワゴン車を留め、二人を招き入れる。そしていきなり発車するのだった。



 「京香、本当にいいの? それと萩野君、痛みは?」
 「ズキズキして・・・。それに・・・つらい・・・。」
 「痛いんでしょうね。上下同時に、しかもいきなりだから・・・。」
 「そうじゃなくて・・・。」

 心配そうに博美を見ていた京香は博美の喘ぎでその意味を悟った。

 「催したの?」

 博美は恥ずかしそうに頷くが、顔が火照っている。

 「オチンチンが急に丈夫になり始めてから、何度も出る様に成ったの。ううん、何度も出さないとつらくなって・・・。」
 「そうね。まだ到着には時間が掛かるから、出させて上げる。」

 既に京香は手拭いを持ってタオルの下から手を滑り込ませていた。

 「ワッ、お姉さん!」
 「いいからジッとしていて。」
 「ハフッ・・・п@ボクのオチンチンを・・・お姉さんが・・・。」



 「本当に萎まないのね。」
 「お姉さん、ボクはどうすればいいの? これじゃ、学校に行けない。それどころじゃないよ。表に出られない。」
 「そうよね。だけど心配しないでいいわ。心生学園にはヒロミみたいな子がかなり居るのよ。」
 「エッ? そう言えば・・・、噂では・・・。だけどボクはイヤだ。ニューハーフなんかに成りたくないよ。男で居たいよ。」
 「あら、これは立派な男の子だけれど?」
 「だって・・・、お姉さんがあんな事言って、指輪の魔力が・・・。あのバイブみたいな大きなオチンチンに成ってしまったら・・・。」
 「エッ? ヒロミは私とセックスしたいんじゃなかったの? それには大きく成らないと。」
 「エエーッ?」

 博美は目を剥いて京香を見つめた。京香とのセックスは最終目標であり、あくまでも叶わない望みだと思っていたのだ。

 「お姉さん、本当なの?」
 「当たり前よ。それでなければ、こんな事なんかしやしないわ。」
 「だけど・・・、お姉さんは美人でグラマーだし、もてるんでしょう? ボクは、今は女みたいな顔に成ってしまっているけれど、以前だって小さくて・・・。お姉さんにはもう恋人が・・・居るんじゃないの?」
 「アハハ・・・。私はスケベだって言ったわよね? 並みのスケベではないのよ。それともう一つ。私の『お友達』に会わせて上げるけれど、雰囲気的にはヒロミに似ているわよ。」
 「お友達・・・?」
 「私のセックスのお相手よ。今迄ずっと。」

 博美はガッカリした。セックスフレンドが居るという事は、自分が恋人になれるかも知れないというのは思い上がりだと知った。

 「ただねえ・・・、私って、凄く独占欲が強いの。私と言っても、こっちの私だけれど。」

 京香は自分の下半身を指差した。

 「いくら博美のこれが立派な物に成っても、他人には使わせたくないのよ。私にとって理想の恋人って、私と居る時はいつでもセックスしている様な人でないとダメなのよ。そういう人でないと、私の恋人としては『似合わない』わよ。」

 指輪がブルッと震えた。

 「ワッ、お姉さん、ダメッ! 指輪の呪いが・・・!」
 「アハッ。 効いたの? だとすると、ヒロミは永久に私とセックスし続けになるのね? もう逃げられないわよ。」

 博美は少し半信半疑だった。『お友達』が居て、なおかつ京香とセックスし続けるという事が分からない。そして自分の様なニューハーフがいつ迄京香に好かれているかと・・・。



 郊外のマンションに着き、三人は裏口からエレベーターに向かった。無人であった事は幸いだったし、上の方の階に着き、かなり奥の方の部屋のドアを開けた時、博美は真っ先に飛び込むのだった。そこには女の強い匂いを感じる部屋だった。鍵が掛けられた時、ホッとすると同時に再び激しい不安に襲われる。汗と同時に涙も激しく溢れ出すのだった。

 「ヒロミ、ここは私達だけしか居ないのだから、裸になっていていいわよ。」
 「裸? イヤだよ。」
 「佐川さん、こういう子だけど、作って貰えるわよね。」
 「作るって・・・、何をさ。」
 「ヒロミ、あなたは一生隠れて暮らすつもり? 私はそれでもいいわよ。一生ここで私のセックス道具として暮らすのならね。だから佐川さんにあなたの服を作って貰うのよ。今のあなたの身体では、下着から全然合わないわよ。あなたの体に合う既製服なんか在る筈ないじゃにないの。だからまずは下着から作るのに採寸して貰うのよ。何とか表に出られる服も考えて貰わなくてはならないしね。」

 確かに博美はこのままでは一生外に出られないと思えた。手やタオルで隠しているとはいえ、突き上げたペニスでの服を作って貰うには仕方がないと思うのだった。渋々だったが、裸になる事にした。ペニスへのジーンズの圧迫や、何よりも乳房への刺激がつらかったので、決心してしまえば、ホッとする開放感だった。しかしブラを外した時のショックはかなりのものだった。

 「ワーッ、オッパイが・・・!」

 スポーツブラなので、乳房のシルエットはそれ程目立たなかったのだが、いざ外してみると、そこには膨らみという程度ではなく、明らかな乳房が存在しているのだった。

 「ホーッ・・・。」

 佐川の驚きの声に、やはり博美は恥ずかしさが立つが、二人の女性の嬉しそうな表情と言葉には不安を打ち消される思いだった。

 「綺麗・・・。」
 「こうしてみると、とても可愛いわね。ウーン、京香さんにいい物を取られちゃったという悔しさが沸き起こるわ。」
 「ヒロミ、そのオチンチン、本当に萎まないの?」
 「うん・・・。一週間以上前から、毎日何度も飲んでいたけど・・・、アワワ・・・。」
 「飲んでた? エッ? ヒロミ、あなた、自分の精液を?」

 慌てた博美だが、否定しない事でバレてしまった。恥ずかしさで涙が止まらないのだが、二人の女性の反応は少し意外だった。

 「素晴らしいわ! それって、ヒロミには凄くイヤかも知れないけれど、セックスペットとしては最高の能力よ。ワーッ、私幸せ! こんな素晴らしい子を手に入れたのね!」
 「京香、あなた、凄過ぎるわよ。何の手間も掛けずにこんな凄い子を・・・。」

 ヒロミは恐る恐る問い返した。

 「あのう・・・、どうして・・・? 自分の精液を飲むなんて・・・。」
 「いい事? セックスでもオナニーでもあなたは精液を放出するのよ。射精した後は凄く疲れるでしょう? それは射精するのにかなりのエネルギーを使うからだけではなく、精液にはかなりの栄養素が含まれているからなのよ。セックスで出す分はとにかく、オナニーで出した精液はロスになるわね。オチンチンを訓練するには何度も射精させるのだけど、その度に沢山の精液を無駄にしては、オチンチンは過労を防ぐ為に射精を抑制するし、欲情を押さえようとしてしまう。だけど射精してもそれが再び体内に戻るのなら、ロスはかなり少なくなりますから、射精はかなり気持ち良くなるのよ。そして何度でも出来るオチンチンに成るのよ。」
 「ああ・・・、それで・・・。」

 博美には実感があった。セルフフェラチオを始めた頃から、射精の回数が増え、勃起したままになってしまっていたからだ。

 「だけど・・・、ボク、どうなるんでしょう・・・。このままではとても学校には・・・。それにこの先・・・。」
 「そうよね。治るにしても治らなかったにしても・・・、私としてはこのままで居て欲しいけれど。」
 「絶対イヤッ!」
 「暫くはここから出られないのは分かるわね?」

 博美は涙ながらに頷いた。

 「ちょっと不便だけれど、心配しないでもいいわよ。」
 「本当に?」
 「私は学校の理事の姪なのよ。だから治る迄は休学にして貰う様にしますけれど、その間に勉強が遅れない様にインターネットで受けられる様にして上げるわ。佐川さん、下宿の方の手配をお願いします。」
 「分かりましたよ。色々と手続きが必要だけれど、あなたは暫くお楽しみよね? 鼻面に人参をぶら下げたままでは何も出来ないわよ。」

 佐川は手を振りながら部屋を出ていくのだった。

 「下宿? どうするの?」
 「あなたは暫くはここに住みなさい。」
 「ここ・・・って・・・、お姉さんの部屋に?」
 「この隣の部屋よ。私は二部屋借りているのよ。」

 博美はちょっと残念な気がした。

 「隣の部屋の事だけれど、表のドアは開かない様にしてあるのよ。入るのは、この部屋のベランダからだけよ。」
 「エッ?」
 「実は、隣の部屋は、私の居間でもあり、『お友達』の部屋なのよ。」
 「じゃあ・・・、ボクはその人と?」
 「ウフフフ・・・。」

 京香は意味深な笑いを浮かべた。

 「隣は、いわばセックス部屋なのよ。いいわ。『お友達』に会わせて上げる。」
 「イヤッ! こんな身体をもうだれにも見られたくないよ。」
 「心配しないでいいわよ。『お友達』って、お人形なのだから。」
 「人形?」
 「ダッチワイフ・・・、男だからダッチハズね。私はとてもスケベだって言ったでしょう? 今だってバイブを挿れているけれど、普段はダッチハズとしているのよ。」

 京香は立ち上がり、博美の手を引いてベランダに出る。ベランダのフェンスに隠れる様にし、隣の部屋へと入った。

 「ワーッ!」

 その部屋は大きなベッド以外にはまるで大人の玩具のお店だった。沢山のマネキンは卑猥な下着や拘束具を着けており、ガラスケースの中には沢山のバイブや、博美には意味の分からない、しかしやはり卑猥な印象を受ける道具類がずらっと並んでいた。

 「お姉さん・・・、ボクがここに住むの?」
 「そうよ。そのテーブルの向こうを見てご覧なさい。」

 そこには椅子に座っている人形が居た。ポリエチレンで出来ているらしいが、下着だけの女性なのだが、股間からは明らかなペニスを模した張り型が突き勃っている。極めて大きなペニスなのだが、それは京香が填め込んだままで座る椅子なのだと分かった。

 「これ・・・、お姉さんが?」
 「そうよ。それが『お友達』。この部屋に居る時は、いつもその子と繋がっていたのよ。アハッ。今度はそこにヒロミが座るのよ。」

 博美はちょっと不思議な嫉妬感を感じた。その人形が、ずっと京香とセックスしていたのかと思うと、何か妬ましかった。しかし今度はそれが自分だと思った時、ペニスの奥から鈍痛の様な圧力を感じるのだった。

 「アウッ?」

 京香が衣服を脱ぎ始めていたのだ。

 「ヒロミ、そっちのベッドに寝なさい。するわよ。」

 あっけらかんと言い放つ京香に少し驚きもしたが、揺れる巨乳に圧倒され、後ずさりしながらベッドに座った。京香がショーツを脱ぐと、まるで紐パンの様な下着だったが、ズルッと引き出した張り型は確かに人形のペニスの様に巨大な代物だった。そして自分では随分と大きいと思っていたペニスが、まだまだ叶わないと知った時、指輪がブルッと震えるのだった。

 「いいわね? あなたは私のセックスペットよ。その『チンチンちゃん』の代わりの、活きたダッチハズに成るのよ。」
 「お姉さん、ずるい・・・。そんな綺麗な身体を見せ付けて、ボクのオチンチンが爆発しそうになっているのに・・・。」
 「あら、それは違うわ。」
 「エッ? 何が?」
 「それはヒロミのオチンチンじゃない。私の物よ。私の持ち物のオチンチンにヒロミがくっ付いているだけ。だからヒロミがしたいからするのではないのよ。私がしたいと思うからするのよ。」
 「お願い、お姉さん。我慢出来ない・・・。」

 京香は笑いながら博美を押し倒し、その上から跨るのだった。そして摘まれたペニスが濡れている京香の股間に押し宛てがわれた時、もう博美に理性は残っていなかった。自分からも腰を動かして京香の秘部に填め込もうと上下させた。

 「ハウッ!」

 亀頭がヌルッとした粘膜に包まれた。その途端、博美の頭の中がスパークし、身体全体が激しく痙攣する様に振動をするのだった。

 (ワーッ、ボクがお姉さんとセックスしてる・・・。ヒーッ、何? ワーッ、凄いーーっ・・・!)
 「ハウッ・・・。」

 京香は博美の上で激しく腰を上下させ始める。この部屋は特に防音をしているので外には漏れないのだが、それでも二人の激しい喘ぎは悲鳴の様に響き渡るのだった。


 「ハウーーーッ!」

 耐えに耐えていた博美が達した瞬間、その激しい粘液の突き込みはいきなり京香の子宮口を押し拡げ、子宮内に塊となって突き挿さった。膣は激しく痙攣し、まだ残っている精液も強引に吸い出すのだった。





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